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瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
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大量の魚を持ち帰り、宿の女店主──女将(おかみ)に渡す。料理してほしい旨を伝えると、快く了承してくれた。

余った分は他のお客さんに振る舞っていいので宿代勉強してください、とラピスが頼むと、敵わないねェお客さんには、と言って、最初に払った額より少し多目に返金してくれた。持ち帰った魚が高級魚ばかりだったからだろう。

女性相手なら、ずば抜けたコミュ力を発揮するラピスのファインプレーと言えよう。


元とはいえ、王女が値切るのってどおなの? とリリィは思ったが、お金を受け取ってほくほく顔のラピスが可愛いので、気にしないことにした。可愛いは正義だ。


夕飯まで若干時間が余ったので、部屋の風呂に入ることにする。

3人で入るには狭すぎるので、交代で入ると決めた。最初に入るのはラピスだ。

なのに──


「ちょ! 順番ってゆったじゃん! なんで入ってくるの!?」

「いいからいいから♪」

「いいからいいから、ですわ♪」


お約束のようにリリィとセラが突入する。なぜラピスはこの展開を予想できなかったのか……。


結局3人で入り、凄まじい密着度で互いの身体を洗い合う。前後から挟まれるような形で洗われて、ラピスは気絶しそうになった。


風呂から上がって。


「もう! なんであんなことするの!? 身体くっつけて洗うことないでしょ!?」

「え? ラピス怒ってる?」

「ご、ごめんなさいですわ」

「あ、違う違う! 怒ってるわけじゃないの。ただ──」


頬を染めてそっぽを向き、蚊の鳴くような声で一言──


「…………え、えっちな気分になっちゃうから……」


と言った。


「「………」」


リリィとセラも赤くなってそっぽを向く。

ラピスは首筋まで赤くしながらも続ける。


「……その……ほら……。……結婚するまでは……ダメだから……ううぅ……」


ラピスはもう泣きそうだ。

なんとかしなければと、リリィが口を開く。


「あの! ……ごめんね、ラピス。その、恥ずかしい思いさせちゃって……」


セラも追従する。


「わたくしも、ついつい悪ふざけが過ぎてしまいました。……ごめんなさいですわ」


軽く頭を下げるリリィとセラ。

それを見てラピスはおろおろと慌てる。


「や、違っ、こんな空気にするつもりじゃないの! もういいから! ほら! ご飯食べに行こ!」


やや空回り気味に言って、我先にと部屋を出た。

リリィとセラは、後で適当な理由をつけて、ラピスを独りにしてあげようと話してから、彼女を追いかけた。




夕飯は途轍(とてつ)もなく豪勢だった。

やはり、主にラピスが釣った魚が効いているのだろう。


ラピス所望の海老、リリィ希望の貝、セラリクエストの蟹も食卓に並び、3人ともご満悦だ。


いつもの調子でリリィが食べるので、ちょっとは遠慮しようよとラピスが窘める。そこに女将がやって来て、遠慮は要らないと言ってくれた。

その言葉に従いリリィは食べた。

食べ終わって部屋に戻ろうとすると、女将が、あれしか食べないのかい? と朗らかに笑って訊いてきた。

敵わないな、と彼女たちは思った。




「リリィさァ」

「ん?」


3つもベッドがあるのに1つのベッドに集まって、3人でくっついてイチャイチャしていると、不意にラピスが恋人の名を呼んだ。

リリィは続きを待つ。


「精神年齢幼くない?」

「な、なによ? いきなり」


いきなりの展開に面食らうリリィ。


「そういえばリリィ義姉(ねえ)さまっていくつですの? あ、わたくしは18ですわ」


セラがリリィに質問する。歳を訊くのは失礼と思って、先に自分の年齢を言うところに、育ちのよさを感じる。


「あら? ゆってなかったかしら? あたしは──」

「待って!」


ラピスのストップがかかった。

そして悪戯っぽく笑って、人差し指を立てる。


「問題だよ、セラ。ずばり、リリィは何歳でしょうか?」

「えっ?」


突然の問題に戸惑うセラ。

それを見てリリィは微笑む。ラピスと初めて逢ったときのことを思い出したのだ。

ラピスも同じことを思っていたのか、リリィと目を合わせて微笑んだ。


セラは未だに悩んでいる。


「……んー。どれだけ考えても、見た目以外に判断材料はありませんわね。20歳でいかがですの?」

