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第153話 不本意な決断

誤字報告ありがとうございます。



 待つ事五分。

 考え抜いたイレブンが答えを出した。


「んー、考えたんだけど、良い案が浮かばないね。奴隷紋も考えたんだけど僕には効かないし、神級ゴッドクラスのアイテムでも無い限り僕を縛る事も出来ないからね」

 やっぱり無いか。でも、神級ゴッドクラスのアイテムなら縛れるのか。そんな都合のいい物なんて……無いよな。


「だいたい雷獣を従えてる貴方が、僕を縛る必要なんてあるのかい? もし裏切ったら今回の様に拘束すればいいんじゃないかい?」

 僕が裏切る事なんて無いけどねとうそぶくイレブン。


 それが出来れば苦労しないんだよ。

「それに、雷獣はどうやって従わせたんだい? 僕より強いと思われる雷獣を従えてるんだろ? だったら僕も同じようにすればいいんじゃないか?」

 ボルトは名付けで強制的に従者になったし、名付けで進化した事を喜んでオレの従者に甘んじてくれてるんだよ。

 イレブンには名前があるし、魔人を従者になんてしたくないよ。

 そう言って今まで従者にして来たんだけどね。


 この流れって、こいつも従者になる流れ? いやいや、嫌だ! 絶対イ・ヤ・ダ!


《馬車との契約には牽引契約と従者契約があります。名付けの場合は強制的に従者契約になりますが、通常は従者になりたい者との同意の上、SPを消費する事で従者契約をする事が出来ます》


 何の説明をしてるんだよ! そんな説明は今いらないだろ!

 従者になんかしないからな!


《では、他に名案はあるのでしょうか。人の意見に反対する時は、ただ反対するのではなく代替案を言ってください》

 ……くっそー。代替案なんてねーし、このままじゃ言いくるめられてしまうぞ。なんで急にナビゲーターがそんな事を言い出すんだよ。お前は魔人の持ってる魔石(特大)にだけ興味があるんじゃなかったのか。このまま倒してしまう方がナビゲーターは嬉しいんじゃないのか。


《このイレブンを餌にして……いえ、このイレブンは頭が切れます。従者にするのは当然の選択です。アナグラムするとブレインともなりますし、このイレブンの頭脳は馬車にとっても役に立ちます》

 なんだそのアナグラムって。ちょっといい事言ったみたいになってんじゃねーぞ!

 なんか裏がありそうな言い含みもしたし。


 もし、裏切られて誰かがこのイレブンにやられたらオレは悔やんでも悔やみきれないよ。その可能性が無いって言いきれるのか!


《従者契約してしまえば、その可能性はほぼ無くなります》

 ……


《このまま逃がしてしまえば、後々配下を連れて雪辱に来る可能性があります。最善の選択は従者契約する事でしょう》

 ……


《それに、このイレブンを従者にするとボルトと同様に永遠の忠誠を誓うでしょう》

 なんでそんな事が言い切れるんだよ。


《イレブンは魔王の座には興味がありませんが、強さには非常に関心を持っています。その強さを提供してやれば、主である馬車は絶対者であると認識されイレブンは忠誠を誓うのです。その時に改名をしてやれば、絶対に裏切る事は無くなるでしょう。ブレインという名がお勧めです》

 こ、こいつは……勝手な事ばかり言いやがって。何がブレインだ! それに強さを提供ってどういう事だよ。


《SPを消費して契約すれば進化します》

 それってこいつにも適用されるの?


《当然です。例外はありません》

 尚更ダメじゃん! イレブンを強くしちゃったらボルト並みになっちゃうよ。そんな危険な事できないって。


《危険ではありません。心強い味方です》

 ……判断に困るよ。そんなの決断、オレにはできないよ。


《では、処刑しますか?》

 それをしたく無いから悩んでるんじゃないか。


《では、逃がしますか? 報復を恐れながら放置するのですか?》

 くっ……


《どこかに封印しますか? 封印はいずれ解け、後世の脅威になるかもしれませんが、それで宜しいのですね?》

 その言い方に悪意を感じるよ。

 そんな未来の事なんて知ったこっちゃないけど、寝覚めは悪いよな。でも、選ぶとしたらこれだろ。


《そんな封印を出来る所がどこにあるのですか? どうやって封印するのですか?》

 ……どっちも知らないね。


《後は何がありますか? 洗脳でもしますか?》

 洗脳って……できたとしてもしたくないね。

 後、何があるか…か。

 ……何も無いね。


《では》

 ……今、決めなきゃいけない?


