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第64話 合流

 次はハヤテに道場に向かってもらった。

大通りに戻って本線を少し走って脇道を入ったすぐの所に道場があった。

 ライリィがいるはずなんだけど・・・道場の前にはいないなぁ。


 今度も【御者】で道場に向かわせたら、ちょうどライリィが道場から出て来た。


「ご主人様ー! こんなの貰ったのニャ」

 ライリィは細長い板を持っていた。


「なにそれ? もしかして・・・」

「看板って言ってたのニャ」

「返してきなさい」

「なんでなのニャ?」

「返してきなさい!」

「はーいなのニャ」


 なに道場破りしてんだよ! そんな目的じゃ無かっただろ! 新しい技を見つけに行くとか言ってなかったか? なにやってんだよ。


「ご主人様ー、返してきたのニャ。かたじけないでござるって言われたのニャ」


 武士か? 武士がいたのか? ちょっと見てみたい気もするけど、長居は無用だ。他にも面倒事が増えそうだよ。さっさとシルビアも迎えに行かないと、あっちも何かやらかしてるかもしれないぞ。


 ライリィを乗せて大通りまで戻ったら、シルビアがこっちに戻って来るのが見えた。

 シルビアもオレ達に気がついたみたいで、こっちに向かって走って来る。


『どうだった? 収穫はあったかい?』

 荷台に乗ったシルビアに聞いてみた。


「うん、祝福と職業(ジョブ)登録をしてもらった」

職業(ジョブ)登録もしてもらったの?」

 確かにシルビアはあと2つ職業(ジョブ)登録できるようになってたな。


「教会でも職業(ジョブ)登録できたよ。学校でもできるって聞いてたよ」

 どこでもできるんだな。冒険者ギルドでしかできないもんだと思ってたよ。


「それで、何になったんだ?」

 見えてるから分かってるんだけどね。

「聖戦士を付けてもらった。そしたら回復系の魔法と、魔物に効果のある魔法を覚えたみたい」

「聖戦士って凄いね。光属性も持ってるしシルビアなら将来勇者になれるかもね」

「うん、なる!」

 嬉しそうに肯定するシルビア。

 やっぱり父親と同じ勇者を目指してるんだな。母親が早くに亡くなってるし、父親である勇者が身近な目標になってるんだな。


「それで、協会では何も問題は無かったんだんだ・・・よな?」

「うん、大丈夫。お金を払っただけ」

「そうなんだ、お金を払っただけ・・・お金を払う? 教会で?」

「うん、オフセって言ってた」

 お布施ね。教会だし、そういうのはあるんだろうね。


「で、いくら払って来たの?」

「金貨1000枚」

「え? さっき渡した分を全部?」

「そう」

「ふ~ん・・・」

 多いような気がするんだけどなぁ・・・・


 周りを見ても、シルビアとルシエルしかいないし、ミランダリィさんが来たとしても、あの人もお金の価値をよく分かって無さそうだし。魔物トリオは論外だし・・・。


 ま、シルビアに渡した分だし、シルビアが納得してるんならいいか。

 後はミランダリィさんが合流したら、この町から出て行こう。


 パルの事も気にはなるけど、あの話し方が治らないっていうんなら、そのうち仲間内でトラブルにもなりそうだし、仕方が無いと思ってる。

 まして、オレは偉そうにする気は無いけど、従者契約をしてるんだからこれぐらいの言う事も聞いてくれないようなら今後一緒にやっていくのは無理だろうしね。

 服従しろとは思って無い。他の皆にもそんなのは求めて無いけど、注意をして聞いてくれないっていうのは無しだね。


 (あるじ)ってより、お兄さん役ってのを目指してるんだけどなぁ。中々うまく行かないね。


 別れた地点に戻ってみてもミランダリィさんがいないので、少し待つ事にした。

 ミランダリィさんは待ち始めてから30分もしないうちに戻って来た。


「お待たせ、この町って冒険者が多いから色んな種類の服があって何軒も回っちゃった」

 【御者】に向かってテヘペロっすか。

 確かに可愛いとは思いますけどね。皆【御者】の事をオレだと思って無い?


「たくさん買い物したみたいだね」

 収納バッグがあるから、どれだけ買い込んだのか分からないけど、満足そうな顔を見たら相当買ったんだろうとすぐに分かるよ。


「ええ、さっきもらった金貨の半分使っちゃたわ。そんなに買ってないのにねぇ」

 半分って言ったら金貨500枚? 服代で金貨500枚。じゃあ、さっきのシルビアのお布施もそんなに多くないのか?

