第50話 学校にて(閑話)
誤字報告ありがとうございます。
~シルビア~
「今日からこのクラスに入る事になったライリィさんとシルビアさんとルシエルさんです。皆さん、仲良くしてあげてくださいね」
若い女の教師が私達3人を紹介してくれた。
私達の担任で、1年生の全教科を教えてくれるカサンドラ先生だ。
私達は今、1年生の教室にいる。
なんで学校に来る事になってしまったんだろう。ミランダリィさんのせいだ。でもここまで来たら逃げ出す事も出来ないよね。ライリィとルシエルは嬉しそうにしてるし、私が少し我慢すればいいだけね。
少し通って辞めたいと言えば、馬車さんも許してくれるよね。
こんな事になるんなら、ミランダリィさんは王都に帰ってもらえば良かった。
「さぁ、それぞれ自己紹介をしてください」
カサンドラ先生に促され、隣のライリィが自己紹介を始めた。
「ライリィです。よろしくお願いします」
パチパチパチ・・・
生徒達が拍手で歓迎してくれた。ライリィも堂々としている、いつも通りのライリィだ。
「さ、次はあなたよ」
「はじめまして、シルビアです」と頭を下げた。
パチパチパチ・・・・
ライリィの時と同様に拍手で歓迎された。
恥ずかしいなぁ。
続いてルシエルも自己紹介をする。
「ルルルルルルシエルです。よよよろしくおねがふ・・・」
噛んだ。
教室中、大爆笑だ。
「みんなー、笑っちゃダメよー。さ、拍手で迎えてあげてね」
パチパチパチパチパチパチ・・・・
一番大きな拍手が起こった。
ルシエルはガックリと両手を床に付いていた。
カサンドラ先生の指示で席に着くと、授業が始まった。
ここは普通科コースの教室、一般的な授業で広く浅く教えてくれる。
言語、算術、地理、歴史。
全部を教えてくれるが、当たり障りの無い程度に教えてくれる。
もっと専門的に教えて欲しかったら専攻で選ぶ事になる。
専攻でも物足りなかったら、王都にある大学に行って学ぶしかない。特に成績の優秀な者は推薦される事もある。
1時限目が終わり、専攻を取っている者達は教室から出て行く。残ったのは半分もいなかった。
今日は初日だから、最後までこの教室にいる予定だ。
2時限目が終わると、出て行く者がいれば帰って来る者もいて、結局は半分ぐらいの人数になった。
教科は言語、算術、地理、歴史の順で、教科書は無くずっと聞いてるだけ。先生が黒板に書いてくれるのを自前の紙に書き取って行く。
先生の持っている教科書は紙だから高くて支給されていない。
ライリィは一生懸命、紙に書き込んでいる。ルシエルはまだぽーっとしている。心ここにあらずだけど、4時限目が終わってもぽーっとしていた。
私は習った事があった事をやってたので、聞くだけで紙には書かなかった。
私達と同じように専攻を取らずに、1日この教室にいた者もいて、1時限終わる毎に話し掛けてくれる子もいた。
普通だった。
エイベーン王国の学校だと、休憩の度に言い寄る者達がいて、凄く鬱陶しかった思い出がある。
でも、ここは普通だ。なんか嬉しかった。
話し掛けてくれる子も、取り入るという感じなんか無くて、困ってない? 大丈夫? みたいな事を言ってくれる。
ライリィは「大丈夫だよ~」って軽く答えてるし、ルシエルは「あわわわわ」言ってるし、その度に笑われてるし。
普通だね。今回は飛び級でもないし、周りも同じ歳ぐらいの子がたくさんいる。ライリィとルシエルみたいに年上の人も何人もいる。でも、皆一生懸命授業を聞いていて、遊んでいる子なんかいない。
昨日の試験で1年生になったと言われた時は、特別扱いされていないって思って、嬉しかった。
学校ってイヤだったけど、これなら続けられるかな。
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~ルシエル~
カラーン・カラーン・カラーン
