第4話 胸の大きさで身代金が決まる?
俺は元いた世界で死んで、この世界に転生してきたことを掻い摘まんで話した。特に秘密にするようにとも言われてなかったからね。もちろん、オークたちとのやり取りやここにきた経緯もである。ただし転移の際に、この国で一番の俺好みの美少女の近くを目指したことはさすがに言えなかったよ。あと、HP依存で攻撃力が跳ね上がることや、倒した中にオークの王がいたことついても黙っておいた。
余談だが、アターナー様から聞いた話だと、この世界には俺以外にも転生者がいるとのこと。もっとも、個人情報保護の観点からそれが誰かは教えられないそうだ。
当然、これもイオナ姫たちには話していない。
「俄には信じられんな」
アリアさんはそう言うと、再び俺に剣を向けてきた。
「勇者様の言う通りなら、我がこの剣で斬りつけても、全くダメージを受けないということになるが?」
「いや、ダメージは受けますよ。1ですけど」
「1億のうちの1なら、受けないも同じではないか」
「まあ、その通りなんですけどね。ちょっとは痛いんですよ」
オークたちとやり合った時も、棍棒で殴られるよりどくばりでチクチクやられた方が痛かった。ひょっとして、武器が俺の体に触れる面積によるのだろうか。どのみち、大した痛みではないけど。
「アリア、この部屋で勇者殿……ハルト殿でしたか。危害を加えるのはお止しなさい」
「ですが姫、この者は魔物が化けているということも考えられます!」
「それならとっくに牙を剥いているのではありませんか?」
「う……た、確かに……」
「それに、姿形は紛れもなくデコピン殿ですが、醸し出す雰囲気は彼とはまるで別人です」
「イオナ姫様、それは私も思いました」
おお、気弱そうなエリスさんも助け船を出してくれるのか。ちょっと嬉しい。
「以前のデコピン様はイオナ姫様をイヤラシイ目で見てましたが、こちらの……ハルト様は、私の胸ばかりを見ておいでですから……」
「は? い、いや、そんなことは……!」
「そうですね、私も感じております」
「姫様まで……」
「ムムっ! やはり勇者様とて、ここは成敗した方が!」
てかデコピン、何してくれてんのよ。
「アリア、それでもデコピン殿がいない今、私たちはこのハルト殿に頼るしかないのではありませんか?」
「頼る? 魔王討伐を、ですよね?」
俺は勇者の体に乗り移ったわけだし、頼られるのも当然だろう。ま、あのエル何とかって女神が魔王なら、楽勝だとは思うけど。
「それもそうなのですが……」
「他に何かあるんですか?」
「実は、私の妹がオークに捕らえられているのです」
「はい?」
「オークの王、オーク・ザ・ラットは、妹の身と引き換えに、金貨2万枚を要求してきました」
「金貨2万枚?」
金貨1枚は、日本円で10万円くらいの価値がある。これは転生する途中、基礎知識として頭に流れ込んできたものだ。そしてそれが2万枚ということは、身代金として要求された額は20億円ということになる。イオナ姫の妹ならお姫様なのだろうから、妥当な額かも知れないが――
「もしかしてお金がないとか?」
「いえ、その程度の金貨なら何とかなります。けど……」
「けど?」
「私の時は1万枚だったのに……」
「へ?」
「実は少し前、イオナ姫もオークに攫われて、その時に要求されたのが金貨1万枚だったのです」
「そこ、悔しがるところですか?」
「とにかく! デコ……ハルト殿には妹を助け出して頂きたいのです!」
人をでこっぱちみたいに言わないでほしいよ。まあそれはいいとして、すでにオークの王は倒したしなあ。でもそうか。あの連中の中には、それらしい女の子はいなかった。だとすると、イオナ姫の妹はどこかに幽閉されているということだろう。
「妹さんがどこに捕まっているかは分かっているのですか?」
「オークの村です。ここから南に500キロほど行った山間にあります」
新幹線なら2時間半くらいの距離だな。
「場所が分かっているなら、軍隊でも差し向ければよかったのではありませんか?」
「そこは狭い谷間になっていて、気取られずに進軍するが難しいのです」
「なるほど」
「ただ、先ほどその付近で大きな爆発があったようで、妹が巻き込まれていないか心配なのです」
「ば、爆発……?」
はい、すみません。それ、十中八九俺の仕業です。まさかあの火の玉、妹さんまで巻き込んでいないだろうな。
「は、話は分かりました。それで、妹さんの名前は?」
「フィオナです」
「特徴を教えて頂けますか?」
「フィオナ姫様は、イオナ姫様と瓜二つです。ただ……」
「ただ?」
「エリス! 姫の前だぞ」
「構いません、アリア。フィオナは私より……」
「イオナ姫、より?」
「胸が大きいのですっ! オークは胸の大きさで身代金の額を決めたんです! そうです、そうに違いありません!」
ああ、なるほど。今はガウンを着ているからよく分からないが、確かに目の前に座っているイオナ姫の胸は、あまり大きいようには見えない。つまりこの姫様は、妹の大きな胸に対してコンプレックスを持っているということだ。とは言っても、フィオナ姫の胸がどのくらい大きいかは分からないのだが。
「それに、フィオナ姫はデコピン様のことをお慕いしていたようです」
「詳しく聞きましょう」
エリスさん曰く、そういうことらしい。アターナー様、ここまでしてくれるとは感激です。もちろん、この可愛いイオナ姫と瓜二つで、しかも胸は彼女の方が大きいときている。助けないなどという選択肢はない。デコピン、でかした!
「その、もう一つ聞いてもいいですか?」
「何ですか!?」
イオナ姫、そんな涙目にならなくても。
「えっと、エリスさんと比べるとどちらが……?」
「で、デコピン様のえっち!」
胸を両腕で押さえて、真っ赤になって叫ぶエリスさんは本当に可愛かった。もちろんこの後俺がアリアさんに、剣の鞘でしこたま殴られたのは言うまでもないだろう。
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