「残念はずれ♪ もっと上だよ」


ラピスは笑って否定する。凄く楽しそうだ。


「え? む、むゥ。あんまり上にゆうと失礼ですものね。でも思い切って、25歳ですわ」

「残念。もっと上」


ラピスはおかしくてたまらなくなる。セラの答え、及び思考は、過去の自分が通った道と全く同じなのだ。

次にセラは降参するはず、とラピスは考える。


「あぅ、すみません。降参ですわ」


我慢できなくなって、ラピスは笑い転げた。それを不思議そうに見るセラ。

ラピスの代わりにリリィが解説する。


「ふふ、ごめんなさいね。セラちゃんの反応、出会った当初のラピスと全く同じだったから」

「はあ、流石は姉妹、といったところですわね。で、答えはいくつですの?」


リリィは笑って答える。


「あたしは6332歳よ♪」

「……………ふえ?」

「魔女は長生きなの。以前(まえ)に話したことあったでしょ?」


セラはぎぎぎとラピスの方を向く。ようやく笑いが治まった姉は、意味を察して本当だと頷いた。


「ええええええ!?」

「おお、セラの驚く姿、なかなかレアだよ」

「本当ね。初めて空飛ぶ絨毯を見せたときも、そこまで驚いてなかったし」

「それはわたしもだよ」

「そうだったわね」


二人で話しながら、セラの復活を待つ。

復活したセラは、手始めにリリィに本当かと詰め寄った。


「本当よ。証明はできないけどね」

「そ、そうですの。……魔女って、結婚しない限りは長生きじゃないと、勘違いしてましたわ」

「あー、あのときの言い方だと、そおゆう風にも受け取れるわね。ごめんね」

「いえいえ。そお思い込んでたわたくしが悪いんですわ」


そう言って笑うセラに、ラピスが寝転んだまま言う。


「偏見、先入観、固定観念は敵だからね」

「どおしましたの? 姉さま。それっぽいことをいきなり言い出して」

「それっぽいことをいきなり言い出したくなったから」

「そんな姉さまも可愛いですわ♪」


そんな雑な理由でも姉を褒めるセラ。

最早このシスコンを止める(すべ)はなにもない。


「じゃなくて、リリィが幼いって話だよ。なんで?」

「なんで……って言われても……」


リリィは頬に手を当てて考える。そんな何気ない仕種にさえ、ラピスは見蕩(みと)れた。


「んー。容姿に精神が引っ張られてるのかしら? 考えたこともないからわからないけど」

「ふぅん。じゃあわたしたちが結婚して、わたしが500歳とかになっても、今と同じ感じなのかな?」

「500歳のわたくし……想像もできませんわね」


リリィはふふと笑って、思いを馳せる。


「そおね。そおだといいわね」


ラピスとセラはリリィを見る。


「100年経っても、1000年経っても、今と同じように、3人で仲よく生きていけたらいいわね」


リリィは微笑み、つられてラピスとセラも微笑む。


「そおだね。ずっと幸せだといいね♪」

「末永くお願いいたしますわ♪」


幸せオーラ全開で、彼女たちは抱き合ってキスをした。




もう寝ようかな、とラピスが布団に入ったところで──


「あ、ラピス。あたしセラちゃんとお話があるから、ちょっと席を外すわね」

「先に寝てて構いませんわよ」

「? ……わたしは聞かないほうがいい話?」


少し寂しそうにラピスは訊く。

口元まで布団を抱き上げ、上目遣い。

その愛くるしさに、リリィとセラはクラっときた。


「そおゆうわけじゃないけど、まずはあたしたちだけで話したいの。ダメかしら?」

「んーん。わがまま言ってごめん。……行ってらっしゃい」

「行ってきますわ」


手を振って二人を見送るラピス。

部屋を出る直前、リリィとセラは言った。


「それから、あたしたち、1時間は絶対に戻ってこないから♡」

「1時間ですわよ、姉さま。……ではごゆっくり♡」

「!! リリィ! セラ!」


瞬間的に意味を察したラピスは、真っ赤になって怒鳴った。リリィたちは逃げるようにドアを閉め鍵も閉める。

その音を聞いてラピスははァ、とため息をつく。


窓が開いていないことを確認して、さっきまでリリィがいたところに腰を下ろす。頬をほんのり染めて、太ももをこすり合わせる。


(おもむろ)にぱんつを脱いで寝転がる。そしてとうとう、彼女の右手が胸部に、左手が下腹部に伸びた。


「──ぁん♡」


そこはじんわりと湿っていた。


「リリィ……♡ セラァ……♡」


甘い声が洩れる。

大好きな人たちを想って、彼女は自分を慰めた。

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