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第90話 新たなる出発

誤字報告ありがとうございます。



シルビア、ライリィ、ルシエルの卒業を機に旅に出ることを決めた。

 オレとしてはハヤテと、あと護衛で誰か一人付いて来てくれたらいいなぁと思ってたんだけど、全員参加の旅になった。

 もちろんガンちゃんは連れて行けないけど、呼べる時には口寄せで呼ぶ事にすると言ったら我慢してくれた。主に料理の為だったみたいだけど。


 シルビア達の卒業祝いから三日後、メキドナの町を後にした。


 荷台にはシルビア、ライリィ、ルシエル、パル、キューちゃん、センのメンバーに加え、ミランダリィさんと女兵士、今は中隊長の騎士爵だったか、アンジー・ローウェルも乗っていた。ハヤテがオレを引き、ボルトはいつも通り影の中。東の森に入ると出て来るんだけど、このメンバーは全員ボルトの事を知ってるから問題ない。


 まずはハヤテに東の森のダンジョン前まで飛んでもらい、そこからはボルトの先導で東の森をショートカットして王都キュジャーグへ行く予定だ。

 急ぐ旅でも無いので、いつものペースで行くつもりだ。それでも三日もあれば到着するだろうけどね。


 この東の森のダンジョンも、何度か制覇している。オレは行ってないよ。

 シルビア、ライリィ、ルシエルのシスターズにセンとパルとキューちゃんの六人で鍛錬と称して行ってたんだ。オレに鍛錬は必要ないからね、行く必要は無いんだよ。

 ダンジョンで獲った魔石もルシエル達が収納して来てくれて、オレに渡してくれえるもんだからナビゲーターもウハウハだったよ。そんなに魔石を貯めて何がしたいんだか。


 ルシエルの冒険者カードを見てみるとこんな感じだ。


名前:ルシエル:冒険者ランクA 達成率100%

パーティ名:『キャリッジ冒険団』:ランクA

パーティメンバー6名:****(*)・シルビア(A)・ライリィ(A)・ディーディパル(A)・セン(A)

―――――――――――――――――――

ダンジョン名:ベヌディアダンジョン:最下層クリア

ダンジョン名:西の森のダンジョン:最下層クリア

ダンジョン名:東の森のダンジョン:最下層クリア

ダンジョン名:--

―――――――――――――――――――

従魔:パーティ従魔4(ボルト・ハヤテ・キュート・ガンキ)


 またちょっと変わってた。達成率が追加されていた。メンバーのランクもそのまま据え置きのようだ。

 ガンちゃんを連れて来る事は無いけどシルビア達が仲間なんだから登録してあげようよと言うので登録だけはしてある。どんな魔物ですか? と言われたから「亀です」と答えておいた。うん、間違いじゃないね。大きさは聞かれてないもん。


 東の森の素材採取依頼の時にルシエルがカードを渡した時に『東の森のダンジョン:最下層クリア』を見られてしまって、パルもセンも『東の森のダンジョン:最下層クリア』を確認されてAランク昇格になってしまった。全員がAランク冒険者だ。

 ()(りゅう)であるセンが冒険者ってのもおかしいんだけどね。パルもAランクには見えないよね。でも、それを言ったらうちのメンバーで見た目Aランクだったら誰もAランクには見えないね。センがギリギリ見えるかもしれないぐらいか。



 移動前に東の森のダンジョン前で昼食にすると、騎士爵のアンジー・ローウェルがボタボタと涎を垂らした。

 あなた貴族になったんでしょ? ちょっと(はした)ないよ。屋敷にいる時はルシエル達が作った料理を食べて「美味い美味い」ってバカほど食ってたじゃないか。オレの料理もそんなに変わらないと思うよ。


 皆に料理を出すと、久し振りのオレの料理を食べるルシエル達が絶賛してくれた。

「やはりご主人様の料理には遠く及びません。もっと精進いたします」ってルシエルが言ってたし、アンジー・ローウェルは一心不乱に五人前完食してたよ。

 ボルトとハヤテは外だからいつもオレの料理を食べてるけど、やっぱり美味いっていつも言ってくれるね。


ガンちゃんにも100食ずつ入ってる収納バッグを十個、1000食を渡しておいた。出せるかどうか試してもらったら、収納バッグを身に付けておけば出せたので、ボルトと同じ首輪を造って収納バッグを十個首輪に付けて装着させて上げた。

