第75話 仲間にする?
冰龍の受けた傷はキューちゃんの回復魔法で治ってたけど、服はボロボロになっていた。
「大丈夫かい? キューちゃんに回復してもらったとは思うけど」
「紙一重でござった・・・」
なにが? まさかさっきの戦闘の事を言ってる? ボロ負けだったじゃん!
「それは、ま、そうかな。まずは服を着替えないと、ボロボロになってるよ」
「これは大丈夫だ。ユニークスキル【人化】で出してるだけだからすぐに直せる」
ボン!
煙が冰龍を包み、煙が晴れると冰龍の服は真新しい物に変わっていた。
狸か! お前龍だろ! 今時、狐や狸でもそんなベタな変身はしないっつーの。
もうお前はベタ担当だ。オレの中では冰龍はベタ担当決定!
『でも、ボルトが助けに行ったのは意外だったな』
『御意、此奴は弱すぎて気が抜けました』
確かにそうかもな。永遠のライバルだと思ってた奴がワンパンだもんだ。
しかもいつも自分達が楽々倒してる魔物にやられそうになってるし。そりゃ気も抜けるか。
『じゃあ、どうしよう。どこかまで送ってやる?』
『主殿さえ良ければ、我はそれで構いません』
弱い奴はさっさっと帰れって事だね。オレも賛成だよ。ハヤテに飛んでもらえば丸一日もかければ行けそうだよね。
『それよりも主殿、そろそろ飯が食いたいのですが』
『そうだね、飯にしようか。食って町に戻ったら丁度シルビア達が戻って来る時間になりそうだよ』
料理を出して飯にする事にした。シルビア達は学校で食べて来るはずだから、こっちの連中だけで食べる事にした。
一人だけ出さない訳にも行かないから冰龍にも出してあげた。
「ぬおおおおお!! なんですかこの料理は! 刀鍛冶だと思っておりましたが、実は幻の料理人だったのですな! 美味すぎるでござる!」
喧しいなぁ、なんだよ幻の料理人って。それにござるって・・・もうその武士で行くんだね。
でも、女の格好をしてるんだから、自分の呼び方をなんとかしてほしいな。
あっしって・・・あたし⇒あっし。合ってると言えば合ってるけど、そのうち拙者とか言いそうだよ。
「拙者、思い違いをしていたのかもしれませんな。疾風龍や雷獣と共におられる高名な方とお見受けした。名前だけでもお教えくださらんか」
言った! 言ったよ拙者って! もうオレの中ではベタ子でいいわ。
「名前は・・・・無いんだ」
「教えてくださらんか・・・。拙者の様な小物には教える名など無いと申されるか。クッ、情けない、歴代の冰龍に顔向けできません。かくなる上は・・・」
え! 切腹とか言うなよ! せっかく助けたんだからな。
「弟子にしてくださらんか。どんな事でもやります、弟子の末席に加えてください!」
なぜその流れで弟子になる! しかもオレは弟子なんて募集してないから。
『主殿、我からもお願いします。此奴のような弱者に歴代の雷獣が負けたというのが許せません。我が鍛えてやりましょう』
『え? こいつに雷獣が負けたの? こいつってそんなに強くないよね』
『冰龍も雷獣と同じく意志を継ぐ者。だから称号の『剣聖』も継いでおりますから、此奴らの剣技は素晴らしいものがあります。が、弱い。此奴はあまりにも弱すぎる。我は悔しくてなりません』
そういうもんなのかね。オレには分からない感情だけど、このままじゃボルトが悔いを残しそうだ。協力してやるか。
「分かった。弟子にはしないけど、オレ達と一緒にいていいよ。冰龍には名前が無いんだよな、なんて呼ぼうか。ベタ子でいい?」
「おおおおお! ありがとうございます、名などなんでも構いませぬ。意味は分かりませんがベタ子という名には悪意を感じますぞ。冰龍でもよいではありませぬか」
アホなのに勘はいいんだな。
「オレ達は町に住んでるんだよ、町の中で冰龍って呼べないって」
ヒリュー・・・いなくも無いけど、辞めてた方がいいと思うんだよな。このキャラだろ? どこでボロを出すか分かったもんじゃないよね。
「ご主人様ー、この武士にも名前を付けたるん? ほんならまた進化すんのかなぁ」
バカ! そんな事言わなくていいんだよ。もうパルの中では武士になってるし。
「なんと! 幻の料理人殿は名付けも達人級の命名師でございましたか。では某にも一つ名前を付けて頂きたい。ただーし! ベタ子だけはご遠慮致す」
ほらみろ食いついたじゃないか。色んなあだ名を付けてんじゃねーよ! 拙者から某に変わってるし。こんな奴に名付けるの嫌だよー。
「ハヤテ、冰龍ってずっとこんな感じなの?」
「そうっすね、大体こんな感じっす」
やっぱりか。いつもはオレが『馬車の従者』って称号を付けるのが可哀相だから遠慮してるけど、こいつはマジ嫌だ。
『ボルトー、こいつを放り出しちゃダメ?』
冰龍に分からないように念話で話し掛けた。
『むぅ、主殿がそこまで嫌がる気持ちも分かりますが、なんとかお願いできませぬか』
『自分も知った仲なんで、このまま放り出すのもアレなんで、お願いできないっすか』
『うちは大賛成や! これでうちが一番下っ端やなくなるやんか』
パルはそれでしゃべったのか。作戦じゃ無くて期待から出た言葉なんだろうけど、余計な一言だったよ。
ボルトもハヤテもうちの三本柱だからね、2人からのお願いだから聞いてあげたいんだけど・・・。キューちゃんは興味無さそうだけどパルも乗り気だしなぁ。オレは嫌なんだけど・・・・
しょうがないか・・・・
『それで、誰がこいつの面倒見るの?』
『『『お願いします!!』』』
また丸投げかよー。
「さてと・・・冰龍、名付けの前に色々と話があるんだけどいいかな」
「はっ、なんなりと」
勢いだけはあるんだよなぁ。
「まず、オレが名付けると『馬車の従者』って称号が付く。それはオレの正体が馬車だからなんだ」
「はっ」
ホントに分かってんのかね?
