第16話 疾風龍
シルビアに自分の冒険者カードを確認してもらった。
名前:シルビア:冒険者ランクG。
パーティ名:『キャリッジ冒険団』:ランクD。
パーティメンバー3名:****・シルビア
ダンジョン名:--
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従魔:
オレの名前が『****』ってなってるね、人数としてはカウントしてくれてるんだ。わーい
ズーン。このどこまでもオレを落とすシステム、もう辞めてくれー。
気を取り直して町を出た。目指すは昨夜行った東の森。いつも通りボルトが召喚した虎の魔物に引いてもらってボルトはオレの影の中、シルビアは荷台の上。
街道に沿って南へ向かい、昨日ボルトが通った森の入り口に着いた。
来るまでにシルビアの装備も完成、装備も終えている。昨夜の地龍で造るよね。
茶色ベースで黒と緑が斑に入り、迷彩柄の様なレザーアーマーになって戦える奴って見えた、シルビアが凄く強そうに見える。格好良かったのでスカートも動きやすいようにミニにして地龍の皮で造り、レガースと手甲とブーツもミリタリー柄で統一させた。
剣ももちろん地龍の牙をベースに造った。
地龍の剣+500:付加効果 土魔法(小)
レザーアーマー(地龍)+300:耐熱(大)、耐土(大)
レザースカート(地龍)+200:耐熱(大)、耐土(大)
レザーレガース(地龍)+80:耐熱(大)、耐土(大)
地龍の皮小手+80:耐熱(大)、耐土(大)
レザーブーツ(地龍)+100:耐熱(大)、耐土(大)
カッコ可愛いー。ミニを履いた女の子のレンジャーって感じ、レイヤーにいるよこんなの。しかも似合ってて可愛いい。
攻撃力・防御力も今までで1番高い。素材が地龍だから当たり前なんだけど、ここまでとは思ってなかったよ。
シルビアのステ超えした装備。オレも中々やるじゃん! オレも着てぇー。orz
街道を南に向いて左が東の森、右が西の森。インザーグ冒険団は右側の西の森に行くと言ってたけど、どこか別の所から入って行くんだろうな。冒険者が大勢行くんなら道もあるんだろうし。この辺りには西の森も東の森も道の様な物は見えない。だけど、昨日ボルトが踏み倒した所は道の様になっていて馬車のオレでも通れる。実際、昨夜は通ったしね。
『ここからはシルビアが先頭で入って行く? 剣や魔法のレベルを上げた方がいいもんね。』
『わかった。』
シルビアは荷台から降りて虎の召喚獣の前に立った。
『ボルトもシルビアが危なくなったらフォローを頼むよ。』
『御意!』
やはり、昨日通った所だからか纏めて魔物が出ることは無かった。
それでも単発とはいえCクラスやBクラスの高クラスの魔物は出て来る。
オーク、ダークホーン、サラマンダーなど。倒した魔物はオレが収納&解体。
サラマンダーは討伐依頼に入ってたね。しかしこのクラスでもシルビアも余裕だね、見てて安心だよ。さっきのサラマンダーでも火を噴いて来たけど、軽く避けて一撃で首を飛ばしてたもんね。これは武器の力よりシルビアが強いんだよ。もちろん切れ味抜群の強い武器だけどシルビアの場合は折れない武器ってだけだね。防具にも一度も掠りもして無いし。
『凄い武器だねー』って褒めてくれたけど、そこまで強い武器も必要なかったかも。タダだからいいか、素材を獲ったボルトに感謝だね。
その後もシルビアは危なげなく魔物を倒していた。少し苦戦したのがヒポグラフ。
ヒポグラフってグリフォンの進化前だから強さもグリフォンに匹敵するかもしれないってボルトの解説が入った。それを倒すシルビアって凄いね。
東の森に入って2時間で昨夜の地龍と対した場所まで来た。
召喚獣も消して昼食にすることにした。もちろん戦闘経験値も移動経験値も上がった。
【料理】を作ってシルビアとボルトに出してやる。塩も胡椒も手に入ったし、今日は肉団子のスープにした。更に美味しく作れたみたいだよ、食いてーよオレも。もちろんボルトは5人前、また同じ量をお替わりしてくる。お前ネコなのに猫舌じゃないのはなぜ? 食うのが早えーよ。今日はシルビアもお替わりをした。頑張ったからね。
今までボルトが獲った分もまだまだあるし、今日はシルビアも獲ったし、肉はまだまだ余裕でストックがある。このまま何も獲らなくても半年は大丈夫だろう。
シルビアがお替わりを食べ終わる頃、体長20センチぐらいの白黒ツートンカラーのカワウソの様な魔物が1体現れた。なんか可愛らしい。パンダみたいなホルスタインみたいな白黒柄の魔物で額に魔石の様なものが付いているが顔はカワウソによく似ていた。
魔物名は『亜種カーバンクル:LV12』と付いていた。亜種って付いてるって事はこれからまだ進化していくのかな?