「一気に食べると無くなっちゃうから一個ずつだよ」と念を押しておいた。

 なるべく早く呼び寄せるか来るようにするからね、と言ってガンちゃんと別れた。


 この東の森のダンジョン前と屋敷には転送魔法陣も描いて設置してある。

 転送魔法陣は魔力が通ってる間は土の上に描いても形が崩れないんだけど、魔力が枯渇すると形が崩れやすくなる。だからキューちゃんに直径5メートルの平たい石板を造ってもらいそこに目一杯大きな魔法陣を描いて、同じ薄い平たい石板を上に乗せて魔法陣を挟んでもらった。

 これだと魔力が枯渇しても魔法陣の形が崩れないからね。石板も少し土に埋めて地面とフラットにして邪魔にならないようにしておいた。



 さあ、王都目指して出発だ!


 いつもいる東の森のダンジョン前から王都を一直線で結ぶと平地なんだけど、少し南側に小高い山がある。標高はそんなに高く無くて500メートルぐらい。断崖絶壁で岩肌も見えていてどの方向からも登れない山だ。

 山頂には樹がたくさん生えてるように見えるけど、オレの【ハイアングル視線】でも標高差が大きすぎて確認できない。


『なあボルト、あの山の上ってどうなってるんだろ?』

『御意、それでは早速調べて来ましょう』

 近くにあるのにまだ行ったことが無かったので、ふとした思いつきでボルトに聞いたらボルトがさっさと登って行ってしまった。

 切り立った垂直の崖を走って登って行ったよ。いつもながら凄いね。


 ボルトが登って行ってしまったので、先導役がいなくなった。キューちゃんが『代わりにやるー』キュキュと言ってハヤテの頭に移ったけど、その必要も無かったみたいだ。


『主殿、脅威になるものはおりませぬ。ハヤテよ、主殿をお連れせよ』

『了解っす!』

 いや、脅威になるものが無いって言ったけど、さっきなんか光ったよね? それってボルトの雷魔法じゃないの? いないんじゃなくて、いなくなったんだよね?


 ハヤテに引かれて飛んで登って来ると、森の様に樹々が生い茂っていたが、所々焦げてる。焦げ跡には鳥系の魔物が沢山倒されていた。

 ボルトは容赦ないね、ここって飛べる奴の縄張りだろうから、他所者が来たら攻撃されるって。

 ボルトって逃げる魔物は見逃すけど、掛かって来る魔物にはどれだけ弱くても容赦しないからね。

 鳥系の魔物の素材は少ないから、一応オレも収納はさせて頂きました。


 魔物が一掃された山頂。山頂と言っても平らになってるから頂上という雰囲気は無い。

 でも、見晴らしは最高だ。遠くにメキドナの町もなんとか見えるよ。港町ベイナンも見える。その向こうには海も見えるよ。

 こっちは王都キュジャーグだな。最高の景色だな。


 皆も荷台から降りて各方位を眺めて回っている。


 ルシエルなんかテーブルと椅子を収納バッグから出して、お茶を淹れてミランダリィさん達と寛いでいる。


「ご主人様ー、この子達はどうするのニャ?」

 ライリィが言ってきた『この子達』。鳥の魔物の雛達だ。

 ずっと見えてるんだよ、勝手に全部に説明が出るんだから。ジョンボルバード(幼):LV1

 さっきの大きな鳥の魔物の雛だろうね。このままだと死んじゃうかもしれないな。周りには虫や、そう大きくはない虫系の魔物も文字が出てるんだ。放って置いても死なないような気はするけど……親はボルトが倒しちゃったっしなぁ。オレが見たいって言ったのが切っ掛けだから、ちょっと責任を感じるんだよなぁ。


