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第6話 魔物狩り?

「どうして魔物狩りでも構わないと思われたんですか?」


 国王の命令とは、さすがに言えないよね。


「何となく……」

「はぁ……セレーナさん!」

「は、はい!」


「何となくで魔物が狩れると思っているんですか?」

「あ、あの……」


「いいですか? 魔物は相手が弱かろうと容赦はしてくれません。それに、中にはこちらのステータスを覗き見ることが出来るのもいるんです」

「はあ……」


「貴方のこのステータスでは、真っ先に狙われて食べられてしまうことでしょう」


 魔物って人を食うんだ。


「悪いことは言いません。登録証は発行しますので、何か別の職業をお探し下さい」

「いや、でも……」


「ただ、またここに来てくれれば、お茶のお相手くらいはしますよ」

「はい?」

「何ならアフターも」


 おいおい、アフターってのは俺もお願いしたいけど、今はそんなことを言ってる場合ではない。


「あの、どうしても魔物狩りはダメですか?」

「ご希望ならダメとは言いませんが、貴方のようなカッコいい男性を死なせるのは勿体ないというか……」


 その誘うような視線は困りますから。いや、俺だってショコラさんの大きな胸に顔を埋めてみたいよ。だけど俺にはミルフィーユさんがいるから。血の涙を流すって、こういうことなのか。


「よう、ショコラちゃんが困ってるじゃねえか」


 そこへ、大剣(たいけん)を肩に担いだ、いかにも戦士っぽい大男が現れた。彼の後ろにはエルフと思われる耳の長い男性と、青い神官服を(まと)った女性が従っている。


「あら、シュワルさん」

「ショコラちゃん、こんなガキ、俺が追っ払ってやろうか?」

「いえ、手荒な真似はしないで下さい」

「そうかい? あれ、お前、どっかで会ったか?」

「初対面です」


 デコピンの知り合いかな。でも俺は初めてだ。


「そうだシュワルさん、この人なんですけど……」

「うん?」

「魔物狩りに行きたいそうなんです」


「あぁ? お前が魔物狩りだぁ?」

「ステータスはこれです」


 ちょっと待ってよ。ショコラさんが見せてるのって、俺の登録証だよね。個人情報保護法に違反してるんじゃないのか。この世界にそんな法律があるのかどうかは知らないけど。


「女みてえな名前だな」


 その話題、もう終わってるから。


「何だよこれ、自殺志願者か?」

「そんなつもりはありません!」

「で、コイツをどうしろと?」


「1度だけ、魔物狩りに連れていってあげてくれませんか? そうすれば諦めてくれると思いますし」


「死なせないように体験させてやれってか」

「その代わり、今度お酒にお付き合いしますから」

「カーッ、ショコラちゃん、優しいねえ」


 何でだろう。神官服の女の子からめちゃくちゃ敵意を向けられてるような気がするんだけど。


「ま、そこまで言われちゃ仕方ねえな。おい小僧、セレーナだっけ?」

「あ、はい」


「お前のために、大した金にもならない弱い魔物を狩りに行くから付いてきな」

「あ、ありがとうございます」


「俺はシュワル・ツネガ。後ろのエルフはザビエル・フラスコ、後方支援担当だ。でもって女の方はクリス・チャン。回復魔法で怪我を治してくれる」

「よろしくお願いします」


 2人は軽く会釈してくれただけだ。やっぱり俺、歓迎されてないよね。


 かくして、俺は初めて会った3人と魔物狩りに出かけることになった。弱い魔物って言ってたけど、依頼にあったのは何とかという村の畑を荒らすアライグマみたいなヤツだ。村はここから歩いて1時間くらいの距離にあるそうだし、これなら今日中に帰れるだろう。


「よう、セレーナ。お前何だって魔物狩りにこだわるんだ?」

「いえ、魔物だけじゃなく盗賊も……」

「盗賊だぁ!?」


「身の程知らず、死ぬよ」

「怪我してもアンタは後回し」


 ザビエルさんとクリスさんが酷いことを言ってる。でもまあ、セレーナのステータスを見たんじゃ、厄介者扱いされても仕方ないよね。


 ちなみにこの3人のステータスで特筆すべきなのはこれだ。


 まずシュワルさんはHPが5千で攻撃力は2千。だが、持っている剣がなんとはずれメタルの剣なので、これの攻撃力2千が加算されるようだ。この人、オークを倒したことがあるのかな。


 次にザビエルさんだが、HPは800しかないものの、彼の着ているエルフの服というのが、防御力8千もあるみたいだ。それに後方支援と言っていたから、まず直接攻撃を食らうことはないのだろう。


 最後にクリスさんだが、彼女の魔力値は7千もあった。これだけあれば、大抵の怪我は治せるんじゃないかと思う。


「着いたぞ……な、何だよこれ……」


 そうこうしているうちに、どうやら目的地に到着したようだ。しかし、俺たちの目に飛び込んできたのは、田畑ばかりか家まで押し潰された、無残な村の姿だった。


「聞いてないぞ」


 シュワルさんの表情が一変する。明らかにこの光景は、ラ○カルの仕業とは思えなかったからだ。


「お、おい、引き返すぞ!」

「待って下さい。あそこにまだ生きてる人が!」


 慌てて逃げ出そうとするシュワルさんに、俺は一軒の崩れかかった家を指さす。だが――


「バカを言うな! あれではもう助けられん! それにこれは……!」


 ダメだ、この人。そう思った俺は転移で家の中に飛び、倒壊する寸前で中に取り残されていた幼い少年を助け出す。間一髪(かんいっぱつ)、直後に家は崩れ落ちていた。


「セレーナ、お前……?」

「逃げる時間はもらえそうにありませんよ」


 驚いた表情のシュワルさんの背後で、巨大な魔物が咆哮(ほうこう)を上げるのだった。

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