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瑠璃と百合と姫と魔女  作者: 山原くいな
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ほんの一瞬触れ合うだけのソフトキス。それを見せつけられたリリィは驚嘆していた。


「(へェ。姉妹でもキスってするのね)」


魔女は兄弟姉妹(きょうだい)を持たない。なので言葉の意味は知っていても、実際の関係性を知る者は(ほとん)どいなかった。

それはリリィも例外ではない。

本来であれば嫉妬するタイミングで、姉妹というフィルターがかかってしまい、目の前で展開された初めての光景に、姉妹はスキンシップでキスをするもの、という強い刷り込みができた。


唇を奪われたラピスはというと、目の焦点があっていない。

妹にいきなりキスをされ頭が混乱している。──というわけではない(・・・・・・・・・)


驚くべきことに、セラの唇が彼女に触れた瞬間、凄まじい量の情報が脳に流れ込んできたのだ。失われた彼女の記憶である。

それの処理に追われ、セラを抱いたまま棒立ちになるラピス。

1分程経ち、彼女の瞳が焦点を結んだ。

ラピスは優しく微笑んで、言った。


「……久しぶりだね、セラ(・・)

「!」


先程も言った言葉。だがその意味合いは大きく違っていた。

一度は止まった涙を再度溢れさせ、セラはより強く姉に抱きついた。


「姉さまっ、姉さまァ! 心配しましたわァ!」

「うん。ごめんね」


似たような会話を繰り返す。

それは姉妹が関係を取り戻すために、必要な儀式だった。


「あと、リリィはありがと。セラを連れてきてくれて」

「ふふ、当然のことをしただけよ」

「あ、それから、姉妹でキスするのは普通だから浮気とかじゃ……」

「わかってるわよ。安心して」


もちろんこの世界でも姉妹──兄弟姉妹(きょうだい)でキスをするのは一般的ではない。この姉妹のシスコンレベルがブッ飛んでいるだけだ。

シスコンの自覚はあっても、キスがおかしいとは思わないところが始末が悪い。

幸か不幸か、この場にごく普通の感性の持ち主はいなかったので、ツッコみは入らなかった。

だが、セラから別のツッコみが入る。


「浮気? どうゆうことですの?」


あ、という顔をする二人。先に立ち直ったのはラピスで、まァいっか、みたいな感じで説明を始めた。


「ゆってなかったね。わたしとリリィ、結婚を前提に付き合ってるんだよ」

「まあ、そうでしたの! リリィさまでしたら安心ですわね。わたくし、結婚式でスピーチしたいですわ」

「うん。わたしもセラなら安心だよ。リリィもそれでいい?」

「え、ええ。構わないけど……その前に1ついいかしら?」


困惑した様子で前置きするリリィに、ラピスは妹を抱いたまま頷いた。どうでもいいがこの姉妹、離れる様子が1ミリもない。


「えーと、まずわからないことが多すぎるのよ。記憶戻ったついでにラピス、一から順を追って説明してくれないかしら?」

「あ、そうだね。話せてないことも大分(だいぶ)あるし。ここらで一気に解決しておこうか」


皆でソファーに並んで座り、咳払いを1つ。ラピスは話し始めた。


「改めまして。──わたしはラピスラズリ・D・アレキサンドライト。一応、この国の第一王女だよ」

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