表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/41

第2話 どくばりで金的?

「や〜め〜ろ〜!」


 オークの王、オーク・ザ・ラットは、その太い指でどくばりを持ち、俺をブスブスと刺してきた。ただ、あれだけ指が太いと、どくばりも先端しか出てないから、どちらかと言うとチクチク、という感じだ。どこを刺されてもダメージは1しか受けないし、急所を突いての会心の一撃も俺には無効だから何ともないが、地味に痛い。


「クソっ! オマエ、急所はどこだ?」

「そんなこと聞かれて答えるか、普通?」

「こうなったら、全てのオスの急所を」

「はぁ?」

「男としてこれだけは止めておいてやろうと思ったが」


 ちょ、まっ! オークの王様、俺の股を見てるけど何考えてるんだよ。


「おい、大人しく股を開け!」

「いや、別に開く必要はないだろ?」


 ってか、どうして赤くなりながら息を荒くしてんだ。コイツもしかしてモーホーなのか?


「オマエたち! 勇者デコピンを押さえろ!」

「や〜め〜れ〜!」


 いくら桁外れのHP(体力)や防御力があっても、大勢のオークに押さえつけられれば、さすがに身動きが取れない。これは盲点だったよ。体力依存の会心の一撃は攻撃する時のみで、腕力自体は普通の人間となんら変わりはない。つまりオーク相手では、俺はまったくの非力と言ってよかった。


「よし! 足を開かせろ」

「よせよせ、よせってば!」

「黙れデコピン! 今度こそ本当に葬ってやる!」


「いや、チ○コにどくばりって、えげつなさ過ぎるだろ?」

「オマエがさっさとくたばらないからだ!」

「お、おい、やめろって! 自分がされたらどうよ!」

「自分が……されたら……?」


 お、何かちょっと悩んでるぞ。もしかしたらコイツら、根はいいヤツらなのかも知れない。


 だがそう思ったのも(つか)()、どうやら俺の大きな勘違いだったようだ。王どころか、俺を押さえつけている他のオークたちまで、頬を赤く染め始めた。ちょっと待て、オークってのは皆が皆、そっちの気があるっていうのかよ。


「ど、どくばりは困るけど、普通の針なら……」

「はいぃ?」

「されてみたいかも……」

「いや、何を言って……」

「もう、普通の刺激じゃ満足出来ない……」


 マジかよ。これはまさに絶体絶命だ。今狙われているのは男のシンボル、金的だ。死にはしないだろうが、地味に痛いどころじゃ済まされないぞ。


「や、やめよう。やめようよ、な?」

「見ろ! 勇者デコピンが震え上がっているぞ」


 いや、俺じゃなくても震え上がるって。


「しっかりと、押さえつけていろよ」

「待てってば!」


 どうしたらいい。どうしたらこの危機的状況から抜け出すことが出来る?


 どくばりの先端は、すでに見境をなくしたオークの王によって、刻一刻と俺の大事な部分に迫ってきている。鼻息荒いし。


 その時、俺はふと閃いた。そうだ、その手があった。


「ちちんぷいぷい!」

「アチッ。何だあ? 松明(たいまつ)の火の粉でも飛んできたか?」

「ちちんぷいぷい!」

「アッチいなあ。おい! 松明を振り回してる奴でもいるのか?」


 早くしてくれ!


「ちちんぷいぷい!」


 3回目の呪文を唱えた時だった。俺を取り囲むオークたちの頭上に、巨大な火の玉が出現したのである。ちなみに、前の2回は攻撃力2に見合ったものだったようだ。


「ギャーッ!」

「熱い! 熱い!」

「グヘェッ!」


 俺がイメージしたもの、それはまさしく火の玉。ラノベなんかにお決まりのように出てくる、ファイアボールの大きめのやつだ。この状況で上から降らせたら俺も巻き添えを喰うのは必至である。しかし、防御力が1億もあれば、せいぜい軽い火傷を負うくらいで済むに違いない。それにしても、思った通り、魔法も確率でHP依存の攻撃力が出るというわけだ。てか、デカ過ぎないか?


 いや、ちょっと待て。あれ、マジでデカいなんてレベルじゃないぞ。球体のはずなのに平面にしか見えないし。これじゃオークだけではなく、この洞窟みたいなところまで根こそぎ崩壊させちまうぞ。


 その時にはすでに、俺は体の自由を取り戻していた。この体を押さえつけていたオークたちが、慌てふためいて逃げ出していたからである。しかし、火の玉の巨体さは、足で逃げられるようなものではない。


 さすがにあれの下敷きになったら、俺も抜け出せる気がしない。どうやったら切り抜けられるだろうか。だが、すぐに俺は妙案を思いつく。そうか、その手があったか。よし、ここはひとつ!


「ちちんぷ……」


 いや待てよ。ただこの場所から魔法で逃げるだけでは能がない。どうせなら――


「よし! ちちんぷいぷい!」


 王も含めたオークたちが火の玉の下敷きになっていく中、俺の姿はその場からすっと消えるのだった。


 本当に呪文って、なんでもいいんだな。


◆ブクマ、感想大歓迎です!◆

◆評価も頂けると嬉しいです!◆

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