「それでもいいの?」
「よしなに」
「じゃあ、後はお互いの希望を話し合おうよ。まず、こっちからの条件だね、うちは子供が三人と魔物が三人と精霊が一人なんだ。子供達は学校に行ってるから、町での揉め事は勘弁してほしいんだ。だから町の中で龍の姿には絶対にならないでほしいんだよ」
「ははっ」
「そっちからは何かある?」
「はっ、某からは刀、剣、槍、薙刀、苦無、短刀、大剣、短剣の最高の業物と三食の食事と名前は刀が似合うものでお願いします」
いっぱい言ったねー。遠慮が無くて逆に清々しいわ。
「なんでそんなに武器がいるんだよ。それにさっき刀と剣をあげたじゃないか」
「剣はまだ色物があると読んでおります。刀も先程の剣と同じ素材で造れるのではと」
こういう勘はいいんだ。厄介な奴だよ、まったく。
色物ってたぶん魔法剣とかの事を言ってるんだろうね。
「称号には『剣聖』ってあったけど、剣だけでいいんじゃないの?」
「剣と刀は似て非なるものなれど、通ずるものがございます。剣にも薙ぎはありますし、刀にも突きはあります。その延長に槍や薙刀がありますので、『剣聖』の称号はすべての武器に精通していると言っても過言ではありません。侍の最高の称号もまた『剣聖』なのです。ちなみに一番好きな武器は刀です」
格好良い事言うじゃん。さっきまでの剣フェチと同じ奴だとは思えないよ。
「じゃあさ、子供達の中にシルビアって剣が得意な子がいるんだけど、その子に剣を教えてあげてくれない?」
「ははっ、容易い事かと」
「それとさ、自分の呼び方をもうちょっと何とかしない? 女性になってるんだしさ」
「わかりました。では今後は某と言う事にしましょう」
「いや、それ女性の一人称じゃないから」
「某は武士でござるゆえ」
武士って……剣士じゃないのかよ! もういいや、好きにしてくれ。
「じゃあ、名前を考えるよ。刀に似合う名前だったね」
「ははっ」
青い龍で刀で武士か。青いって言葉だけだと三つ葉葵で徳川だろ? 徳子さん、お徳さん、葵さん、青さん。しっくり来ないね。
刀から行くと斬、閃、突、抜、薙か。ザン、セン、トツ、バツ、ナギね。
オレの中ではセンがいいな。ナギの方が女っぽい? いや、初めに思いついたので行こう。
「センにする、名前はセンに決めた」
「おおおお! 良き名じゃ」
もうちょっと女っぽくしゃべってよ。
《SPはどれだけ消費しますか?》
あ、なんかそういうのあったね。やっぱり全部消費してやるべきだよな。
(全部消費するよ)
《わかりました。SPを全部消費します》
いつも通り二つを残して画面が真っ暗になる。
ピキピキピキッ
うわっ、冰龍が氷漬けになった? 冰龍も眠りに付いたようだ。
名前: セン
分類: 冰龍(龍)LV25
HP:2211/2211 MP:2121/2121 ATT2199 DFE2233 SPD2215
スキル:【牙】4/10【隠形】4/10【念話】2/10【魔法】5/10【変身】Max【眷属召喚】1/10【気配感知】3/10【魔力感知】4/10
魔法:【水】4/10【風】4/10【樹】Max【氷】Max
ユニークスキル:【人化】【豊穣】【銀世界】
称号: 剣聖 馬車の従者
進化はしなかったけど、ステータスの上りが凄いよ。
【銀世界】ってユニークスキルは氷系だよね。【豊穣】と【銀世界】って真逆な感じがするんだけどね。
ギャップって意味では”らしい”ユニークスキルだね。
さぁ、町に戻りたいんだけど、センはいつ起きるのかな?




