表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
195/204

第195話 登山

誤字報告ありがとうございます。



 馬車人の一泊目の野宿は問題なく朝を迎える事が出来た。

 ルシエル様々だね。いいものを作ってくれたよ。これは何個か作ってもらってオレの方でも使おうかな。


 さて、その馬車人は、遠くに聳える山に向かって歩き出す。

 途中、湖の傍を通ったけど、やっぱり主が現れた。


 今回は、前回に確認したこともあり、身構えてたので驚かなかったが、逆に主の方が驚いていた。

 勢い良くザッパー! っと出てきたと思ったら、馬車人を確認するなりソーっと沈んで行った。


 どうしたんだろうね。オレ的には無駄なバトルをしなくて済んでホッという所だけど、周りに何かいたんだろうか。

 馬車人には索敵スキルが無いので、警戒も兼ねて湖の畔で三〇分ほど休憩したが平和なもんだった。

 念のため、結界装置は作動させておいたが、ここは湖の主の縄張りだからか魔物は一体も姿を見せなかった。

 大樹の聖域以外では三〇分以上魔物とエンカウントしなかったのは初めての事かもしてない。


 山へと向かう道中は、やはりずっと森の中だった。当然魔物も出てくる。

 普通、ボスに近づくにつれて魔物が強くなったり、森の外の街道に近づくと魔物が弱くなって来たりするはずなんだが、馬車人の魔法一発で倒せてしまうから強いのか弱いのか分からないんだ。


 相手の強さを測るためにも手加減を覚えつつあるんだけど、それでも一発で倒してしまう。未だに武器を使ってないんだ。

 初めに火魔法を使って山火事になりそうだったから風魔法をメインで使ってるんだけど、それでも森林破壊を続けている。

 後ろを振り返ると来た道がすぐ分かるほどだ。


 この森も不思議な森で、これだけ森林破壊をしているのに、すぐに修復されるんだ。

 樹を全部切り倒しても、次の日には五〇センチぐらい生えて来ていて、だいたい一週間もすれば元の森に戻っている。

 周囲の検知が出来ないし、魔力感知もできないからあくまでも予想なんだけど、この森って魔力が異常なぐらい豊富なんじゃないかと思うんだ。

 森の樹々も魔力で育つタイプなんじゃないかと思えば、馬車人の異常な威力の魔法も当然の事なんじゃないかと思ったんだけど、どうなんだろ。

 もしそうだとしても、やる事は変わらないんだけどね。

 さっさと森から出て、魔王の情報を集めて、魔王討伐のパーティに混ぜてもらうんだ。

 一人だと自信が無いから、強い人と組んで、そのサポート役として魔王討伐に参加しても、魔王討伐した事になるだろ? オレは馬車人が魔王討伐した暁にもらえる、元の世界に帰るお願いをしたいだけなんだから。


 そう、勇者パーティの荷物持ちでもいいから、なんとかパーティに参加させてもらえないかと思ってるんだ。

 オレと共有とはいえ、【亜空間収納】は馬車人も使えるんだし、荷物持ちとしては売り込みやすいと思うんだよな。

 転生勇者のデフォである【収納】スキルを持ってれば売り込みにくくなるけど、そこは運だろう。

 この世界の勇者が【収納】スキルを持ってない事を祈るばかりである。


 っていうか、勇者いるよね? まだ人間に出会った事が無いんだけど。

 そろそろ人間に会いたいなぁ、勇者いるよねぇって思いながら山を目指した。


 結構ハイペースで走るんだけど、すぐに魔物にエンカウントするから効率は非常に悪い。

 それでも大樹から出て一週間で山の麓まで辿り着いた。

 山の麓で一泊し、明日の朝から山頂を目指す予定だ。

 スキル料理は健在で、馬車人でも出せるから飢える事は無い。逆に全部は取りきれなかったが、倒した魔物のお陰でメニューが増えていた。


 いつも通り三食欠かさずに食べ、明日からの登山に備えた。

 馬車人は、この世界ではチートな存在では無いのか。という思いも少しはあるが、未だに初期魔法しか使ってないので慢心する心は抑えている。

 しかも、最近はその初期魔法でさえ力を加減しての発動なのだ。早くルシエル直伝の上級魔法を使ってみたいものだ。更に上のキューちゃん直伝の超強力魔法も控えてるんだから、まずは森林破壊させずに済むような場所で上級魔法を試してみたい。


 因みにルシエル直伝の魔法は詠唱から教わり、詠唱短縮を経て無詠唱までに至っている。

 オレは詠唱するけどね。

 キューちゃん直伝の方は、キューちゃんと魔力を同調させ、魔法を発動して教えてもらったやつだ。

 馬車人はオレと同様に、内包する魔力がキューちゃん並みに高いのか、超強力魔法を発動できそうだった。

 まだやってないけど、ここまで魔法を使ってれば何となくだけど分かってきた。


 山に登り始めると、森より凶悪そうな魔物が現れた。

 大きさや動きの俊敏さでそうだと判断しただけで、実際ににそうだったのかは謎のままだ。

 ワンパンじゃないけど、森と同様に手加減した初級魔法一発だったのだから。

 でも、森で見た魔物は山に入ると見なくなったし、山で出会う魔物は森では見かけなかった。

 どっちが強いのか判断に困るが、縄張りがあるのは間違いないだろう。


 そんな山に生息する魔物達でも馬車人の行く手を阻むことはできず、着々と山頂へ登っていた。

 ただやはり、森と同じく数が多い。戦闘回数の分だけ足止めをされる事になる。

 山と言っても樹も多いから森の中との違いと言えば傾斜がキツイって事だけ。しかも、風魔法で伐った樹の治りが森より早い。

 オレの予想が間違ってなければ、山の方が森より周辺の魔力が濃いというか、樹が治るためのものの濃度が高いって事だと思う。やっぱり魔素で育つ樹なんじゃないのかな。見えないし感じないから予想の範疇からは出ないんだけどね。

