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正月の夜に

「わ〜やっちゃったね〜」

「下品ですよはしたないです。こんなものみてはいけないですよ!」


優多はそのモニターに映った、ハプニングに即座に反応し、リモコンを取り上げ電源ボタンを押す。

そんな優多に、無限は面白おかしく笑って


「ええ〜言っておくけど、そんな清純アピールはよした方がいいよ〜わざとらしいぞ〜」

「別に!そう言うのが好きだって言うんじゃないですよ!ただ単にそういうのはダメだって事です!完全に隠れてないで、モロ出しちゃってるじゃないですか!みたくないですよ、人のモノなんか!」


早口で強い口調で言い返す。

そもそもこんなので笑っている人の考えている事が分からない。

不快というか、何というか……

というかそもそもなんでそんなのが、わざとらしくなるのかよく分からない。ただ単にそういう類で大笑いする人を引いているだけなのに……

男子は全員が同じような反応をするわけがないのだ。単純ではない。


「ほら!カイトさんも何か言ってくださいよ!」


カイトは安定のポーカーフェイスで、首をかしげる。


「ん?なんだ、こういうのが、現日本という国の文化ではないのか?俺はてっきり、そう言った下品な風習があるんだと思ったのだが……」

「間違ってないけど、間違ってますよ……」


優多は、片手で顔を覆いながら、脱力するかのように重たいツッコミを入れる。

そんな優多の返しに何を勘違いしたのかステレットは、案の定顔を真っ赤に染めて顔面を両手で覆っていたが、あっと驚いた表情から、少し残念そうに聞いてくる。


「え!?地球ってそんな世界なんですか!?ちょっと……」

「ステレットさんも引かないでください!というか、地球ってメチャクチャ範囲が広いじゃないですか!スケール大きすぎますって!」

「優多……」


そんな風に必死に勘違いを正そうとする中、隣には雪華がいる為、振り向いたら、怒ってるのでもなく、恨むのでもなく、ただただ「今は貴方から遠ざかった方がいい気がする」と言わんばかりの彼女の冷たい視線が待ってる形となる。

いかにも彼女は、このメンバーの中で大人に装ってくれる気がしたのだが、その期待も虚しく外れることとなった……


ってかそもそも、さっきからやたらと冷たいのはそのせいである。


「雪華さん……そんな汚物を見るような目で見ないでください……心が抉れます」

「あひゃひゃひゃひゃっ!ひゃっひゃっ!ひゃあああ、ハァッハア〜いやあ面白いね〜笑う!アッヒャ〜」

「……」


そして、ボーイッシュに関しては平常?運転のままだった。

お酒も入ってご機嫌である。


みてみれば、目の前の机には缶チューハイや缶ビールが転がって、ざっと数えて大小それぞれ10以上数えられる。

当たり前だが、この散らばった空き缶は、このボーイッシュ一人が飲んでいるのではなく(流石にこの数は致死量である)カイトと無限を含めた数である。


しかし、さっきまで、無限に勧められ缶ビールを舌で舐めるだけで顔が少し火照った雪華に比べ、この三人は、まったく酔っている気配もない。

ただただ「うまいうまい」と酒を飲んでいる。まるでジュースでも飲んでいるかのようだが、しかし、彼らの飲んであるのが酒であることは、異様なまでに香る、彼らの、特に酷い二人の口臭から分かる。


「ああ!もうないじゃんビール!」


と、無限の隣に置かれたミニ冷蔵庫をみて無限が叫ぶ。そして、2人の顔が再度電源が入ったモニターからそちらの方へ向く。


「優多樽酒が残ってるはずだからそうだな、あーじゃあ30個ぐらいかな?ビールとワイン、樽のまんま飲むからグラスはいらないかな……いや、やっぱバケツでいいや、よろしく」


そう子供のような笑顔で言う彼の言葉は、人間の感覚を持つ優多からすればとんでもない事のように感じ、どうもイマイチしっくり来ない。

しかし、持ってくるのはめんどくさい……第1にこたつから出たくはない。外は寒い。

と言う事で、ある事を思いついた。


「あんまり飲まない方がいいと思うんですけど」

「大丈夫だよ、毎年恒例だし」


その事に驚きながら、しかし、表情は下手に変えず、上手く切り返す。


「いえ、今年は異変が重なった影響で、ビールやワインなど含めた全体のおよそ3分の2くらいがお釈迦になってしまったので、例年通りの数ではなくなっています」


その事に、無限は結構は青ざめてこたつから立ち上がって頭を抱えていた。

実は、これ自体は本当の出来事である。嘘は言っていない。


「ええ!そうなの!?あ、あとどれくらい!?」

「被害を受けた酒樽、酒瓶は確か350くらいだったので、残りはわずか89個しかありません」


残りの89個も嘘でなく本当であり、言葉通りに、確か350はダメになったのだ。


「ええ!ほとんどないじゃん!え!?流れを戻したから、全部残ってるんじゃないの?」

「申し訳ありませんが、ほとんどが飲めるような状態ではないものが多かったので」

「ええ……言ってくれれば治したのに……」

「菌自体、無限さんの能力に対抗できるような菌になっているので、流れを辿って菌を避けようとしても必ず日が経つと再発し、強度が更に増して増殖していきますので、結局のところ無駄なので」


結構これで、無限の方も酒は持って来させないだろう。我ながら完璧な作戦である。

あっちは結構焦って罠に引っかかる事はないだろう、ウェッヘッヘ。


「なるほど……抗体を作られちゃったか〜まあいいやそれは後で考えるから、さっき言った通りでいいから持って来て」


一瞬、時が止まった気がして、乱れた感情を正そうとその時の自分を押し殺しながら続ける。


「いいんですか?なくなっちゃいますけど?」

「例えめんどくさかったとしても、そこまで僕は頭が弱くない。新しく作り直せばいい話。さあさあ早く僕のために持ってきなさい!」


そう見破られた時、優多の顔が一瞬にして嫌悪になるのをみて無限は笑って、最後は自分に指まで指して指示をしてきた……

しかし、どうしてもこたつは出たくはない、なぜなら酒がある部屋までの地下の廊下は寒いのである。


「こたつから出たくないんですけど……」


優多は最後のあがきとして本音を嫌悪丸出しで言う。


「別に自我の意思とか関係なしに持って来させる事は出来るんだけどね〜」

「やめてくださいよ、身体操られるのは、気持ち悪いんです。分かりました。持ってきますから……」

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