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第6話 サンダータイガー

日も暮れて辺りも暗くなって来た。

シルビアは荷台に乗せた鞄を取って肉を焼こうとするが鞄が無い。

良く見ると少し奥の方にある。荷台に乗らないと届かない位置にあった。

もちろんオレの仕業ですけどね。ハーネスでもできたけど、一旦収納して少し奥に出したんだ。これなら荷台に乗らないと取れないし、荷台に乗ればテレパスが通じると思ってね。


案の定、シルビアは荷台に登った。


『シルビア。聞こえるか?』

ゆっくりした口調で話し掛ける。天の声的な感じでゆっくり話すことで味方だと思ってくれたら成功だな。


「え? また声が聞こえる。なんで私の名前を知ってるの?」

『お前の事は良く知っている、だからこの馬車から離れるんじゃないぞ。』

「あなたは誰?」

『馬車だ。』

「馬車? 馬車がしゃべるわけない。でも、私の名前も知ってるみたいだし1人より安心できるかな。」

『シルビア、木を持ってるなら出しなさい。魔物もだ。手伝ってあげよう。』

「はい。」


シルビアは拾って来た木と残りの魔物を4体出した。

オレはすべて収納し魔物は解体して毛皮だけを5体分出した。

毛皮はシルビアの1/3ぐらいの大きさだったが、5枚あれば寒さも凌げるだろう。

オレは寒さは感じないが、魔物対策にしちゃ早めから火を付けてたから少し寒いんだろう。


『シルビア、この毛皮を使いなさい。火の番もオレがやってやろう。』

この得体の知れない存在役で子供なら騙せないか? 味方アピールを忘れずにやればオレが馬車だとは信じられなくても馬車の近くか馬車を通して守ってくれてると思ってくれないかな。


「わぁ、ありがとう。それで誰なの? 姿は見せてくれないの?」

ずっといるんですけど、あなた乗ってるんですけどね。


『もう一度言う、オレは馬車だ。信じてくれ。』

「そう。もういい。でも味方みたいだから信じておくわ。」

『最後にもう1つ伝えることがある。』

「なに?」

『馬車から離れると声が届かなくなる。出来る限り馬車にいてほしい。』

「わかったわ、もうパンは無いの?」


ゴトン! パンを出してやった。

「ありがとう。味方なのね。火の番も任せていいの?」

『ああ、任せておけ。寒く無ければ寝るときも荷台で寝てほしい。』

「寒さはこれだけ毛皮があれば大丈夫。食事が終わったら荷台に乗るね。」

『ああ、信じてくれてありがとう。』


シルビアはパンを持って肉を焼き夕食を済ませた。また魔法で出した水も飲んでいた。

食事が終わると荷台に上がって来た。

作戦は成功したが、このまま天の声ってより馬車であることを信じてもらわないと魔物をおびき寄せて引っ張ってもらう事も出来ないんだよな。魔物を見た途端、攻撃するだろうからな。


今度は普通に話し掛けてみる。

『シルビア? 聞こえる?』

「さっきの人? なんか感じが違うね。」

『本当に信じて欲しいんだ。』

「何を? まさか馬車っていうの? 私はそこまで子供じゃないよ。」


確かにしっかりした子だよ、だから騙すより信じて貰う方を選んだんだけどな。

『本当なんだけどな、どうやったら信じてもらえるのかな。オレは魔物でも動物でもいいから引いてもらわないとレベルが上がらないんだ。その為に魔物をおびき寄せたいんだが協力してくれないか?』

「何をすればいいの?」

『どうにかして魔物をおびき寄せてオレの手の間に入れるんだ。』

「手って?」

『ここだ』

両手のハーネスを振ってみせる。


「それが手? でもそれって私が全部するの?」

『ネコ系の魔物なら何とかなると思うんだが、他はやったことが無いからどうやるか分からないんだ。』

「ネコ系ならいいのね。できるかな? やってみよう。」


シルビアは目を閉じ集中している。

顔を上げると森に向かい大きな声で叫んだ。


「ネコさーん! 大きなネコさーん! お友達になってー。」

ユニークスキルにあった【魔物使い】の能力なのかな? 魔物を呼べるのか。

森の木々が騒めいた。念の為【ズーム】で周辺を警戒する。


森に動きがあった。3か所で茂みが動いている。魔物が動いている感じに見えるが茂みの中なので確認できない。


まず茂みから姿を現したのはホーンタイガーだった。2体目もホーンタイガー。

2体とも2メートルぐらいの大きさで、どちらもLV4だった。

3体目に現れたのは更に大きく3メートルはあるサンダータイガーだった。LVは10。

ちょっと強力過ぎないか?


