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第53話 護衛の女兵士

投稿したつもりが、投稿されてませんでした。

すみません。

 遅めの朝食を終えるとキュジャリング王国軍の宿営地を目指した。

 ハヤテが【疾風】で飛ぶと(みんな)燥いじゃって寝ればいいのに起きてるから寝るのも遅くなったから、ルシエル以外誰も起きて来なかったよ。ルシエルだけはいつも通り早くから荷台磨きをしてくれてるよ。

 魔物トリオはあまり寝なくても大丈夫そうだ。ボルトは影からあまり出て来ないけど、危険が迫るとすぐに知らせてくれるから起きてるんだろうし、ハヤテも昨夜の疲れも無さそうだ。


 場所はトーラス伯爵から地図に印を付けてもらっていたのですぐに分かった。宿営地が移動されてなくて良かったよ。

 これってこんなに早く到着しても変に思われないかなぁ。でも、早く到着したから良かったのかもしれないし、複雑だなぁ。

 そんな心配をしながら宿営地に到着した。


 トーラス伯爵から預かっている書状を見せて、ヘンリー・アンダーソン大将へ面会をお願いした。

 ここは、ミランダリィさんにお願いして、お任せしている。もちろん【馬車王】もいるけどね、帽子は脱いでいるから認識はされてるようだよ。


 身元確認として冒険者カードの提示を求められたので、ミランダリィさんとオレが冒険者カードを見せるとヘンリー・アンダーソン大将の待つ天幕に案内された。

 因みにおれの冒険者カードの名前はバブルスだった。誰なんだよ! オレの元の名前じゃない事だけは確かだよ。



「これはこれは奥方様、態々遠い所をお越し頂きありがとうございます。メキドナ伯爵からの書状を拝読致しました。本当に奥方様が行かれるのですか?」

 ん? ミランダリィさんとこの人は知り合いなのか? 冒険者に対しての言葉使いじゃないな。


「ええ、私達キャリッジ冒険団が今回の依頼を引き受けたの。私達のパーティは勇者にも負けない程強いから、ご心配には及ばないわよ」

「おお、それは心強い。それなら奥方様はこちらでお待ちになるという事でしょうか? 旅の疲れもあるでしょうから、専用の天幕を用意させましょう」

「いいえ、私も行くわよ。だってこの人さえいれば私達は安全なんですもの」

ミランダリィさんはそう言って【馬車王】の方に目を向けた。


「そんなに強いようには見えませんが・・・ゴホン、これは失礼。こちらの冒険者が・・・ですか? 失礼だがランクを教えてくれるか」

 アンダーソン大将は【馬車王】の姿を見てミランダリィさんの言葉が信じられないとばかりに【馬車王】の冒険者ランクを聞いて来た。

 【馬車王】がどういう風に見えてるのか分からないけど、オレが見ても弱そうだから、安全という言葉がとても信じられないんだろうね。御者の進化形だから戦士でも魔法使いでも無いから強そうではないね。


「違うのよ、ヘンリー。あ、アンダーソン大将だったわね、ごめんなさいね。この人は守る専門。戦うのはこの人の従魔なの」

「ヘンリーで結構です、奥方様。昔の様にヘンリーと呼んでください」

「そういうあなたも堅苦しい言葉使いだから、こっちもね」

 そう言いながら微笑むミランダリィさんだけど、ちょっと怖い。なんか駆け引きしてる?


「い、いえ、私は昔から奥方様の前ではこういう話し方だったと・・・」

「確かにそうね、そうだったわ。ごめんなさいね~」

 駆け引きじゃないね、完全に上から目線だよ。一軍の大将を相手に上から目線ですか、怖いよミランダリィさん。


「い、いえ。思い出して頂ければ結構です。しかしこちらの冒険者がそんなに強いようには見えませんが・・・。奥方様の身に何かあればテルイン様に申し開きが立ちません。奥方様には安全な場所を用意しますので、どうかこの宿営地にてお休みください」

「そんなのダメよー、旦那なんて関係ないわ。こんな面白い・・・いえ、楽しそう・・・い、いえ、保護者として私にも責任があるんだから。私が行かない訳にはいかないわ」

「楽しそう・・・ですか・・・昔からあなたというお方は・・・。でも、旅のお疲れもあるでしょう。まずはゆっくり休まれては?」

「全然疲れて無いわ、すぐに出発するわよ。場所も知ってるから案内もいらないから」

 確かに疲れてないよね。燥いで寝てただけだもん。

 昔から後先考えずに行動してたみたいだね、そりゃアンダーソン大将も心配するよ。


「それでしたら、1人付けさせてください。兵士の中にも冒険者登録をしてる者はおります。学生時代に冒険者として登録をし、そのままにしてる者もいますから。その者を臨時のパーティメンバーとして連れて行ってください」

「そんな事をして後で面倒な事にならない?」

「パーティの中に1人ぐらいなら問題無いでしょう」

「それなら女の子にしてね、うちは女だけのパーティだから」

「女性だけなんですか! それなら5人・・・いや10人お付けしましょう」

「何言ってるの、それは流石に問題になるでしょ。1人でいいわよ」

「そうおっしゃいますが、あなたに何かあったら・・・」

「大丈夫、本当にうちのパーティは強いから。魔人も何人もやっつけてるのよ、だから安心して」


 心配でもっと護衛を付けたい。イヤ、本来なら魔人の所へなんか行かせたくない。しかし、ヘソを曲げた時のミランダリィを知ってるアンダーソン大佐は、渋々ではあるが兵士の中から女性最強の者を1人選んで付けてくれた。