3回鐘が鳴り、授業開始の合図を知らせる。
生まれて初めて学校に通わせて頂けるようになった。
自分には縁が無いものだと思っていたのに、嬉しくたまらなかった。
4ヶ月経ったが、未だに初日のミスが尾を引いている。
大失敗だった。
死んでしまいたかった。
あんな簡単な言葉で噛んでしまうなんて・・・・
でも先生は優しく言葉を掛けてくれた。同級生達も温かく接してくれた。
学校っていい所ですね。
入学して4ヶ月、大分学校にも慣れてきました。なので、色々見逃してはいけない問題がある事に気が付きました。
シルビアの算術が破滅的にダメな事が分かりました。
ライリィの言語? 算術? 序の口です。
これはパルに標準語を教える事より難しいかもしれません。
最近、やっと10までの足し算を覚えてくれました。手の指が10本あるからです。
11になった時点で、考える事を辞めるようです。
ご主人様の為にも皆で一緒に進級したいのですが、このままだと危ないです。
私が1番お姉さんなんだから、私が何とかしてあげないといけません。
そこで、私は考えました。
シルビアは魔物を倒すのが大好きです。剣も大好きです。魔術も大好きです。
言語の書く事が少し苦手なのと、算術が地獄級なのを何とかするだけです。
いつも昼から行っている魔物討伐で、魔物の数を数える事を義務付けました。私が言うとあんまりやってくれないから、ミランダリィさんにもお願いしてシルビアに言ってもらいました。私はシルビアの横で、数える補佐をしました。
するとどうでしょう。すぐに足し算と引き算ができるようになりました。本当は出来る子だったんです。ただ、面倒くさがり屋さんだっただけなんです。
シルビアは脳筋ではありません、やればできる子なんです。
次は掛け算です。どうやって教えればいいのかミランダリィさんと相談中です。
もう進級は間違いないので、ゆっくりと考えます。
あ! ライリィもだった・・・。
私が1番お姉さんなんだからライリィも出来るように教えてあげなくちゃ。
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~ライリィ~
学校は楽しいニャ。でもボルト様と鍛錬してる時が1番楽しいニャ。
もう、魔物もたくさん倒せるし、この間はボルト様が瀕死にしたケツァルコアトルを倒したら『ドラゴンキラー』の称号が付いたのニャ。
ご主人様から貰ったガントレットも最高ニャー。ルシエルの援護があったらウシュムガルでも倒せるようになったのニャ。ルシエルの魔法は凄いのニャ、最初はキューちゃんに教えてもらってもニャにも出ニャかったのに、魔法が出だしたら、すぐに強力な魔法が出だしたのニャ。『魔破光』という魔物が凄く苦手としてるレベル5の光魔法らしいのニャ。
ニャんでも、無詠唱という凄い技術らしいのニャけど、ご主人様が凄くガッカリしてたのを私は見たのニャ。
見た目はわからニャいけど『詠唱は?・・・無いのか・・・』って言ってたからすぐに分かったのニャ。
ルシエルと共闘したからニャのか、最近はルシエルがよく魚の話をして来るのニャ。
小さな魚が10匹で大きな魚に進化します。進化したら大きな魚が1匹になります。
そんな訳ないのニャ!
でも、毎日そんな事を聞いてたら学校の算術の成績が上がったのニャ。
何かの魔法だったのかニャ? さすがだニャ、魔法使いは凄いのニャ。
わたしも雷魔法は得意なのニャ。他の魔法も覚えて損は無いですよってルシエルが教えてくれたニャ。
書くと覚えやすいよって言うから、ご主人様に紙を貰っていっぱい書いたのニャ。
書くのは好きなのニャ、ただ何を書いたのか読めないだけなのニャ。横でルシエルが解読をしてくれたから、だいぶ分かるようになって来たのニャ。
そしたら言語の成績も上がったのニャ。
ルシエルは凄い魔法使いなのかもしれないのニャ。