《……では、いつ決めるのですか? 先延ばしにして何かいい事があるのですか?》

 ……わかったよ、他に選択肢が無いんだね。



「イレブン、お前をオレの従者にしようと思う。報酬は無いから雇うとは違うけど、お前にもいい事があるんだ。どうする? 受けるか?」

「もちろん受けるさ。それで僕は何をすればいいんだい?」


 どうすればいいんだろ?

《もう言質は取れましたから、SPを消費するだけで出来ます。改名も忘れずに》


「……改名ね。今日からお前はブレインだ、ブレインと名乗るがいい」

「ははっ!」

《SPを全て消費します》

 え? いくら消費するかって聞かないんだ。

 ちょっと主っぽく偉そうに言ってしまったね。どうもこのイレブン…もうブレインか、ブレイン相手だと偉そうな話し方になってしまうな。やっぱり敵だと思ってるからだろうね。もう味方になるんだろうから改めないとね。

 なるんだよね? 味方になるんだよね?


 ブレインはバチバチっと黒い稲光のようなものを纏い、眠りについた。

 これって皆の名付けの時と同じだよ。大丈夫かなぁ、本当に従者にして良かったのかなぁ。

 でも、もうしちゃったもんな、今のうちに皆に説明をしようか。


 ブレインにはボルトとセンに付いててもらって、まだ影で拘束してもらってる。

 目覚めていきなり暴れる可能性は無いとナビゲーターは言ってるけど、念のためにね。



 皆にも説明はしないとね。気が重いけど、説明はしてやらないとな。だって反対する者もいると思うんだよね。今まで敵だった奴なわけだしさ。


 皆は遠目にだけどオレが何をしたのかを見ていた。声は聞こえなかったようなので、説明はするが従者にした事はもう分かってるみたいだ。

 【御者】を消して、オレの横に【御者】を出し直す。


 皆、【御者】の元に近寄って来る。元々、オレの周りにいたから、その輪が小さくなって円陣を組んでるみたいになった。

 皆が【御者】に注目している。どうも、話にくい。今から説明というよりは言い訳をするようなもんだし、話し始める切っ掛けが欲しいところだね。


 誰も何も言わないね。仕方が無い、オレから話すしかないか。

「えーと……魔人イレブンだけど、そ、その…従者にしちゃいました。ごめんなさい」

 【御者】に頭を下げさせる。


 シーン

 誰も何も言ってくれない。やっぱり反対なのか。


「それで、名前もブレインって改名したんだけど……やっぱり…」

「流石は宗主様! あれ程の強者を従者にするとは貴方様こそ神と並ぶに相応しいお方です。ブレインという名前も素晴らしい! イレブンというのは十一という意味だそうですね、使用人は私共だけで十分という意味でございますね。分かっております、仲間には甘く奥ゆかしい宗主様の事でございます。本拠地にもお部屋をご用意させて頂きます」