色の効果もあるんだけど、顔がなんか愛らしい。シルビアもそう感じたのか最後に残っていた肉団子を器のまま魔物の方に差しだした。
「おいでー、食べていいよー。」
魔物はチョコチョコチョコと駆け足で近寄って来てパクリと肉団子を食べた。スープもペロペロ舐めて飲んでいる。ボルトもまったく警戒していない。
『こいつってシルビアが呼んだの?』
『ん~ん、呼んでないよ。でも懐いてるよ。』
『誰に?』
『私じゃないね、このご飯を作ってくれた人って感じかな?』
ご飯を作った人・・・オレ? オレに懐いてんの? まあ、馬車が作ったとは思ってねーだろうけど、美味しいって思ってくれたんだ。もう1杯サービスしてやるぜ。
魔物に肉団子スープを出してやった。キュキュっと鳴いて肉団子に齧りつく、魔物は肉団子スープを完食した。
食べ終わった食器はすべて収納した。
『むっ!』
急にボルトが立ち上がって東の方を見ている。亜種カーバンクルも同時に後ろ足立ちになりボルトと同じ方向を見てンッンッンッンッと警戒するような音を発している。オレのズームでそっち方面には何の反応も無い。
『どうしたボルト。』
『来たようです。我の思惑通りでしたな。』
『だれが?』
『地龍か、それとも・・・。』
『地龍!? 昨日倒したじゃん! まだいたの?』
『御意、地龍より速いようですので、疾風龍か旋回龍か。いずれにせよ1体近づいてきます。』
それってダメな奴よりダメな奴じゃね? 地龍より強い奴じゃないの?
『今言った龍って地龍より強い?』
『御意、我の今の力を試すには丁度いい奴です。』
『逃げ・・・られそうもないね。』
『なぜ逃げるのです?』
『いや、そいつら強いんだろ?』
『我より強い訳がありません。しかし主殿は危険ですので隠れた方がいいでしょう。』
『ああ、そうさせてもらうよ。シルビア、早くオレの荷台に乗って。』
『えー! 地龍見たいのにー。』
『バカ! 命と引き換えに見れるか。そいつも一緒に乗せてやってくれ。オレの【潜行】だったら隠れても見えるよ。』
『この子もいたね、仕方が無いな。』「おいでー。」
シルビアは亜種カーバンクルを抱いてオレの荷台に乗った。
【ズーム】の検索範囲に入ったと思ったらすぐに姿が見えた。すぐに【潜行】で隠れたが見られたかもしれない。『疾風龍:LV30』と出ていた。
疾風龍は大きさとしては2メートル強とボルトの半分ぐらいだが速かった。龍より馬に近い姿だが身体は藍色の様な濃い青で身体中に鱗があって光の反射でたまに鱗が光っている。馬の様な鬣もあり、風も吹いていないのに靡いている。
疾風龍vsボルトが始まった。初めのうちボルトは疾風龍の速さに翻弄されて疾風龍の放つ風攻撃と突撃のコンビネーション攻撃を何とかギリギリで躱していた。
時折ボルトが放つ雷攻撃も疾風龍は軽く躱している。
10分程経過するとボルトも疾風龍のスピードに慣れて来て攻撃の躱し方にも余裕が出て来た。ボルトが一気に10の雷攻撃を放つ。疾風龍は躱すが躱した先にボルトが先回りしていた。ボルトの右前足の爪攻撃! 疾風龍がギリギリ躱す。躱した先にボルトの影、【影操作】で作り出した影に疾風龍が捕まり動けなくなった。ボルトがゆっくり近付き左前足の爪攻撃! 今度は当たった。ボルトの一撃で疾風龍は立てなくなった。まだ意識はあるようだが次の一撃で決まるだろう。
「ま、参った、こ、降参だ。貴方の軍門に降ろう。」
『なに! 降参だと?』
「そうだ、降参する。命は助けてくれ。」
『むむむ、我も降参されるのは初めてゆえ、どうしていいかわからん。少し待て。』
「助けてくれるのか。」
『す、少し待て、相談いたす。主殿、如何すれば宜しいですか。』
なんでオレに振る。勝手にすればいいじゃねーか。
『如何ってオレにもわかんないよ。ボルトの好きにすればいいじゃんか。』
『この戦い、我が勝利致しました。その戦利品を主殿に捧げるのは臣下の務め。主殿決めて頂けますでしょうか。』
なに難しくいいように言ってんだ、ようするに丸投げだろ? そんなのオレに振られてもさ。