 護衛か・・・いらないんだけど・・・、邪魔だー。オレが話せなくなるじゃないか。

『ミランダリィさん。この護衛、断れない?』

『この流れだと無理ね。ヘンリーは昔から心配性なのよ』

 それはミランダリィさんのせいだよね。


『それならミランダリィさんが留守番というのは・・・』

『それはダメ、私も行くわよ』

 邪魔なんだけどー、このままミランダリィさんごと置いて行ってやろうか。でも、そんな事をしたら後が怖いよな。

『わかった、それならさっさと行こうよ。もうここに用は無いんでしょ?』

『そうね、そうしましょう』


「じゃあ、行くわね。また帰りに寄ればいい?」

「はい、必ず無事な姿を見せてください」

「ホント心配性なんだから。あなたは変わらないわね」

「その言葉、そのままお返しします。場所は迷いの森の中で魔人の巣窟になってるレジン山なんですよ。私の部隊でも勝てるかどうかと考えていた所なんです、心配しない訳がないでしょう。奥方様の無鉄砲さこそ変わってませんよ」


 フォローする側の気持ちをもう少し分かって欲しいなど、まだブツブツ言ってるアンダーソン大将を残し、オレ達は宿営地から出発した。


 アンダーソン大将が寄こした女兵士はアンジー・ローウェルという名前で、今回の遠征部隊では実力的にナンバー3、中隊の副隊長に甘んじているが、剣の達人だという事だ。

 冒険者ランクはC、5年前にCランクに昇格した時に、実家からの度重なる要請と、ある切っ掛けがあり軍に入隊したそうだ。


 女の軍人で冒険者ギルドに登録している者、条件には合ってるね。


 しかしこの女、剣は達人級という事だが何にもできない。

 魔物が現れても荷台から降りない。迷いの森の攻略法は知らない。飯も作れない。食料も持って来てない。本当に役立たずだった。


 ここからはミランダリィさんが指揮してるように見せるため、一人一人に念話で「オレからミランダリィさんに指示を出すので従うように」と根回しをしておいた。

 指示というか相談だな。オレだってどうやるかは分からないけど、ボルト達にはオレが指示を出さないといけないから、事前に伝えておいた。


 宿営地から1時間も行かない場所に迷いの森があった。森の入り口で迷いの森の攻略法を女兵士のローウェルに聞いてみたが、何も知らないと言われた。

 「森の事ならうちに任してやー」と先導してくれたのはパル。

 オレを引くハヤテの前を飛んだり、ハヤテの頭に乗って休憩したりしながらハヤテを誘導してくれた。


 この迷いの森は、やはり普通には通れない森で、一度森に入ると地元の者でも1週間も森から出て来れない事はざらにあるという曰く付きの森である。

 原因は森の精霊レーシー。いたずら好きで見た目は旅の老人。

 森に入ってきた物を遠くから見つめ、樹の妖精トレントを操り道を変えたり襲わせたりして迷わせる。時にはベテランの旅人の振りをして道案内をすると見せかけては迷わせる。

 1週間でも1か月でも迷い人が元気なうちは自分が飽きない限りいたずらを辞めない。森の精霊レーシーに絡まれて命を落としたものはいないようだが、質の悪いいたずら好きの精霊だ。


 この森の精霊ルーシーが絡んで来たが、瞬時にパルが見破りボルトの闇系ブレスで森の精霊ルーシーは消滅してしまった。前回ダンジョンで使った人間が使うならダークストライクという魔法に当たる魔力の塊の上位版、ダークノヴァ。手加減はしたと言っていたが、直径100メートルの不毛地帯ができてしまった。これで手加減って・・・


 森の精霊ルーシーは消滅しても時間が経てばこの森のどこかで復活するから心配ないってパルが言ってたけど、別に復活しなくてもいいんだけどね。


 森の精霊ルーシーを倒してからは、森が深くなって来たのでボルトにそのまま先導してもらって、いつも通り通路を確保してもらう。

 ボルトが出て来た時は、女兵士のローウェルも比喩では無く本当に目が飛び出るんじゃないかと思うほど目を見開き驚いていたが、誰も驚いていない事と従魔であると説明を受けた事で、すぐに落ちついていた。

 すぐに落ち着く辺りは流石だな。


 パルの先導のおかげもあり、1日でレジン山の麓に辿り着いた。

 普通はもんな深い森を馬車で移動する事も考えられないが、この森を1日掛からず通り抜けた事も信じられないと女兵士のローウェルが驚いていた。

 そんな情報すら先に言ってくれなかったよね、もうこいつは当てにしないでおこう。


 山の麓で一泊し、次の日の朝からレジン山の捜索に入る事にした。

 食事はオレが出した。ルシエルに幌馬車モードのオレから降りてもらい、料理を全部外に出した。

 その料理をルシエルが収納し、収納して来た振りをして荷台で食べてもらった。

 ボルトとハヤテは外だから幌で見られてない。

 女兵士のローウェルは、役に立たないくせに3人前の料理をぺろりと平らげた。

 もっといい兵士はいなかったのかね!


 今日は女兵士のローウェルがいるから宿泊タイプに変形できない。シルビア達には我慢してもらおう。

 ホント邪魔な女だよ。


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