第30話 改めて護衛依頼
誤字報告ありがとうございます。
全員で庭に出た。トーラスの案内で別の建物に入っていく。
小さな円柱形で塔のような煉瓦造りで4階建ての建物だったが、厳重に管理されていて見張りも2人いた。
中に入ると正面にまた扉があり、右の方には階段があった。1階の扉を開けて入ると魔法陣があった。
「この魔法陣に入ると冒険者ギルドの3階に転送されます。準備は宜しいかな」
冒険者ギルドの3階に上がって行ってたのはここと繋がってたのか。他にもあるのかな?
ここに入った者全員で魔法陣に入って行く。
トーラス、執事のグラート、護衛として警護隊長のガルダン、ミランダリィ、シルビア、そして【馬車主】。
全員転送されたが【馬車主】だけ消えてしまった。行動範囲外に出てしまったから強制的に馬車に戻されてしまった。馬車ってオレの事ね、普通に認められるようになってきちゃったよ。グスン。
ま、ボチボチと冒険者ギルドに向かいましょうか。どうせオレが居なくなったことに誰も気付いてないだろうし、いや居た事さえ気付いて無かったかもね。あ! キューちゃん。出られないんじゃないか? 皆と転送されたのかな?
『待ってー』
ん? シルビアの念話?
『シルビア?』
『待って、戻って来たから一緒に乗せて行って』
『あるじ様~。置いていかないでよー』キュキュ~
さっきの魔法陣があった建物からシルビアが出て来るのが見えた。キューちゃんも連れている。助かったな、どーしよーかと思った。
シルビアを乗せて冒険者ギルドへ向けて走り出した。
『なんで戻って来たの?』
『だって1人じゃ寂しいでしょ』
『そ、そんな事無いさ』
いや、嬉しかったりするけどね。
冒険者ギルドへの道中、シルビアと話し合った。
『なあシルビア、なんでそんなに他の人達の所に行くのを嫌がるんだ? オレといてもお前が大変なだけだぞ、8歳の子をオレが育てられる訳無いじゃん』
『別に育てなくてもいい、私もう育ってるもん』
『いや、8歳だから。子供だって。ここはミランダリィに付いて行って王都で保護してもらうのが1番だと思うよ』
『・・・・』
『何か嫌な事があるんだったらそれを言ってくれないとオレも納得できないよ。シルビアだって無理やり連れて行かれる事になるかもしれないんだぞ』
『王都も勇者の子供達も嫌いなの。あんな所行きたくない』
確かにシルビアだけ別の国っておかしいとは思ってたんだけど、何かあったのかな?
『その理由を聞いてるんだよ、言ってくれないか?』
『お母様を、お、お母様を・・・・』
シルビアが俯いて肩を震わせ少し涙ぐんでいる。
聞きづらいなぁ。でも、ここは聞いておかないとな。
『お母様がどうしたんだ?』
『お母様が死んだのはあの国のせい。その後も皆、お母様の事を悪くしか言わない。特に勇者の子供達はお母様が死んだのはお母様が弱かったからだって、当然だと笑われたのも覚えてるわ。私は小さかったけど絶対に忘れない』
何かがあって死んだけど、その原因とその後の皆の対応に腹を立ててるのか。そりゃ母親が死んだのを笑われたら誰だって怒るか。
なんで死んだのかを今聞くのは酷か。
『じゃあ、ミランダリィはどうなんだ? シルビアはミランダリィの事を凄く心配してたじゃないか』
『ミランダリィさんだけは優しくしてくれたのを覚えてるの。だから私の事を覚えて無かった時はショックだったの』
魔人が化けてたからね。別人だったから知らなかったのは当然だよね。
『じゃあ、いいじゃないか。一緒に行けば守ってくれるよ』
『嫌よ、ミランダリィさんはいい人だけど、無理だと思う。お母様の事を一番笑ってたのはミランダリィさんの子供だったから』
んー、なんだその最悪の展開は。さもオレの所に残りますって流れになってないか?
