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第3話 国王からの贈り物?

「ハルトさん、おはよう!」

「おはよう、ミルフィーユさん」


 ミルフィーユさんに呼びに来てもらえるのも今日が最後だ。ちょっと寂しい気もするが、近くに引っ越すだけのこと。逢おうと思えばいつでも逢える。


 ところで、これから俺は国王に初めて会うことになっている。王女誘拐事件解決の功労者として、直々(じきじき)にお礼をしてくれるとのことだ。そこで正式に土地付きの屋敷やら、報奨金やらを授与してくれるらしい。あと、騎士(ナイト)の称号も貰えるとか。


「ハルトさん、今日から騎士様だよ!」

「あはは、何かの役に立つのかな」


「何言ってるのよ! 騎士の称号があれば、冒険者ギルドから引っぱりダコなんだから!」


 出たよ、異世界名物、冒険者ギルド。この世界にもそんなのがあるのは知ってたけど、いつも思ってたんだよね。冒険者と言いながら、冒険しているキャラなんてあまり見たことがないって。


 遺跡発掘とか、未開地の探検とかさ。それが冒険ってモンじゃないのか。


 街の警護は警備隊や自警団などがやるべきだし、魔物を狩るのならハンターと呼ぶべきだ。誰かの依頼を受けてそれを遂行(すいこう)するなら、それはもう単なる便利屋だろう。冒険の要素なんてどこにもないじゃないか。


 ジョーンズ博士みたいな人こそ、本当の冒険者というんだよ。それなのに依頼を斡旋(あっせん)するとか、ハローワークとどこが違うんだか。


「その冒険者ギルドって、具体的には何をするところなの?」

「う〜ん、色々かなぁ。依頼をもらって」


 ほらね。


「成功すれば報酬を貰えたり」


 やっぱり。


「魔物を退治してランクが上がると報酬も増えるよ」


 お約束決定だね。俺はギルドなんかに所属しなくても、基本的に自分だけで何でも出来ると思う。上前をはねられるより、はねる方になりたいんだよ。というわけで、便利屋でも開業するのが一番だろう。


「あとは、登録して信用を得るとか。お店を出したりするのにも、ギルドに登録してるとスムーズに開業出来るみたい」


「え? 今なんて?」

「スムーズに開業?」

「いや、その前」


「ああ、登録すると信用が得られるって話?」


「そう、それ」

「ハルトさん、何かお店出すの?」

「その、何というか……」


「驚いた。魔物狩りのパーティーとかに入るのかと思ってた」


 ミルフィーユさんによると、魔物などを専門に狩るパーティーでは、回復担当が特に重宝されると言う。そのため募集条件もかなり優遇されているそうだ。


「まあ、治癒魔法は得意と言えば得意だからね」


「でもそうだよね。私はお店出すのに賛成かな」

「ん? どうして?」


「ハルトさんなら大丈夫だとは思うけど、やっぱり危険な目には()ってほしくないし」

「ミルフィーユさん……」

「あ、着いたよ」


 ちょっといい雰囲気になったところで、俺たちは謁見(えっけん)の間の前に到着してしまった。本来はここで一度検問を受けるのだが、今日はイオナ姫がエスコートしてくれることになっているのでノーチェックだ。そのイオナ姫は、すでに扉の前で待っていてくれた。


「お待たせ致しました。ハルトさんをお連れ致しました」

「ご苦労さまでした」

「それでは私は……」


「あ、ミルフィーユさん、ちょっと待って下さい」


 一礼して下がろうとするミルフィーユさんを、イオナ姫が引き止める。


「はい、何でしょう?」

貴女(あなた)も一緒に来て下さい」

「えっ!?」


 突然のことに、ミルフィーユさんが固まっている。もしかして彼女も、国王に謁見するということなのだろうか。


「あ、あの……私、何かしてしまったのでしょうか……?」

「そうではありません。(ひど)い目に遭わされたので、陛下がお詫びをしたいと申されているのです」

「そ、そんな、恐れ多い!」


 ん? イオナ姫、今のアイコンタクトは何ですか。とりあえずミルフィーユさんと一緒に入ればいいのかな。


「国王陛下が言われてるんだから、断ったら逆に失礼になると思うよ」

「でも……」

「俺も一緒なんだから、大丈夫だって」


 こうして俺とミルフィーユさんは、イオナ姫にエスコートされて謁見の間に通されることになった。


 巨大な扉は人の手で開けるのではなく、脇に立っている衛兵さんがレバーのような物で開ける仕掛けになっているようだ。イオナ姫が衛兵さんに肯いて見せると、重苦しい(きし)み音を上げてゆっくりと扉が開いていく。その先には鎧を着込んだ兵士たちが、赤いカーペットを挟んで両側にズラリと整列していた。


「ハルト・サカシタ殿、ご到着〜!」


 俺とミルフィーユさんは、先に歩き出したイオナ姫の後を付いていく。その先には玉座(ぎょくざ)に腰掛け、王冠と赤いマントを身に着けた国王が微笑んでいた。何だか優しそうなおじさん、という雰囲気だ。


 それはそうと、どうしてアリアさんがいるんだろう。まあ、あの人は近衛(このえ)の副隊長だっていうし、国王の警備担当を任されているのかも知れない。


「陛下、ハルト・サカシタ殿とミルフィーユ・アラモード殿を、お召しによりお連れ致しました」


 イオナ姫の言葉を聞いて、ミルフィーユさんが慌ててその場に(ひざまず)く。俺も当然、彼女に(なら)った。


「うむ。2人とも、顔を上げよ」

「は、はいっ!」

()がアークマイルド王国の国王、ウイリアム・レクサス・フーガ・アークマイルドである」


 名前長いから覚えられないよ。


「まずはハルト・サカシタ殿。この度の活躍は聞き及んでおる。フィオナを助けてくれたこと、感謝するぞ」

「ははっ!」


「すでに聞いておろうが、そなたには騎士の称号を与える」

「慎んで、お受け致します」


 俺はその場で深く頭を下げた。この辺りの作法は、前もってイオナ姫が教えてくれていたのである。


「それからこれは屋敷の鍵だ。場所は分かっておるな?」

「はい」


 国王から衛兵さんを通して渡された鍵には、跳ね馬の細工が施されていた。細工の方が鍵より大きいから、持ち運びに苦労しそうだ。しかし、俺には無限収納ボックス、サルガッソーがある。後でその中に放り込んでおこう。


「なお、報奨金として金貨100枚を支払うものとする。これは後ほど屋敷に届けさせよう」

「ありがたき幸せに存じます」


 うほ〜、約1千万円かよ。身を持ち崩さないように気をつけなきゃ。


「うむ。次にミルフィーユ・アラモード殿」

「は、はは、はいっ!」

「そなたには(つら)い思いをさせたと聞く。許せよ」

「そんな……勿体ない!」


「そなたの願いも聞き届けたぞ」


「はい……はい?」

「アリア、渡してやれ」

「ははっ!」


 アリアさんが国王に命じられて、鍵のようなものをミルフィーユさんに手渡している。あれ、ついさっき俺がもらった鍵に似ているような気もするが、ミルフィーユさんのは跳ね馬が逆向きのようだ。彼女もお屋敷とか与えられるのかな。もっともあんな酷い目に遭わされたのだ。別に不思議ではないと思う。


 だが、次の国王の言葉に、俺とミルフィーユさんはあんぐりと口を開けたまま、固まってしまうのだった。


ブクマ、評価は励みになるのでぜひ、よろしくお願いします。

続き、頑張って書いてます(^o^)

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