『知らねーよ、止めを刺さないんだったら逃がしてやればいいじゃないか。』
もう安全なようだから【潜行】を解除して出て来た。
「貴方には主がいるのか、では自分もその方に仕えようではないか。そちらの女子がそうなのか。」
普通はそうなるよな、まさか馬車って思わないよな。
「私は違うわ、ボルトとは友達。仲間よ。」
「まさかその小さな魔物って事はありますまい。どちらにいらっしゃるのか、先程まで念話もされてたようだが。」
『・・・・。』
「馬車さん、何か言ってあげなよ。」
「馬車さん? 馬車さんとはどういうことか。」
『・・・・。』なんて言ったらいいかわかんねーよ。
「ボルトの主は馬車さんなの。」
「はははは、そんな事があるはずもない。この自分を担ごうとしても無駄ですぞ。」
グゴゴゴゴ。ボルトの気が膨れ上がって来るのがわかる。毛も逆立って来た。
『お主、我の主殿を愚弄する気か! やはり止めを刺されたいようだな。このボルトという名を授けてくださった主殿を侮辱するとは許せん!』
「え、え、どういう事だ? 何を怒ってるんだ。」
ボルトが右前脚を振り上げる。
『辞めろボルト!』
『御意。』
『ゴメンな、オレは馬車なんだ。なんか言い出しにくくてね。』
「ほ、本当に馬車?」
『そうだよ。馬車の従者なんか嫌だろ? 逃げても追わないから行っていいよ。』
「凄い! その姿は何か事情があるのですね、是非とも自分も臣下に加えて下さい。ボルト殿の名付けもされたとは素晴らしい力を持っておいでのようだ。是非とも自分にも名付けて下さい。」
『へ?』
事情があるっちゃあるけど、転生だからね。この姿のまま変わんないんだよ残念ながらね。前向きに捉えてくれたようだけど馬車の従者でいいの? ホントに。オレは知らないよ。
普通に話せてるお前の方が凄いんじゃないの? オレは念話だし声に出せるのは挨拶と返事だけだよ?
『本当の本当にオレの従者でいいの? 馬車の従者って称号が付くんだよ?』
「是非とも宜しくお願いします。」
ほんとかねー、被害者がまた増えるよ。馬車の従者って嫌じゃないのかね。
『何か付けて欲しい名前ってあるの?』
「それは貴方様に考えて頂きたい。自分は速さが自慢です、馬車という事であれば引っ張って役立つこともできましょう。」
速さね、引っ張ってくれる気も満々な訳ね。それはいいんだけどねー。
『じゃあ、名前はねぇ・・・・。』
《SP消費はどのぐらいしますか?》
あ、そうか。そういうのがあったね。ナビ子さんよく覚えててくれたよ、ナイスタイミングです。
どのぐらい消費すればいいのかなぁ、それもわかんないんだけどさ。後は帰るだけだしほとんど使っちゃってもいいんじゃないの? 500ぐらい残せば帰りも問題ないよね。
500ぐらい残してくれたらいいよ。
『名前はハヤテでどう? 速そうだろ。』
《SP2600消費して名付けました。》
ボルトの時っていくつ消費したんだっけ?
《ボルトという名付けには575のSPを消費しています。》
え? そうだったの? じゃあ、こいつの場合ってもっと強くなるの?
ハヤテは水色の光を放ち全身に風が巻き付いている。
ハヤテは眠りに付いたようだ。
名前: ハヤテ
分類: 疾風龍(龍)LV30
HP:3360/3360 MP:3250/3250 ATT3642 DFE3425 SPD9633
スキル:【牙】3/10【隠形】3/10【念話】1/10【魔法】6/10【変身】1/10【眷属召喚】1/10【気配感知】4/10【魔力感知】4/10
魔法:【火】1/10【風】8/10【水】4/10【木】4/10【氷】1/10
ユニークスキル:【疾風】【鑑定妨害】
称号:馬車の従者
ボルトよりは弱いけどスピードが半端ないね。ボルトって名付けた時はステ平均1000も行って無かったよな。でもレベルも低かったしあんまり比較にはならないか。
シルビアは軽く置いて行かれてるね。でもシルビアだって人間の中じゃ凄く強い方だったよな。
修正:ギルドカードに『従魔』の項目を増やしました。
ボルトは馬車の従魔なので、シルビアのカードには記載されてません。