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瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
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一方その頃。ラピスとセラのシスコン姉妹は。


いつものように指を絡めて手を繋ぎ、腕を組んで歩いていた。いつもの街ではないので、すれ違う人たちが奇異の目を向けてくる。

だが気にすることなく、むしろ見せつけるように歩く。わたしの妹は、わたくしの姉は、こんなに可愛いぞ、と。


歩きながら、セラがラピスに問いかける。先程感じた違和感のことだ。


「姉さま。さっきはなんで、カンナさまの誘いを断ったんですの? 多分ですけどカンナさま、普通にいい人ですわよ?」

「うん、わかってるよ。……でもね、あのままついていってたら、絶対いじられてた」

「……ああ」

「リリィの婚約者がわたしだって気づいてたっぽいしね。我ながら見事な危機回避だと思ってる」

「……リリィ義姉(ねえ)さま、ご愁傷さまですわ」


今頃カンナにいじられているであろうリリィを思って、彼女たちは心の中で手を合わせた。──今日は優しくしてあげよう。


気持ちを切り替えて食器を買いに行く。

道行くお姉さんに店の位置を訊いて、そちらへ向かう。そのお姉さんは、ほァ、とため息をついていつまでも姉妹を見ていた。


食器店にて。

底の浅い皿や深い皿などを、それぞれ4組ずつ買っていく。サクラ・コンゴー師匠は東の島国出身だと思われるので、茶碗とお碗に使えそうなものも買う。

普通に持てばかなり嵩張(かさば)る食器類だが、マジックバッグのお陰でなんの問題もない。マジックバッグ、ひいてはリリィ様々だった。


「時間余ったね。待ち合わせまで観光してよっか?」

「ですわね♪ さっき見た色とりどりの通りが面白そうでしたわ」

「……色とりどり(・・・・)通り(・・)

「拾わないでくださいまし!」


楽しくやり取りしながら歩みを進める。先程よりいくらか軽やかだ。


さっき見た色とりどりの──セラが怒るので言い換えよう、賑やかな通りに到着。

そこでは大道芸人が芸を披露していたり、吟遊詩人が自慢の美声を奮っていたり、珍しい動物を扱う商人が声を張り上げていたりと、一種の異空間と化していた。


ラピスとセラは目をキラキラさせて、通りに足を踏み入れる。


「おおォ! 凄い凄い! 見たことないものがいっぱい!」

「凄いですわ! 世界は広いって実感できますわね!」

「ね! ──ああ、でもリリィに申し訳ないなァ……」

「では帰りにまた寄りましょう。今度はリリィ義姉(ねえ)さまも一緒に」

「うん、そおだね。今はとりあえず楽しもうか♪」

「はい♪」


頷き合って、彼女たちは色々と見て回る。

見るもの聞くもの全てが珍しく、ついつい目移りしてしまう。アルマジロという動物を抱かせてもらったのだが、思いの外可愛く、別れるのが辛かった。


少し疲れたので、露店で買ったアイスクリームを食べながら、ベンチで休憩する。ラピスはバニラ、セラはチョコだ。


「楽しいねェ♪ お祭りみたいだよ」

「お祭り行ったことないですけどね」


じきにアイスも食べ終わり、すっくと立ち上がる。そろそろ待ち合わせの時間なのだ。

あっちだっけ? などと話しながら、手を繋いで歩く。その道中も珍しいもので溢れていたが、待ち合わせに遅れるわけにはいかないので、泣く泣くスルーした。


このまままっすぐ進めば待ち合わせ場所に着くのだが、問題が発生した。

人通りが多いのだ。中には当然男もいる。むしろ男のほうが多いくらいだ。


ラピスが男を苦手としていることをセラは知っているので、「姉さま。迂回して行きましょう」と提案する。

ラピスは「ごめんね。ありがとう」と言って、その提案を受け入れた。


少し戻って人がいない路地を曲がる。

──その時だった。


──どん──


という音がして、ラピスが少しよろけた。次いでドサッと、なにかが──否、誰かが倒れる音が聞こえる。目の前には尻もちをつく少女。ラピスとセラが曲がった拍子に、ぶつかって倒れてしまったらしい。


