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第51話 領主の依頼

 トーラス伯爵からの呼び出しでミランダリィさんとすぐに屋敷に向かった。

 気になるのでオレも付いて行った。

 4人乗りモードの貴族が乗るような屋根付きドア付きの格好良いやつで、黒をベースにホイールやドアに赤のアクセントでお洒落な感じの馬車だ。うん、馬車だ。馬車です・・・


 未だに【変身】でカスタムチェンジできるのは9種類。農馬車、幌馬車、スピードタイプ、2人乗り、4人乗り、8人乗り、防御タイプ、戦車タイプ、宿泊タイプ。

 よく使うのは、農馬車、幌馬車、宿泊タイプ。【変身】のレベルが9/10から一向に上がらない。なにか条件があるのかな。


ミランダリィさんを乗せてトーラス伯爵の屋敷に着くと、【馬車王】を付いて行かせた。



「トーラス伯爵、何か御用でしたの?」

 リビングに案内されたミランダリィさんが挨拶もせず用件を訪ねた。


「急に呼び立てて済まないな。まぁ、そう慌てずにまずは座って話そう」

 トーラス伯爵はそんなミランダリィさんにワインを勧めた。


「トーラス伯爵、私はそんなに暇じゃないの。用件があるならさっさと言ってもらえないかしら」

「まぁそう言うな。話は長くなりそうだからワインでも飲みながら話そう」

 ミランダリィは話が長引きそうな予感もしてた。だからさっさと済まそうと思ってたのだが、そうはいかないようだと渋々納得し勧められたワインを手にする。


 ワインが1つしか出てないよね、わかってたけどさ。


 【馬車王】になって影の薄さに益々磨きがかかってんな。ミランダリィさんの隣に座ってんのにな。

 この【馬車王】が被ってる帽子が怪しくないか? 帽子を脱いだら認識されやすくなるとか・・・

 帽子を脱いでみた。

 なにやら執事が慌ててメイドに指示してる。

 おっ! ワインが出て来たよ。【馬車王】に会釈もして行ったぞ?

 帽子を脱がせると認識されるのか? 今度は帽子を被らせた。誰からの視線も感じなくなった。

 誰も【馬車王】を見て無いね。この帽子ってそんな効果があったんだ、今後も活用して行こう。

 進化してるじゃん【馬車王】も。


「今日、来てもらったのは魔人の件だ。半年前に奥方様から報告を受けて、すぐに手配したのだが、今になっても解決の見通しが立ってないようだ。それで、冒険者ギルドに相談に行ったのだが、管轄外だと言われてな。困っておるのだ」

「それを私にどうしろと? 愚痴を言う為に呼んだ訳では無いんでしょ? 魔人の件という事は依頼よね」

「そうなんだがな・・・しかし察しが良くて助かる。シルビアさんにお願いしてもらえないか? 見てくるだけでいいのだ」

「シルビアは進級したところなのよ。あの子もようやく普通の学校生活を送れるようになった所なの、とても了承できないわね」

 なんか分かんないけど、そうだそうだ! どうせ魔人関係だろ、もっと言ってやれー


「その学校生活の事も含めて、あなた達に協力できる事があるんだが」

「ふ~ん、それは興味深いお話しね。何を協力してくれるのかしら」

 学校関係の話にミランダリィさんが食いついてしまった。

 ダメじゃん! ここは断ろうよ。


「学費は卒業するまで免除しようじゃないか。それと屋敷を提供しよう。今は宿屋で寝泊まりをしているそうだな、この町で学校に通っている者は貴族以外なら家を借りるか寮に住んでいる。宿屋から通ってる者などいないのだぞ、長く住むには相当割高になるからな。冒険者で学校に通う者もいるが、そういう者達ですら家を借りて住んでいるのだぞ」


 やっぱりそうだよなぁ。まだまだ通う事になりそうだから、拠点は欲しいとは思ってたんだよな。

 1つの町で何年もいるのに、ずっと宿屋暮らしって確かに割りに合わないよな。冒険者じゃあるまいし・・・あ、オレ達冒険者じゃん。

 でも、屋敷は魅力があるな、どんな条件を出されるんだろ。


『ミランダリィさん、屋敷は欲しいな。条件だけでも聞いてみない?』

『屋敷がいるの? 自分達で買えばいいじゃない。それぐらい持ってるでしょ』

 オレってそんなに持ってるのか? いや、ミランダリィさんもお金には無頓着な所があるからな、ここは信用すまい。

 タダより高い物は無いって言うけど、ボルト達がいるからなんとかなるだろ?

『いや、トーラス伯爵って領主だよね? その領主の勧める屋敷だよ。良い物件だと思うんだよね。シルビア達もまだまだ学校に通うんなら、家は必要だと思うし、やっぱり聞いてみてよ』

『それもそうね、分かったわ』

 ミランダリィさんも納得してくれて、聞いてくれるみたいだ。


「家ね・・・・」

「そうだ、儂のお奨めだぞ。場所は東門の近くになるので、学校からは少し離れるが、冒険者ギルドは近くなるし便利のいいお奨めの物件だ」

 トーラス伯爵はなんとしても引き受けてほしいから、更に付け加えた。

「もちろん報酬も出そう。経費込みで金貨100枚でどうだろう。金貨500枚相当の屋敷に更に金貨100枚をつけるのだぞ、破格の依頼だと思うが」


 確かに凄そうだね。お金の価値は分からないけど、家だろ? 相当な額だと思うよ。

 その分、相当難しい依頼なんだろうけどね。そんな依頼をシルビアにって、どれだけ過大評価されてるんだ? 冒険者のAランクって、そんなに評価が高いのか?


