第4話 シルビア・クロスフォー
馬車を止めて【バング】を解除するとレベルアップが始まった。
命令が完了したウォーグもその場で消えた。
マジか、命令が完了すると消えるの? 召喚された奴ならそうなるの?
このタイミングで消えんなよー。この後どーすんの?
でも【バング】って装着の時だけSPを消費するだけで、後は消費しなかったな。
チャラチャラチャーン
《戦闘経験値が上がりレベルが7になりました。薬草を出すことができます。各ポイントがアップしました。》ゴトン!
《【フェロモン】が2強化されました。》
チャラチャラチャーン
《戦闘経験値が上がりレベルが8になりました。毒消し草を出すことができます。各ポイントがアップしました。》ゴトン!
《【フェロモン】が2強化されました。》
チャラチャラチャーン
《戦闘経験値が上がりレベルが9になりました。パンを出すことができます。各ポイントがアップしました。》ゴトン!
《【フェロモン】が2強化されました。》
武器の後に薬草やパンって。普通逆じゃね?
ピロピロピーン
《移動経験値が上がりレベルが11になりました。どれを選びますか?》
ズーム
結界
回復地帯
ブレーキ
キタコレ! でももう遅いんだよな。オレのせいじゃないけど治してやりたかったな。あいつの為にもここは。
『回復地帯でお願いします。』
《回復地帯が選択されました。回復地帯をゲットしました。》
《自走時間10分獲得しました。自走時間は合計40分になりました。》
ピロピロピーン
《移動経験値が上がりレベルが12になりました。どれを選びますか?》
ズーム
結界
ブレーキ
いつまでになるか分からないけど、この子も守らないといけないしな。
『結界を選ぶよ。』
《結界が選択されました。結界をゲットしました。》
《自走時間10分獲得しました。自走時間は合計50分になりました。》
ピロピロピーン
《移動経験値が上がりレベルが13になりました。どれを選びますか?》
ズーム
ブレーキ
さっき探知を取ってるから組み合わせとして『ズームを貰うよ。』
結局ブレーキは最後になっちゃったな。
《ズームが選択されました。ズームをゲットしました。》
《自走時間10分獲得しました。自走時間は合計60分になりました。》
ピロピロピーン
《移動経験値が上がりレベルが13になりました。どれを選びますか?》
ブレーキ
やっぱり1択になっても自動でやってくれないのな。『ブレーキ』
《ブレーキが選択されました。ブレーキをゲットしました。》
《自走時間20分獲得しました。自走時間は合計80分になりました。》
終わったな?
さてこれからどうしようかな。引いてくれる者もいないし、この子を守る術としては結界しかないよなー。この子が勝手に馬車から離れても伝えることもできないしなー。
まず話せないのが困るよな。バーゲストも困ったお荷物を残してくれたもんだ。
頼むって言われて死なれたら、やってあげなくっちゃって思っちゃうじゃないか。
バーゲストの死体もこのままにはしておけないよな、収納するか?
だよね、捨てる訳にもいかないしね。
バーゲストの死体を収納した。
《解体しますか?》
ええ? 解体しちゃうの? いや辞めてあげてよ。いくら弱肉強食の世界でもあまりにも慈悲が無さすぎるよー。
『しません』
《バーゲストの死体はそのまま収納されます。》
「あれ? 犬さん? どこに行ったの?」
子供は急に消えたバーゲストを探している。
バーゲストが消えた後に残るのは薬草と毒消し草とパンだ。
子供は周りを見回し誰もいない事を不思議がる。
「誰もいないのにパンがあるなんて不思議ね。この馬車もさっきまでは動いてたのに。」
荷台からは引っ張っていたウォーグが見えなかったので、止まった馬車には御者もいないし引いていた馬もいないのに不思議に思っている。
でも、減っているおなかには勝てず周りを見渡すとパンを手に取り食べ始めた。
「うん、美味しい。誰のパンか知りませんが食べちゃってもいいよね。」
誰もいないのに小声でそう言うと一気に食べきった。余程おなかが空いていただろう、途中で何度も喉を詰めていたが胸をドンドン叩いて流し込みパンを食べきった。
パンだからね、飲み物が欲しいよね。でも無いんだなぁ、次のレベルアップに期待だけど、どうやってレベルアップしたらいいんだろう。もう引いてくれる奴がいないんだよね。
この子がいると魔物も出来る限り近づけたく無いしな。
ハーネスを動かすとバレるよなー。
この子には正体がバレてもいいのか? いや、バラさないとオレから離れて行ってしまうよな? それじゃ守れないしバーゲストとの約束も守れないし。
何とかオレの正体を伝えられないかなぁ。
「もうパン無いかなー? おなか一杯食べたいなー。」
これはチャンスかも。パンを出したら正体に気付いてくれないかな?
