第96話 魔道具屋
なんとか投稿できました。
シャンプー&リンスの話も終わり冒険者ギルドを出てきたが、シルビア達は夕食の時間まで帰って来ないんだよな。
折角の王都だし、少し町でもぶらつくか。
「セン、ハヤテ、どこか行きたいとこある?」
「別にないっす。でも、そろそろ旦那が……自分は腹が減ってきたっす!」
「某は別に……否! 腹が減ったでござる」
お前達、何か圧力が掛かったか? 今、圧力が掛かったんだろ、影の中からとか。
魔物達のボスは完全にボルトになってるよね。実力的にはそれでいいんだけど、センは冰龍だったよね。永遠のライバルに屈しててもいいのか?
ここは王都だから町の中だとボルトが出て食べれる所は無いよな。あ、今は影の中でも食べれるようになったか。
でも、外には出たいんじゃないかな。少し探してみようか、どうせシルビア達も宿にはいないだろうしね。
町を散策してみると、やはり王都は凄かった。
まず、広い。敷地も広いが道も広いし建物も大きいものが多い。
メキドナの町では煉瓦造りや木の家が多かったが、この王都ではコンクリートの様に見える建物が多かった。煉瓦造りの家もあるが木の家は見かけなかった。
コンクリートに見える建物は、土魔法で造られているんだろう。継ぎ目がどこにも見当たらない。壁は、光沢は無いが滑らかな表面で、窓はあるが継ぎ目がなく薄いグレーの綺麗な壁だった。コンクリートの建物に非常に似通っている。
偶々なんだろうが、鉄筋コンクリートの建物にそっくりな壁だった。原料は同じ土や石だから、色も似るのかもしれない。
冒険者ギルド周辺は、色んな店が乱立しているせいか、三階建てや四階建ても多く建っている。それが余計に鉄筋コンクリートの建物と勘違いさせていた。
歩いている人は中世ヨーロッパ風なのに、建ってる建物が近代風って……ファンタジーっぽくていいかもしれないけど。
冒険者ギルドがある辺りから城にかけては、町の中心地に当たる所の様なので、この辺りだけがそうなのかもしれないけどね。時間があったら他の所も散策してみよう。
適当な場所が無かったので、ボルトには影の中で食べてもらった。センは荷台で食べれるし、ハヤテには【御者】が店に入ってる間に食べてもらおう。どうせ、ボルトもおかわりって言うだろうしね。
本当に多種多様な店があった。目移りして仕方がない。
あ、服屋だ。シスターズ達に買っといてやらないとな。
メキドナでも、彼女達が学校に行ってる間に暇を見ては服を買って来るんだけど、彼女たちのお眼鏡に叶う服が無いようで、あまり着てくれないんだ。
そう思って色んな種類の服を買うんだけど、やっぱり着てくれないんだ。
ミランダリィさんがいなくなって服を選んでくれる人がいなくなったし、オレはファッションセンスには自信が無いので量を買って好みの服を着てくれればいいなと思ってるんだけど、中々彼女たちの好みに合う服は無いようなんだな。
大体いつも同じような服を着てるからね。一日の半分は装備を着けてるけど、学校に行く時ぐらいはお洒落をしてほしかったんだよね。
今日も100着ずつ買っておこうか。王都だし、色んな種類の服があるもんね。
女性の服や下着を買うのは恥ずかしいけど、【御者】だからね。買う時だけ我慢すれば後は帽子を被せれば忘れてくれるからね。そう思って何度も買い物をしてるからもう大分慣れたよ。
服屋を出ると魔道具屋が目に入った。
魔道具屋! 一度行ってみたいと思ってたんだ。オレの造る収納バッグなんか、どのぐらいの価値があるものなのかハッキリしないんだよ。オレの知識ではある程度のランクのものまでしか分からないし、皆は凄い物、国宝級としか言わないから、実際にいくらぐらいするのか知りたかったんだよね。
他にも掘り出し物があったら買っておきたいしね。
【御者】を魔道具屋に入らせ、ある程度物色してから帽子を脱がせた。
店番は一人で、中肉中背のあまり特徴のないおじさんが座っていた。特徴としては口ひげがあるぐらいか。
こういう時は認識されない【御者】はホント便利だ。いつもは不満だけど、最近は使い分けができるようになってきたからね。
それも最終進化の【御者】になって話せるようになったのが大きいと思うな。
後は、オレが人間にいつなれるかだよなぁ。なれるのか? いや、なれるだろ? なれないのかなぁ。名前ぐらいは思い出したいよなぁ。
期待するといつも突き落とされるから、これぐらいで考えるのは辞めておこう。
「すいません」
「え、あ、いらっしゃいませ。」
店番の髭おじさんは急に現れた【御者】に驚いているようだ。
ずっといたんだけどね。
「ここって魔道具の鑑定なんかも見てもらたりする?」
「買い取りはしてませんが分かりますよ。銀貨十枚で鑑定致します」
銀貨十枚。円だと一万円相当? んー、高いのか安いのか……サービス業だから言い値な部分もあるから分からないね。
「これですが」とオレの造った収納バッグを出した。皆にも持たせてる物と同じやつだ。
「ほぉ、これは収納バッグですか?」
「そうです、いくらぐらいの値段なのか知りたくて」
と、銀貨十枚も出す。
髭おじさんは収納バッグを手に持つと、目を見開き収納バッグに集中している。
