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第72話 報告


 メキドナの町に戻って来たオレ達は、領主であるトーラス伯爵の屋敷に報告の為、訪れていた。

 報酬は前金で金貨100枚貰ってるからね、完了報告はしないといけないでしょう。


 軍の移動はオレ達の予想より早く、一週間前にこの町に戻って来ており、魔人討伐隊はもう解散したそうだ。

 今回の討伐隊は500名の王都から来た騎馬隊と、このメキドナの町の駐留兵で編成された2500名の兵の3000名で構成されていた。

 メキドナ領の兵は既にそれぞれの部署に戻っており、王都から来た騎馬隊も一人を残し王都への帰途についている。そろそろ王都に到着する頃だろう。




「魔人の討伐はあなた方の活躍で成功裏に終わったと報告では聞いてるが、腑に落ちない点があるので、その点の突合がしたいんだが答えてもらえるか?」

 トーラス伯爵がオレに尋ねた。


 この部屋を訪ねたのは【御者】、ミランダリィさん、シルビア、ライリィ、ルシエル、パルの六人と、シルビアの頭に乗ってるキューちゃん。ハヤテとオレはもちろん外、ボルトはいつも通りオレの影の中。

トーラス伯爵、執事のグラート、女兵士のアンジー・ローウェルがいて、【御者(オレ)】からの報告を受けていた。


 報告内容は前にアンダーソン大将に話した通り、魔人の棲み処の山は殲滅。魔人13人の内10人は倒し、3人には逃げられたという事。3人の魔人が凄く強いという事はここでも伏せておいた。

 戦利品や魔物から取った魔石や素材については、アンダーソン大将にも何も言って無い。国境を越えて兵が確認に行くとも思って無かったからね。

 だとしたら、どこがおかしかったんだろう。


「はい、答えられる事ならお答えしましょう」

「うむ。まずは魔物の数だな。万を超える魔物を殲滅したとあるが、間違いないか?」

「はい、間違いないです」

「どうやって数えたのかね。後で、軍の諜報部隊と隠密部隊が確認に行ったのだが、魔物の死骸が確認できなかったそうだ。確かにいた形跡はあったようだが、数までは推定できなかったようだ」

 隠密と諜報・・・同じじゃないの? 今はそこはいいのか、回答だよな。

 あのあと確認に行ったのか。軍も中々危ない橋を渡るんだな。見つかったら戦争になり兼ねないんじゃなかったっけ? オレ達の完了報告だけじゃ信頼度が足りなかったんだろうな。

 確かにそうだね、魔物が万もいて魔人も10人は討伐できたと聞いてもまずは疑うよね。

 アンダーソン大将の行動は当然か。でも、なんて答えよう。ボルトに犠牲になってもらうか。


「オレの従魔の雷獣は探索できるので分かったのですが、一万以上いると事前に分かってました。討伐後、魔物の死骸が無かったのは秘密です」

「宝もあったと聞くが?」

「ありましたね。でも討伐した我々に権利があるのでは?」

 この世界の、特に冒険者のルールではそうなっていたはずだ。

「確かにその通りだ。だが、どんな物があったのか非常に興味があってね。これは個人としてのお願いなんだが、どれか見せてもらえないか。なんでもいいのだ、魔人達がどんなものを隠し持っていたのか非常に興味があるのだ」


 個人のって・・・今、依頼主でもある領主の所に来てるのに個人でって言い訳は通用しないんじゃない?

 ま、見たいって気持ちも分かるけど、どれを見せればいいんだ? この女兵士にあげた剣と同じものを見せたら後で厄介な事になりそうだし・・・

 女兵士に渡してない剣と・・・ライリィに持たせてるナックルでいいか。


「まぁ、少しぐらいならいいですけど」と言って『ライトニングソード』と『アイシクルソード』を収納から出し、ライリィに言って『グラビディナックル』を出してもらった。


「おお! これは何という剣だ。素晴らしい!」

 トーラス伯爵はライリィが見せたグラビディナックルよりも剣に食いついた。

「是非、売ってもらえないか! 一本金貨1000枚でどうだろうか」


 一本金貨1000枚? 剣一本で?

