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第5話 自分の過去

誤字報告ありがとうございます。



一瞬だが凄い激痛が身体中を走った。

馬車になって初めての痛みだった。


8つある視線も今は眩しくて見えない。

前・荷台・右・左・後ろ・ハイアングル・上向き・下向き。

全部眩しくて見えない。


ようやく光が落ち着いて来ると8つの視線に映像が見え出す。


そこには女の子が映っていた。

赤ちゃん、幼児、と順に大きくなって行く姿が1つ1つの視線に映し出されていく。

小学校入学になるとシルビアである事がわかった。

7つの視線の画面には大きさの違うシルビアが映っている。

これはシルビアの記憶のようだ。7つあるのにすべて理解できる。

8つ目の視線の画面には荷台の今のシルビアが映っている。が、静止画像だった。

現在のシルビアを映す画面は止まっていた。


勇者の子として生まれ、勇者の子として育つシルビア。

初めは皆から祝福を受けている。魔法使いや剣士にも個人的に教育を受けている。

それも5歳まで。

5歳になると勇者である父親が帰って来なくなった。

その頃から魔物に興味を持ちだすシルビア。

シルビアが持った興味とは魔物と仲良くする事だった。


本来10歳にならないと入れない学校も英才教育と素質の高さで5歳から飛び級で入学。

もちろん勇者の子という事もあり国からの推薦もあった。


5歳といえども15歳で卒業の学校の最上級生の平均と同等の実力を持ち、家は裕福であり勇者の子という称号。

周りにはチヤホヤ持て囃やすだけの者しかいなかった。

それは大人も子供の同じだった。友達は1人もいなかった。

シルビアの友達は魔物や動物だけだった。


ピカ――ッ! また視線画面が明るくなって行き視線は光で何も見えなくなる。

光が落ち着いて来ると今度は男の子が見えて来る。


やはりシルビアの時と同じように赤ちゃんから幼児、小学生と大きくなって行く画面が次々に映し出される。

その男の子も普通では無かった。今のシルビアと同じぐらいの頃に小学校に入学。

その頃には特Aクラスに入り大きな子に混じって授業を受けている。

見た目的には小学3・4年生ぐらいに見える頃には、さっきのシルビア同様友達がいなくなっていた。

取り巻きも初めの頃はいたが、中学に入った頃から誰も彼の傍に近寄る者がいなくなっていた。

彼の方から他者を寄せ付けない威圧を放っていた。


彼の通う学校は中学以上になった頃から学校名が日本特別ESP養成学校となっており、彼はその中でも常にトップに立っていた。

それもずば抜けた成績で卒業後は約束された人生が待っていた。

もう少し我慢すればこんな嫌な学校にも来なくてもいいと思っていた。


交流合同体育大会が最後の映像だった。

大型特殊機械工学学校VS日本特別ESP養成学校。日本を2分する乗者型ロボットVS超能力の力試しの場である体育大会で事故が起こり、そこで彼の人生が終わった。


最終プログラムである、大会の花形の対抗実戦で大型特殊機械工学学校のロボットが運搬車兼ミサイル砲台から飛び立つと運搬車が暴走した。ロボットの方は乗者型だったが運搬車兼ミサイル砲台の方はフルオートの無人型だった。

10台もの運搬車が暴走しミサイルを乱れ打ちする。

彼は頑張った。一緒に出た競技者が逃げ出す中、こんな奴ら助ける義理も無い、さっさと逃げるんだ。と思う彼の想いとは裏腹に彼は暴走する運搬車の前に立った。

得意の念動力で次々に運搬車を破壊して行く。

放たれたミサイルも彼の念動力で自在に操りミサイル同士でぶつけたり運搬車に向かわせ爆破したりしたが、「たかが荷馬車の分際で人間様に逆らうんじゃねー!」この言葉を最後に彼の力が尽きた。力を使いすぎて生命力が無くなったのだ。1人で対峙するには相手が多すぎた。


これオレじゃーん! 思い出したよー。あの死んだ奴オレだしー。やっぱり人間だったじゃん、なんで馬車になってんの?


画面はまた眩しく光って見えなくなった。

光が落ち着いて来ると、さっきまでの画面に戻った。シルビアも動き始めた。


えーー!? オレって出来る奴だったし、逃げてれば死ななくても良かったのにそれでも頑張って事故から皆を守ったのに何で馬車? ありえねー。これって酷くねー?

《最後の言葉が切っ掛けになったようです。》

え? 何て言ったっけ? さっきの映像でも言ってたな。

まさか『たかが荷馬車の分際でー』ってやつ? うっそー! それだけ? そんな事ぐらい言う奴いるだろー。




「ちょっと行って来ようっと。」

装備も終わったシルビアがどこかに行こうとしている。


あ、ちょちょっと待て。おい! 待てって。オレは今猛烈に考え中なんだ。

今動かれると考えが纏まらねー。お前もオレと同じでボッチだったんだろ?

