第59話 フロアボス戦
オレ達がボス部屋に入るとバタンと入って来た扉が閉まった。両開きの扉だったのでオレごとゆっくり入れた。
部屋の奥には大きな魔物が1体立っていた。金色の毛の塊に見えたが、巻いた2本の大きな角があるのでビッグホーン系の進化種だと分かった。
魔物は扉が閉まるとオレ達の方に向かって咆哮をあげた。
ボオオオオオオオォォォォ!!
デカいな、4~5メートルあるんじゃないか? 名前は・・・ビッグホーンキングか。
名前: なし
分類: ビッグホーンキング(魔物)LV20
HP:922/922 MP:902/954 ATT939 DFE912 SPD888
スキル:【牙】Max【角】Max【魔法】5/10【眷属召喚】6/10
魔法:【水】4/10【風】3/10【雷】5/10
ユニークスキル:
称号:
このステータスなら、ライリィかルシエル単独でも行けるんじゃない?
そうだよな、強いって言ってもCやDランクの冒険者から見たらだもんな。うちの連中はミランダリィさん以外は実力的にAランクオーバーだからな。ちょっと拍子抜けしたよ。
『ボルトが出るまでも無さそうだね。シルビア達で十分みたいだよ』
「確かにそのようでございますね」
『あれ? ルシエルも【鑑定】できたっけ?』
「はい、私は【魔眼】と【天眼】を持ってますので、どちらでも相手の強さを見る事ができます」
『へー、じゃあ、【鑑定】できるのはシルビア以外にもいたんだな。ボルト達も【魔力感知】や【気配感知】で、ある程度強さは分かるみたいだけどね。でもスキルまでは分からないみたいだから、今後は注意しないといけないスキルがあったら教えてあげてね』
「かしこまりました、ご主人様」
『じゃあ、シルビアとライリィとルシエルで行く?』
「わかった」「了解なのニャ」「かしこまりました」「らじゃー」
あれ? また多くない?・・・・あ、またパルか。
シルビア達が荷台から降りるとまたビッグホーンキングが咆哮した。
ボオォォォォォォォォォォォォォォォォォ
今度は低い唸り声のようだった。そして、その咆哮が終わらぬうちにビッグホーンキングの周りに魔物が多数現れた。
グレーのビッグホーンが10体。黒いやつと赤いやつも混ざっている。魔物名はビッグホーンファイターとビッグホーンメイジ。
ビッグホーンキングの低い咆哮はまだ続いている。魔物もまだ増え続けている。やつのスキルにあった【眷属召喚】を使ったようだ。
そんなに沢山出せるの? ビッグホーンキングより強い奴はいないけど、数が多すぎないか?
『どうする? ボルト達にも出てもらうか?』
「大丈夫」「問題ないのニャ」「お任せください」「あれぐらいやったらまだまだ足らんわ」
まずはライリィが『グラビティナックル』をビッグホーンキングに向け重力操作で動きを封じた。範囲効果があるので、弱いビッグホーンはその効果で潰れてしまったやつもいた。
「右はうちがもらうでー!」
パルが【召喚魔法】で直径10センチの丸い風のスピリット体を50体出した。見た目は青い人魂のようなものだ。周囲にいる妖精のかけらを集めて仮初の核を入れることで、パルの命令に従順な部下を一時的に創る事ができるそうだ。
出来る事は、その属性魔法をぶっ放す事。MPが無くなるか、仮初の核を消す事でスピリット体は消滅する。
パルの出した風のスピリット体から無数の強力な風魔法が右側の召喚されたビッグホーン達に向かって放たれていく。
「では、私は左側を頂きます」
ルシエルは左側のビッグホーンに向かい、賢者の杖を掲げた。
「シャイニングアロー」
光魔法のレベル5、シャイニングアロー。無数の光の矢が雨の様に降り注ぐ。
ライリィとシルビアの2人はビッグホーンキングに向かって突進して行く。
「瞬歩!」「縮地法!」
ライリィとシルビアはジョブスキルを使い一気に間合いを詰める。
「10連弾!!」「稲妻斬り!!」
ライリィはビッグホーンキングの左隣にいるビッグホーンファイターに、シルビアは右隣にいるビッグホーンメイジに向かって攻撃を仕掛けた。
「10連弾」は文字通りフルボッコの技。「稲妻斬り」は上段下段上段の3連斬りの技。
ビッグホーンファイターもビッグホーンメイジも2人の攻撃に耐えきれるはずもなく、魔石を残して消えて行く。
2人は技を出した後、すぐさま周りの雑魚ビッグホーンには目もくれず、中央のビッグホーンキングに向かって行く。
「雷昇拳!!」「登龍・炎!!」
「雷昇拳」は雷を纏わせた拳を下から突き上げる技。アッパーカットから雷の塊が放たれる。
「登龍・炎」は下段から逆袈裟斬りで振るう剣から剣圧を乗せた炎が放たれる。
どちらも大きな魔物に対して下から上への有効な技だ。
おいおい、息ピッタリだな。
でも、誰も詠唱してくれなかったね・・・残念だよ。
ビッグホーンキングはシルビアとライリィのコラボ技に耐えられるはずも無く、魔石を残してダンジョンに吸い込まれていった。
残った雑魚ビッグホーンは4人で簡単に殲滅された。
ホント強くなってるな。ステータスを見たら楽勝だって分かってたけど、ここまで一蹴するとはね。次元が違ったよ。
この前の魔人のイレブン達にはまだ及ばないけど、東の森のダンジョンでもこの4人で攻略できちゃうかもな。
魔石を回収したらすぐに11階層に降りた。いつまでも、ここに留まってたら次の人達が入れないからね。1時間後にビッグホーンが復活するのは通常の雑魚ビッグホーンらしいから、もう問題無いだろ。