 一郎……そこまでは考えて無かったよ。それに奥ゆかしいって女性に対して使う言葉だと思うんだけど。


 一郎を皮切りに、口々に話し出した。


「ご主人様、私達はご主人様の決めた事には反対はありません。ブレインさんが仲間? になるんですね。それについてはいいんですが、勇者の子の件をどうしましょう」

 ルシエル…そうだよなぁ、それもあるよなぁ。


「あたしは強い仲間は歓迎なのニャ。それでダンジョンに一緒に行くのニャ、でも先頭は譲らないのニャ」

 ライリィ……もう少し考えようよ。


「また新入りか!? 下っ端は大歓迎やで」

 パル…まだ下っ端って言ってるのか。


「私も最近ですので、新しい仲間は嬉しいです。でも、先程の『逃げろ』とはどういう事だったのですか?」

 そうだよメイビー、よく言ってくれた。聞くのを忘れてたよ。ブレインが目を覚ましたら先に聞いておかないとな。


 ボルト、ハヤテ、キューちゃん、センはあまり興味が無いみたいだ。仲間が増えるというより、オレの従者が増えるだけで、さっきまで敵だった事も関係ないみたいだ。

 強い者には従うというのは魔物の世界では普通の事なのだそうだ。

 オレは強くは無いんだけどね。

 そういう考えもあってか、ブレインがオレを裏切るなんて全く思って無いみたいだ。


『主殿、ブレインが目を覚ましました。もう解放してもよろしいか』

『危なくない?』

『危ない? とはどういう事でしょうか』

『いや、いきなり襲って来たりしないかって事だけど』

『此奴は既に主殿の従者です。従者が主を襲う訳がありません。そんな事をすれば、我が此奴を処分します。そんな心配もありませんが』


 さすがリーダー、強気だなぁ。

 でもナビゲーターの言った通りか。ボルトもこう言ってるから大丈夫か。

『じゃあ、解放してこっちに連れて来てよ。皆に紹介しよう』

『御意』


 ブレインを皆に紹介した後、シルビアに確認をした。


「シルビア。シルビアはどう思ってるの? やっぱり反対だった?」

「ちょっと複雑だけど、この人が暴れなくなるなら一番いい方法だと思う。従者にできてしまう馬車さんも凄いけど、従者にしようと思った馬車さんに感心した。私も処刑は反対だから」


 よかった~、オレの考えと似てるね。シルビアが一番気がかりだったから安心したよ。

 後はブレインだな。

「ブレイン、お前ってさっき自爆しようとしなかった?」

「自爆ってなんだい?」

 あれ? 違った?


「自分を爆発させて、自分諸とも周りを巻き込んで相手を倒す事だよ」

「そんな事をしたら死んじゃうじゃないか。死ぬ事は怖くはないけど自分から死ぬつもりはないよ。それに、自爆ってどうやってやるんだい?」


 嘘は言ってないみたいだね。オレの早とちりだったか、ちょっと恥ずかしいね。

 でも、オレは逃げろって言ったんだ。来いとは言ってないもんね。っていう言い訳は通用しないだろうね。


 皆の生暖かい目線を覚悟したが、そういう雰囲気にはならなかった。

 逆に現在の最大の敵が味方になって喜ぶ者、悔しがる者が目についた。


 喜ぶ者はライリィとパルとメイビー。普通に新しい仲間を歓迎してるよ。

 悔しがる者はボルトとセンとキューちゃん。

 強者と戦う機会が無くなって残念がってる。


 キューちゃんもそっち組? マスコット的な立ち位置はもう無いの?

 実力はあるからね。人間で例えると攻撃魔法も防御魔法も回復魔法も使える魔法のスペシャリストの賢者みたいだもんな。魔物だし、やっぱり戦いたいのかな。


 ルシエルとシルビアは今後の事を考えてくれてた。

 シルビアはエンダーク王国に対して、ルシエルはキュジャリング王国に対して、それぞれ意見をぶつけ合って参考にしてるみたいだ。


 皆、前向きだね。


 後、ブレインにここに来た理由も聞いたら、強者の気配を感じたので来てみたらオレ達だったので、そのまま戦闘になっちゃったと言い訳してたけど、いきなりの攻撃だったもんな。今後は勘弁してほしい。

 それにその気配は精霊女王の物だと思うけど、内緒にしておこう。会いたいと言われても困るから。


 来た理由も、強者を配下に加えたかったからだという事だけど、精霊女王には勝てないと思うよ。


 さて、これからの事だな。

 旅のメンバーはもう満タンだよ。

 荷台にはシルビア、ルシエル、ライリィ、メイビー。パルとキューちゃんは小さいから邪魔にならないけど、ナナも加わる訳だし、荷台がもういっぱいだよ。

 普通に走るだけなら乗れなくもないけど、寝る時の宿泊モードになった時に足らなくなりそうなんだよね。

 しかもブレインだけ男だし。女ばかりの所に男が一人だけだと何かと不便な事もありそうだし、旅のメンバーからは外そう。


 じゃあ何をさせるかだけど、一人で放置するわけにもいかないし、何か考えないとね。

 まだボルト達がダンジョン探索でここにいる事になりそうだし、考える時間はありそうだな。


 ブレインは人間界には詳しそうだし、商売的なものでもやらせてみようかな。


第95話の伝説の冒険者ジェイのランクをSからSSに変更しています。

後付けのようになってしまってすみません。

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