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個室にて。
ラピスを真ん中にしてイチャイチャと過ごす。
人目がないのをいいことに、キスは当たり前。服の隙間に手を突っ込んで、「やん♡」やら「きゃ♡」やら、甘ったるい声を出させたりもしている。
いくら気心知れた空間とはいえ限度がある。少しは自重したほうがいい。
リリィは10分に及ぶ長いキスをしていて、セラは膝枕を装いバレないようにスカートをめくっている。ラピスはされるがままになっているが、それでも嬉しくて楽しかった。
しばらくそうしていると、俄に外が騒がしくなってきた。ガヤガヤとどよめくような声が聞こえてくる。
ラピスとセラはなにかあったのかな? と思うだけだったが、リリィは誰が来たのかなんとなくわかった。
程なくしてカフェの扉がノックされる。ちょうど手の空いていたセラが、
「はいはい、今行きますわ」と対応しにいった。
扉を開けて、斯くしてそこにいたのは──
「ごきげんよう。この度はお招きいただきまして、誠にありがとうございます。ご招待に預り、まかりこしてございます」
どこかのご令嬢が着るようなレモン色のドレス。つばの広い帽子。飾りのついた白い日傘。
外見は23~24歳くらい。オレンジ色のふわふわした髪に、女性らしい起伏に富んだスタイル。
そしてこのセラを超える馬鹿丁寧な喋り方。1度会えば忘れられるはずもなかった。
「ようこそいらっしゃいました、カンナさま」
「いらっしゃい、カンナ」
「わざわざ来てくれてありがとう、カンナさん」
ドレスを着た美女──カンナは口元に手を遣って艶然と微笑む。そしてセラに案内されて、ドレスでも座り安い席についた。
「ありがとうございます。流石にお詳しいですね」
「ふふ、一時期ここで働いてましたから。案内はお手のものですわ♪」
セラは笑ってそのまま近くの席につく。ラピスとリリィも個室からそちらへ移動した。
「あのざわめきはカンナさんが原因だったんだね」
「みたいね。そんな格好で出歩けば、そりゃ騒がしくもなるわ」
「……わたくしめも普通の服を着るべきでしょうか?」
「着たら着たで違和感が凄そうですわね」
カンナのイメージはドレスと日傘で固定されてしまっている。今さら普通の服を着られても、周りが困惑するだろう。
結局、カンナはそのままでいいという結論に落ち着いた。彼女も6000年以上このファッションを貫いているので、今更変えろと言われなくてホッとしていた。
そんな話をしていてもまだ時間は余っている。カンナは待ち合わせの時間よりも、大分早めに着かないと安心できない性分なのだ。
なので他のメンバーが来るまでの間、4人でトークする。聴きたい話はもっぱら、一角馬の保護のことだ。
「あの聖域っぽいところの保護って、カンナさんがやってくれてるんだよね?」
「聖域とは言いえて妙でございますね。その通りでございます」
「もしやカンナさまって、動物好きですの?」
「! ……リリィさま。喋りましたか?」
「いいえ。喋ってないわよ」
「えっと……カンナさん、動物好きなの隠してたの? なんで?」
「…………お二人の前ではミステリアスな女でいたかったのでございます……」
「いえ……動物好きだとわかってミステリアス度が上がった気もしますが……」
女性らしさのお手本のような出で立ちで、ドレスや日傘をまとうご令嬢スタイルで、礼儀正しい言葉遣いで、動物好き。しかしどこに住んでいるかもわからなければ、魔法の実力も年齢もわからない。それを言ってしまえば殆どの魔女がそうなのだが、そこそこ仲よくなったのにわからないということは、セラの言う通りミステリアス度が高い証左だろう。
動物好きと判明したので、銀髪の姉妹は更に親近感が湧いてきた。
犬派か猫派かという定番の質問から、好きな幻獣というマニアックな質問まで、ラピセラは距離を詰めていく。
もうバレてしまったのだからと開き直り、カンナは快く答える。意外な程に好みが合い、話はかなり盛り上がった。
「え!? じゃあカンナさん家、牧場みたいな感じなの!?」
「牧場より広いですね。山3つ程がわたくしめの私有地でございます。ちゃんと国から購入したものでございますよ?」
「ふわー、行ってみたいですわ! 心行くまで動物と触れ合っていたいですわ!」
「……仕方ありませんね。いずれ招待いたします」
「本当!? ありがとうカンナさん!」
「ありがとうですわ! カンナさま!」
ラピスの尋常ではないコミュ力によって、遊びに行く許可を取りつけた。
リリィでさえ彼女の家の場所は知らない──というよりサクラ以外には秘匿しているので、これにはかなり驚いた。
しかし遊びに行くとなると軽い懸念もある。まさか起こるとは思わないが、それでも万が一に備えて忠告しておくことにした。
「遊びに行くのは構わないけど、カンナはちゃんと服着といてね。家では全裸とか言わずに」
「もちろんでございます。わたくしめもそこまで常識知らずではございません」
軽い気持ちで忠告したのだが、その直後、ラピセラに左右を挟まれるリリィ。
コーヒーを飲もうとした腕を掴まれて、「なに?」と二人の顔を見た。
「……リリィさ、なんでカンナさんが家では全裸だって知ってるの?」
「……見たことありますの?」
「! や、違! あれはたまたま──」
「たまたまでも見たの!?」
「ちゃんと目は逸らしましたのよね!? でないと浮気ですわよ!」
「もちろんすぐに逸らしたわよ! あたしはラピスとセラ一筋よ!」
「もう見ちゃダメだからね! カンナさんも、見せちゃダメだよ!」
「……申し訳ございませんでした」
少し理不尽なものを感じたが、カンナは謝る。大人なので、そうすれば丸く収まると知っているのだ。
なかなか世渡り上手なカンナだった。




