第43話 職業(ジョブ)
服屋では購入した服をそのまま着て来ているので、全員可愛らしく仕上がっている。
ミランダリィさんの趣味は、こういう感じなんだね。ちょっと暗い感じだけど落ち着いた感じはするね。昨日まで奴隷だった3人もいるからね、燥ぐ感じにはしたくなかったのかな。
今は、ミランダリィさんもシルビアも防具は付けていない。
全員スカート、しかもミニ。あれ? こうやって見ると全員女だよ。別に女だからを集めた訳じゃないんだけどね。偶然だよ偶然。
だって、初めから言うと、シルビアだろ? シルビアは勇者の従魔のバーゲストが連れて来て預けて行った訳だから、オレが選んだ訳じゃ無いし、ミランダリィさんだってそうだ。偶々魔人に攫われた所を偶然助けた事になってるだけだし、ライリィはボルトが見つけた訳だし、妖精って性別知らないし、ルシエルはスキルに魅かれて買ったんだよな。
偶々全員が女だっただけだよ。
逆に魔物は男ばっかりだな。ボルト、ハヤテ、キューちゃん。全員♂だよ。
人間だったらハーレム状態に強い♂の親衛隊が付いてて言う事なしの環境なのになぁ。
人間になれる日って来ないのかなぁ。
馬車から人間に・・・・無理があるな。
この服ってミランダリィさんの趣味なんだろうな、オレは服屋には入らなかったからね。女4人の服の買い物になんか付いていけないよ。
服の色は黒かグレーか濃紺かだよ、華やかな色が無いね。いくら燥ぐような雰囲気じゃなくても女4人なんだから、もう少しぐらいなら赤とか水色とか白なんか取り入れても良かったと思うよ。
ミランダリィさんは濃紺の長袖Tシャツの様なピッタリフィットしたシャツにタイトな黒のミニスカート、茶髪にブルーの目によく合う服装だな。いや、美人だから何でも似合いそうだよ。
シルビアはミランダリィさんと同じシャツの色違い。シャツは濃いグレーにしてプラチナブロンドの髪の色に合うようにコーディネートしたのかな? スカートは黒のミニだけど、少しフワッとした感じのものだ。旋回したらパンツ丸見えって感じ?
ライリィはスカートはシルビアのデザインと同じミニだけど、色は薄めの青って感じ。ジーパンに近い色だな、素材は何なんだろね? シャツは黒のハイネック。ライリィの目の色って何色って言うのかな? グレイ? シルバー? 金髪に黒は合うね、奴隷紋が見えないようにハイネックにしてくれたのかな?
ルシエルもハイネックの黒を着てるもんね。ルシエルは黒のワンピースの中に黒のハイネックを中に着てるみたいだな。結構ゆったり感があるワンピースだけど、腰の所を紐で絞れるようになってるみたいだけど、今みたいに絞らない方がお洒落だね。
ルシエルは白黒のツートンの髪だから真っ黒にはなってないな、目も右目が金色で左目が黒色だしね。服が全部黒だから真っ黒って感じにはなってるよ。
これはミランダリィさんじゃなくて、自分で決めたかな? 「奴隷の私が派手な色などとんでもございません」とか言いそうだね。服はミランダリィさんだろうけど、色は自分で決めたんだろうな。ミランダリィさんの趣味じゃ無さそうだもん。
服装を見る限りは季節は春か秋なのか? それとも季節ってないのかな?