オレの声が聞こえねーか? オレもESP学校のウルトラ優等生だったんだ。テレキネシス・テレポート・テレパス。この3つの中でもテレパスは2番目に得意だったんだ。

今なら思い出したから使えるはずだ!

『行くなーー!』


「え? 誰?」

おお! 通じたぜー。

『オレだー、行くなー。』

「行くな? って誰?」

『オレは・・・・。誰だ?』

「なにそれ? ちょっと行って来ようっと。」

『待てって、パン、そうだパンだ。パンを出してあげた者だ。』

「ふ~ん、ごちそうさまー。」

そう言ってシルビアは馬車から降りた。


『ふ~んって、全然信じちゃいねーだろ、おい! 戻って来い! おーい。』

あれ? 馬車から離れると聞こえて無いのか? 反応が無いぞ?

そんなはずは無い、オレは優秀だったんだ。この○○○は誰からも追随を許さぬ優等生だったんだ!○○○様と呼ばせてやるぜー。あれ? やっぱり名前が思い出せない。

あれー? オレの名前って・・・・。

《名前はまだありません。》


いや、あるって。あったって、思い出せないだけだって。

《名前はまだありません。》

『・・・・・・。』


それよりシルビアだ。どこ行ったんだ? 

ハイアングル画面だと馬車の少し回りしか見えないから【ズーム】か。

【ズーム】を使うぞ。

半径5キロメートルだから直径10キロの周辺が見れる訳だ。


シルビアはーっと、あ! いたいた。ズームインだ。

勝手にチョロチョロすんなよー、だから子供は嫌いなんだ。言う事聞かねーし。ジッとしてろっつーの。で? 何やってんの?


おい! それは魔物じゃないのか?

シルビアはネズミ系の魔物と対峙している。『スモールキラーラット(魔獣):LV3』と出ている。【鑑定】も同時に使えたよな。【鑑定】してくれ。



【鑑定】

名前: なし

分類: スモールキラーラット(魔獣)LV3

HP:6/12 MP: 8/8 ATT12  DFE11 SPD13

スキル:【牙】1/10

ユニークスキル:

称号:


大きさはシルビアの半分ぐらいだけど、弱いな。武器・防具も持たせたから大丈夫だろうけど、何やってるんだ。こっちはゆっくり考え事をしたいんだよ。

でもシルビアってカッケーな。武器の使い方も様になってるよ。魔法も使えるし勇者の子って伊達じゃないな。

あ、こういう言われ方ってイヤなんだろうな。


早く戻って来―い。

シルビアを見ているとスモールキラーラットを5体倒し、収納して戻って来た。

戻って来たシルビアは馬車の横まで来て倒したスモールキラーラットを収納から出し、にらめっこしている。

「解体はやったこと無いのよね。どうやってやるんだろ。」


あそこなら届くかな? オレの収納の範囲がわからねーけど試してみるか。荷台でしか出し入れ居た事ねーからな。

【亜空間収納】だ。

お、届いたな。

《解体しますか?》

『イエース』

《スモールキラーラットは解体されました》

【亜空間収納】を確認してみると、肉、毛皮、素材、廃棄に分類されていた。


「あ、また急に無くなった。あれ? あれ?」


『スモールキラーラットの肉を出す』

シルビアの前に肉が出て来た。


「あれ? 今度は解体された肉が出て来た。どういう事? やっぱり誰かいるよね? さっきオレって言ってたのは誰だったんだろう。」


ま、いくらファンタジーでも普通は馬車がしゃべるって思わねーよな。

オレ自身、まだ信じられねーもん。


シルビアは肉を収納し、また森に入って行く。

今度は森の入り口付近で香草を探してたようだ。

香草を見つけたシルビアはさっきの魔物の肉を出し、拳大に切りながら香草を巻いて行く。

収納から肩下げ鞄を出し香草を巻いた魔物肉を入れた。

その鞄を荷台に放り投げるとまた森に入って行く。


今度は木を拾いに行ったようだ。落ちている木をたくさん収納し戻って来る。


この世界の子ってこんなに小さくてもこんな事ができるの? この子だけができるんじゃないか? でも凄いよな、オレにはできねーわ。


『地に眠る妖精よその芳しき息吹を大地に放ちここに穴を開けよ〈アース!〉』

シルビアが呪文を唱えると直径1メートルぐらいの穴が開いた。深さは30センチぐらいだった。そこに拾い集めた木を出し再び呪文を唱える。


『炎の精霊よ我が手に集い来たれこの木を燃やせ〈ファイア!〉』

木が燃えて焚火ができた。木もたくさん取って来ているから大丈夫だろうが、夜通し火の番をする気か? オレは眠らなくてもいいからっていうか寝たいけど眠れないだけなんだけど、火の番ぐらいなら代わってやってもいいんだけどね。

収納から出すだけだろ? それぐらいやってやるよ。その燃やす木をオレは持って無いんだけどな。


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