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第46話 学校


朝食を皆で食べていると、今日から学校の3人の表情がおかしかった。

いつも通りのライリィ。

にやけながら、時折なにか呟いて恥ずかしそうに身悶えてるルシエル。

どんどん暗くなって行くシルビア。いつも2人前は食べるのに、今日は1人前しか食べて無い。


ライリィはいつも通りだからいいか、ルシエルも、まぁ放置でいいだろ。シルビアは大丈夫か?

以前にオレの生前の記憶とシルビアの記憶がシンクロした時に見えた感じだと、学校は嫌いかもな。

でも、ミランダリィさんも言ってたけど、ここにシルビアを知ってる奴はいないんだし、気にしないでいいと思うんだけどなぁ。トラウマになってんのかな?

言っておくがオレは引きこもりじゃないからな、ただの詠唱フェチのオタクだから。学校はちゃんと行ってたんだからな。

シルビアは、引きこもりだったな。あの時の記憶だと、家庭教師の様なものは付いていたみたいだけどな。

教わるのは主に剣術と魔術なんだろうけど、他の実力はどうなんだろ? 

学校も何を教えてくれるんだろうね。国語・算数・理科・社会では無いだろうね。


食事も終わり、3人を学校に送って行く。

学校の場所は、中央区画の貴族の真っ只中。塀の中だった。


この町には塀が2つある。

1つは外塀。魔物の進入を防ぐ為のもの。

もう1つは貴族と平民を分ける為の塀があった。

外塀ほど大袈裟な物ではないが、貴族と平民を分ける為に設けているのだろう。

この町の中央に建っている城には外堀があり、橋が掛かっているので塀は無い。


今回は貴族区画との境にある塀の門を通る事になる。

こちらにも門があるが、ずっと開放されてるようだし誰も見張りには立ってはいない。有事の際に使われる物なのだろうな。市民の暴動とかかな?


誰もいない門を通るとすぐに学校があった。

正面に見える校門には『裏門』と書いてあった。

たぶん、逆側に『正門』があるんだろうね。そっちは貴族専用とかになってるのかな? 色々ややこしい事が起こりそうな設定だね。

『裏門』と書かれている校門でシルビア達3人を降ろすと、ミランダリィさんも付いて行った。初日だから保護者として付いて行ったのかな? そういう相談や報告はしない人だよね。

確かにオレが聞いてもなんにも出来ないけどさ、一緒にいるんだから聞いておきたいよね。

オレも【馬車主】を付いて行かせる。

魔物トリオは馬車の所で待機。パルも五月蝿いからキューちゃんと待たせておく。


校舎に入ると、校庭が見えた。

4つの建物に囲まれたグランドだ。

3階建ての校舎が2つに体育館のような建物が2つ。対面同士で建てられている。


予想だけど、学科と実技で分けているんだろうな。


まずは入った校舎の1階にある、教員待機室と書いてある所に全員で入っていく。職員室の事だろうな。

全員が入ると、スキンヘッドのムキムキ筋肉マンがこちらに寄って来る。

「何かご用ですか?」

見た目の割りに優しい声だった。もしかして、あっち系?

「今日からこちらに通う事になったので、引率して連れて来ましたの」

ミランダリィさんが代表して答えた。

「新入生でしたか。領主様より話は伺っております。私は教頭のウィグルと言いますが、連絡があったのも3人ですし、こちらの3人が入学されるという事で宜しいでしょうか?」

そう言って教頭はシルビア、ライリィ、ルシエルの3人に目をやる。

 

 「はい、そうですわ」

 ミランダリィが3人の名前を言いながら教頭に紹介した。

 

 「希望のコースと専攻はありますか?」

 教頭の言うコースとは学科の事で、普通科、魔法科、冒険科の3つがあり、貴族は魔法科を選択する場合が多い。魔法と言っても攻撃魔法や防御魔法だけでは無い。

 火魔法にしても、少しでも使えれば木に火を点けたりすることが出来る。

 生活魔法程度の事から教えてくれるのが魔法科だ。

 一般市民の子は普通科を選択するケースが多い。

 読み書きの言語科、計算などの算術科を中心に、国の地理や歴史も教えてくれる国土科。

 逆に冒険科は普通科で教える事を薄めにして、戦闘に特化した剣術や魔法を教えてくれる。


 このメキドナの町を中心としたメキドナ領にはダンジョンが2つあり、以前シルビアと一緒に行った東の森のダンジョンは攻略レベルが高すぎてほとんど冒険者が訪れる事は無いが、西の森のダンジョンは非常に人気が高く、訪れる冒険者が後を絶たない。

 その為、冒険者になって西の森のダンジョンに挑むが、中々ダンジョン攻略が上手く行かない冒険者が20歳を過ぎてからこの学校に入学して来る事も珍しくない。

 学校に通えるのは8~15歳だが、その年齢の子達にはキュジャーグ王国からの補助金とは別にメキドナ領からも補助金が出ていて格安で学校に通える。

それ以上の年齢の者は補助金が無いだけで、学費さえ払えば学校に入れる仕組みだ。


子供達に対しては後進の育成のため。冒険者に対しては死なないようにするための教育として門戸を開放している。

なので、冒険科には半分は16歳以上の大人が占めていた。ランクGやFの冒険者達だ。


今回シルビア達の学科は普通科になった。

ミランダリィが独断で決めてしまった。

3人共冒険科が希望のようだったが、言語科と算術科が多く学べる普通科にしたようだ。

オレもそれには賛成だ。聞く所によれば、まだまだ識字率は低いようだし、計算に弱い者も多いようだ。読み書きと計算ができれば、冒険者にならなくても食って行けるだろうしね。


