第151話 反省会
いつも読んで頂きありがとうございます。
実感はあまりありませんが、年が明けるようです。
作品を読んで頂いて、皆様には感謝しております。
来年も、書き続けて行きますので、よろしくお願いいたします。
皆様、良いお年を。
誤字報告ありがとうございます。
魔人イレブンが自爆。この森が焦土と化す。
そんな嫌な予感が走り、皆に逃げろと念話で叫んだ。
おおおお!
おおお!?
おお?
おおー!
『何やってんだよ、お前達! オレは逃げろって言ったんだ! なんで【御者】の前に出てんだよ! バカヤロー!』
まずルシエルが捨て身で【御者】の前に回り、イレブンに背を向け【御者】を身を挺して守るように抱きついてきた。
次にパルがそのルシエルの背中から覆いかぶさった。まったく役に立って無いが気持ちは痛いほどわかる。
そして一泊置いてハヤテが風を纏って来た。
メイビーはハヤテより先に動いたようだが、メイビーの中のクレオに止められ思い留まっていたようだ。すぐにオレの荷台に登って来た。冷静だ、それが正解だよ。クレオがいれば蘇らせる事ができるんだからな。
その後には元ゴールデンゴブリンズが勢揃いしていた。
なにより驚いたのがガンちゃんがルシエルと同時に動いていた。いや、皆は(御者】の所に来るまでは走って来た。いくら早いと言っても十数歩は走らないといけない。その点ガンちゃんは一歩も掛からない。足を横にずらすだけでいいのだ。
ルシエルが【御者】を庇うより先に、ガンちゃんが魔人イレブンを蹴り飛ばしていた。
パルの樹魔法の拘束? キューちゃんの氷漬け? まったく意味を成してなかった。
今回の『思考加速』では皆が無事だからゆっくり見れて実況ができるけど、これで誰かがダメージを受けてたら、こんな悠長にしてられなかっただろうな。
イレブンも横に弾き飛ばされただけで命に別状は無さそうだ。流石にステータスが高いだけある。拘束されてたのが逆にクッションになったのかもしれない。
さて、この状況をどう処理しよう。
イレブンは後だな。『並列思考』でオレが見張ってれば大丈夫だろ。
誰から説教してやろうか。
【御者】に張り付いてるルシエルからだろうな。
「ルシエル、前から言ってると思うが、【御者】はオレじゃ無いんだ。【御者】は攻撃を受けてもオレには何のダメージも……」
「わかってます。わかってるんですが、勝手に身体が動いてしまって」
そう言い訳するルシエルの身体は小刻みに震えていた。顔は【御者】の胸に埋めているからよく分からないが、泣いているようだ。
そのルシエルの背中に張り付いているパルも「アカーン、アカンでー。ご主人様はうちが守るんやー」ってまだ言ってるし、ハヤテも風を身に纏ったまま立ち尽くしてるな。魔人イレブンがもう目の前にいないんだから、なんで? ってなるのも無理はないか。
この三人は落ち着くまで待とうか。
「ガンちゃん、ありがとう。ガンちゃんがそんなに素早く動けるとは思って無かったよ。でも、助かったよ」
「おお! 儂、今、早かったのぉ。自分でも驚いたぞぉ」
自分でも驚いてるよ、自己最速だったのかもしれないな。
「で? お前達はなんでいるの?」
一郎が代表して答えた。
「はい、宗主様。宗主様のピンチには必ず我ら『使用人軍団』が現れ、宗主様の盾となり鉾となってお守り致します。今もピンチの声が聞こえましたので、直ぐ様飛んで来たのでございます」
声が聞こえた? 使用人軍団? 飛んで来た? お前達何者なんだよ!
えーと、整理しよう。
さっきのオレの念話の声が聞こえたって事でいいかな? 『みんな逃げろ』って言ったやつだ。
それが聞こえてオレが呼ぶまでも無く、オレの元まで勝手に転移して来たと。そういう事でいいかな。【御者】じゃなくオレの前にいるもんな。
で、『使用人軍団』? 何の軍団? 確かに強くなってるし、それが十人いるから一国の軍隊相手でもそれなりにやりそうだけど、軍団って……
皆サングラスを掛けてるけど、どこの石の原の軍団だ! 皆、怪しげな武器を持ってるし…それって『伝説の箒』が攻撃形態に変形したものか? ナナの持ってるそれって、マシンガンにしか見えないんだけど。メイド服にサングラスにマシンガンって……どこのコミックスから出て来たんだ!
それにお前達は屋敷を建ててたんじゃないのか?
