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瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
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ところ変わってラピスたち。飛行機の中にて。


二人組で向き合って、片方が片方の顔を触る。頬、首、耳、鼻、(まぶた)、唇と構わず触り、赤面したら負けという謎の遊びをしていた。その際、触られる側は抵抗してはいけない。

なにが楽しいのか全くわからない。そしてルールもよくわからない。


一応追記しておくとこの遊び、意外と難しい。

普段から抱き合ったり、キスをしたりしている彼女たちだが、それと照れとは殆ど無関係なのだ。


例えばハグ。

これは互いの体温や柔らかさを堪能できるが、逆に言えばそれだけで、恥ずかしさよりは安心感を抱いたりするのだ。


例えばキス。

これは互いの気持ちが高まったときに自然と行う行為であり、そこには照れよりも大きな幸福感がある。


しかし、互いに見つめ合うこの体勢もそうだが、極端な接触面積の狭さ。これが照れに繋がっている。

触られる側はどうしたって、触られている部分に神経を集中させてしまう。それに伴うもどかしさ、抵抗してはいけないという縛りも、恥ずかしさを助長させる一因となっていた。


だがこの遊び、なにか彼女たちの琴線に触れるものがあったようで、かれこれ1時間はこの遊びを続けていた。暇なのである。


今勝負しているのはラピスとリリィ。リリィがラピスの顔を触る番だった。

右手でラピスの頬に触れ、さわさわと撫でる。この程度ではラピスは赤面せず、嬉しそうに微笑むばかりだ。


ここでリリィが攻勢に出る。ラピスの唇を重点的に攻めだしたのだ。

しかし、初めこそ照れがあったものの、この遊びを始めて1時間。彼女たちはある程度慣れてきていて、それはラピスも例外ではない。ただただ嬉しそうなオーラを増すだけで、赤面とは程遠かった。


──この時までは。


わずか1秒後、リリィが人差し指と中指を、ラピスの口腔内に侵入させたのだ。


「っ!?」


リリィは笑顔のまま、ラピスの舌を指で撫でる。得も言われぬ感覚が、彼女の全身を突き抜けた。

予想外の事態に、最早赤面どころではない。脳内はもうてんやわんやだ。


リリィの指を傷つけてはいけないので絶対に歯は閉じないのだが、それが却ってラピスを追い詰める。

止めるものがないのをいいことに、リリィは届く範囲の全てを撫でる。上の歯茎、下の歯茎、頬の内側、口蓋(こうがい)、舌、舌の裏。

ラピスの喉から「かひゅっ」という声が洩れた。


ようやく脳が現状を把握し、ラピスの顔が真っ赤に染まる。

彼女の負けが確定したので、リリィはそっと指を引き抜いた。


「ふふ。あたしの勝ちね♪」


妖艶に微笑んで、リリィは指を舐める。ラピスの顔が更に赤くなった。


「ズ、ズルいよリリィ! これはさすがに反則でしょ!」

「あら? そんなこと、誰も言ってないわよ?」

「いやズルいでしょ! ズルすぎるでしょ! セラもそお思うよね!?」

「ぅえ?」


セラに同意を求めると、彼女は指を2本立てて、それをラピスに向けた不自然な体勢で止まっていた。なにをしようとしたのかは明らかである。


「セラ!?」

「えっと……わたくしもやってみたいですわ」

「ええ……」


味方かと思っていたら普通に敵だった。げんなりと力が抜けてしまう。

しかしそこにリリィの待ったが入る。


「でも、次はラピスがセラを攻める番よ」

「まだ続けるの? これ」

「受けて立ちますわ!」


なんかセラが乗り気なので、これで終わりにしようと考えながらラピスは手を伸ばした。

頬を撫でる。満遍なくさすさすと。セラは当然、嬉しそうに微笑むだけだ。

次いで耳、首筋も順繰りに撫でていく。(くすぐ)ったそうにするも、赤面には至らない。


ここでラピスに悪戯心が芽生える。

『セラもやってみたいってゆってたし、わたしがやってもいいよね』と。


唇に手を近づけて、親指でなぞる。セラがなにかを期待するような顔になった。その期待に応えようと、ラピスは指を2本、唇を割って突っ込んだ。


このまま舌を撫でてやろうと、悪戯心全開で考えているラピス。だが次の瞬間、彼女が予想もしなかったことが起こった。


セラが、積極的にラピスの指を舐めてきたのである。


「っ!?」


驚いて、反射的に手を引こうとする。しかしその手はセラの両手にしっかりと掴まれていて、引くことはかなわなかった。


「セ、セラ! ぅく、ん、やっ!」


セラはチロチロとラピスの指を舐める。唇で挟み、まんべんなく、それこそ爪の間まで丹念に舐めた。いや、それはもう、『しゃぶった』や『ねぶった』と言ったほうが正確だ。


「や、やめ! ひぅ!」


擽ったさと気持ちよさから声が我慢できず、ラピスは色っぽく悶える。その顔は既に真っ赤に染まっていた。


ぷは、と言ってセラはラピスを解放する。とても満足そうだ。


「ふふ。わたくしの勝ちですわね♪」

「だからズルいでしょ! なんなのさっきっから!」


真っ赤な顔でラピスは叫んだ。怒っているというより、ただ恥ずかしいだけだろう。

ぷんすかと『怒る振り』を続けるラピスに、リリィとセラは微苦笑して謝る。


「ごめんなさい。ラピスがあまりにも可愛いから♡」

「すみません。姉さまが可愛すぎるのでつい♡」

「反省してないでしょ! もお!」


謝りかたが悪かったらしく、ラピスは『怒る振り』を続ける。

ラピスは引っ込みがつかなくなっているだけだと、彼女たちもわかっているのでうまく話の舵を取ることにした。


「ごめんごめん。どおしたら赦してくれる?」

「わたくしたち、なんでもしますわよ」


目を反らして、ラピスは囁く。


「…………キスしてくれたら……赦してあげる」


ズキューン! という音が、リリィとセラの胸から聞こえた気がした。


彼女たちは衝動のままに、ラピスに抱きつく。

まずはリリィが、彼女に唇に己の唇を重ねる。きっかり10秒後、リリィは唇を離す。

すると今度はセラが、優しくラピスの頭を包み、自らの唇を姉のそれに重ね合わせた。またしても10秒後、唇が離れる。


ラピスは恥ずかしそうにはにかむ。それに釣られて、リリィとセラもはにかんだ。


「え、えへへ。赦してあげる♡」

「ありがとう♡」

「ありがとうですわ♡」


…………この3人、喧嘩とかするのかなァ?

そんなことを思わせる一幕だった。

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