 この世界の貨幣価値が分かったんだよ。この前の試練で見たこの世界の情報で得た知識からすると、オレのいた世界の貨幣価値で行くと金貨一枚で10万円相当だったんだ。

 という事は、金貨1000枚だと一億円? 剣一本で一億円?


 金貨5000枚以上持ってるオレが言うのもアレだけど、剣一本にそんなにお金を出せるもんなの? しかもあんた二本とも買う気だろ。道楽が過ぎないか?


「やはり金貨1000枚では安かったか。では1500・・・いや2000枚でどうだろうか」

 剣一本で二億円相当・・・・


「う、売ってもいいんですが、トーラス伯爵が使うんですか? 飾るだけで、にお・・・金貨2000枚は・・・」

「これはこの領地に駐留しているキュジャリング王国軍と私の私兵である警護隊のそれぞれのトップに持たそうと考えている。さすがの儂も道楽の為に金貨2000枚は出せんわ」

 そういう事なら2000枚で売りましょうか。屋敷もくれるって話になってたから1000枚にしてあげようかとも考えたけど、兵士に持たせるんならいいでしょ。


「わかりました。ではお売りしましょう。これ二本ともという事でいいんですか?」

「ああ、頼む。二本で金貨4000枚、すぐに用意させよう」

 トーラス伯爵が執事に目配せすると、執事が部屋から出て行った。


「あと、帰りの日程はずいぶん掛かったようだが、行きの日程がどうも合わん。この町を出た次の日に国境まで行った計算になる。どんな方法で行ったんだ」

「・・・・秘密です」

 ハヤテでひとっ飛びって言えないよね。言ったらどうなるんだろ? たぶん、オレも含めて自由が無くなりそうだよね。やっぱり秘密だな。


「それも秘密か、残念だが致し方ないな。後は屋敷の事だが、それはグラートが戻って来たら案内させよう。儂からは以上だが、こちらのローウェル大尉から話があるそうだ」


 役立たずの女兵士か、今更どんな用があるって言うんだろ。何もバラシて無いようだけど、お前にやった剣もこっちの剣と同じぐらいの価値があるんだぞ? 最低でも金貨1000枚、それを三本。変な事言いやがったら返してもらうからな。


「どんな話しでしょう」

「先日は随分とお世話になりました。また食事をご一緒させて頂きたいですな。いや、話しというのは貴方にでは無く奥方様にお話しがあるのです」

「私に?」

 なんだ、用があるのはミランダリィさんにだったのか。


「はい、奥方様。ランドレル大臣からの書状が届けられまして、奥方様に王都への帰還命令が出ております。書状には国王様からも早く帰らせるようにと言われ困っているとも書かれておりました。王都へはメキドナ伯爵からのご厚意により秘密のルートを通らせて頂けるように手配済みです。先日大変お世話になってこういう事をお伝えするのは非常に心苦しいのですが、どうか私と一緒に王都に戻ってください」