【鑑定眼】ってスキルを持ってるね、【解析】と【付与】と【合成】も持ってる。メキドナのアクセサリー屋のサンより、持ってるスキルだけなら上だね。
待つ事五分。髭おじさんの顔が汗まみれになっている。
「むむむむー、これは凄い! なんですか、この収納バッグは。あなたこれをどこで手に入れられましたか?」
なんか、自分で造ったとは言えない雰囲気だね。
「それは言えません」
「……そうですね。これだけの物です、そう安々と教えては頂けないでしょうね」
髭おじさんは残念そうに呟いた。
「それで?」
「あ、鑑定結果ですね。分かりません!」
髭おじさんは堂々と鑑定不可と言い切った。
「え?」
「この収納バッグの収容量を測れませんでした。この王都の広さ分までなら私にも鑑定できますが、それ以上になると私の力では鑑定できません。あ、私の能力が低い訳ではないんですよ、これでも王都で店を出しているんです。鑑定能力には自信を持っています。この王都でも三本の指には入っていると自負しております」
髭おじさんは鑑定失敗したにも関わらず、堂々としている。
「しかもこの収納バッグには時間停止も付いていますね。この時間停止だけでも金貨1000枚は行くでしょう。しかもこの収容量……値段は付けられませんね。これだけの物です、売らずに家宝にして代々受け継がれる事をお勧めします」
いや、いっぱいあるんですけど……しかもまだまだ造れるんですけど。
いやー、良い物を見せてもらった。と、髭おじさんは満足しているが、オレは不満しかない。お金を払ったのに鑑定不可の結果、商売としてあり得ないだろ!
「それでも売りたいと言ったら買ってくれるの?」
「うちは買い取りはやっておりませんので売って頂く事は出来ません」
あ、そうだったね、初めに買い取りはしないって言ってたね。
「じゃあ、鑑定失敗でお金を返してくれるの?」
「何をおっしゃいます! 私が鑑定できないほど素晴らしい物だと分かったじゃありませんか。断じて鑑定失敗ではありません!」
お金を返す気は無いって事ね。
「鑑定の事はもういいよ。それより、売り物の方を説明してほしいんだけど」
「どれの事ですか?」
「これとこれとこれ」って三つの魔道具を指した。
髭おじさんがそれぞれの魔道具を説明してくれた。
一つは通信の魔道具、一つは遠くを見る魔道具、一つは簡易コンロだった。
通信の魔道具は直径十センチぐらいの水晶玉で、映像も映る。でも、オレが考えている物より大きい。これでは持ち歩けないな。
これはこれで便利そうだから購入だけど、もっと小さな物は無いかと聞いてみた。
あった。ブレスレット型通信魔道具。でも、これは音声通話しか出来ませんよ。と言われたが、それで十分だ。
一つ購入して収納したら、練金の項目に出てきたから後は造れそうだ。同じように通信水晶も一つ購入して収納すると、項目に現れた。
さすがオレ、便利な奴だよ。自己嫌悪……普通は自画自賛なんだろうけどね。
最低でも二つセットで買わないと役に立ちませんよと、髭おじさんから忠告されるが関係無い。どうせ店を出て【御者】に帽子を被らせたら覚えてないんだから。
簡易コンロについてはこのまま購入。魔石をセットして使うと教えてくれた。ダンジョンに入る時に造るかもしれないからね。オレじゃないよ、オレは料理を造れるしダンジョンにも入らないもん。ルシエルが造るかもと思ってね。オレの造った料理は持たせてるけど、必要になる時があるかもしれないしね。
ついでに、もっと大きな物は無いかと聞いてみたら、奥に案内された。デカいのがあったよ、屋敷にあったのと同じぐらいの大きなやつが。収納があるからこっちの方がいいかもね、ついでに買っておこう。
三つ目の遠くを見る魔道具。
ただ遠く見るだけだけど、凄く遠くまで見える。障害物は透過できないけど、遠くを見れるのはいいな。【御者】に使わせれば【ズーム】の策敵範囲は五キロだけど、それ以上見れそうだ。
そう思って悩んでいると、髭おじさんが「とっておきだよ」と言って眼鏡を出してきた。
髭おじさんのとっておきの逸品は簡易鑑定ができて物質透過も出来る遠見の魔道具だそうだ。
とっておきの逸品の説明が長い! 制作の苦労話から、思い付いたきっかけ、使用してみた時の感動話まで。本当に長かった。
要約すると、『女風呂を覗きたかった』というだけの話だ。
エロか! やっぱり髭オヤジはエロなのか! いや、これはオレの偏見だな。
でも、男の野望とも言うべき偉業を達成したんだな。よくやったよ、エロ髭おじさん。それを成し遂げてしまう能力も大したもんだよ。
買ってはみたものの、使用者が魔力を通さないと発動しない魔道具だった。
オレには使えない魔道具だった。
オレも魔力はあるんだけど、眼鏡が付けられない。【御者】に付けさせても【御者】は魔力を出せない。
でも、便利そうだから買ったけどね。
ずいぶん長居してしまったな。もう皆は帰って来てるだろうな。最後の話が長すぎなんだよ。
宿に戻って来たら皆で出迎えてくれた。
「おかえり」なさい」ませ」なのニャ」
「服を買って来たよー」
「「「「……」」」」