『馬車さんどうする? 私は受けるメリットはあると思うわよ。でも、シルビア達の学校の事を優先するなら断ってもいいわね。お任せするわ』

 ミランダリィさんが丸投げしてきた。


『オレに丸投げ?』

『だって屋敷が欲しいって言ったのは馬車さんでしょ? 私はどっちでもいいもの』

 そうだ、確かにそうだ。オレが言いました。

 オレが決めるのかぁ、それなら依頼を受けて屋敷を貰うってなるけど、本当にいいのかなぁ。

 こういうのって正解が無いから、判断に困るんだよね。

 魔人はイヤだけど、家は欲しい。むー・・・・


『依頼の詳細って先に聞けないの』

『聞けない事もないけど、聞いちゃったら依頼を受ける事になるわよ。たぶんね』

『そうなの?』

『たぶんね』

 そうなんだ、ここはミランダリィさんの言葉を信じよう。


 う~ん、困ったなぁ。美味しい話だと思うんだよな。屋敷を貰えるんだろ? でも、うまい話には裏があるとも言うしなぁ。

 魔人の件って言ってただろ? 魔人が相手ならボルト、ハヤテ、キューちゃんがいれば問題無いよな。よし、受けよう。シルビア達も強くなってきてるし、逃げるぐらいはできるだろう。

 少し学校を休む事になるけど、家はあった方が便利だもんな。


『ミランダリィさん、受けよう。受けるって返事して』

ミランダリィさんは頷き、トーラス伯爵に依頼を受ける事を伝えてくれた。


「そうか、ありがとう。助かる」

 トーラス伯爵は頭を下げた後、執事に目配せをした。

 トーラス伯爵からの合図を確認すると執事は部屋から出て行った。

 トーラス伯爵からは依頼内容についての話を長々と聞かされた。


 依頼内容としては魔人の状況確認。討伐できれば討伐してくれても構わない。

 その報酬としては、さっき言った金貨100枚と屋敷とは別に、魔人1体に付き金貨500枚。魔人の死骸との交換になる。


 何故こんな状況になったかというと、軍が国境を越えられない事態が起きている。

 というのもキュジャリング王国の軍が国境に到着してから3ヶ月経つが、国境を軍が越える許可がワンワード王国から降りなかった。逆に国境付近に陣取ったキュジャリング王国軍が居座り続けると戦争の火種を作った側として見られるので、撤退をしなければならない状況になってきた。


 今の所は、ワンワード王国も魔人の確認がハッキリと出来ていないから何かと理由を付けて国境付近で粘っているキュジャリング王国軍も、そろそろ撤退しないと本当に戦争に発展しかねない状況になってきた。


 ワンワード王国は難癖を付けて戦争がしたい。しかも自分達が有利な状況で。

 キュジャリング王国は戦争はしたくないが、魔人を討伐したい。その理由は魔人が勇者の子を狙っているからに他ならない。


 軍が国境を越えれば、キュジャリング王国が戦争を起こした側として見られるだろう。

 軍の中にも英雄と呼ばれる程の強者はいる。

 だが魔人と五分で渡り合えるかもしれない者は准将・少将・中将・大将の将官クラスにも極僅かしかいない。

 だから強者を呼ぶために勇者を召喚したりもする。


 だが、勇者は魔王を倒す為に召喚されるのであって、戦争の為に召喚される訳では無い。

 戦争の為に勇者を召喚する国もあるようだが、キュジャリング王国では、魔王討伐にのみ勇者は召喚されている。今回のように魔人や魔物の討伐であれば勇者を投入するが、戦争には利用しない。だが、その勇者も今は魔王討伐の為に異世界に行って行方不明である。


 今回の遠征にも1人、英雄と呼ばれる強者がいた。

 ハイラック・ワッセル中将は数少ない強者の1人だ。

 勇者には及ばないものの、魔人であれば対等に渡り合える程の実力者である。

 ハイラック・ワッセル中将は、小隊(30名前後)よりも少ない分隊(5~11名)での潜入を志願したが、今回の遠征隊の隊長であるヘンリー・アンダーソン大将に却下された。


 それは、少数精鋭で部隊を組んでもワンワード王国にバレれば戦争の火種はキュジャリング王国側になるし、何よりワッセル中将を失いたく無かったからだ。

 魔人が1体2体であればワッセル中将でも編成メンバーによっては結果を残して来るだろう。

 しかし、今回は未確認とはいえ、魔人が最大で13体に下位魔人クラスが何体いるかも分からないという討伐作戦内容だ。

 そんな所に大事な部下を行かせる訳にはいかない。アンダーソン大将は越境の許可が降りるのを待つしか無かった。越境の許可が降りなければ、これ以上この場で留まる訳にも行かず、軍を引き帰らせるしかない。

 せめて魔人の詳細確認ができれば事態も変わるが、斥候も出せない。そこで、トーラス伯爵に話が来たという事らしい。


 だいぶ主観が入ってたよね。酒が入ってるとはいえ、何割り増しの話なんだろ。

 面白可笑しく聞かせてもらったから、退屈はしなかったけどね。


 結局、魔人の棲みかに行くはめになるのか。家のためとはいえ、早まったかな?


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