 魔物だから倒してもいいとは思うんだよ、でも可愛すぎるんだよこの雛達は。

 でも、連れて行けないしなぁ。! そうだ、ガンちゃんに頼もう。


 『長寿の水』を撒きガンちゃんを呼ぶ。


「ガンちゃん」


 詠唱フェチのオレとしては何か唱えたかったんだけど、これで十分なのだ。

 せめて『来い! ガンキ!』ぐらい言えって? もし来なかったらどうするんだよ。【御者】に詠唱させた時の傷が四年経ってもまだ癒えてないんだよ。皆が見てる前では当分しないって決めたんだよ。


 目の前の空気が揺らめき大きな影が現れる。影はすぐに実体となりガンちゃんが現れた。


「おや? もう呼び出しかな? 殿はせっかちじゃの、さっき別れたばかりだというに」

 ガンちゃんってオレの事“殿”って呼んでたんだ。いつも「料理はまだかいの」か「次の料理はいつかいの」しか聞いた事が無かったから知らなかったよ。

 あ、ミランダリィさんとアンジー・ローウェルが驚いてるね。会う事も無いだろうと思ってさっきは紹介しなかったからね。放置でいいよね。


「ガンちゃん、この子達が巣立つまで見てやってくれない? この場所も魔素は結構あるみたいだからお願いできないかな?」

「お安い御用じゃ、餌をやるだけでいいのじゃろ?」

 ガンちゃんは雛達を見ると気軽に引き受けてくれた。


「うん、ここに肉をたくさん入れておくから、適当に食べさせてあげてね」

 そう言ってもう一つ食材を入れた収納バッグを首輪に取り付けた。


「じゃあ、頼むね」と言った後、ミランダリィさんを見るとなんか呆れた様子で【御者】を見ていた。「もう驚かないつもりでいたんだけど、その大きな亀も仲間なのね」とぼやき気味に溜息をついていた。


 ガンちゃんの良いとこも見せないといけないねと思って、ミランダリィさんに『長寿の水』を一杯飲んでもらった。

「まぁ!」と驚きの声をこぼしたミランダリィさんが、見た目ですぐ分かるほど若返った。

「力が溢れてくるわ」と言いながら張りのある肌になって行く様子に驚いている。

 今まではシルビア達の若いお母さんぐらいのイメージだったが、今は少し年上のお姉さんって感じになってる。


 それを見たアンジー・ローウェルが、一頻り驚いた後「一杯」だけ言ってコップを持って【御者】に迫り寄って来る。

 近い、近いって。あげるから『長寿の水』ならあげるから。

 怖いんでさっさと持ってたコップに『長寿の水』を入れてやった。

 コップに入れられた『長寿の水』を確認すると、ゴクンと生唾を飲んでから『長寿の水』を飲み干した。


「はぁぁぁ」と気の抜けたような声を出すアンジー・ローウェル。アンジー・ローウェルも十歳は若返ったように見える。

 その様子を見たミランダリィさんが「鏡、鏡」と探し回るので、姿見の鏡を造って見せた。

 ガラスも造れるし、銀も持ってるからね。ちゃんと項目に出てたよ。

 大きなめのサイズで二メートル×一メートルを出してやると、二人して鏡の前から動かなくなった。

 今日はここで泊まりみたいだね。


 今日はここで泊まる事を決めると、ルシエルが大きな浴槽を土魔法で造った。風呂に入るみたいだ。ま、いつもの事だけど、ちょっと久し振りかも。

 今日はアンジー・ローウェルが増えてるとはいえ、全員女だしね。

 う~ん、オレは数に入って無いのか?


 そう思ってたけど、アンジー・ローウェルも堂々としたもんだった。若返った身体を自慢したいのか、ミランダリィさんと共に姿見の鏡を【御者】に持ってろって指示されたよ。入浴中にも確認するんだと言われたけどね、一応【御者】は男の姿をしてるんだけどなぁ。


 満点の星空を見上げながらの露天風呂か。羨ましいね、オレも入ってみたいよ。

 しかし、これだけ遠慮のない女子の入浴シーンを見るだけなんてね、馬車だから見れるんだけど、馬車だから何もできない。んー……複雑だー。



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