「お前達のうち、八人は屋敷を建ててたんだろ? そっちはもういいのか?」
「あんなものは、私一人でも三日もあれば建ちます。八人も行かせたのです、一日も掛からず完成しております。もちろん宗主様のお部屋は本拠地と同じものを再現しております」
早っ! 一日で出来たの? で、本拠地って馬車ダンジョンの事か? そのオレの部屋ってボス部屋の事か? 辞めてくれー、いつも嫌だって言ってるじゃないか!
馬車ダンジョンだって本拠地って決めた訳じゃ無いよ。皆が集まる場所としては、一番いい所かもしれないけど、本拠地かどうか決めるのはオレだからね。
もう、皆好き勝手し放題だな。
『主殿! 無事ですか!』「お館様!」「ご主人様!」「馬車さん」
あ、ボルト。お前達まで来ちゃったのね。セン、ライリィ、シルビアはボルトの背に乗り、猛スピードで近づいてきた。もう従者でここにいないのは蟻と蜂だけだよ。シルビアだけは従者じゃないけど、初期からいるしね。
確かにオレのピンチにこれだけすぐに集まってくれるのは有難いし嬉しいんだけど、オレは死なないんだよ。皆との絆は無くなるかもしれないけど、それでも皆がオレの為に死ぬことは無いんだよ。
ただでさえ『馬車の従者』って変な称号を付けてしまってるんだ、そこまでする事はないんだよ。
「全員集合」
この際だから、皆に釘を刺しておこう。
御者の周りに全員が集まった。ハヤテは我を取り戻したようだが、ルシエルとパルがまだだな。
「ルシエル? もうそろそろ落ち着いたかい?」
「ご主人様……ご主人様がいなくなると思うと怖くて怖くてたまらなかったんです。もう少しだけ、このままでいさせてください」
仕方ないか、術もスキルも使わない程、慌てて【御者】盾になったぐらいだもんな。もう少しこのままでいさせてやろう。
「ボルト、念のため、あそこで伸びている魔人を拘束しておいてくれないか?」
『御意』
シュポンッ! っと影に吸われる魔人イレブン。
例の如く、首だけ出した状態で影に拘束されている。
流石、ボルトがいると安心だ。
これで後は皆に説明するだけなんだけど。
……ルシエルとパルはこのままでいいか。
「皆、ちょうど今、全員が揃ってるから説明しておくぞ。蟻と蜂は自分の縄張りから遠くには行けないだろうから、ここにいる者だけにはキチンと説明しておくから、しっかりと聞いて理解してくれ」
皆、【御者】の話に注目してるな。
「まず、オレは馬車なんだ。これは何度も言ってると思うし理解してくれてると思う。【御者】はオレのスキルで出してるだけであって、オレが話したり人間の暮らしに対応するのに便利なだけのスキルなんだ。だから【御者】が攻撃されたりしてもオレはダメージを負わないし、もし【御者】が倒される事があってもすぐに出し直す事もできるんだ。だから【御者】を庇う必要はないんだよ。ルシエルもそこは理解してくれてると思ってたんだけど」
「はい、分かってます……いえ、分かってるつもりでいました。でも、こちらのご主人様が攻撃されると思ったら身体が勝手に動いていました」
「うちもや…」
ルシエルの言葉にパルも同意した。
一郎達『使用人軍団』も「そうでしょうそうでしょう」と納得の頷きを見せている。
「それと、オレはこっちなんだけど」と【御者】にオレを指で指し示して話を続ける。
「オレは死ぬ事は無いんだよ。皆と違ってオレの場合はHPじゃなくてLPで表示されるんだけど、LPが無くなってもオレは死なないんだ。ただ、皆との繋がりが消えて、皆に付いてる『馬車の従者』って称号が消えるだけなんだ。オレはこの世界に現れた場所に戻されるだけなんだよ」
この話は誰にもしてなかったから皆驚きを隠せないようだった。
『繋がりが消えるとは、どういう事でしょうか』
理解が追いつかなかったボルトが皆より先んじて尋ねて来た。
「そのままの意味だよ。皆の成長したステータスはそのまま残るけど、『馬車の従者』って称号が消えて、オレの事も忘れる。それだけなんだ。それに、オレも死なないんだよ、また一からやり直すだけなんだ」
「そんなのダメです! ご主人様を忘れるなんて嫌です!」
ルシエルが力を込めて【御者】を抱きしめる。
「うちもやー」
パルもルシエルの背中に張り付いたまま叫ぶ。
「あたしもなのニャー!」
ライリィも【御者】に抱きついてきた。
「某もでゴザル」
「ボクもー」キュキュキュー
「私もです」
センもキューちゃんもメイビーも【御者】を囲むように近寄る。キューちゃんは【御者】の頭に乗っちゃったね。
