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第3話 お姫様と出会った?

「えっ……?」

「あ……」

「きゃ……キャーッ!」

「貴様何者か!?」


 ありゃ、これはまた困ったことになった。呪文を唱える時に俺が思い描いたこと、それはこの国で一番の、俺好みの美少女の近くに転移することだったのだが。


「無礼者! 見てはなりません!」

「は、はいっ!」


 転移した部屋はどうやら貴族、それも相当高貴と思われる人の一室だった。今までいたのが洞窟みたいなところだったから、時間の感覚がまるでなかったが、どうやら夜のようだ。窓の外は暗く、街明かりが見えている。そしてこの部屋は、かなり高い階にあるらしい。


 ところで悲鳴の主は、シルバーブロンドの長い髪を揺らした、同い年くらいの綺麗な顔立ちの少女だった。ただ着衣は下着と、その上の半透明のローブのようなものだけ。つまり、彼女の下着がほぼ丸見え状態だったというわけだ。さすがに刺激的過ぎたよ。怒られるままに、目を背けたしね。


 そして俺に怒鳴ったのは、その女性のお付きの人という感じだろうか。お決まりのメイド服を着ているが、髪は金色でスラッとした長身の女性だ。顔は少しキツめだけど、なかなかの美人だと思う。年は見た感じ、俺より2つくらい上なんじゃないかな。


 それからもう1人、そのメイドさんの後ろに隠れながらも、かろうじて下着の女性を護るように立っている、こちらは気弱そうな少女がいた。同い年か、1つか2つ年下くらいだと思う。青く長い髪をヘッドドレスではなく、ピンクのリボンでポニーテールにまとめている。俺としては3人の中では、この子が一番好みだ。腰もキュッと締まっているし、何より胸がデカい。


「イオナ姫、何事ですか!」

近衛(このえ)はその場にて待機! 姫はお着換え中だ!」

「ははっ!」

「殿下、さあ、早くこちらを!」


 年上っぽいメイドさんが扉に向かって叫び、リボンのメイドさんは慌てて"殿下"にガウンを着せている。その間も、俺は"殿下"に睨まれたままだ。扉の向こう側には、近衛の兵士たちも来ているってことか。


「あ、あのー」

(ぞく)め、名を名乗れ!」

「お待ちなさい、アリア」


 ガウンを羽織って下着が見えなくなった"殿下"は、居住(いず)まいを正しながら、俺の方に近づいてきた。


「姫、近づいてはなりません! 危険です!」

「アリア、私にはこの方の顔に見覚えがあるのです。(すす)けて汚れてはおりますが……」


「はっ! も、もしや勇者デコピン様!?」


 それまで長身のメイドさんの後ろに隠れていたもう1人のメイドさんが、驚いたような声を上げた。"殿下"も顔を近づけて、マジマジと俺を見つめる。てか、どうでもいいけどその名前、恥ずかしいから。


「言われてみれば確かにデコピン殿」

「いや、あの……」


「勇者様とは言え、イオナ王女殿下の部屋に無断で立ち入るのは言語道断!」

「で、でも、お怪我をなさって……」

「本当ですね。エリス、すぐにお手当てを」

「は、はい!」


 どうやら"殿下"というのは、このアークマイルド王国のイオナ姫のことらしい。そして怒っている方のメイドさんがアリアさん、もう1人のメイドさんはエリスさんという名なのだろう。


 この3人との出会いが、女神アターナー様のプレゼントということなのか。お姫様は難しいって言ってたクセに、ちゃんと叶えてくれるところはさすが、SSRランクの女神様だよ。にしてもこの状況は、ちょっと困ったぞ。


 俺はオークに殺された元々のこの体の持ち主、デコピンとかいう勇者の体に転生した。これも、赤ん坊からスタートしたくないという、俺の希望を叶えてくれた結果だと思う。お陰で衣服は血まみれだけどね。加えて俺が放った魔法のせいで、あちこちが焦げてしまっている。イオナ姫の言葉から察するに、顔も煤けているのだろう。確かにちょっと焦げ臭い。


「イオナ姫、大丈夫ですか?」

「問題ない。近衛は引き続き、別命あるまでその場にて待機せよ」

「ははっ!」

「では勇者様、詳しく聞こうか」


 言うとアリアさんは剣を抜いて俺に突きつける。何だかこの人、俺に敵意でも持っているような気がするよ。そこへ、薬箱を抱えたエリスさんがやってきた。


「こちらに座って、その……服を脱いで下さい」

「は?」

「き、傷の手当てを致しますので……」


 ああ、そういうことか。俺は彼女に言われた通り、部屋の真ん中にあった応接セットのソファに腰掛ける。そして血で汚れた服を脱ごうとして、怪我なんかしていないことを思い出した。


「あ、俺なら大丈夫ですよ。怪我してませんから」

「でも、その血は……?」

「これね、俺の血じゃありませんから」


「ほう? 怪我をしていないと。ならばエリス、そこをどきなさい。事と次第によっては、たとえ勇者様だとしても容赦せぬ!」

「落ち着きなさい、アリア。何かご事情があるのかも知れません」

「ですが姫!」


 今にも襲いかかってきそうな勢いのアリアさんを(なだ)め、イオナ姫はテーブルを挟んだ反対側のソファにゆっくりと腰を降ろした。そして、俺に優しそうな微笑みを投げかけてくる。うん、やっぱりこのお姫様、きれいだ。


 こうして俺は、ひとまず3人もの美少女たちとの出会いを果たした。そしてイオナ姫を前に、俺がこの王国にやってきた経緯を話すのだった。


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