「そうね、そろそろ一度戻らないといけないかしらね」


 ミランダリィさんが王都に戻るのか。そろそろ一年になるもんな。

 旦那の勇者は魔王討伐で不在でも子供がいたんだよな。貴族でもあるんだろうし、いつまでも出歩いてちゃダメだろうな。


「シルビアちゃん、あなたも一緒に来ない?」

「私は馬車さんといるの」

「そう言うと思ったわ。でも、あなたが安全な事も分かったし、今は学校も行ってるしライリィやルシエルもいるもんね。この町を拠点にするのなら、それもいいかもね」

「うん」

「良い顔をするようになったわね。これも馬車さんのおかげかな? ライリィもルシエルもシルビアの事をお願いね」

「「はい」」


「アンジー?」

「なんでしょうか」

「出発は明日でもいいんでしょ?」

「はい、問題ありません」

「じゃあ、今日から住むお屋敷で私のお別れ会をしてもらおうかしら」

「えっ、またあの料理が頂けるのですか!」

 なんでお前が頭数に入った? お前は関係ないだろ。


「多い方が楽しいし、お酒の相手も欲しいしね。いいわよね?」

 ミランダリィさんが【御者】に向かって微笑む。もう決定事項らしい。

「ま、まぁ・・・」


 なぜかアンジー・ローウェルも来ることになり、ミランダリィさんの出発は明日という事になった。

 トーラス伯爵に金貨4000枚を頂き、剣を渡した。

 執事の道案内で屋敷まで連れて来てもらった。


 そういえば、オレ達はミランダリィさんがトーラス伯爵って呼ぶから同じように呼んでるけど、さっきこの女兵士はメキドナ伯爵って呼んだよな。

 トーラス・メキドナだからメキドナ伯爵が正しいんだろうね。でも、トーラス伯爵も何も言わないし、今更変えられないな。


 その夜はミランダリィさんとのお別れ会だし、料理も奮発した。

 この世界には牛や豚や鶏もいるんだけど、同系だと魔物の肉の方が美味しいらしい。

 オレは食えないから味が分からないんだけど、情報でもそうだったし、同じ料理を牛と牛系の魔物で造ると魔物の方が好評だった。しかも魔物のランクが高い方がより美味しいようだ。


 そこで、今夜はドラゴン尽くしにしてみました。

 素材はウシュムガルとケツァルコアトルにして、ステーキ、から揚げ、角煮風、筑前煮風、テールスープ風、餃子、シュウマイ、肉まん、ハンバーグ、サラダ。

 とんかつソース、ウスターソース、ステーキソース、マヨネーズ、タルタルソースは前世の情報を元に【料理】で再現できました。

 食べきれないだろうと思ってたらペロリと無くなってしまった。

 この女兵士・・・侮れない。ミランダリィさんより少し大きい程度なのに、どこにそんなに入る。うちの連中もいつも以上に食べたけど、女兵士の食べた量は半端なかったよ。

 なぜかトーラス伯爵と執事も来ているし、出した料理は全部無くなったよ。


 最後にケーキを出してあげた。一番大きな8号、直径24センチを3個。

 なぜか更に3個出す羽目になった。女子率が高いからか? 女子は「甘いものは、べーつーばーらー」とか言うけど、あの都市伝説は本当だったみたいだ。


 食事が終わってもミランダリィさんと女兵士とトーラス伯爵で飲み会が始まった。

 執事さんも適度に飲んでたようだけど、酔ってるようには見えなかったな。

 飲み会は朝まで続いてたよ。トーラス伯爵? あなた仕事は? 領主だよね? このまま城に行くつもりか?

 いつ屋敷を訪ねてもいるって事は城には行ってないのか? そんな領主はいないだろ。


 後で分かった事だが、トーラス伯爵は基本屋敷で書類整理などをしていて、城には息子を行かせてるそうだ。

 登城するのは月に二回、兵の合同訓練の時と、収支報告会議の時だけだそうだ。

 臨時で登城する事もあるそうだが、基本はその二回だけだそうだ。


 それでも冒険者の家で朝まで飲むってどうなの? しかも、屋敷に戻っても仕事なんかできそうにないぐらい酔っぱらってるけどね。あ、回復魔法とかで治るのかもしれないな。この女兵士もオレの【回復(ヒーリング)地帯(ゾーン)】で宿酔いが治ったみたいだったしね。


 この用意してくれた屋敷もいい物件だった。

 そんなに広くは無いけど、オレとハヤテが十分に入れる庭があったし、二階建てで6畳程度の部屋が10もあった。キッチンに風呂にトイレは綺麗だし、リビング兼食堂は15畳はあるから、(みんな)で集まって食べても広すぎる。

 最低限の家具やベッドも揃えてくれていて、十分今日から住めるようにしてくれていた。

 これで金貨500枚? いや、もっとすると思うな。

 場所も学校からは遠くなるが、冒険者ギルドには五分も掛からない場所だった。


 伯爵なのか執事なのか知らないけどいい仕事してくれてるね。

 ありがとうございます。


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