第1話 コケコッコン?
続きを待っていて下さった方、長らくお待たせ致しました。
今後もノリノリで行こうと思います。
第3章までの改稿は無事に完了しました。
少々設定をいじくったところもありますが、すでに読み終えている場合は、暇な時にでも第2章の第8話以降をお読み下さい。
それ以前はほとんど内容の変更はありません。
また、読み直さなくても大丈夫です。
それでは、今後ともよろしくお願い致します。
「おはようございます、遥人さん」
「おはようございます、アターナー様」
「何だか1日しか経ってないはずなのに、とてもお久しぶりのように感じます」
「た、確かに……」
いやあ、昨日は長い1日だったよ。
「ところで今日が何の日か覚えてますか?」
「ん? 何かの記念日でしたっけ?」
「違います」
「う〜ん、俺の女装が終わる日!」
「まあ、それはそうなんでしょうけど」
王女誘拐事件を無事解決に導いた俺は、晴れて男として生きていくこととなったのである。もちろん、この女子寮からは出ていかないといけないんだけどね。
その代わり、お城のすぐ近くに土地付きで屋敷を与えてもらえることになった。当然ながら、城への出入りも自由だ。ミルフィーユさんの部屋から離れてしまうのは少し寂しいが、歩いて数分のところに住むのだ。いつでも逢えるだろう。
「そろそろ本題に……」
「あ、すみません。それで、何の日なんですか?」
「デイリーガチャの最終日です!」
「そっか、もう7回目になるんですね」
「はい。ですので今日は2回引けます」
どうせならSSR確定10連とかにしてくれればいいのに。
「そんなイージーモードでは、人生楽しくありませんよ」
「前世がハードモードだったんで」
「それもそうですね」
「じゃ、SSR確定10連に!?」
「なりません。ただ……そうですね。2連で引くならR以上、ということではいかがですか?」
R以上か。それならR確定と同じだ。ま、Nが入ってないだけマシだろう。女子力補正+10とか被っても嬉しくねえし。
「遥人さん、もう少し期待してくれても……」
「期待すると、物欲センサーに引っかかるじゃないですか」
「そうなんですけど……それで、2連で引きますか? 単発で2回引きますか?」
「ま、せっかくなので2連でお願いします」
「それでは、どうぞ」
彼女の言葉と同時に『2回引く』と書かれたボタンが現れた。ということで、いつものようにガチャを引いてみる。
「は、はい?」
ところが全く期待などしていなかったからだろうか。俺はしばらく放心状態となった。何故なら背景がレインボー、つまりSSR確定演出だったからである。
「すごい! すごいですよ、遥人さん!」
2連だったとは言え、デイリーガチャでのSSR排出率は確か1/10万のはずだ。この後ウイークリーからマンスリーに変わって、ガチャが全て10連だったとしても、50年かかったって10万回は引けない。それが出たのだ。驚かないわけがないだろう。
「遥人さん?」
「あ、ああ、すみません。ちょっとビックリしちゃって、軽く気を失ってました」
「私もビックリです。デイリーでSSRを引いたのって、遥人さんが初めてじゃないかと思います」
「そうなんですか?」
「ええ!」
「それで、何が出たんでしょう?」
「出たのはSSRとただのRです。どちらから聞きたいですか?」
「えっと、まずはRからお願いします」
「はい。Rはですね……おめでとうございます!」
「はい?」
ま、まさか攻撃力とか。いやいや、どうせならそっちはSSRであってほしい。
「残念ながら攻撃力ではありませんでしたが、腕力補正+30kgです。よかったですね!」
「何ですか、それは?」
「現在の腕力より、30kg重い物を持てたり、握力が30kg増えたりとか、とにかく遥人さんの腕力に補正がかかるんです」
「な、何だか微妙ですね」
「でも、女の子をお姫様抱っこするのも楽勝になりますよ」
「なるほど、確かに!」
アニメなんかでよく、長い時間女の子をお姫様抱っこし続けるシーンがあるけど、あれって絶対無理だと思ってたんだよね。主人公が魔法使いとかならいざ知らず、普通の人間だったらまずあり得ないよ。
しかしこうなってくると、SSRの方も気になる。まさかHPとか防御力の被りでした、なんてオチじゃないだろうな。
「ご安心下さい。それはありません」
「よかった〜。で、SSRの方は何だったんですか?」
「はい、それはですね〜……こ、これは!」
なになに? 勿体付けずに早く教えて!
「神剣……」
「しんけん?」
「神剣コケコッコンです!」
「はぁ?」
ちょっと待て。コケコッコンって何よ。ネーミングセンス氷点下じゃん。
「遥人さん、よく聞いて下さい」
「はいはい。どうせ大した物じゃないんでしょ?」
「これが神剣コケコッコンです」
そう言ってアターナー様が見せてくれたのは、柄の装飾がニワトリで、鍔の部分か広げた羽根になっている剣だった。やっぱり、コケコッコンだよ。
「この剣は神剣と呼ばれるだけあり、刀身には軍神ヒャッハーが宿っているのです」
コケコッコンの次はヒャッハーときた。何でこんな物がSSRなのさ。
「遥人さん、何だか反応が1枚だけになったティシューより薄いですね」
「だってその剣……」
「名前に関しては私も些かの疑問を覚えます」
でしょ?
「ですがこれは、折れない錆びない斬れない、じゃなくて、斬れない物がないとまで言われている剣なのですよ」
「へぇへぇへぇ」
「バカにしてませんか?」
「いえ、別に」
「では、その身をもって知るとよいでしょう」
「はい?」
突然、アターナー様の顔つきが変わった。それまでは優しい女神様の印象だったのに、今は恐ろしい魔女のような表情になっていたのだ。そう言えばアターナー様は、戦争の女神様とも聞いた覚えがある。
だが次の瞬間、俺の右肩に激痛が走っていた。そして、そちらに目を向けた俺は、全身から血の気が失せていくのを感じる。
右腕は肩のところからなくなっており、それが血を噴き出しながら床に転がっていたからだ。