『それっていつ頃の話?』
『2年前。ミランダリィさんに会ったのも、そのお母様のお葬式が最後』
8歳のくせに重たい人生送って来たんだな。いや、でもオレより重たい人生ってないんじゃない? だって馬車だもん。・・・・自分で言って自分で落ち込むよ、ホント。
でも勇者はどうしたんだ! そんな時にもいてやれない父親って無しだぞ。そんな勇者は認めたくねーな。
ミランダリィとも話せたら相談できるんだけどな。荷台に乗ってくれたらシルビアの時のように話せるんだけどなぁ。念話って人間とも話せるのかな? シルビアとは話せてるよな。それなら後はタイミングか。
冒険者ギルドに到着するまでの時間だったので、多くは話せなかったが大体の事情は前より分かった。後はミランダリィと話したいな、どうにか話せないかな。
冒険者ギルドに到着するとシルビアと共に【馬車主】で入って行った。
アーサー事務長が既に待っていてくれて、2階のマスタールームに案内された。
「おはよう」
「おはよう」「おはよう」「おはよう」
ちょっと多めに言ってやった。これだけ人数がいると、どうせ【馬車主】の事なんて誰も見えて無いんでしょ。ふん!
「おはようシルビア、待ってたよ。昨夜は大活躍だったみたいだな、魔人を倒すとは大したもんだ」
ギルマスが迎えてくれる。
「いきなり戻って行くからビックリするでしょ。馬車ぐらい後で取りに行けばいいのに」
今度はミランダリィが少し怒って話し掛けて来る。
「馬車は大事だから」
おお! そのさりげない一言は嬉しいかも。
そんなやり取りは無かったかのようにギルマスが話し掛けて来る。うん、細かい事は苦手な人みたいだからね。
「今聞いたのは魔人討伐と依頼の取り消しだ。魔人討伐に関してはこれだけの証言があるから討伐達成という事でもいいが、持ってるんなら冒険者ギルドに出してほしい。魔人の魔石は非常に大きくてね、利用価値が大きいんだ。もちろん買い取りだ」
「持ってるけど出さないわ」
「そうか、それは討伐した者の自由だがこっちとしては残念だな。あと、護衛依頼がキャンセルされた」
ギルマスってあっさりしすぎじゃないの? ほら秘書のマリーブラに肘で何度も突かれてるじゃない。アーサー事務長もギルマスに小声で何か言っているよ。
2人共苦労してるね。
「あのー、ギルマス?」
「なんでしょう、奥方様」
「護衛依頼は取り消しましたけど、改めてシルビアちゃんに護衛依頼をお願いしても宜しいですか?」
「お互いの合意があれば構わないですぞ。そうだったなマリーブラ」
「ええ、そうです。シルビアさん、如何ですか?」
『シルビア、受けよう!』
オレが慌ててシルビアに言った。
「わかった」
シルビアも同意して受けてくれた。何か察してくれたみたいだ。小さいけど、頭のいい子だからね。
「ではシルビアさんはAランクになってますのでルートは領主様の秘密のルートで宜しいでしょうか?」
『馬車さん、どーなの?』
『わからないけど楽できるんならその方がいいよな』
「秘密のルートにする」
「畏まりました。では、マスター」
「ああ、このまま行くのか?」
「アクセサリー屋さんに用事があるの、それからならいいわ」
「じゃあ、その後か。準備が出来たらまた来てくれ」
「わかった」
「奥方様もそれで宜しいですかな」
「ええ、結構です。その前に、冒険者カードを魔人に取られたみたいなので再発行して頂けますか?」
「わかりました、それはアーサーにやらせましょう。念の為、私も付いて行きましょう」
今部屋にいた全員で1階に降りてきた。
降りてくると、ゲルバが待っていた。
あ、テンプレ担当。またなんかあるの?
ゲルバはシルビアを確認すると、シルビアの前で土下座した。
ゲルバ冒険団全員が冒険者ギルドの1階フロアで8才の子の前で土下座した。
大の大人5人が8才の女の子に土下座してる姿・・・・やっぱりテンプレの臭いがするんだけど。
「すまねぇ! 命を助けてもらった礼をまだ言って無かった。改めて言わせてくれ、ありがとうございました」
「「「ありがとうございました」」」
「何やってるんだ! お前達邪魔だ!」
「俺たちはこの姐さんに助けてもらったんだ。俺たちは礼を言いたいだけだ! ギルマスだからって邪魔すんじゃねー!」
これってこの後、子分とか言い出すんじゃないの?
「姐さん! 俺たちを子ぶ・・・・」
やっぱりか。え? あれ?
ゲルバの身体が緑色に変わっていく。
グゥオオォォー!
身体も2メートルちょっとまで大きくなり、肌も所々が鱗になっている。
「なんだ!?」
「こ、これは昨夜の・・・・」
「トーラス様、お下がりください」
ゲルバが魔人になってしまった。後ろのゲルバ冒険団のメンバーも苦しそうに踞っている。
え? 何この展開。予想外ですけど。




