LP学園の果てしない夢
俺は、脳腫瘍によって現役生活にピリオドを打ったが、LP学園野球部監督として、新たな道を歩き始める事にした。
LP学園野球部は、休部状態だったので、当然、部員はゼロだ。
まずは、部員を集めなければならない。というわけで、各地の中学校を回る事にした。
巨人に入団する前は会社員だった経験が活きた。
中学校に行って、挨拶回りの日々だが、俺は人に頭を下げるのは苦にならない。
先生方も俺が訪問すると、ビックリしておられた。これでも、俺は巨人のエースナンバー18を背負った男だ。
関西のみならず、全国の中学校を回ってLP学園野球部を宣伝した。スカウトではなくて、あくまでも本人たちの意思でLP学園に来て欲しい。
部員が初めて集まる日、ドキドキしながらグラウンドで待っていた。果たして、入部希望者が来てくれるだろうか? もし、ゼロだったらどうしよう。今の若い生徒は、もちろんLP学園の黄金時代を知らない。大丈夫か?
グラウンドの真ん中で待っていると、大きな声が聞こえた。
「1年の山川です。野球部に入部希望しています。前田監督、よろしくお願いします!」
気合いが入りまくって、声が裏返っている男子が居た。
おぉ、LP学園野球部員の第1号誕生だ。
「こちらこそよろしく。一緒に甲子園を目指そう!」
山川とガッチリ握手をした。
コイツはピッチャーの手だな、それもかなりの強者の予感がするぞ。
山川は、礼儀正しくお辞儀をして、
「僕は、前田監督の指導を受けたくて、LP学園に入学しました。ポジションはピッチャーです。死ぬ気で監督についていきます!」
山川よ、熱いぜ。お前の熱さで、一段と俺は燃えるぜ。
燃えまくっていると、他にもグラウンドにダッシュしてくる野郎が8人いた。
「僕たちも居ます! 野球の情熱は誰にも負けません! 入部させて下さい」
こうして、9人の入部希望者が集まった。全員一年生だった。9人ピッタリでまさに全員野球だ。鍛え甲斐のある連中だな。
俺は、指導者の経験なくて、手探りからのスタートだ。最初は、ノックもヘタだった。
部員たちのレベルも高いとは言えなかった。しかし、コイツらは、とにかく熱かった。今時の若者はクールだと思っていたが、野球部員は火の玉のように熱くて、本気で甲子園を目指している。
エース候補の山川は、体の線は細いが特筆すべきボールを持っている。それは、フォークボールだ。山川のフォークは高校一年生と思えないほど、鋭かった。直球のスピードは速くないが、このフォークには驚かされた。
「僕は、前田監督のフォークボールに憧れているんです。暇さえあれば、指にボールを挟んで、投げるイメージを作っています」
コイツは良い事を言うぜ! 俺の全てを叩き込んでやる。
他の部員たちにもハードなメニューを課したが、みんな必死についてきた。今は、まだ強いチームではないが、必ず甲子園を狙えるチームになる事を信じていた。
「前田、LP学園の監督はどうだ?」
黒田と久しぶりに会った。
俺は、充実ぶりを伝えたんだ。
黒田は嬉しそうに、
「お前は、本当にタフな奴だよな。プロ野球を引退した時は心配したけど、今は新たな夢を見つけたんだな」
俺も嬉しくて、
「俺の中に流れる野球の血が騒ぎだすんだ。俺は、やっぱり野球から離れられないよ。LP学園を甲子園に導くまで俺は死なないよ」
黒田も応えてくれた。
「目が不自由な俺だけど、お前の姿が見える気がしているよ。俺だって、生き延びてみせるよ!」
黒田の言葉は、力強かった。
チーム結成以来、初めての練習試合が組まれた。相手は、強豪校でLP学園よりも格上だ。俺は、部員たちにゲキを飛ばした。
「結果は気にせず、気持ちで絶対に負けるな! お前たちには潜在能力があるんだ! 逃げずに立ち向かって、討ち死にしてこい」
山川は、得意のフォークボールで相手の強打者を攻め続けた。他の部員たちも、必死にボールを追いかけていた。
結果は負けたけど、全員120%を出していた。見事な討ち死にだった。
俺は、試合を見ながら思っていたんだ。
巨人で見た夢も良かったけど、LP学園の夢も果てしなく大きい。この夢があれば、俺は人生の道のりを歩いていける。
人生を賭けて、エースナンバーを背負い続けて歩いていくんだ!




