表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/41

第17話 誘拐犯は?

「確か衛士団長のザマ・アミロさんでしたかしら?」

「アミロ殿、物質転移を使えるとは聞いておりませんが」

「な、何のことですか?」


 この状況で、まだ(とぼ)けようというのか。それにしてもこの人が犯人だったとは。


 ところで姫様(いわ)く、転移魔法などの高度な魔法が使える場合、王国に届け出る義務があるとのことだった。その中には当然、転移系に分類される物質転移も含まれる。他には高位の治癒系魔法や、戦略級の攻撃魔法などが届け出の対象だそうだ。


「私はフィオナ殿下をお護りするために……」

「よくもまあ、ぬけぬけと。それなら檻に入れているのは何故ですか?」

「ぐっ!」


「さて、訳を聞きたいところですがその前に、ベルルラルー!」


 俺は檻の中のフィオナ姫が、イオナ姫の足許(あしもと)に出てくるのをイメージして呪文を唱えた。これが物質転移というヤツである。


「フィオナ!」

「ここは……どこ? 私は誰? じゃなかった、どうして私はこんなところに?」

「貴女はそこのアミロ殿に物質転移で誘拐されたのです」


「クソっ! 大地の精霊よ、我の言葉に耳を傾けたまえ。ゴルゴンゾー……うぎゃっ!」


 アミロが壁に何か魔法を仕掛けようとしたらしいが、跳ね返って自分に当たっていた。ざまあ見ろだ。


「そこから逃げ出そうなんて、考えない方がよろしくてよ」

「クソッ!」

「姫様、この後どうするんですか?」


「本来なら衛士団に引き渡すところですが、彼はその長ですからね。近衛(このえ)隊に任せることにしようと考えてます」


「こ、近衛隊!?」

「あれ、何か(おび)えてませんか?」

「それはそうでしょう。近衛の拷問の凄まじさは、衛士団の比ではありませんから」

「そ、そんなに?」


 ミルフィーユさんがやられたアレより、もっと凄いってことなのか。


「ハルト殿も気をつけた方がいいですよ。アリアはいつでもは本気ですから」

「はい?」


 まさか、あのちょん切るってやつのこと? よし、アリアさんにだけは逆らわないようにしよう。


「お、お待ち下さい! 私は衛士団長ですぞ!」


 あ、コイツの存在を忘れてたよ。


「では、その衛士団長が何故このようなことをしたのですか!?」

「それは……」


「貴方が誰かに(そそのか)されたと言うなら、その者の名を述べなさい!」


 おほー、イオナ姫怒ってるなあ。もっともお城を護る衛士の(おさ)が裏切ったんだ。当然だと思う。


「誰かに……そ、そうです! 私は唆された!」

「誰にですか?」

「ま、魔王です。魔王に唆されました!」

「はぁ?」


 俺は思わず変な声を出してしまった。魔王って、アイツだよな。


「魔王が金貨2万枚を要求したと言うのですか?」

「はい、その通りです!」


 あり得ないだろう。この世界の魔王と言えば、今はあの馬鹿女神(エル何とか)のはずだ。あれはどうしようもないアホだが、腐っても元女神である。人を(さら)って身代金をせしめようとするとは思えない。


「姫様、アミロさんは嘘ついてますよ」

「な、何を根拠に!」

「それは私も分かります。魔王殿が貴方ごときを誑かすなど考えられませんから」


 魔王殿?


「殿下、私は嘘など!」

「本当のことを言いなさい。でなければ、近衛に言って最も(むご)い拷問を受けさせますよ」

「姫様、最も酷い拷問って?」


「毎日体のどこかしらを(のこ)で引いて切り落としていくのです。1日目は耳、2日目は指、といった具合に」


 そして腕、足と続き、最後には首を落として終わりだと言う。男はアレも切られちゃうそうだ。さらに傷口は塩水に()けられるとか。それ、めちゃくちゃ残酷じゃないか。


 しかも舌を噛み切って死ねないように猿ぐつわを噛まされ、失血死しないように止血まで施されるという。つまり、首を落とされる最期(さいご)の時まで、死ぬことすら許されず何日も苦しみ続けるということだ。


「聞いただけで痛いですね」


「この拷問は公開で行われます。王族に反旗を(ひるがえ)せばどうなるか、反逆を企てる者に知らしめる意味がありますので」


「今まで何人くらい、その拷問を受けたのですか?」

「アミロ殿が初になります」


 そうか、こんな(むご)たらしい拷問をしょっちゅうやっていたら、恐怖で人心は離れていくに違いないからな。イオナ姫が淡々と内容を説明してくれたのも、実際に見たことがないからなのだろう。見たら絶対トラウマになるよ。


「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」

「どうされました?」

「は、話します! 話しますから、どうかその拷問は……」


 ミルフィーユさんに酷いことをしたクセに、自分は拷問されたくないってか。調子こきやがって。


「では、話して頂きましょう」


 だが、イオナ姫の冷えた笑顔を見て、俺もアミロの野郎も背筋に凍てつくものを感じるのだった。姫様、怖いよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