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第62話 思わぬ収入

 ラスボスを倒した最下層で一休みして、出現していた魔法陣に入るとダンジョンの入り口前に転送された。


 転送された場所は、部屋の中だった。

 あるのは大きな両開きの扉が1つ、椅子も机も何も無いガラーンとした部屋。

 何も無い部屋だけど、広さだけは十分にあった。


 周りに何も無いし、誰もいないので部屋から出たらすぐに外だった。この一部屋だけの為の建物だったみたいだ。出口の魔法陣を守ってるんだろうね、10階層と20階層にも魔法陣があって地上に戻って来れるようだったけど、ここに出て来るんじゃないのかな?


 建物から出た場所はダンジョンの入り口を出た所で、入る時に冒険者カードを見せた門の横だった。

 ダンジョンに入る時は、この門で冒険者カードを見せて登録をされると入門許可が出てダンジョンに入る事が許される。

 管理してるのは、このベヌディア領の兵士。常時10名の兵士がいるようだ。ここのダンジョンは挑戦者が多いようだからね、入ってみて実感したよ。10階層のフロアボスの時に2日待ちとかってオレの中ではありえない事だったからね。

 こんなにダンジョン好きが多いとは思わなかったもん。


 ここのダンジョンは広かったから10階層まではオレ達以外にも馬車で入ってる奴も何組かいたけど、あの待ちの時の為だったんだよな。11階層からは馬車を見なくなったもん。

 オレが目立たなくて良かったけど、もうダンジョンには入りたくないよ。


 門で冒険者カードを見せると、全員詰め所に連行された。連行されたと言っても悪い事をしたからじゃなくて、ダンジョン制覇したから強制的に連れて行かれただけだけどね。

 なんで分かったかというと、冒険者カードにはダンジョンから出て来ると何階層まで行ったか分かるようになってるらしい。

 その階層で生まれた魔物を倒したりとか、その魔物の魔石とか、転送魔法陣が関係してるらしいけど、自動で記入される機能が冒険者カードに付いてたんだね。

 確かにシルビアの冒険者カードには『東の森のダンジョン:最下層』と記入されてたよ。


 あそこのダンジョンって誰もいないのに記入されてるって事は、やっぱり何か基準があるんだろうね。


 実はオレの冒険者カードにも『東の森のダンジョン:最下層』の記入はあった。

 今回の『ベヌディアダンジョン:最下層』で2つ目だ。

 もうダンジョンに入る事は無いだろうけどね。


《それはフラグです》

 だから暗示を掛けるなって!



 ダンジョン門の詰め所に通されると、冒険者ギルド出張所もあった。

 兵の待機所や事務官達のいる机のあるスペースが2/3、その1/3の半分のスペースが冒険者ギルド出張所で、兵のいる場所と出張所の間に出張所ぐらいのスペースがあって、オレ達はそこに通された。


 6人掛けのテーブルが6つあり、そのうちの2つを合わせて6人と6人の向かい合わせで12人座れるようにした。

 こちら側には端からルシエル、ライリィ、【御者】、ミランダリィさん、シルビアの順に座り、シルビアの頭にはキューちゃんが乗っている。パルは煩いから荷台において来た。向かい側には兵が3人と冒険者ギルド出張所の職員が1人座った。


「キャレッジ冒険団の皆さん、ダンジョン制覇おめでとうございます」

 兵の中でも一番偉いと思われる男が笑顔で祝福の声を掛けてくれた。一番年上みたいだし、軍服の左肩の肩章の太い線が一番多くて星が1個付いてるし、他の兵士は赤色の肩章なのにこの人だけ金色だから、たぶんこの人が兵の中では一番偉いんだと思う。

 レベルもこの人が一番高いしね。名前は・・・ダナル・サーレン:LV26って出てる。


 向かいに座っている4人は全員嬉しそうな笑顔を絶やさない。

 オレ達が制覇したってこの人達は何も得しないだろ? なんでそんなに笑顔なんだ?


