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出てきた料理を半分程食べたところで、魔女たちは自分たちも一品持ってきていることを思い出した。
「出してもよいかの?」
「もちろんです」
サクラの確認にリリィが許可を出し、魔女勢はマジックバッグからお手製の料理を取り出した。
サクラは団子、アイリスは天ぷら、エリカはビーフストロガノフ、コスモスはロコモコ、シオンはエビチリ、ダリアはビビンバ、ネリネはお好み焼き、ルドベキアは焼きそば、プルメリアは鶏のから揚げ、ベロニカは各種スープ、ルピナスはカレー。まとまりがなく、テーブルの上はしっちゃかめっちゃかだ。
「リリィはなにも用意しておらんのかの?」
「……いじわるゆわないでください」
「かかっ、すまんな。練習中であることは知っておるでの。精進するんじゃぞ」
「……頑張ります」
師匠の前ではリリィも形なしだ。若干ショボくれながら、アイリスが持ってきた天ぷらに箸を伸ばした。
テーブルの上が賑やかになり、更に箸が進む。だがここで、一同は思わぬ落とし穴にぶち当たった。
より正確に言うならば、リリィ、アイリス、サクラの3人を筆頭に、問題にぶち当たった。
カフェの料理だけでは感じなかった物足りなさ。魔女たちの料理が足されたからこそ感じる物足りなさ。それこそ──
「──…ご飯が食べたいわ」
「──…米が欲しいな」
「──…米が足りんのじゃ」
圧倒的な米不足。
コスモスとダリア、それにルピナスは持ってきた料理の関係上、多少の白米も持っているのだが、それでは充分な量足り得ない。
しかし彼女らを責めるのも酷だろう。それぞれが持ち寄る料理はたくさんあるもののうちの1つに過ぎない。それだけを食べて腹をくちくさせようとする人物の想定などしないだろう。
まァ美味しいので我慢するか、と3人はため息をつく。そんな彼女たちをチラッと見て、銀髪の姉妹はニヤリと笑った。
ラピセラは無言で席を立つ。示し合わせたわけでもないのにタイミングはばっちりだ。
そしてそろそろと厨房のほうへ歩いていき──大きな土鍋を1つずつ持って帰ってきた。
その土鍋からは嗅ぎ慣れたいい香りが漂ってくる。まさか! という思いでリリィはラピスを見た。
「へっへー♪ こおなるってわかってたからお米炊いといたよ」
「愛してるわラピス♡」
安い愛だった。
「ありがとうラピスさん。セラフィさん」
「とりあえず1升炊きましたわ。足りなければ追加もできますわよ?」
「追加を頼むのじゃ。コスモスとネリネもよう食べるでの」
「了解ですわ」
テーブルの真ん中にどん! と土鍋を置いて蓋を取る。もうもうと立ちこめる湯気と一緒に、えもいわれぬ香りが拡散した。
「じゃあ追加炊いてくるけど……同じ量でいいの?」
「ええ。お願い」
「わたくしたちの分も残しといてくださいましね?」
不安だったので一応釘を刺しておく。リリィたちの目の輝きを見る限りそれでもまだ不安だったので、ホルンにアイコンタクトで頼んでおいた。「任せるッス!」と力強い返事が返ってきたのでだいじょうぶだろう。
ラピスとセラは再び厨房へ。ウィーアたちにも教えるべく、米を炊きにいった。
リリィたち3人はもうご飯に夢中だ。手近な皿にこれでもか! とご飯を盛りつけ、ハンバーグやらから揚げやらをおかずにむさぼり食っている。
3人同時に「むふー♪」とだらしない声が洩れた。
そんな光景を見せられたら他の面々も食べたくなってくる。米に馴染みのないエリカやプルメリアですらそうだった。
なので各々が少し、また少しとご飯をよそっていく。気づけばご飯は残りわずか。ホルンが止める間もない速攻劇だった。
そこに折しもラピスとセラがやって来てしまう。さァ自分たちもご飯を食べようとしゃもじを持ったところで、二人の動きが止まった。付随して周りの動きも止まった。
たっぷり10秒程静止して、ばっ! と魔女たちを睨む。全員がすぐさま目を逸らした。……『ご飯が乗った皿』を片手に。
ラピスはニコーと笑って──思いっきり怒鳴った。
「残しといてってゆったじゃん! なんで食べちゃうの!」
一同はホルンを除いた全員が首を竦める。
姉の影に隠れてこそいるものの、セラも相当怒っている。食べ物の恨みは恐ろしいのだ。
「の、のうラピスよ。また30分もすれば炊き上がるのじゃし、そこまで怒らんでも──」
「………………」
「………………」
「ご、ごめんなさいなのじゃ……」
ときに無言はなによりも雄弁だ。
ラピスとセラにニコニコと見つめられたサクラは早々に音を上げた。
連鎖するように全員で謝っていく。止められなかったホルンも、ラピス至上主義ゆえに手を出さなかったルピナスも同様だ。
結果として二人の機嫌を直すために、リリィが身を切って、夜に恥ずかしい服を着る約束をしてその場を治めた。
怒り心頭な二人を鎮める見事な手管に、魔女たちはリリィへの尊敬を深める。……かと思いきやそうではなく、人前にもかかわらず『恥ずかしい服を着る』と言い切ってしまうバカップル加減に、よくわからない尊敬を確かなものにするのだった。
「約束したからね♡」
「約束ですわよ♡」
「ええ、約束よ♡」
3人を止められる者など、どこにもいない。