ハヤテもボルトも皆の邪魔にならないギリギリまで近づいてきた。
オレは、まだなんとか自由の利く【御者】の右手で、その輪に入り切れずに、ライリィの傍で立っているシルビアの肩の手を回し、輪の中に導いてやった。
こんな時に何を遠慮してるんだか。輪に入りたいんなら入ればいいんだよ。
「わかったよ、皆の気持ちは凄く嬉しい。本当にありがとう。でもな、無理はしないでほしいんだ、オレを庇う事で皆の命が危険に晒されるのは嫌なんだ。もちろん皆が知ってる通りオレには攻撃方法も防御方法も無い。回復魔法も効かない。だから守ってもらわないとダメなんだけど、無理だと思ったらオレの事は見捨てて自分の命を優先させてくれ。オレとの繋がりが切れても生きてさえいれば出会った時に気付くかもしれないじゃないか。頼むから死なないでくれ」
今まで、魔物や魔人の命を奪っておいて勝手な言い分かもしれないけど、この世界はやるかやられるかなんだ。黙ってやられてやる事は無い。それを皆は知ってるからここまで強くなれたんだろうし、今後も魔物を倒して行くだろう。
ちょっとやり過ぎな面もあるかもしれないけど、それもこの世界ではよくある話だ。
うちの連中が強すぎるから弱い者いじめに見える分もあるけど、やってる事は相手の方が酷い時の方が多いからね。
あと、気になったのは一郎達だ。こいつらは何か余裕を感じるけど、なんでこんなに余裕なんだ? 皆の輪に近づいてさえ来ないけど。
「一郎、お前達も執事やメイドだからって遠慮しなくてもいいんだぞ?」
「いえ、遠慮などしていません。宗主様、今お伺いした話には私達は入っておりませんから」
「そうだったか?」
「はい、宗主様。私達は『馬車の従者』ではございません。『馬車ダンジョンの従者』なのでございます。それ故に、もし宗主様がお倒れになっても、宗主様との繋がりが無くなる訳ではございません。宗主様が不死身である事が分かりましたので、私達は宗主様の警護に当たらせて頂いております」
あっ、そうだった。こいつらダンジョン産だもんな。『馬車ダンジョンの従者』って称号だったよ。
「しかしながら、宗主様が不死身であったとしても、私達が宗主様を守護する事を怠る理由にはなりません。今後は私達も共に旅をする許可を頂ければと思います」
「却下。そんなに大勢で旅してどうするんだよ。オレに乗り切れねーよ」
ガッカリして一斉に首を垂れるメイド達。
そんな中でもナナだけはガッカリしていない。逆に笑ってるように見える。
【御者】の視線に気づいたのか、ナナが一礼して口を開いた。
「宗主様、私は旅のメンバーでございます。屋敷の件も終わりましたので、今からまた合流させて頂きます」
そういや、そんな事になってたな。それで笑ってたのか、そんなに付いて来たいの?
「そ、そうだったね、じゃあ頼むよ。それと、その格好はどうにかならないか?」
もうサングラスをはずしてもいいんじゃないか?
「メイド服でございますか? これは私も気に入っているのですが、お気に召しませんでしたか」
「いや、服の事は別にいいんだ。メガネだよ、サングラスの事」
「あっ! タレ目のサングラスがお好みでございませんでしたか。わかりました、次からはファッション性の高い縁なしのものをするように致します」
こいつらオレの知識も少しは受け継いでるって言ってたか。女性タレントがよくするようなお洒落なサングラスの事を言ってるんだな。
そうじゃないんだよ、付けなくてもいいと言ってるんだよ。もういいか、好きにしてくれ。
『主殿』
「うん、分かってる」
ボルトが警告してきた。オレも見張ってたから分かってる。イレブンが目を覚ましたんだ。
「ん、んん……」
イレブンは見える範囲を確認し、オレ達を見つけると、また軽い口調で話し掛けて来た。
「酷いですねぇ、いきなりだったから意識が飛んじゃいましたよ。こちらは捕虜ですから文句も言えませんが、これでは尋問になりませんよ?」
今度こそ、ルシエルに離れてもらい、ボルトも一緒だからと言い聞かせて【御者】をイレブンの前にやった。
来年の投稿予定は4日か5日あたりからになると思います。
自分としては書きたいと思ってるんですが、一応世間は正月のようで、それに伴い帰省や親戚回りがあって、あまり書けないと思います。
デスクトップ派ですのでノートPCは持ってませんし、帰って来てからの投稿になります。
来年もよろしくお願いします。