「分かっているとは思いますが、ダンジョンで取得した物について・・・・」

「ええ、分かってるわよ。売るならまずあなた達にって事よね」

 兵のサーレンが話してる途中でミランダリィさんが話を遮った。

 ミランダリィは知ってるんだ。昔、勇者達のパーティにいたんだもんな、ダンジョンぐらい何度も制覇してるんだろうね。


「それでは、出して頂けますか?」

 サーレンが【御者】に向かって話し掛ける。


 なにを?


 ミランダリィさんも【御者】を見ている。


 だからなにを?


「あら? 馬車さんは知らないの?」

『何の事か分からないけど、馬車さんって・・・・』

「あら、ごめんなさ~い。今は・・・・ジョンさんね。ジョンはこういうのは初めて?」

 一応、小声では言ってくれてるけど、馬車さんって言っちゃダメでしょ。

 【御者】も話はできるようになってるけど、内緒話だから念話で伝えた。


『それで、何の事?』

「他の子達も知らないようだから説明するわね」

 並んで座っているシルビア達を見渡し、ミランダリィさんが説明をしてくれた。


「ここはベヌディア領主が管理しているダンジョンなのは知ってるわよね?」

 ベヌディアの町の中にあるダンジョンだからそうなんだろね。


「領主が管理するダンジョンで取ったものの売買権は、その領主が最優先権を持っているの」

 誰からも質問が無いのでミランダリィさんが続ける。


「10階層程度の物なら、よく出回ってるから厳しくは言われないんだけど、それ以上深い階層で取った宝物やアイテムは貴重だから、皆が欲しがるの。最下層の物なら誰もが欲しがるわ」

 確かにそうだろうね。


「それで、この人達は私達が取ってきた物を売ってもらおうと目の前に座ってるって訳よ。売買最優先権を持ってるからまずはこの人達と交渉する事になるのよ」

「それは絶対売らなければいけないの?」

「いいえ、売りたくなければ売らなくてもいいけど、何を取って来たのかは報告しないといけないの。他で売られたらわからないでしょ? 売買最優先権を反故された時の為の防衛措置ね」


 ふ~ん。

 意外と考えてるよね。

 でも、今普通に【御者】で喋れたよ。誰も違和感なくスルーしてるし、かなり嬉しいんだけどー。

 『挨拶』と『はい』と『いいえ』からようやく卒業できたよ、これで人間になれる日も近い? 気がするのはオレだけか?


「じゃあ、持ってるのはオレだから全部出せばいいの?」

「そうね、全部出してリストを作ってもらって、それから売りたく無い物を取った後、向こうが売って欲しい物を言ってくるっていう流れかな」


 人が管理するダンジョンって面倒くさいんだな、東の森のダンジョンしか知らなかったから入り口で入場管理してるのも知らなかったし、こんな決まりがある事も知らなかったよ。


「どこに出せばいいの? この机の上じゃ乗り切らないと思うけど」

「19階までの分は結構です。20階のフロアボス以降の分をお願いします」

 オレ達のやり取りを聞いていた兵のサーレンが20階以降の分でいいと補足してくれた。

 20階以降なら何とか乗るかな? ん――乗るか?


「アイアンタートルの甲羅だけで机いっぱいになるけど・・・その中に入れればいいか。魔石も出すの?」

「はい、お願いします」


 まずアイアンタートルの甲羅を裏返して机の上に置いた。

 先に魔石(大)238個、(中)2586個、(小)76個。Bクラスの魔物が多かったからね、(中)が多いんだよ。(小)の魔石を落とす魔物は21階層以降あんまり出なかったからね。


 なんだかんだで21階層以降は1か月ちょっと掛かったからね、倒した魔物の数も多かったけど、その分取れた魔石も多いね。

 魔石だけで、甲羅を埋め尽くしちゃったよ。この上に置いていけばいいのかな?