『あ、あれってシルビアが呼び出したのか?』

「うん、上手く行った。」

『上手く行ったのはいいんだけど、もう友達になってるんだよね?』

「ううん、私の能力だとまずは呼び出すだけ。呼び出した後に倒さないとダメなの。倒した後、向こうから仲間になりたそうにしてくれば仲間にできるの。弱らせないとダメって事ね。さっきのネズミの時にもやったんだけど、全部ダメだった。」

『そ、それって、襲って来るかもって事か?』

「うん、そうだよ。だってネコ系なら何とかできるって言ったよね?」


いやー、確かに言いました、言いましたけど強力すぎるんですけどー

『い、言ったけど、やった事があるのはホーンタイガーだけだ。しかも1体だけ。あれって強くね? なにサンダータイガーって。』

「【鑑定】もできるの? 私の実力ならどっちにも勝てないかも。」


だよねー、なんでそんなもん呼んじゃうかなー。

まずは見てみようか。



【鑑定】

名前: なし

分類: ホーンタイガー(魔獣)LV4

HP:63/63 MP:60/60 ATT64  DFE63 SPD65

スキル:【牙】2/10【隠形】1/10

ユニークスキル:

称号:


【鑑定】

名前: なし

分類: ホーンタイガー(魔獣)LV4

HP:62/62 MP:58/58 ATT62  DFE64 SPD64

スキル:【牙】2/10【隠形】1/10

ユニークスキル:

称号:



【鑑定】

名前: なし

分類: サンダータイガー(魔獣)LV10

HP:112/112 MP:102/102 ATT114  DFE108 SPD131

スキル:【牙】3/10【隠形】3/10【念話】1/10

ユニークスキル:【影操作】

称号:


やっぱり強いじゃないかー、どうすんのこれ?

ホーンタイガーならギリギリだけどシルビアが勝てるかもしれないな。

しかも武器と防具があるんで1体ならというところだよな。

ホーンタイガーだけでも2体いるし、サンダータイガーは絶対無理だし。相手の方が強いって。どうすんのよー。


『シルビア、絶対に馬車から降りるなよ。馬車の上の方が安全だから。』

「わかった。それでどうするの? 呼び出したら追い返せないよ。」

『今考えてるところだ。ホーンタイガー1体なら何とかシルビアでも勝てそうだが、あのサンダータイガーは無理だ。絶対に守ってやるから馬車から降りるなよ。』

「うん。わかった。」


まずは【結界】を発動した。どこまでの強さがあるのかは分からないんだけど、なんとなく大丈夫な気はする。楽観的ではあるけど、オレの直感を信じたい。


先に出て来ていたホーンタイガーの2体は、後ろからの威圧で逃げて行った。

それだけサンダータイガーが強いということだ。

シルビアが言うには呼び出して逃げられたのは初めてだそうだ。

サンダータイガーはどんどん近づいて来る。


ここまできたらやるしかない。オレはハーネスを振り出した。

右から来るサンダータイガーに対して右手のハーネスだけ振り回した。


思惑通り、ハーネスに魅入っている。やっぱりネコだ。

獲物を狙う体制に入った。え? もう? まだ10メートルはありますよ? 遠すぎませんか?

まさかとは思ったがハーネスを振るのを辞めた。

あんなとこから飛んで来られたらオレなんて粉々になってしまうわ。


ハーネスを振るのを辞めたらサンダータイガーは頭を上げて攻撃姿勢を辞めた。

今度は左手のハーネスを振ってやる。

するとオレの右手が邪魔なため正面側に回り込んでくる。距離も5メートルまで近づいた。

また攻撃態勢に入るサンダータイガー。ケツをフリフリし出した。デカいけど可愛いな。いやそれでも怖いって。

来るか! 来た! サンダータイガーがネコジャンプして来た。

だからデカいって、こんなのネコって言わねーよ。

【バンク】!

【バング】を出してサンダータイガーの首にはめることに成功。


驚いたサンダータイガーは逃げ出そうと必死に走り出す。


今回は前のホーンタイガーのように森を駆け回られたら荷台に乗っているシルビアがどうなるかわからない。

森に入られる前に決着が付けられない場合は【バング】をはずそう。


まずは【ウィッシュ】で止まれ止まれと念じる。

止まる気配はない。

それでも念じ続けるが変わらない。

ここからが前回と違う所だ。まず右のハーネスで両前足を、左のハーネスで左後ろ足を封じた。更にサイコキネシスで押さえ付ける。記憶が戻ったことで蘇った力を使う。

画面で見せられた過去の記憶の時の1/10の力も出せていないと思うが足を拘束しているから効果はあった。


森に入られる前にサンダータイガーを止めることに成功した。


後はテレパスでサンダータイガーの思考を確認しながら【ウィッシュ】でひたすらお願いしまくる。


馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を引く役をお願いします。馬車を・・・・・・


ホント自分も洗脳されてるんじゃないかと思うぐらいお願いを続けた。

『わかった、我の負けだ。契約に応じよう。』


やったぜー! 


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