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「にしてもびっくりしたわよ。ラピスちゃん、川辺に打ち上げられてたんだもの」
「え?」
初めて聞く情報に頭が混乱する。
「髪はボロボロドレスもズタズタ、怪我も結構酷くてね、最初は正直水死体かと思ったわ」
「そ、そんなにですか……」
「ええ。いやァ、この歳になると大抵のことでは驚かなくなるけど、あれは驚いたわね」
「この歳って……」
じろじろとリリィを見る。どう見ても20歳くらい。もしかすると10代かもしれない。どんなにいってても20代後半だろう。
「リリィさん、若いじゃないですか」
「お、嬉しいことゆってくれるわね。じゃあ問題! あたしは何歳でしょうか?」
唐突に始まったクイズにラピスは考える。が、判断材料など見た目しかないのだから見たままを素直に言った。
「20歳くらいですか?」
「ふふ、そんなに若くないわよ。もっと上」
「えっ?」
外れてしまった。しかしリリィは答えを言う気はないらしく、ニヤニヤとこちらを眺めている。なら次を答えるしかない。しかし、高く答えるとあまりにも失礼なのでここは慎重に──
「25歳、でどうでしょう?」
「だからそんなに若くないわよ。もっと、もォっと上よ」
「あう。……わかりません、降参です」
「んー、当てて欲しいんだけどなァ……。じゃあヒント! ラピスちゃんの答えは桁が二つ違います!」
「桁……。………。…………桁!?」
予想外のことすぎて、一瞬何を言っているのかわからなかった。
言葉を聞き、咀嚼し、理解する。これだけのことに異常に時間がかかった。
それよりも、だ。
「え、じゃあリリィさん、千歳代ってことになりますけど!?」
「残念、六千歳代よ」
六千歳代なんて言葉、初めて聞いた。
「ここまで来たらもう言っちゃうわね。あたしは今年で6332歳よ♪」
「………」
「はい、嘘だと思ってるあなたに、あたしの職業に関するスペシャルヒント♪」
そう言って彼女は徐にベッドの下に手を伸ばし、そこにあった物を頭に被った。
それは真っ黒な帽子だった。つばの部分がやたらと広く、中央が尖っている。一言で表すなら、そう──
「──魔女?」
「正・解♪」
リリィは艶然と微笑んだ。