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第156話 サプライズ

誤字報告ありがとうございます。



 ボルト達が沖合ダンジョンから帰って来た。

 まだ最下層までは達していないようだ。

 それで、メイドから今日のブレインの提案を聞いたボルト達だが、ブレインと合流し何やら小声で話し合っていた。


 こそこそと悪だくみを始めたようだけど、ダンジョン内の事はオレには知ろうと思えば何でも分かる。が、小声過ぎて何を話してるかまでは分からなかった。

 少し念話も混ぜていたのかもしれない。


 ただ、最後の言葉だけは分かった。

 明日からボルトとブレインがタッグを組んで行動する事が分かった。

 だって、明日からのダンジョンメンバーからボルトがはずれたから。


 ブレインが「ボルトさんの協力が不可欠です」と言うと、ボルトが「ダンジョンなど行ってる場合では無いな、主殿のために我も一肌脱ごう」っていうのだけは聞こえたから。


 こいつらがオレのためにって動くって事は、オレのためにならないんじゃないかと疑ってしまうな。

 国をどうこう言った後だし、絶対その関係で行動しそうだ。でないと、ボルトが攻略途中のダンジョンを放り出してブレインと一緒に行動するとも思えないからな。


 ブレインが言った国を興すって話は、もううちのメンバー全員に伝わってる。

 多数決では、オレVS他全員。って感じになってるけど、最終決定権がオレにあるのが救いだな。



 翌朝は、オレを残して全員が出て行ってしまった。

 一応、ハヤテとガンちゃんは残ってるけど、予定してたアーランノットシティ行きはまた今度だな。


 沖合ダンジョンを全員で一気に攻略して来ます。って言われたら、あ、そうって答えるしかないよね。

 絶対嘘だと思うけど、ダンジョンは行きたく無いし、オレは留守番する事になった。

 移動に不自由だろうという事で、ハヤテは残ってくれたけど、皆がいないんなら移動する事も無いから別によかったんだけどね。


 全員いないって結構寂しいもんだね。一郎を含めたメイド達も全員行っちゃったからね。

 夜、皆が眠ってる時もオレは起きてるから、ものづくりに励んでて、別に寂しいと思った事は無いけど、いないって思うと寂しいもんだね。


 その日は誰も帰って来なかった。

 ボルトとセンとブレインがいて、ダンジョンでパーティ全滅って事は無いと思うけど、何も連絡が無いまま誰も帰って来なかったら心配だよね。

 そう思って、念話でボルトに連絡はしたんだけど、『問題ありません、順調です』って言ったきり、いつ帰るとも言ってくれなかった。


 ま、一気に終わらせるって言ったんだから、ダンジョンを制覇するまでは帰って来ないんだろうね。

 本当にダンジョンに行ってるのかなぁ。


 結局、三日間戻って来なかったけど、戻って来た時には、全員晴れやかな顔をしていた。

 そんな表情を見せる仲間に、オレはダンジョン制覇できたんだなぁって思って感心していた。

 目的を達成したから晴れやかな表情をしていたと思ってたオレに、一郎が報告をくれた。


「宗主様、準備は全て整いました。今から宗主様のお披露目でございます。さ、共に参りましょう」

 お披露目? 準備が整った? なんの?


「一郎?」

「はい、サプライズでございます」

 サプライズという言葉に嫌な思い出が蘇る。


 前の時はエンダーク王国の王妃様が来てたんだよな。

 シルビアと一郎の企てでやって来て、満足そうにドヤ顔してやがったもんな。

 で? またサプライズ? 嫌な予感しかしないんだけど。


 今日は一郎だけじゃなく、帰って来た全員がニヤついている。

 これはもう悪だくみをしていたとしか考えられない。


「そういう事ならオレは留守番でいいかな」

「な、な、何をおっしゃいます! サプライズとは古来より喜ばしいもので、拒否権はございません。さ、宗主様、我々と共に参りましょう」

 そんな話は聞いた事ないよ。古来よりサプライズがあったかどうかも怪しいんだけど。

 それに拒否権が無いって。そりゃサプライズって事後に分かるもんだから拒否権は無いけど、今サプライズって言ったもん! 拒否したっていいだろ!