 でも、服屋は入った事は無いけど、店の外から見える価格には、全部銅貨が何枚って書いてあるんだけど・・・金貨って文字はどこにも見えないし銀貨すら一部にしか見えないんだけど?

 あの見えてるやつはセールか何かで安売りだから銅貨って書いてあるのか?

 金貨500枚か・・・どんだけ買ったんだ? それとも高級品ばかり買ったの?


「その満足そうな顔だと、相当買ったね?」

「そんな事無いわよ、100着も買ってないし。それに靴や下着なんかが高かったのよね。そうそう、皆の分も買って来たわよ。パルの分もあったの、メキドナに戻ると売って無いからパルの分はたくさん買って来たわよ」


 どこをどう突っ込めばいいんだ? 100着? それって一人当たり? 1日何回着替えるの? 靴や下着も同じぐらい買ってるんだろうね。

 パルの服があったって事は、やっぱりこの辺に妖精が多いのかな?


「あと、アクセサリーが以外と高かったのよね」

 まだ買ってた。そんなに時間があった? 伝説の大人買いか?

 ここからここまで全部とか、その棚のやつ全部とか。

 やってそうだよなぁ。時間的にそうでもしないとまだ帰って来てないよな。


「ところで・・・・・・」


「なに?」


「あの子、なんであんなとこにいるの?」


「なんでだろうね」


 オレの視界にはずっと入ってるんだよね。今は、20メートルぐらい離れたところにいるんだけど、一応建物の陰に隠れてはいるようだけど、見つけてほしいもんだから丸見えになってるんだよね。


「ご主人様・・・私が行って来てもよろしいでしょうか」

 心配そうな顔でルシエルが言って来た。


「必要ないよ。パルは元々仲間になる気も無かったみたいだし、強くなったからもう奴隷狩りにあっても捕まる事も無いだろうしさ。オレの称号は消せないけど、それは辛抱してもらうしかないけどね」

 あ、そういえば消せたな。オレのLPが0になったら従者契約が無くなるんだよ。死なないけど振り出しに戻る、だったよな。


「・・・そんなぁ・・・」

 オレが断った事でルシエルが落ち込む。

 そんな落ち込んでるルシエルにミランダリィさんが事情を尋ねた。

 ルシエルが小さな声でミランダリィさんに事情を説明した。


「事情は分かったわ。許してあげられないの?」

「そうだね。前にも言ったけど、オレはこの子達を礼儀知らずにはしたくない。ここでオレがパルのやってる事を許してしまったら、この子達が同じことをしてもオレはこの子達を怒る事が出来なくなるよ」

「だったらそれをパルに言って聞かせて教育をするのが主であるあなたの役目じゃないの?」

「聞いてくれるんならね。何を言っても聞かない奴に、そこまで言う気は無いよ。イヤなら好きな所に行けばいいんだ」


 オレがここまで怒るのは初めてだし、ミランダリィさんも含め、皆黙ってしまった。


『ハヤテ、行こうか』

『了解っす』

 パルがどうなろうとハヤテには関係ない。ボルトもキューちゃんもきっと同じだろう。

 こいつらは一緒にいるが自由にしてる。オレに凄く協力してくれるのは主従関係をしっかり感じてくれてるからかもしれないけど、オレの事を立てながらも魔物トリオから不自由だと感じた事は無い。

 何を気に入ってくれたのかは知らないけど、一緒にいてオレも助けられることが多いから、凄く感謝もしてるよ。

 だから、こいつらの事を上から目線の話し方をされるだけでもイラっとくるのに、年長者に対して呼び捨て、注意したら開き直る。オレが我慢できないよ。


「ご主人様・・・」

 哀願するような目でルシエルが【御者】を見つめている。

「ご主人様・・・」「馬車さん・・・」

 ライリィとシルビアも同様の視線で【御者】を見つめている。


 なんかオレが頑固親父みたいになってんな。悪いのはオレか? 違うだろ!