専攻の方だが、こちらにも基本の言語、算術、歴史、地理、剣術、魔法もあるが、他にも酪農、農業、土工、建築、鍛治、裁縫、採取、解体、罠発見・解除など、細かく分かれている。


授業は1日4時限。8時に開始で50分授業の10分休憩。

必ず選択コースは1時限は受けなければならない。

専攻学科は毎日は変わる。今日は酪農、明日は裁縫というように変わるので、専攻している学科が無い時は選択コースを4時限受けてもいいし、専攻してない教科でも前日に予約をして空きがあれば受けてもいい。

その場合、15歳以下の子は無料だが、16歳以上の補助金対象外には実費が発生する。


4時限目の終わりには食堂が解放され、学生なら無料で食べられる。

ここでも料理の勉強が出来る。

料理は2時限目頃から始められるので、料理を手伝う事で単位も取れる。

僅かではあるが給料も出る。

将来、料理人を目指す子達には、いい勉強の場でもある。


授業を受けてみない事には何とも言えないが、中々いい仕組みになっているようだね。

トーラス伯爵が力を入れているってのも頷ける内容の学校だな。



コース学科も決まり、シルビア、ライリィ、ルシエルの3人は今から試験を受けるようだ。

コース学科にはそれぞれ1クラスしか無いが、学年レベルはある。

8歳の1年生から15歳の8年生まで当然同じレベルでは無い。

年齢はあくまでも目安であり、能力に応じて学年分けされる。今回はそのための試験だ。

筆記試験と実技試験。それで半日潰れる様なので、オレはミランダリィさんと町で買い物をする事にした。


まずはサンのアクセサリー屋に行った。

パルが「首輪ー!」って喧しかったから。

オレ1人で行くと何とか認識してくれるが、ミランダリィさんも一緒なので思った通り無視された。

なので、ミランダリィさんに通訳をお願いした。

パル用の首輪用にはEクラスの魔物の魔石で1センチ角の物を出した。

パル用の小さい剣と収納バッグについても聞いてみた。

剣は専門じゃないので分からないが、収納バッグについては素材さえあれば造ってくれるそうだ。

オレが造った時は、ウシュムガルの皮にルビーとシーホース。サンもその素材なら造れるというので、素材を置いて製作をお願いした。


次に武器屋に向かった。

もちろんパル用の小さな武器は無いので、裏の鍛冶屋に行ってオーダーした。

オーダーは長さ10センチの剣。

ウシュムガルの爪を1本出して、残りは買い取りにしてくれって言ったら差し引き0でタダになった。

本来、これだけ小さいと造りにくいらしいので割高になるそうだが、ウシュムガルの爪という見た事も無い物を提供してもらったので、差し引きタダにしてくれた。

鞘もサービスで造ってくれるそうだ。鍛冶屋は「逸品を期待していてくれ」と気合の籠った返事をしてくれた。


町の端で食事を摂り、学校へと戻った。

そろそろ試験も終わった頃だろう。


ミランダリィさんと【馬車主】で学校に入るとシルビア達が教員待機室で座って待っていた。どうやら試験は終わったようだ。

今は採点しているので待っているように言われているようだった。

少し待っていると奥から教頭が出て来た。採点は教頭がしていたようだ。

教頭はミランダリィさんに気が付くと、奥の部屋まで来てもらうようにミランダリィさんに頼んでいる。

ミランダリィさんが奥の部屋に向かうと【馬車主】も一緒に付いて行った。

どうせ居ても分からないだろうし、オレも結果は気になるからね。


結果は3人共、冒険科を薦められた。

3人共実技が素晴らしいとの事だった。

シルビアの剣術、ライリィの体術、ルシエルの魔術。すべて冒険者でも高ランクの水準であるから、もっとこの学校で伸ばしてやりたいと教頭が言ってくれた。

既にシルビアはAランクだからね。当然の結果だな。

しかし、ミランダリィさんは首を横に振る。

筆記試験の試験結果が無残過ぎた。

言語のレベルは、ルシエル3年生、シルビア2年生、ライリィ1年生。

算術のレベルは、ルシエル4年生、シルビア1年生、ライリィ1年生。


うん、酷すぎるね。

ライリィは兎も角、シルビアは家庭教師が付いてたんじゃないの? 算術の1年生レベルって何なんだよ! 魔法の詠唱は格好良いのに読み書きの言語が2年生レベルって・・・有り得ないぞ。

ミランダリィさんが3人共普通科の1年生を強く希望したので、教頭は断る事も出来ず、3人共普通科の1年生になる事になった。

ミランダリィさんもこういう時は頼りになるね、さすが教育ママだ。

ルシエルは少しレベルが上だが、初めての学校という事もあり、3人一緒の方がいいだろうという事で1年生にした。

オレも賛成した。まずは同じ方がルシエルにとってもいいと思う。

もっと上の勉強したければ専攻の方を多く取ればいいだけだしな。


ミランダリィさんから3人に話をした。

3人には結果は伝えず、明日から普通科の1年生になる事を伝えると3人共笑顔で喜んでいた。別に何年生でも良かったみたいだ。

シルビアが喜んでいたのが意外だったが、特別扱いでは無く、年齢通りに1年生から通えるのが嬉しかったようだ。

 

 その夜は、オレの料理でお祝いをしてやった。

 デザートに何か甘いものを考えたんだけど、まだ砂糖を入手していないので、レパートリーにはあるみたいなんだけど造れない。

 蟻蜜を持ってたので、卵もあるしホットケーキを作ってやったら大喜びしてた。

 女子は甘いものが好きだからね。

 

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