 嫌がるオレをメイド達が押して行く。

 オレって押しても動くんだね、今初めて知ったよ。

 そういや、初めてはゴブリンに引いたり押したりされて動いたよな。今も姿は違えどゴブリンに押されてるって、何か因縁めいたものを感じるね。


 メイド達に押されて転送魔法陣に入れられたオレ。

 ボルト達、他のメンバーはオレより先に転送魔法陣に入っていた。

 オレが転送魔法陣に入った時には全員先に転移済みだった。


 転送された先に出てみると、たくさんの人が待っていた。


 ここはどこ?

 オレの半径五キロの視界には、後ろは森のようだけど前は広場のようになっていて、そこにたくさんの人で埋め尽くされている。


 しかし様子がおかしい、全員が平伏しているんだ。

 これって千人や二千人どころの話じゃないよね、一万人はいるんじゃない? それが全員平伏してるって……なんだこの状況は。


 それにこの場所。舞台のようになってるけど、自然のものじゃないよね? 誰が作ったの?


 転送されたこの場所は、半円状の舞台になっていて他より二メートルは高くなっている。

 後ろは壁になっていて、ここで話すと声が響き渡るだろうと思われる。

 目の前には平伏したたくさんの人達。オレは舞台の上。…意味が分からん。


 そんな状況に戸惑っているオレに、満足気な一郎がオレの前に立ち、一礼してから振り返りオレに背を向けると平伏している人達に向かって声を発した。


「皆の者! 王の降臨である! 拝礼の後、各部族の代表は自分達を紹介して差し上げよ!」

 はい? 王? いや、その話は保留だったよね? しかも降臨って、お前も厨二だったの? 凄っごく恥ずかしいんだけど。しかも拝礼って言い方……オレは神か仏か!


 そんなオレの疑問はお構いなしに〔〔ははーっ!〕〕と声を上げると更に深くお辞儀をし、何人かが立ち上がった。

 立ち上がった者は全員が獣人だった。平伏したままの奴らも獣人なんだろう。だって出てる文字で確認したものは全員が獣人ってなってるから。


「王様にお目に掛かれて光栄です! 我らは獅子人族三十四名! 今日より王様に忠義を捧げます!」

「我らは狼人族百三十二名! 王様の臣になれた事の誉! どうかお見知りおきを!」

「我らは猪人族五百十五名! 王様にお目に掛かれた喜びをお伝えできた事に感謝します!」

「私達は猫人族! この三百四十名は絶対役に立ちます! 何でもお申し付けください!」

「我ら犬人族は猫人族には負けません! 我らこそ役に立ちます! ご命令の際はどうか我らに!」

「我らは熊人族二十八名! 力には自信があります!」

「我ら鷹人族八十八名! ……」

「我ら鼠人族四千七百……」

「私共豹人族……」

「我ら雀人族……」

「我ら鼬人族……」

「我ら梟人族……」

「我ら……」

「………」

「……」

「…」


 どんだけの部族がいるの。後ろの方なんて何言ってるか聞こえないんだけど。

 一時間程、順番に何か言ってる獣人たちをボーっと眺めてたよ。

 名乗りを上げなかった集団もいたけど、あれって「混血ミックス獣人」って出てるんだけど、何で名乗りを上げなかったんだろ。結構な数がいるのに。

 ようやく最後の獣人の紹介が終わり、再び一郎が前に出た。


「では、宗主様。いえ、王様。一言お願いします」

 ……一言って何? もうだいたい事情は分かったけど、オレが挨拶とかすんの?

 お前達がこいつらを手懐けて配下にしたんだろ? だったらオレは関係ないじゃん! なんでお前達はそんなにノリノリなわけ?


「一言って……何を言ったらいいんだよ」

「これからの国造りの抱負を」

 なんでオレがそんな……抱負なんてものも無いし。


「そんなのある訳無いじゃん。好きにすれば?」

「王様! それは、この者達を見捨てるということでしょうか」

 なんでそうなるんだよ! オレには関係ないって事なのに。


「この者達は人間に蔑まれ、逃げ落ちた者。先祖代々、細々と逃げ隠れていた者。奴隷として落ちていた者。他にも様々な事情を持った者達です。王様はこの者達を見捨てるのでございますか。この者達がどうなってもいいと言うのですか」

「い、いや。どうなってもいいとか思って無いよ。でも、なんでそれをオレが……」

「おお! さすがは王様! この者達を救ってくださるのですね」


 一郎の大袈裟なリアクションに、おおおお! っと歓声を上げる獣人達。

 オレの話も聞けよ!