《パルの年齢は221歳なのでパルの方が年長です》


え? 本当に? いきなりそれを言う? でも奴隷屋で買った時にはレベルが低かったと思うんだけど。


《妖精の集落から出て、何かと戦って倒さないと経験値は入りません。それは人間も妖精も魔物も同じです》


 パルは集落から出た事が無かったから戦う事も無いし、レベルも上がらなかったからレベルが低いままだったって事?


《おそらく、レベル1で集落から出て、運良く風魔法が苦手な水系か虫系の魔物を倒してレベルが少し上がったのでしょう。しかし、レベルが低いのに調子に乗る性格ですから、無理をして弱っている所を運悪く捕まったのではないかと予想されます》


 そう言われるとそんな気がしてくるよ、あのパルだろ・・・目に見えるようだ。簡単にその光景が浮かんでくるよ。

 でも、上から目線とか、言う事を聞かないのはダメだろう。

《ただのお調子者の受け狙いでしょう》


 うーーーーん。そう考えるとちょっと頭が冷めてきたよ、ありがとうナビゲーター。お前も偶にはいい事言うね。


《それはパルと同じレベルです》

むぐぐ、確かに。

でも、なんでそんなパルを庇う事を言うんだ?


《パルはこのパーティで重要な役割を持っています。失うのは勿体ないです》


 重要な役割? なんだろう。


《・・・・・・》

そこは言わんのかい!


『ハヤテ、止まって』

『はい』


 ハヤテに止まってもらうと【御者】をルシエルに向けた。

「今回だけだよ」

 ルシエルはその言葉だけでわかってくれた。

「・・・はい!」


 ルシエルは涙を拭きながら笑顔で荷台から飛び降りて行った。

 ライリィとシルビアもルシエルの後を追っって飛び降りた。


 パルはさっきオレ達が止まっていた所で泣いていたようだ。

 ルシエルが走って行き、パルを慰めている。ライリィとシルビアも合流し、同じように声を掛けている。

 遠いので声は聞こえないけど、慰めているのは見れば分かる。


 あ、パルが急に胸を張って威張ってる? ルシエルに怒られた。

 すぐにまたションボリしちゃった。確かにお調子者だな。




「ご主人様! ごめんなさい」

 荷台に上がって来たパルがすぐに謝った。

 ナビゲーターのお陰で、もうオレの中では整理が付いたけど、話し方だけは直さないといけないよな。

 関西弁はいい。お調子者も、ま、いいだろう。仲間内なら呼び捨ても構わない。(ミランダリィさんは除く)

 でも、上から目線の話し方だけは許せないな。なにかペナルティでも決めて直せないものかなぁ。


「パル、どうするの?」

「はい! ここに置いてください」

「いいの? ここだと窮屈じゃない? ここならお前の故郷も近いんじゃないの?」


「ご主人様!」

 涙目のルシエルから横槍が入った。

 ちょっと嫌味がキツかったな、これぐらいにしておこうか。


「そうだったね。ごめんごめん」

 ルシエルに謝った後、パルに条件を出した。


「オレはパルの話し方の中で、上から目線で話す時が凄くイヤなんだ。すぐには直らないだろうけど、それじゃオレがパルを許せなくなりそうなんだ。だから、1つ条件を出すよ」

「・・・なんですか?」

 パルが恐る恐る聞いてきた。


「うん、パルは今日からこのパーティで一番下っ端ね。これが条件」

「えーーー、そんなーん・・・」

「嫌なら別にいいよ、餞別は何がいい?」

「ちょっちょっちょっちょ、わかりました、わかりました。うちは今日から一番下っ端の雑魚です。だから一緒におってもええですか?」

「いいよ」

「おおきにー!」

 パルは飛び回るかと思ったら仰向けになって大の字になってしまった。

 よっぽどホッとしたんだろう、仰向けになったまま嗚咽していた。

 皆も心配してパルに声をかけている。


「よかったね、本当によかったね」

「わたしも嬉しいのニャ」

「下っ端・・・・」


 最後に下っ端って言ったシルビアも笑いながら言っていた。


 確かにパルの年令はかなり上かもしれないけど、見た目があんなだし、一応オレが主だし、これからのパルの事を考えると、これで良かったんじゃないかと思うんだよね。


 こんなにいい仲間に囲まれてるんだよ、パル。もうちょっと皆を尊敬する心を持てば、上から目線の言葉なんか出ないはずだよ。

これからは下っ端で頑張ってね。下っパルちゃん。



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[一言] 主人公性格悪すぎンゴ
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