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感覚が鈍くなると恐ろしい

ふと目が醒める感覚はなんとなく、喪失感を与えているような気がする。


蜜柑はベッドの中で、真上を意味もなくただ見ていたーー


午前2時、この時間帯が、今日だったり、明日だったり、夜中だったり早朝だったりと、多種多様な事を言ってくる時間帯だと思う。

僕自身、午前2時というのは早朝というよりも深夜と、いう方が適していると感じている。


まあ、そんなことはさておき、部屋を見回した。


電気など当たり前についてなく、ただただ暗い。

寝室の開きっぱなしのクローゼットの暗闇はまるで、未知である。

そして、寝室とはまた違う、光を持った暗闇が広がる。


また、見渡す。


静かなのに、なんとも思わない、なんとも思えない。

それほどつまらないものはあるのだろうか?


ただ、「多分こんな感覚なんだろうなあカイトって」と偏見交じりの考えに段々と切り替わるにつれて、

卓上に、細かく言えば卓上の上部分に二度見した。壁に貼られた新作のプロットである。

何故二度見したのか?そんなの自分でも分からない。だって大体のキャラクター《登場人物》は、ある変化する一点に二度見する。


だから、さっきまでの記憶がなくなる、アニメにありそうなワンシーンの自分をアニメの世界に置き換えて、「一点に集中」「二度見」という、いかにもアニメらしい行動を取る。


……まあ、大体の奴はやらないだろうけど、


「プロットかあ……なんかやる気でねえなあ」


まあいつもやる気なんてさらさら無いけど……


唐突に独り言を言う。

完全に独り身だから大丈夫だろう、その確信故の行動である。


しかし、記憶がない……何かアクションを起こしてみれば、どうして寝たのか記憶が蘇ると思ったのだが、どうもそうにはいかないらしい。


地味な空腹や頭の痒み、目の醒めからして、こりゃ何もしないまま寝たんだなと、しみじみ思う。

そういや最近、風呂がめんどくさく感じてきた。こう見えても、僕は種族でいえば普通の人間なのだ。超人しかいない香花界でも、仕事柄ここにいるのだ。


湯船に湯を沸かすのもどうもめんどくさく感じてしまったり、シャワーに変えてそれでもめんどくさく感じてきたりしてしまったこの頃。

勿論、異常に風呂に入らなければいけない場合は入るが、ちょっとやそっとの異常ならまあ、見過ごしてしまう。一番性格が現れているのに気づいたのだが、なんか……知ってた。うん。


「さて」……風呂にでも入ろうか?

そう考えた矢先に邪魔が入る。まさに「めんどくさい」だったーー



結局、入らないことにしたのだが、鬱陶しい痒みやベタつきに敵うことなく風呂に入った。


香花館から近いとは言っても、自分の家は深い森の中、電気は通ってはなく、全てガス灯であったりする。ガスや灯油は1ヶ月に一度(香花界の1ヶ月は30日、1日は大体50時間)優多がどちらも二つづつ担いで持ってきてくれる。


だから風呂場にかけるランプには水をかからないように気をつけねばならない……


シャワーで済ませようとも思ったが、風呂場の棚の中に、昨日無限から貰ったバスロマンがあったため、何故か風呂を沸かそうと思い、今浴槽を掃除している。


目も覚めてくれるだろうとの思いも込めて、浴槽掃除をしているのだが、磨かれた不規則な大きさの岩が敷き詰められた石畳や、濡れた檜の浴槽が足や手を直に渡ってくるもんだから辛い。

正直風呂に入りたくないのは寒いからでもある。冬の寒いのは大嫌い。


かなり冷たい中頑張って掃除したよくそうを、シャワーで洗い流す。


そして湯を張ろうかと思ったのだが、魔法を使えるわけでもないし、風呂場の棚にある魔法石は今切らしてるしで、かなり詰んだ状況だった。

冷たい中、手足を痺らせてまで洗ったのだ、これでシャワーに変更するのは結構痛い……


なので、時間はかかるがカランでお湯を入れることにした。電気は通ってないので、手動なのが、なんかめんどくさく感じる。

まあ、熱い湯船に浸かりたくもあったため、今日はいつもより熱く、42度ぐらいに合わせ湯を出す。

これで後は待つだけ。30分くらい待てば丁度よくなる。



ーー35分後


ご察しの通り、溢れていたーー


最近入れていた無料漫画アプリの所為だ、僕は悪くない。


5分も過ぎていたことに気づいた時、蜜柑は焦りのあまり、風呂場へ颯爽と駆け抜ける。

途中多々ある障害物に転んだり、体当たりして、脱衣所を抜け風呂場の戸を開けた途端、目の前が見えなくなるほどの湯気を全身に被ると同時に膝に水が流れ込んだのはは驚愕した。

すぐさまスウェットの裾も上げずジャブジャブと豪快にズボンを濡らしながら止めに行く。


しかし、スウェットを引きずるように歩いていた蜜柑のことだ、濡れて重くなった裾の所為で歩きにくく、終いには勢いよくダイブする。

だが、たまたま手がダイヤルに触れている事を感触で判断し、勢いよく捻ると同時に冷たい水が背中にかかる。


溶けた蝋でも背中に降り注いだのかと、瞬時に背を床に回し、今度は表面に冷たいシャワーの水を喰らうーー


そこは阿鼻叫喚の集合体だったーー



数分の出来事でも濃く、下手したら死んでた数分であった……

シャワーとカランをどちらも止め、ビショビショになった体と、どこか不満なこの表情


「嗚呼、独りって笑えねえな……」


と、心の底から思った事である。

ここでクシャミを一つ。蜜柑は湯船を見て小さく声で、


………………入ろ



と、その背中はどこか寂しそうであった……



濡れて、大変脱ぎにくい部屋着を手動洗濯機に入れ、バスロマンのフィルムを外し、湯の張った浴槽に少し入れて、元あった場所に戻す。


カポーンとは言わないが、一通り終わって風呂に入る。止まない湯気の中、蜜柑はゆっくりと気持ち良さそうにため息を零す。

風呂に入る際、湯が勢いよく浴槽から流れ出て、少々勿体なく感じた。

湯加減は丁度よく、体にジンワリと暖かいのが馴染む。最近肩が凝っているのか硬い。


マッサージと言っては違うかもしれないが、首を左右や前後に傾けたり回したり肩を回したり揉んだりする……

バキバキと無限が出していた骨折しそうな音ではないが、首や肩の関節を動かす。痛いくらいに筋肉を締め付けた方がほぐされる気がする。


「……」


ふと、湯気の舞う天井を見てから、湯に顔を突っ込む、すると顔全体に、先ほど感じた暖かみが包むように馴染む。

ーー頭を湯につけてから1分して、ようやく頭を上げた。


「静かだ……」


なんの表情も変えず、ただつまらなそうに彼は、蜜柑は言った。

それから彼は目を閉じて、少し寝ることにした。

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