 ドロップ品からは、オーガの角53個、オーガの眼玉5個、コアラビの袋63個、キラービーの針245本、ヒポグラフの皮31枚、ヤルクスの毒袋26個、ボナチュスの肉36個、ガイゴの糸袋10個、レッドエイトの糸袋33個、ブラックエイトの糸袋7個、キングバジリスクの皮9枚、バイコーンの角4本、ファフニールの皮3枚、地龍の牙1本。


 宝箱からは、収納袋(中)3、(小)6、鑑定の首輪1個、体力上昇(大)の指輪2個、ルビー(中)2個、(小)11個、ピンクダイヤ(中)1個、ダイヤモンド(中)4個、(小)6個、毒耐性(大)の首輪1個、金の剣1本、アサシンダガー1本、銀の小手1個、金のサークレット1個、ミスリル鉱石の塊(中)1個、魔鉱石の塊(中)2個。


 あと、宝箱から出た金貨が、白金貨1枚、大金貨10枚、金貨250枚あったけど、金貨は出さなくてもいいって言われたので出してない。


 全部の魔物がドロップする訳じゃ無いけど、それでもかなりあるね。大きいのも多いし、やっぱり机の上には乗せきれなかったな。

 出す時には種類と個数を言いながら出したので、リストを作る作業もすぐに終わったみたいだ。


 後は素材の品質の確認をするようだけど、ドロップ品だから戦いの傷が付いているはずも無いし、解体で傷付ける事も無い。綺麗なもんだよ。

 オレの解体は収納で自動で解体されるからどうせ傷は付かないけどね。


 品質はすべてA判定。


 武器やアイテムは造れるからいいんだけど、素材は売りたくないな。あと、魔石はナビゲーターが売るなって言って来るんだろうな。


 素材もこれだけあったら持っていても無駄なんだけだし、ミスリル鉱石の塊(中)1個、魔鉱石の塊(中)2個、ルビー(中)2個、(小)11個、ピンクダイヤ(中)1個、ダイヤモンド(中)4個、(小)6個、コアラビの袋10個、ガイゴの糸袋10個、レッドエイトの糸袋33個、ブラックエイトの糸袋7個と魔石を全部収納して、後は全部残した。

 ガイゴの糸袋10個、レッドエイトの糸袋33個、ブラックエイトの糸袋7個はアクセサリー屋のサンへのお土産だな。安く売ってやろう。コアラビの袋は収納バッグの素材にあったから10個だけ取っておいた。


 そしたらなんと! 残りは全部買い取ってくれる事になった。


オーガの角53個で金貨53枚、オーガの眼玉5個で金貨25枚、コアラビの袋53個で金貨2650枚、キラービーの針245本で金貨490枚、ヒポグラフの皮31枚で金貨93枚、ヤルクスの毒袋26個で金貨104枚、ボナチュスの肉36個で金貨216枚、キングバジリスクの皮9枚で金貨99枚、バイコーンの角4本で金貨200枚、ファフニールの皮3枚で金貨15枚、地龍の牙1本で金貨50枚、収納袋(中)3で金貨1500枚、(小)6で金貨60枚、鑑定の首輪1個で金貨1000枚、体力上昇(大)の指輪2個で金貨2枚、毒耐性(大)の首輪1個で金貨3枚、金の剣1本で金貨10枚、アサシンダガー1本で金貨80枚、銀の小手1個で金貨1枚、金のサークレット1個で金貨2枚、アイアンタートルの甲羅で金貨100枚。


〆て金貨6753枚。


うーん、数字としては凄いんだけど、これでどのぐらい暮らせるんだろうね。


「ミランダリィさん、これって凄いの?」

 出された金貨袋の山を見ながらミランダリィさんに尋ねた。

「そうね、凄いんじゃないかしら」


 分かんないのかよ! 今は貴族とはいえ、ミランダリィさんは元々冒険者をやってたんだろ? うちのメンバーで唯一物価とかを知ってそうな人なんだから。


 向かいの4人はオレ達のやり取りを、「この人達は何を言ってるんだろ?」っていう目で見ている。

 たぶん相当多いんだろうという予想は付いたよ。

 お金を使う事なんて無いから分かんないんだよ。これからも使う事は少ないだろうから、別にいらないと言えばいらないんだけど、あって困るもんじゃないからね。

 使うといっても、宿代、服代、調味料代ぐらいだからね。

 宿代がちょっと多いのが気になってるんだけど、それでもまだまだ金貨は残ってるしね。

 宿代はシルビアが担当してて、この前足らなくなったからと言ってきたから、金貨500枚追加で渡しておいたよ。

 でも、今後は屋敷をもらえる予定だから宿代もいらなくなるし、こんなに金貨があっても何に使えばいいんだろうね。


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