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第8話 誘拐犯を探せ?

 無事にフィオナ姫を連れ帰った先は、やはりアークマイルド王国の王城だった。道理で窓から見えた景色が低かったはずだ。


「それでハルト殿は、フィオナがデコピン殿に思いを寄せていることにつけこんで、さんざん触りまくったと。そういうことですね?」

「い、いえ、触りまくったのではなく」


「何度も抱きしめられて、胸やお尻まで……」


 触ってねえって。


 城に戻って、まずフィオナ姫が姉のイオナ姫から聞かされたのは、勇者デコピンの死と俺の正体だった。いくら見た目は同じでも、中身が違うとなれば話は別。俺は恋愛対象から、好きな人の体を乗っ取った憎い相手に成り下がってしまったのである。


「確かに黙ってたことは謝りますけど、あの場合は仕方なかったというか……」

「私はデコピン様が来て下さったと思っておりましたのに、中身は別人だったなんて!」

「でもフィオナ姫様、考えようによっては本当に仕方なかったのではないでしょうか」


 お、エリスさん、今度こそ助け船ありがとうございます。


「勇者デコピン様はすでに殺されていたといいますし、あのままではフィオナ姫様はオークに食べられてしまっていたわけですから」

「デコピン様のいない世界でなんて、生きていても何の希望もありません!」


 デコピン、お前本当にこのフィオナ姫に想われてたのな。ちょっと羨ましいよ。しかし、生きる希望までなくなった、というのはよくないと思う。まだ若いんだから。


 若いと言えば、この人たちはいくつなんだろう。女性に年齢を聞くのは失礼だと言うし、ここは彼女たちのステータスでも覗いてみるか。


 そうして見てみると、まずイオナ姫は16歳、フィオナ姫は15歳というのが分かった。ついでにアリアさんは18歳、エリスさんは15歳のようだ。ちなみに、デコピンは俺と同じ17歳だったから、聞かれたらそのまま答えればいいだろう。


 ところで胸の大きさだが、フィオナ姫とエリスさんは2人ともすでにEカップだった。その年でどんだけ成長してるんだよ。ちなみにイオナ姫はA、アリアさんはBだったよ。


「1つ聞きたいんですけど、フィオナ姫はどうやってオークに(さら)われたんですか?」

「どうやって、と言われますと?」

「いや、だってここってお城ですよね? 普通に考えれば警備も厳重だろうし、ましてお姫様なわけですから」


 しかも、その前にはイオナ姫だって攫われてるのだ。一層警戒するのが当然ではないだろうか。


「そう、それです!」

「び、びっくりした……」

「いきなり魔法で転移させられたのです」

「魔法で?」


「転移魔法は大変高度なものです。城内でも使えるのは宮廷魔導師のみ。王国内に()いては老魔導師マンション・サザールが唯一の使い手でしたが、彼は10年ほど前に亡くなっております。当然、オークの中に使える者はおりません」


 フィオナ姫の言葉に、イオナ姫が頷きながら続いた。


「では、その宮廷魔導師さんが怪しいのでは?」

「いえ。彼は常にこの城を護る結界を張っています。それほど規模の大きな結界ですと、維持しながらの転移魔法は不可能と言わざるを得ません」


「一時的に結界を解くとかは無理なんですか?」

「そのようなことをすれば、エリスが気付きます」

「エリスさんには魔法感知能力が?」

「いえ、あの……結界が見えるというか、感じるというか……」


 なるほど、そういう能力もあるのか。道理でエリスさんのような若い女の子が、一国のお姫様の(そば)に仕えているわけだ。


「しかしそれだと妙ですね。転移魔法を使える人がいないはずなのに、フィオナ姫は転移させられた」

「ええ、ですから物質転移を使ったのではないかと考えております」


「物質転移?」


「転移魔法は術者本人と、術者に触れている人や物を転移させます。ですが物質転移は、比較的小さな物をある地点からある地点へと移動させることが出来る魔法です」


 転移魔法という点では2つの魔法は同種なのだが、決定的な違いがあるという。物質転移はまず第一に、転移させる対象が術者の目に見えていること。次に転移先は実際に術者が訪れたことがある場所に限られる、ということだった。そんなわけで、同種の魔法でありながら、2つは呼び分けられているのだ。


 また、物質転移は制約がある分、転移魔法より難易度は下がるらしい。それでも、高難度の魔法であることに違いはないそうだ。そしてイオナ姫が最初に言った通り、物質転移は本来、小物などを遠隔地へ送る魔法である。人を転移させるなど、聞いたことがないと言っていた。


「しかし実際に使われたのは、話を聞く限りだと、その物質転移としか考えられませんね」

「一体誰が……」

「そう言えば私が捕まった時に、オークが話していたのを耳にしました。高い依頼料を払っただけのことはあったと」

「なるほど、犯人はオークの依頼を受けてフィオナ姫を誘拐したわけですね」


 オーク・ザ・ラットが治めていたワカバ村は俺が滅ぼした。しかし安心はしていられない。一度は身代金を支払っているのだから、依頼主がいなくなったくらいで諦めるとは思えないのである。


 ん? 待てよ。依頼主がいないということは、もしまた誘拐が成功すれば、身代金は犯人の独り占めということじゃないか。


「姫様、ちょっとこの件、俺に任せてもらえませんか?」

「はい? どうなさるおつもりですか?」

「俺に考えがあります」


 そう言うと俺は、フィオナ姫に向かって軽く笑いかけた。もちろん、相手にされずそっぽを向かれたけどね。トホホ。

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