因みにビッグホーンは『鉄の槍』や『アイアンプレート』や『ダークホーンの角』を多数ドロップしてくれた。
ビッグホーンファイターは『攻撃力上昇50%の腕輪』を、ビッグホーンメイジは『鑑定妨害のネックレス』を、ビッグホーンキングは『罠無効の指輪』をそれぞれドロップしてくれた。
全てのビッグホーンを倒したら、ビッグホーンキングがいた場所に宝箱が現れた。
中身は宝石の山だった。ルビー(中)50個、エメラルド(中)50個、ダイヤモンド(中)50個、アメジスト(中)50個、サファイア(中)50個。
魔石もドロップアイテムもあるのに宝箱まで・・・・ダンジョンって宝の山なんだな。
魔石はビッグホーンキングが(大)、ファイターとメイジが(中)雑魚でも(小)だった。
魔石はすべてオレが収納。だって、皆が持ってても使うこと無いし、お金を使う事も無いから換金する必要も無いしね。お金はいくらか持たせてるし、もっと必要ならあげてもいいし、足りないようなら魔物の素材を売ればいいしね。ナビゲーターが煩く言うからオレが魔石を持つようにしてるっていうのもあるんだけどね。
11階層からはCクラスの魔物も出て来た。やはり種類は雑多で、統一性が無い。
ここからも同じメンバーでダンジョンを攻略して行く。
先頭がライリィ、2列目がシルビア、後列がルシエルの3人で攻略して行く。
まだ一撃で倒してるな。まだまだ余裕がありそうだ。
20階層でまたフロアボスの部屋があった。今度は誰も待って無いからすぐにボス部屋へと入って行く。
ここのフロアボスはアイアンタートル、Bランクの巨大亀の魔物だった。
甲羅の天辺まで3メートルある大きな亀だった。
攻撃力はまぁまぁで、防御力が1500と高かったが、スピードが100。超遅い。
これだけ遅いと攻撃したい放題。高い防御力もウシュムガル系の武器を持っているシルビア達の敵では無い。ほぼ瞬殺でこのフロアを通り抜けた。
魔石(大)とドロップアイテムはアイアンタートルの甲羅。ここでも宝箱が現れ、宝石がたくさん入っていた。
東の森のダンジョンでは、ここまで出なかったのにね。ダンジョンによって色々違うんだな。
確かにこれだけ出れば、このダンジョンが人気なのも頷けるな。
21階層からはBクラスの魔物が出だした。26階層からは更にAクラスまでチラホラ出だした。
Bクラスの魔物でステータスの平均が500~600。Aクラスで800~1000。
間の600~800はBの上位とかAの下位とか呼ぶみたいだ。
魔物のクラスは、魔物の種類によって分けられるけど、同じ種類の魔物でもレベルによって強さが違うからね。
さっきのアイアンタートルでもBクラスの魔物だけど、レベルが上がるからと言ってAクラスとは言わないからね。Bクラスの上位と呼ばれることになるからステータスでのクラス分けは結構アバウトみたいだ。
このダンジョンに潜って、そろそろ3か月が経とうとした時に、ラスボスの最終階層に辿り着いた。
21階層からこっち、誰とも会って無い。
20階層のフロアボスだったアイアンタートルは、あの防御力1500さえなんとかすればボーナスみたいな魔物だったからな。相手の攻撃力を下げる魔法とか、自分達の攻撃力を上げる魔法とか、攻撃力の高い武器を持つとか、20階層まで辿り着ける奴ならいくらでもやりようはあるだろうし、その先の21階層からの事を考えると高ランクの冒険者でも20階層で地上に戻る冒険者は多いんだろうな。
確かに21階層からここまではシルビア達も一今まで通りの通常攻撃なら一撃とは行かなかったからね。
Cクラスの魔物だけでも群れで出て来るから、いくら実力差があっても倒し切るまでに時間は掛かるし、今までよりも体力を消耗する。
一番厄介だったのが、Aクラスの上位種と一緒に出て来るBやCクラスの魔物の群れ。
大したことないCクラスの魔物の群れでも、上位種と一緒に出て来ると統率力が凄く向上する。多いだけでバラバラに攻撃をして来る奴らは面倒だけど厄介では無い。
リーダーに統率された群れの連携は非常に厄介で、人への集中攻撃を各方位から行なったり、何体かを敢えて犠牲にして特攻をさせて隙を作り、その隙を狙って別の魔物が攻撃を仕掛けるなど、群れとしての連携を取られると危ない場面が何度かあった。
ピンチの時はハヤテやキューちゃんがフォローに魔法を放っていたが、シルビア達も連携を取るようになり、27階層あたりからはピンチらしいピンチも無くなっていた。
それというのもルシエルがシルビアとライリィに指示を出し始めたのだ。
ルシエルはオレのハイアングル視線の様に俯瞰的に現状を捕える事ができるようで、シルビアとライリィへ的確な指示を出していた。
【魔眼】と【天眼】を持つルシエルだからできたのか、オレの従者だからできたのか。恐らく前者だと思うけど、3Dの様に立体的に、しかも色んなアングルから現状を把握し的確な指示を出す。
27階層からはAクラスの魔物でも複数で出て来る事が増えてきた割に、ピンチと思える事が激減したのはルシエルのこの能力のおかげだろう。
毎日一緒に鍛錬してるせいもあり、仲間の技も知ってるし、仲間もルシエルの賢さを知ってるので反対する理由も無く指示に従うので、スムーズな連携が取れていた。
ある時は各個撃破、またある時は1体集中攻撃。その戦闘に応じた指揮を執るルシエル。30階に到達する前に、ルシエルはスキル【立体視】と【指揮】を会得していた。




