表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
4/433

4

しばし呆然としていたラピスだったが、ほどなくして正気を取り戻した。


「……本当?」

「ええ。魔法でも使ってみせましょうか?」


ラピスはコクリと頷く。

リリィは微笑んで、水差しに左手をかざした。

するとその手から不思議な光が飛び出し、水差しの周りを包んだ。その光が徐々に形を変え、なにやら文字のようなものを刻み、そして一際強く発光した。


「きゃっ!」


思わず目を瞑り、ラピスは悲鳴をあげてしまう。


「ふふ、ごめんなさい。でも魔法は成功したわよ。飲んでみて」


水差しを差し出されたので言われるがままに口にふくむ。

と、すぐに変化に気づいた。


「甘い!」

「でしょう? どお? あたしが魔女だって信じてくれた?」

「……はい。疑ってすみません」

「ふふ、いいのよ。それとこの水、甘いだけじゃなくて自己治癒力も高めてくれるから、たくさん飲んでね」

「はい。なにからなにまでありがとうございます」


礼を言って目礼する。自己治癒力を高めると聞いたので試しに身体を揺すってみると、先程より痛みが引いた気がした。

これなら自分で飲めそうだと水差しに手を伸ばす。

──そこで気づいた。


「……あの、リリィさん」

「ん? なにかしら?」

「わ、わたしの服は……?」

「ああ、それだったら申し訳ないけど捨てさせてもらったわ。とても衣服としての役割を果たせそうになかったし」

「う、うん。それはいいんですけど、その……今、わたし……」

「ああ! ご、ごめんなさい! すぐに持ってくるわ! そのままじゃ恥ずかしいものね」

「うう……。お、お願いします」


リリィが足早に去っていく。そこでようやくラピスはホッと息をついた。

一度気づいてしまうと気になって仕方がない。肌に直接毛布が当たって(くすぐ)ったかった。




少ししてリリィが戻ってきた。だが何故かその表情は浮かない。


「……お待たせ」

「いえ、だいじょうぶです。……どおしたんですか? 浮かない表情ですけど」


問うと彼女は表情を更に歪めて、深く頭を下げた。


「ごめん、ラピスちゃん! サイズが合うのがメイド服しかなかった!」

「メイド服を着れるんですか!?」

「……ふえ?」


思い切り謝るリリィに、しかしラピスは予想外の反応を返した。

思わずリリィは変な声が洩れる。


「わたし、以前(まえ)からメイド服着てみたいなって思ってたんです! でもそれは従者が着るものだから着ちゃダメって言われちゃって」

「へ、へぇ、誰に言われたの?」

「それは………………思い出せません」

「あー、そう都合よくはいかないわね。でもラピスちゃん、それなりに身分の高いほうみたいね」

「そう……かもしれませんね」


テンションの躁鬱が激しいが、それでも一歩前進した。そう思って気分を変える。


「じゃ、じゃあ着替えますので」

「ええ、手伝うわよ」

「うぅ、ですよね……。恥ずかしいですけど、お願いします」


リリィに手伝ってもらって、ラピスはなんとかメイド服を着た。

その際、色々なところを見られたり触られたりして、ラピスは顔を真っ赤に染めるのだった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