子供の目の前に分かるようにパンを出してやった。
「あ! またパンだ。」
キョロキョロ周りを見回す。
「さっきは何も無かったのに、誰かいるのかなぁ。」
子供は荷台から身を乗り出して下の方も探している。
「誰もいないなぁ、それなら食べてもいいかな、食べちゃお。」
今度はさっきより落ち着いてゆっくり食べている。喉も詰めていない。
でも飲み物は欲しそうだ。
「誰もいないみたいだし、出してもお父様に怒られないよね。」
そう言って女の子は木のコップを出した。
え? どこから出て来た? もしかしてこの子も【収納】持ってるの?
この子にはずっと『人間(人族):LV7』と表示されているだけだった。
今までの魔物も【鑑定】するまではこんな感じだしな、【鑑定】してみようか。
【鑑定】
名前: シルビア・クロスフォー
分類: 人間(人族)LV7
HP:72/72 MP:68/68 ATT60 DFE54 SPD71
スキル:【鑑定】0/10【武器】2/10【収納】4/10【魔法】2/10【念話】0/10【隠形】0/10
武器:【剣】3/10【斧】0/10【拳】1/10【槍】1/10【弓】2/10【杖】2/10
魔法:【火】2/10【水】2/10【木】2/10【土】1/10【雷】0/10【氷】0/10【光】0/10
ユニークスキル:【魔物使い】
称号:勇者の子
勇者の子? えー!? 勇者の子~!? かの有名な勇者様のご子息であらせれらましたか。ははぁー、ザ・ドゲーザをしたいぐらいですが、わたくし馬車の身でございますのでドゲーザができませーん。
マジ勇者の子? 確かに使える魔法や武器の種類が多いよな、まだ目覚めて無い能力が多いけど、これって凄い才能があるって事じゃないの? 初めての人間の鑑定なんでわかりませんが、普通はここまで種類が多いとは思えませんね。
そういやバーゲストが素性は言えないが武人の子って言ってたような・・・・。
武人って勇者じゃねーか!
ステータス自体は高くは無さそうだけど、レベルがまだ7だからね。将来性抜群だね。
まだまだ子供だし、これからドンドン伸びて行くんだろうな。ホント何歳なんだろうな? オレの鑑定では出て来ないんだよな年齢って。
やっぱりオレが守ってやらなければ。下心なんてありませんよ? あっても何もできないじゃありませんか、馬車ですから。
やっぱり【収納】を持ってたな、【念話】も持ってるじゃん、でもまだ目覚めて無いのか。【鑑定】、これもまだ目覚めて無いのか。どうやれば馬車のオレを伝えられるのかね? オレが【念話】を使えれば良かったんだよなー。
無ければ知恵を絞ろう、馬車といえども元は人間だ。人間の最大の武器と言えば『知恵』だろ? 絶対何かあるって。
ポクポクポクポクポクポクポクポク、チーン! 閃かない! とんちじゃねーよ、知恵だよ。
ひと休みしてる間もねーし。
なんとかこの子と話せねーかなー、通訳プリーズ! 誰かオレの言葉を伝えてくれー。
シルビアは出したコップに水魔法で水を入れて飲んでいる。
その動きの流れにはぎこちなさは無く、普段からやっているようで本物の魔法使いの様に見えた。
『命の源清らかなる水よ我が手に集いこのコップを満たせ〈ウォーター!〉』
凄ーなこの子は。マジカンドー、優秀な魔法使いみたいだな。やっぱり詠唱ってあるんだな、馬車で良かった。いや良くなーい。
でも、これで飢えの心配は無くなったな。あとはこの子が馬車から離れないようにさせないとな。
どうやって伝えたもんかなぁ。
でも、この子は泣かないな、普通泣かないか?
「犬さん、どこに行っちゃったんだろう。探しに行こうかな? でも、武器も防具も無いしなぁ、魔法があるから大丈夫か。」
ゴトン! 銅の剣を出した。何でもいいからこの子の興味を引くぞ。
ゴトン!ゴトン! 銅の鎧と銅の盾も出した。
「うわー、なにこれー!? 魔法の馬車さん? なんかすごーい。」
やっとわかってくれた? 魔法の馬車さんって、格好いいなその呼び方。
「でも銅の装備かぁ、こんなの学校でしか見た事ないな。やだ、学校の事を思い出しちゃった。イヤだったなぁ、あんなとこ。」
シルビアは学校の事を思い出してるようだった。
バッチーン!!
眩しい光と共に全身に電撃に喰らったような激痛が走る。