「食料と衣服の方は私達で賄いましたが、住む所は王様にお任せするしかございません。王様のご慈悲でここに彼らの安住の地を創世してくださいませ」

 創世って……言う事がいちいち大袈裟なんだよ。


「住むとこならここでいいじゃん。森は豊そうだし、もし不足だったらセンの【豊穣】でちょいちょいっとやってやれば食うにも困らなくなるんじゃない?」

「それはいけません、王様。これだけの人数です、そんな程度ではすぐに枯渇してしまいます。それに、この者達は家を作るのも苦手でございます。ここは王様のお力でこの者達をお救いください」


 だからオレにどうしろって言うの。

「……はぁ、だったらオレは何をしたらいいの」

「よくぞ聞いてくださいました!」

 いや、聞くしかない流れだったし。

 いちいち大袈裟なのは獣人達の反応を見てるのか?


「まずはこの真下に首都を創世していただきます。そして向かって右側に居住用のダンジョンを、左側に狩猟用のダンジョンを、向こう正面の奥に移動用の転送魔法陣を据えるダンジョンを創世してください。周辺に関しては、私達が結界を施しこの者共が維持管理をしていきます。この『みんなの広場』は今後も色んな催しをするために使います。王様、いえ創世主様のお許しを頂きましたので、まずは今から建国の祭を催します」


 ダサッ! 『みんなの広場』ってダサッ! もうちょっと格好いいネーミングは無かったのか。

 あと、なんだよ創世主って…オレは神か! どんどん酷くなって行くな。


「一郎……創世主ってのはちょっと……」

「では神とお呼びすればよろしいですか?」

「いや、今まで通りで」

「それはなりません! 今まで統一されてなかった獣人達を纏め上げ、その獣人達の安住の地、獣人国を興す方を創世主とお呼びする以外に何があると言うのです」


 それはお前達が勝手にやった事だろ。別にダンジョンを作ってやるのはいいけど、神扱いされるのは勘弁してほしい。


「じゃあ、ダンジョンも作らないぞ。その呼び方をなおしてくれるまではダンジョンを作らない。もっと軽い名前にしてくれないか? リーダーとか。今まで通りでいいんだよ」

「貴方様という人は……本当に君臨しても統治せずの逆を行く方ですね。だから私達も貴方様のために尽力したくなるんですが。では主では如何でしょうか」

 それってやっぱり神じゃん!


しゅじゃなくてあるじね。それなら今まで通りの奴もいるし、あるじなら認めるよ」

「王もダメでしょうか」

「獣人国なんだろ? だったら獣人が王にならないとおかしいじゃないか」

「わかりました、そこまで言われるのでしたらそのように致しましょう」

 やっと折れてくれたか。


「では、誰を王に致しますか?」

「へ? 誰をって、誰の事も知らないのにオレには決められないよ」

「それでも決めていただかないと示しがつきません」

「なりたい者がなればいいんだよ。立候補はいないの?」

「わかりました、バトルロワイヤルですね。それでは今からやらせましょう」


 はい? そんな事言ってねーし。投票で決めればいいんじゃないの?


「皆の者! 我があるじよりお許しが出ました。王に名乗りを上げる者によるバトルロワイヤルをする! 我こそはという者は『みんなの広場』に残り、それ以外の者は『みんなの広場』から出て行け」


 一郎の声に応じて広場から獣人達がいなくなって行く。周りの森に入って行くようだ。

 広場に残ったのは腕に覚えのある者達、敵わないながらも見せ場を作ってアピールしたい者達、ただ暴れたいと思う者達の百名足らずが残った。

 なぜか、うちの連中も広場にいるんだけど、なんで? さっきまで舞台の上にいたよね?


 一郎の『はじめ!』の声で百名近い獣人プラスうちの連中のバトルロワイヤルが始まった。


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