「! ごめん! だいじょうぶ?」


ラピスはすかさず駆け寄り、少女を起こしてあげる。パンパンとお尻についた土を落として、怪我をしていないかチェックする。

相手が女性であれば物怖じしないラピスだった。


「本当にごめんね。どこか痛いところはない?」

「うむ、大過ない。(わらわ)こそ悪かったな、少女よ。余所見をしとったようじゃ」


ぽかん……と固まる。ラピスも、セラも。

ギャップが凄いのだ。


少女の年齢は、見た目12~13歳。身長はホルンより低く、140前後だろう。人形のように整った造形をしている。

髪は綺麗なピンク──いや、桜色といったほうが近い。その髪を膝裏まで伸ばしていた。


このような少女が時代錯誤な言葉を使う。……違和感が半端じゃなかった。


だが、初対面の少女の言葉遣いにツッコむ程、ラピスもセラも礼儀知らずではない。なにかの物語に出てくるキャラクターの真似(まね)でもしているのだろうと、自らを納得させた。


ふとそこで、辺りを見回して、少女以外誰もいないことに気づく。

そう。当然いるはずの、少女の保護者が見当たらないのだ。

姉妹は目線を少女に合わせるために、若干(かが)んで問いかけた。


「お嬢ちゃん。お母さんかお父さんは?」

「ひょっとして迷子ですの?」

「……お嬢ちゃんではない。(わらわ)にはサ──。……ダイヤという名前があるのじゃ」

「わかった、ダイヤちゃんね。それで、お母さんかお父さんはどこかにいるの?」


再度のラピスの問いかけに、ダイヤと名乗った少女は首を振る。


「いや、今日は(わらわ)一人じゃ。じゃが探している者がおっての。なかなか会えずに難儀しておったんじゃ」

「探してる人ですの?」

「うむ。昨日から、懐かしい“気”を感じてな」


ラピスとセラの中で、ダイヤがなにかのキャラクターの真似をしている可能性が高まった。……“気”って……。

だが人探しというなら、リリィに手伝ってもらえば一発だろう。そう思ってラピスは先を促す。


「ヘェ、そおなんだ。だったらさ、わたしの知り合いが人探しのプロだから、手伝ってもらおうか」

「おお! それはありがたいのじゃ。すまんが頼めるかの?」

「うん、任せて」


ラピスはダイヤの右手を取る。同時に、セラはダイヤの左手を取った。

二人に手を繋がれて、ダイヤは楽しそうに笑う。こういうところは子供だな、とラピスとセラは思った。


「そおいえば、わたしたちはまだ名乗ってなかったね。わたしはラピスだよ」

「わたくしはセラですわ」

「ラピスにセラじゃな。うむ、憶えたぞ」


ダイヤを退屈させないように、色々な話をしながら歩く。彼女が特に興味を抱いたのはラピスの好きな人の話で、根掘り葉掘り訊いてくる。

デートはしたのか? キスはしたのか? どんなところが好きなのか? 結婚するつもりなのか? その全てに、ラピスは律儀に答える。時折、セラも補足をした。

このくらいの年齢の子は偏見がなくていいな、と、ついつい口が軽くなってしまった。


惚気(のろけ)話を聞いて、ダイヤはうんうんと頷く。


「うむ、いいものじゃな。人の恋愛とゆうのは」

「あはは。こんな話でよければいくらでもするよ」

「姉を褒められるのは悪い気分ではありませんからね」


と、そこで待ち合わせ場所が見えてきた。既にリリィは待っていた。


「ダイヤちゃん、見える? あの人がわたしの彼女だよ」

「ほお。美人じゃな」

「でしょ? ──おーい、リリィ!」


空いている手を振って、ラピスは笑顔でリリィを呼ぶ。彼女もこちらに気づき、微笑みを浮かべて手を振ってくる。

ラピスは嬉しくなって、歩みを早めたくなったが、ダイヤがいるため自重する。


距離が縮まり、リリィの顔がはっきり見えてくる。彼女のほうもこちらをよく見えるようになり、ラピスとセラに挟まれているダイヤに気づいた。

──そして、驚愕に目を見開いた。


「師匠!」

「「え?」」


リリィはダイヤを見て、確かにそう言った。

姉妹は今自分が手を繋いでいる少女を、反射的に見る。桜色の髪の少女は

「かかっ」と笑った。


「久しぶりじゃな。元気そうでなによりじゃ、リリィよ」

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