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エースナンバー  作者: 砂糖
48/55

レーザービーム

俺はイップスからの復活登板でDeNA戦を任された。


二回に入ると、主軸打者との対戦だ。4番筒田選手は、渾身の直球で仕留めた。しかし、次も怖い打者、宮沢選手だ。


慎重にアウトコースのスライダーから入るが、流石は去年の首位打者宮沢選手だ。上手く合わせて、右中間を破られた。


ワンアウト二塁で打席にドカベン香山が入る。お互いにライバル視している相手だ。他の打者に対しては、あまり意識し過ぎずに投げるつもりだ。しかし、コイツだけは違う。絶対に打たれたくない打者だ。


香山は、俺がイップスから一軍に復帰した時も喜んでくれた。そのお礼は、今ここで返す!

俺が復活した証拠を香山に見せてやるんだ。


香山は左打ちの強打者で筒田選手と同じだ。ツボにハマった時の長打力は筒田選手にも劣らないほどだ。

気をつけねばならない。


筒田選手には、フォークボールと直球で空振り三振に抑えたが、そのボールも当然ベンチから香山は見ていたはずだ。


キャッチャーのサインは初球、カーブだ。ボール気味に投げて、香山を誘ってみる。


ブン! バットの音がマウンドまで聞こえてきそうな豪快なスイングだ。

空振りを取れたが、少しでも間違ったらホームランを覚悟させられるスイングだな。


香山が打席を外して、俺を睨んできた。普段は温和な男だが、バットを持ったら鬼の形相に変わる。

俺は、冷静さを失わなかった。こんな時こそ、黒田の言葉どおり、投げるボールの音を聞く事に集中するんだ。


インコースは危険だ。アウトコースの直球を投げ込む。ボールからは良い音が聞こえできた。この音なら大丈夫だ!


ファールになって、ツーストライク追い込んだ。俺のボールは確実に香山を押している!


最後は、お化けフォークで勝負だ。

グローブの中でボールをしっかり挟む。あとは、腕をしっかり振るだけだ。


香山は体勢を崩しながらも、俺のフォークを拾ってきた。打球は、センター前に弾んだ。


やられた! 俺はホームベースのカバーに入る。


センターが突っ込んで、レーザービームを放った! すごいボールが返ってきた。ランナー宮沢選手とクロスプレーになった。


アウトじゃないのか? 俺は審判の判定を待った。


「セーフ!」

審判の判定は非情だ……


ここで、高橋由伸監督がリクエスト要求に出てきた。

俺は、マウンドで待っている。


審判が出てきた。結果は?

「アウト!」

ヤッター、審判は神様だ!


ここから俺は波に乗れた。

直球もよく走っていたので、変化球も活きた。


心配されたファーボールも大丈夫だ。今までは、ボールが先行したら気持ちがザワついたが、音を聞く事を覚えてからは、心配無用だ。


俺は、マウンドでボールの音以外は無になれる。ピンチになっても俺の心は静かな風が吹いている。


気がついたら、7回までしっかり投げ終えられた。充実感で一杯だ。


この試合は巨人が5対1で勝った。


久しぶりの一軍での勝利投手になれた。イップスになってから、長い道のりだった。


イップスは苦しかったが、おかげで自分とトコトン向き合えた。この経験は、この先も俺を守る盾になってくれるだろう。


このシーズンは、今までの苦しみが全て力に変わっていた。オールスター以降で7勝を挙げることができた。


巨人は、このシーズンを2位に終わる。優勝は、広島カープだった。広島のエース山田さんはこのシーズンも大活躍だった。15勝を挙げて優勝の原動力になった。


ちなみに、巨人のエース菅山投手が意地を見せた。16勝で最多勝に輝いた。


クライマックスシリーズはファーストステージを勝ち抜いて、ファイナルステージで広島カープと日本シリーズ進出を賭けて戦う事になった。


「前田、お前は3戦目で先発してもらうから準備しておけよ」

高橋由伸監督から告げられた。

まさか、先発に指名されるとは思っていなかったので驚いた。


イップスの時には、想像もできなかった。いや、本当は夢じゃないのか?


妻に現実なのか聞いてみた。

「クライマックスシリーズって何? 映画みたいでカッコいいね〜」


聞く相手を間違えた……


クライマックスシリーズ、ファイナルステージはマツダスタジアムで行われる。広島ファンで真っ赤に埋め尽くされる。


近年では、甲子園の阪神戦以上にやりにくい場所だ。異様な雰囲気で真っ赤な波に飲まれそうになる。


この場所で平常心を保てるのだろうか。


俺にとって、本当の意味での真価が問われる事になるだろう。

お世話になった全ての人への恩返しを広島のマウンドで!


俺は広島の夜空を見上げて、気持ちを高めていた。

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