 でも、オレも馬車に転生してからの経験がある。あながち間違いでは無いと思うんだよな。


 山登りを開始してから一週間でようやく山頂に辿り着いた。

 思った以上に時間が掛かったのは、やはり魔物の多さと山の険しさだった。

 苦戦する事は無かったんだけど、エンカウント率は相変わらず高いし、山も思った以上に高かったし中腹を過ぎるとロッククライミングが出来ないと登れないぐらい険しい山だった。


 馬車人の身体能力からするとロッククライミングは出来なくは無いと思ったんだけど、登ってる時に魔物が出て来たら対処しようが無いので何度も迂回する羽目になったため時間が掛かったのだ。

 人間のパートナーが希望だけど|(出来れば美女で)、未だに出会ってないんだから贅沢は言わない。せめて、ボルト達のように魔物でもいいからパートナーができないものだろうか。


 エンカウントする魔物は先制攻撃で一蹴するので会話ができるかどうかなんて確かめてない。

 だって反撃を食らってゲームオーバーにはなりたくないからね。


 まぁ、いないだろうけど、人間を探しつつ山頂を目指して来て、ようやく辿り着いた山頂。

 予想通り、人間には出会わなかった。が、狭い山頂を一周し四方を見渡すと、森の端が見えた。

 来た方向もわからなくなってるんだけど、行き先も決まってないので来た方向は関係ない。行く方向が分かればいいのだ。大樹の聖域にいた小動物達とのふれ合いは名残惜しいものがあるけど、まずは人間を見つけたい。

 一応、湖らしきものが確認できるので、来た方向はそっちじゃないかとは思う。

 分からなくなれば、またここまで登ってくればいいだろ。


 それよりも、森の端が見える方向は湖とは真逆の方向。山を挟んで右左だからある意味覚えやすい。

 他に森の端が見える側から山を降りる事にした。

 こちら側も岩肌が見える岸壁が多く、降りれそうな所を物色していると、洞穴を発見した。

 時間的にもそろそろ野宿出来る所を探さなければと思ってたので、その洞穴で寝れそうならと思って確認のために入ってみた。


 洞穴に入ると、顔一面が一つ目になってる蝙蝠のような魔物が一匹、天井に逆さ吊りになってこちらをジーっと見ていた。

 いつものように先手必勝で風魔法を繰り出す前に、その一つ目蝙蝠の魔物は奥へと飛んで行った。

 奥はかなり深い洞窟になっているようだ。


 どうしようか……オレの…というか、馬車人の目的は人に会う事だから、別にこの奥には用事は無いんだよな。この奥に人が住んでるとも思えないから。

 だったら奥の事はスルーで山を降りるか。

 ……でも気になるんだよなぁ。さっきの一つ目蝙蝠って『付いて来い』って誘ってるみたいだったんだよな。

 蝙蝠だから真っ直ぐ飛べないんで誘ってるように見えたのかもしれないんだけど、何度かこっちをチラ見してたし……攻撃されそうなら確認のために見るか……でも気になる……


 やっぱり気になるので洞窟の奥に入ってみる事にした。どうしても気になってしまったんだ、さっきの一つ目蝙蝠が。

 洞窟の中は真っ暗だけど、やっぱり馬車人には暗視スキルがあるようで、明かりが無くとも問題ない。

 洞窟の道は広くなったり狭くなったりはするが、ずーっと一本道だった。これなら戻る時にも迷う事は無いだろう。

 魔物も少しは出たけど、苦戦をする事は無かった。


 レベルも上がってるとは思うんだけど、まったく実感が無い。

 馬車の時はレベルアップ毎にファンファーレやアナウンスがあったし、ステータス確認もできてたからね。

 あの頃はファンファーレが鬱陶しいと思ったりもしたけど、今から思えば気遣いのある設定だったのかもなぁと痛感する。


 でも、それってナビゲーターに扮した神の奴がやってたんだよな。たぶん、面白半分の暇潰し程度の気分でやってたんだろうな。

 仮に本当にやさしさでやってたとしても、いい奴だと思えない奴がやってた事だからね。いいようには捉えられないよ。

 だって馬車に転生させた張本人なんだから。しかも、他の精霊女王や海神様達はオレに対して哀れんでくれて、神のやった事を批判してたぐらい誰が考えても酷い事なんだよ。

 神以外の神様達がまともな人達でよかったよ。


 それはさておき洞窟なんだけど、どこまでも一本道だった。

 暗いのは苦にはならないが、陽の光を感じられないので時間が分からない。普通ならね。

 でも、そこは【並列思考】で意識を共有しているから、時間だけは分かるんだ。

 馬車人の方には出て無くても、オレの視界には時間が出ているし昼か夜かもこっちでは分かる。


 こっちと馬車人のいる世界の昼夜は同じなので、時間の感覚もズレなく共有できている。今は馬車人が洞窟を探索開始してから一〇時間、そろそろ夕食を摂って寝る準備をしようかという時間だ。

 ちょっと様子をと思って入ったはずなのに一〇時間も粘っている。しかも一つ目蝙蝠をあれから見ていない。

 ここまで来ると何としてでも一つ目蝙蝠を探し出してやろうと意地になって来る。


 少し広くなった通路に差し掛かった時に結界発生装置を発動させて野営の準備に入った。

 明日、もう少し探索して一つ目蝙蝠を見つけられなかったらもう諦めよう。ここでこれ以上意地を張ってもいい事なんて無いだろう。気にはなるけど、これ以上時間を掛ける程では無いと思う。

 明日に備えて馬車人は眠りにつくのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