オレは痛覚も無いから温度もわからないからな。ありがたいんだけど、仲間が増えて来ると気を付けてやらないと自分ではわからないからな。
『ミランダリィさん、冒険者ギルドに寄るよ。少し素材を売っておきたいんだ』
「ええ、いいわよ。それならこの子達も冒険者ギルドに登録しておく?」
『え? なんで? この子達は冒険者にはならないだろ?』
「町の出入りに便利なのよ。身分証明として使えるから、どこかのギルドのカードを持っておくと便利よ」
『学校で生徒手帳とかくれないの?』
「せいとてちょう? 学校では何もくれないわよ。市民カードも住んでる訳じゃ無いから出してもらえないだろうし、どこかのギルドカードを取るのが早いのよ。どうせ、偶にボルト達と町の外に行って魔物を獲って来るんでしょ? それなら一緒のパーティに入れておけばいいじゃない」
学校では何も証明書をくれないのか。でも住んで無くても学校には通えるの? 市民カードはどの町でも住んでればその町で発行はしてもらえるか。
『市民カードって?』
「その町の住民になれば誰でも貰えるわ。ただし、税金は払わないといけないわよ」
『どのぐらい?』
「そうねぇ、今のキュジャリング王国なら年収の1割ってとこかしら。よく変動もするから、住民になるなら気を付けておかないとね。昔は3~4割取ってた事もあったらしいわ。今でも他国では5割も取ってる所もあるって聞いた事があるわよ」
『どこに払うの?』
「もちろんお役所よ。でも、馬車さんには関係ないわね」
『あはは、馬車だもんね』
「あは、ごめんなさい。そういう意味じゃなくて冒険者ギルド会員だからよ。冒険者ギルドに入っていれば、報酬から税金が引かれてるの。買い取りでもそうよ、何割かは忘れたけど、冒険者ギルドに引かれるので、冒険者ギルド会員は税金が免除されてるの。少し条件はあるらしいけど、冒険者ギルドが代わりに支払ってくれるのよ。何も言われて無いんだったら条件をクリアしてるのね。」
へ~、そうなんだ。それなら登録だけでもしておいたらいいか。
『じゃあ、ライリィとルシエルは登録だけでもしておこうかな。パルはどうなるの?』
「パルって?」
『あ、妖精の事。ディーディパルって名前が長いからパルって呼ぼうかと思ってるんだ』
「え――! ご主人様ー! そんなニックネームまで付けてもらってええんですか? なんか得した気分やわ。おおきに~」
自分の名前が出て来た事でパルがしゃしゃり出て来た。
パルは自分の手や足を確認している。「眠むならんなぁ」とか言っている。
ニックネームで進化はしねーよ。
『パルは向こうに行ってろ。ミランダリィさん、パルはやっぱり従魔登録になるの?』
「パルちゃんねー、どっちなんでしょ。エルフやハーフエルフやドワーフの冒険者は見た事があるけど、パルちゃんのような妖精の冒険者は見た事が無いわね」
そうだよな、冒険者カードだって大きさ的に持て無さそうだもんな。魔物討伐だって無理だろ、採取依頼は上手そうだけどな。
『じゃあ、獣魔登録だね』
「パルちゃんに登録っているのかしら?」
『いらないの?』
「でも、今回みたいに奴隷に捕まるような事があっても困るから登録はしておいた方がいいわね」
『じゃあ、やっぱり従魔登録するから、その時はすみませんが手伝ってください』
「わかったわ。この子達も登録するのよね? 職業は何にするの?」
『ジョブ? って何?』
「え? 知らないの? じゃあ、シルビアちゃんは何の職業にも就いて無いの?」
『就いて・・無いかな・・・はは』
ジョブってなんだ? そんなの知らねーし、ギルドでも言ってくれ無かったし。ネトゲとかRPGに出て来るやつか? ラノベでもよく聞くが、盗賊とか戦士とかいうやつなのかな?
オレの【鑑定】には出て無いんだけど。
ミランダリィさんが説明してくれた。
まず始めに冒険者になったら職業に就ける。これはレベル1の時にでも1つ選べる。
その後、レベル15・30・45・60の時に職業を追加できる。
初めに選んだ職業の同系列の上位職業でもいいし、別系列の下位職業でも構わない。それは本人の自由だ。
職業に就くタイミングもいつでもできるらしい。レベル1でもいいし、レベル30になってから纏めて3つ就けてもいいらしい。ただ、レベルが上がる事で職業の種類は増えるかもしれないが、職業によるステータスUPの恩恵は受けられない。
例えば盗賊なら素早さが上がりやすいとか、魔術師なら魔力が上がりやすいとか、戦士系なら力が上がりやすいなどは、早く職業に就いた方が得である。
どちらがいいかも本人の判断次第ではあるが、早く職業に就く者が多数を占めている。
それは職業だけが持つ『技』を職業に就くことで覚える事が出来るからだ。
技は色々ある。獲得の方法にも色々ある。
例えば盗賊なら『鍵開け』『忍び足』『スリ』『罠解除』など、レベルが上がると技も覚えて行く。
剣士でも『歩法』『2段斬り』は職業に就いた時点で覚える。が、『螺旋斬り』『竜巻返し』『3段突き』などは、レベルアップで覚える技も中にはあるが、修行や戦闘をしている時に閃いたり教わったりしないと覚える事が出来ない。
魔術師も同じで、魔術師になった時点で覚えた系列の魔法でも、ずっと使い続けてレベルを上げて上位魔法を覚えるか、上位の魔術師から教わるか、それとも魔術書を理解して覚えるか。覚えていない別系列の魔法なら教わるか勉強するしかない。
職業は多岐に渡るが、「今の所そこまで必要ないでしょ」と言われた。確かに必要ない。必要ないが、(ナビゲーター! お前は絶対知ってたよね。)
《はい、職業については知っています》
(なんで言ってくれないの?)
