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エースナンバー  作者: 砂糖
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マウンド上で……

エースナンバー18を背負うシーズンが始まった。開幕投手は、菅山投手が指名された。しかし、DeNA打線に捕まってしまう。4番筒田選手にスリーランホームランを食らうなどで5失点。巨人は開幕戦を落とした。


第2戦の先発は俺だ。今年は、初の二桁勝利を狙っている。最初の登板で幸先よくスタートしたい。


「ジャイアンツのピッチャーは、前田、背番号18」

東京ドームにアナウンスされる。背番号18のアナウンスは最高だな。


さて、冷静に試合に入ろう。前日に巨人のエース菅山投手を攻略した打線だ。DeNA打線は例年強力だが、今年も要注意だ。特に筒田選手とドカベン香山には慎重にいかねばならない。


筒田選手は、昨日、菅山投手の直球をホームランしていた事もあり、俺は変化球で攻めていく。フォークボールでショートフライに仕留めた。今年の初対戦だが、手応えは悪くない。


ライバルの香山との対戦も楽しみにしていた。香山は、ますますパワーアップしており、今年はホームラン30本を目標にしていると、テレビで言っていた。


2軍時代から、お互いにしのぎを削ってきた。人間的にもいいヤツで、別チームだが、刺激を受けながらやってきた。一番打たれたくない打者だ。


キャッチャーのサインはインコース直球だ。初球から強気なリードだな。それだけ俺のボールを信用してくれている証拠だろう。


俺は、大きく振りかぶって腕を振った。よしっ、感触はイイぞ。指に掛かったボールが唸りを上げて、香山のインコースを突く!

香山もフルスイングで応えてきた。一塁線へのライナーが飛ぶ。僅かにファールだ。


スピードガン表示154キロの直球を捉えられた。流石だな、やっぱり香山はドカベンの異名に相応しい強打者だ。


次は、フォークボールを見逃されて、更にチェンジアップ、スライダーと揺さぶっていく。香山はしぶとい打者だ。なかなか打ち取れない。


次で8球目だ。キャッチャーのサインは、高めの直球だ。俺の威力なら高めで空振りを取れるという判断だ。


俺は深呼吸してから、投球動作に入る。この時、ほんの少しだけ頭に違和感があった。


構わず、全力で投げた。俺の渾身の直球は、自己最速記録更新の160キロを計測して、香山を空振り三振に抑えた!


キャッチャーからの返球を取った瞬間に強烈な頭痛に襲われた。文字通り、頭が割れそうなほどだった。

この試合の記憶はここまでだった……


意識が戻ったのは、病院のベッドの上だった。妻が、側に居てくれた。


あの試合で俺はマウンド上で倒れて、意識を失った。救急車が東京ドームの中まで入って、俺はそのまま運ばれたらしい。


実は、会社員をしながらプロを目指していた頃に、脳腫瘍が発覚していた。幸い良性だったが、激しい運動は控えるように言われていた。


一度は、プロ野球を諦めかけだが、それでも親友との約束を果たす為に、挑戦を続けたんだ。


もちろん、定期的な検査は欠かさなかったが、医師からは、

「今は、大丈夫でもこの先は分からないよ。もし、球場のマウンド上で倒れたら、命の保証はしないよ」

と言われてもいたんだ。


だから、心の片隅で恐怖と覚悟はあった。


ずっと診てくれている医師が、病室に来てくれた。

「前田さん、脳腫瘍が悪化しているよ。危ないところだったよ。もう少しで命を落とすところだったよ」


「でも、本当にマウンド倒れるなんて前田さんらしいかもね。君は、アツすぎる男だもんね」


俺は、苦笑いするしかなかった。

「激しい運動禁止って言われてたのに、忠告を無視して申し訳ありません」


医師は、笑った。

「前田さんが、プロ野球への夢を諦められない事は予想していたよ。だから、何かあったら全力でサポートできるようにずっと準備していたよ」


ここから医師は真剣に、

「でも、もうこれ以上はダメだよ。君は守るべき家族もいるんだから、命を大事にしてください。今度倒れたら、確実に命を無くすよ」


俺は頷くしかなかった。

「分かりました。これからは先生の言う事をちゃんと聞きます。よろしくお願いします」


医師と俺と球団で相談した結果は、受け入れたくないが、仕方ないものだった。


俺は、現役生活を終える事を決めた。


会社員をしながら、ガムシャラに夢を追いかけて、東京ドームのマウンド上で燃え尽きたんだ。

しかも、エースナンバー18を背負ってだ。


俺の野球人生に一点の悔いもない!


妻も納得してくれた。

「私は健一の夢を応援したかったけど、やっぱり心配だったよ。今まで本当に頑張ったよね。やっぱり、健一は世界の中で一番カッコイイ男だよ。エースナンバー18が似合っていたよ」


これからは、愛する妻の為に生きるんだ!

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