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瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
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戻ってきたラピスだが、その格好はいつものメイド服に伊達眼鏡(だてめがね)をかけただけだった。新鮮味がまるでない。


「お待たせ」

「ラピス、眼鏡似合うわね。ぎゅってしていい?」

「普段より凛とした姉さま、素敵ですわ♪」


それでもリリィとセラには関係ないようで、(しき)りにラピスを褒めていた。

恥ずかしげに頬を染めるラピス。しかし嫌がっているわけではない証拠に、口角が少し上がっていた。


一通りラピスを愛でてから、リリィは空飛ぶ絨毯を出した。それを見て、ラピスは憂鬱そうに表情を曇らせる。


「………。………。………」


泣きそうな表情でリリィを見つめるラピス。

それを見て苦笑したリリィ。腕を広げて恋人を受け入れる体勢を取った。

ラピスは無言で恋人に抱きつく。毎度お馴染みのフォーメーションになった。

二人はそのまま絨毯に乗り込み、セラも後に続いた。


「……姉さま。高いところダメなんですの?」

「…………わるい?」


普段のラピスからは考えられない程低い声が出た。


「! わ、悪くありませんわ! 可愛いです!」


実際、両手両脚でリリィに抱きつき、舌足らずに喋る泣きそうなラピスは、ちょっと危ないくらいに可愛かった。

怖がっている姿を可愛いと言われても嬉しくないラピスは、憮然としながら抱きつく力を強めた。


「じゃ、飛ぶわよ。しっかり掴まってね」

「わかりましたわ」

「…………ん」


絨毯は飛び上がり、あっという間に樹の高さを越え、地上100メートルくらいに達した。


「…………いつもよりたかくない?」

「ラピスは毎回それゆうわね。いつもと同じよ」

「…………うそだったらおこるからね」


嘘だった。

今日はラピスが墜ちたであろう滝を越えなくてはいけないので、いつもの買い物よりも50メートルは高く飛んでいた。軽く倍である。

だがこれ以上ラピスが怖がらないように、怒られるリスクを承知で優しい嘘をついたのだった。


「リリィ義姉(ねえ)さま。城にはおおよそどのくらいで到着するでしょうか?」

「んー、30~40分ってとこかしら? いつもの買い物よりは短いからね、ラピス」

「…………ん。…………がんばる」


こくんと力なく頷いて、ラピスは黙り込んでしまう。こうなったら目的地に着くまで口を開かないことをリリィは経験上知っていたので、背中を(さす)るだけで話しかけることはしなかった。

それを見計らって、セラが声を発する。


「リリィ義姉(ねえ)さま。簡単に打ち合わせをしませんか?」

「いいわよ。でも、城に入って王と王妃に啖呵切って、ホルンちゃんを連れてとんずらするだけじゃないの?」

「言ってしまえばそうなんですけど、細かいところを詰めないと、拘束されたり追っ手を出されたりしますわよ?」

「その辺は、魔法でゴリ押しするから考えなくていいわ♪」

「…………リリィ義姉(ねえ)さま一人でパワーバランスが崩れますわね」

「ラピスのためだからね」


にこやかに笑うリリィだが、その裏にはラピスとラピスに係わる者以外はどうでもいいという本音が見え隠れしていた。

ラピスやセラ、友人の魔女アイリス、他にもよく行く街の住人など、知り合いには優しいリリィだが、決して聖人君子というわけではない。敵と判断すれば容赦はしないし、関係ない人間には基本的に無関心だ。

それは彼女が冷たいというわけではなく、人として当たり前のことだ。セラもそれは織り込み済みなので、特に何も言うことはなくスルーした。


「そういえばセラちゃん。ご両親とは仲悪いの? ラピスはなんか(ほの)めかす感じで嫌いって教えてくれたけど」

「両親ですかァ……。あのかたたちは多分、わたくしのことを好きですけど、わたくしは率直にゆって大嫌いですわね」

「なに? その(いびつ)な関係」

「わたくしは出来のいい娘を装っていたので、あのかたたちは自慢の娘だ、ってゆってくるんです。でも一方で、姉さまのことを出来損ないとか、政略結婚の道具とかゆうんですの。死ねばいいと思ってますわ」

「………。……たとえば、よ」

「はい?」

「たとえば、あたしが勢い余って、うっかり、意図せずに、偶然、王と王妃の頭を消し飛ばしたとしましょう」

「はい」

「……怒る?」

「いいえ。自分でゆうのも不快ですが、王族らしく、親子の情などわたくしたちにはございません。ガッツポーズを取ることはあるかもしれませんが、涙を流すことはないと断言致しますわ。姉さまも同じです」

「そお」

「でも欲を言えば、利き腕を消し飛ばすくらいで勘弁してほしいですわね。あんなのでも一応国のトップ。国がたち行かなくなります。無辜(むこ)の民が苦しむのは、わたくしの望むところではありませんもの」

「……そおね。考え足らずだったわ」


リリィはセラのことを見直した。

極論、姉以外はどうでもいいと考えている節があったので、少し危ういと心配していたのだ。


「いえいえ。姉さまのために怒ってくださって、嬉しく思いますわ」

「セラちゃん、ちゃんと考えてるのね。ただのシスコンだと思ってたわ」

「まあ! 失礼ですわね。ただの(・・・)、ではなく世界一の、でしてよ」

「そっちが失礼なの!?」


……やっぱり危うい……かも?

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