《必要ですか?》
え? そう言われると・・・・(必要じゃないのか?)
《ボルト、ハヤテ、キュータには必要ありませんでした》
(確かにそうだな。じゃあ、シルビアはどうなんだよ。)
《シルビアは『勇者の子』という称号によりステータスUPの恩恵を受けています。職業はレベルが上がった後からの方がいいでしょう》
(そ、そうかもしれないな。じゃあ、ライリィとルシエルはどうしたらいいんだよ。)
《今でも構いませんが、レベル15を過ぎてからがお勧めです》
んー、何か言い負かされてる気がするんだけど、教えてくれなかったってのもあるから納得行かない部分が残るよな。
(オレの【鑑定】で見れなかったから分からなかったんだよ。相手の職業って見れないのか?)
《見れます》
(見れるの? でも、今見れないぞ?)
《見たいですか? 必要ですか?》
(確かに見てどうなるものでもないけど、見れるんなら見てみたいじゃないか。)
《わかりました。【鑑定】の項目に【職業】を追加します》
他にも隠してそうだよなぁ、(他に【鑑定】で見れるものはあるの?)
《他は、年齢、性別、耐性、最大LV、です》
(他は無いだろうな。)
《魔石ランクです》
また隠してたな! 魔石の事をなんでそんなに隠したがるんだよ、ホントに。
年齢は・・・いらないか。知りたくない場合もあるしな。性別は・・・これもいらないか、見れば分かるしな。見ても分からない場合は知りたくない事もあるしな。
耐性って、いるんじゃないの? 相手の耐性が何か知ってた方がよくない? 最大LVはいると思うな。
(魔石ランクが分かると何が分かるんだ?)
《魔物の推測ランクが分かりますが、お勧めはしません》
(なんで?)
《強く無い魔物でも大きな魔石を持っている魔物はいます。逆に小さな魔石を持っている魔物でも特殊な能力を持っていたりする場合があります。見えるとそれで判断してしまいますので、判断ミスに繋がります》
確かにね、ナビゲーターがそう言うんなら今回は職業だけにしておこうかな。
じゃあ、冒険者ギルドに行って、ライリィとルシエルとパルの登録をして、素材も売って、町の外に出てレベリングを少しやればいいんだな。
その後でライリィとルシエルの職業登録をして、学校に備えるっと。
ミランダリィさんの中では魔人の事は無い事になってない? ボルト達は忘れて無いようだけど、今日は言って来なかったからな。ボルトもライリィの事で忘れてくれないかな? そしたら魔人退治に行かなくてもいいんだもんな。オレとしてはその方が嬉しいんだけどね。
町でゆっくりするのも悪くないと思うよ。
そんな事を考えていたら冒険者ギルドに辿り着いた。
ライリィとルシエルの登録の方はミランダリィさんに任せて、オレは依頼の掲示板を見ていた。もちろん【馬車主】ですよ。
持ってる素材で討伐依頼や収集依頼があったら少しでも得だからね。
依頼ボードを見ると、依頼書は紙では無かった。
紙のような物ではあるけど、何かの皮を薄く剥いで乾燥させた物みたいだ。木の皮なのか動物の皮なのか分からないけど、柔らかいし字が書ける。この世界特有の物なんだろうか。
「馬車さん、あれ取って」
いつの間にか横で見ていたシルビアが1枚の依頼書を指差す。
あ、初めから横にいたか。集中してると見えてても意識が行かないよな。皆がオレの事を見えないのって、こういう事なのかな?
シルビアが指差した依頼書を見てみると、クエスト依頼だった。




