表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
148/204

第148話 魔人イレブン

誤字報告ありがとうございます。



 オレ達は森の精霊エントに向かっていた。

 昨日同様ハヤテの頭にキューちゃんが乗って、風魔法で樹を切って行き、オレが収納して進んで行く。


 精霊女王が召喚したらすぐに帰ってしまったので、なんで呼ばれたかも伝えて無いと思う。

 このままだと、それこそ暴走してしまうんじゃないかと心配だし、すぐに向かう事にしたんだ。


 精霊の暴走ってどんな風になるんだろうね。見たくは無いけど気になるね。



「!」

 バロメッツ畑から少し過ぎた時、いきなり何者かが現れた。

 凄いスピードで何かが飛んで来たんだ。


「やあ、あなたでしたか、久し振りですね。凄く大きな力を感じたので来てみましたが、もういないようですね」

 魔人イレブンだった。後ろには魔人ワンも控えていた。


「あなた、何か知りませんか? いや、さっきまではいたはずですので、知ってますよね? 教えて頂けませんか?」

 大きな力を感じたんなら、それは精霊女王の事だろうな。

 言ってもいいのかな? 別に言ってもいいと思うんだけど、精霊女王様との関係を聞かれるとややこしくなりそうだし……言わなくても戦闘になったりしないよな?


「あなたはイレブンさんでしたね」

 警戒をしながら【御者】で話しかける。ポーカーフェイスの【御者】だから、凄く冷静に対応しているように見える。が、本体のオレはドキドキなんだけど。


「覚えていてくれましたか。光栄です、あなたの名前もお聞かせ頂けませんか?」

「オレは……」

 えっと、今は何だっけ? 冒険者カードを確認してる間も無いな。

「…リーダーです」

「リーダーさん? ふざけた名前ですね。あ、いや、これは失礼。とても僕が【鑑定】できなかった人の名前とは思えなかったのでね。あれから少しは鍛え直したんですが、まだあなたの事が【鑑定】できないようですね。やはり、僕もまだまだという事なんでしょうか」


 また【鑑定】したのか。【御者】だからね、何も出ないだろうさ。

「それほど不思議な力を持つあなただ。さっきの大きな力の正体はご存じなんでしょうね。もしかして、一緒にいる方達の誰かですか?」


 他のメンバーの【鑑定】はしてないのか? あっ、鑑定妨害が効いてる? 精霊女王の髪の毛だから効果が高いとか?

 でも、こいつ、以前出会った時から少ししかレベルが上がって無いんだよ。これならハヤテかキューちゃんで十分勝てそうなんだよな。


 でも、その割に凄く余裕を感じるし、凄い装備をしてるとか? 何かとんでもないアイテムを持ってるとか? 防具系は見えてるから分かる、上級程度だな。でも、武器が凄いものを持ってるかもしれないし、油断はしない方がいいな。


「あなたが感じた強い力って何ですか? 魔物では無いんですか?」

「惚けるのですね、それでもいいでしょう。僕が穏やかに話してるうちに答えて頂く方が賢い選択だと思いますよ。ねぇ魔人ワン。少し言いやすくしてあげなさい」

「御意」

 後ろで控えていた魔人ワンがイレブンの前に出て来た。


 ビ―――――  ドゴン!  


 魔人ワンの目が赤く光り、目からビームが出てオレの後輪を破壊した。


 おお⁉ LPが1000も減ったぞ! 右前輪が壊れてしまった。いきなり攻撃して来るか? こいつら穏やかな話し方をしてるけど、やっぱり魔人だ。こいつら武闘派だよ。

 今のがワンのスキルにある【ビームアイ】か。

 でも、右前輪とか言いたくねぇ……


「今のは威嚇だとお分かりですよね? 次はどなたに向けて放ちましょうか。それとも大人しく答えて頂けますか?」

 ヤバいヤバい。破壊力自体はうちのメンバーに比べると大した事無いけど、オレは攻撃も防御もできないんだよ。今の攻撃で動けなくなったし、このままじゃオレがヤバいよ。

 でも、先に皆の防御だ。荷台に【結界】を張っておかないとな。


『主様、【バング】をはずしてください! 自分が行きます!』

キュキュ『ボクがやるー』

『ハヤテもキューちゃんもちょっと待って。このイレブンって奴はハヤテぐらいの強さなんだよ。今、目からビームを出したワンでもライリィぐらいの強さなんだ。ハヤテ一人じゃ荷が重いよ。ボルトと連絡が取れればいいんだけど』


 あれ? おい! お前達降りちゃダメだよ!

「ルシエル、メイビー、パル。降りちゃダメだ。早く荷台に戻って」


「おやおや、なんで降りて来たのでしょうね。大人しく降参して頂けるのですか? それとも、まさかとは思いますが戦おうと思ってるのではないでしょうね?」

「「「……」」」

 誰も返事をしない。


 うわ、なんか皆マジモードだ、目が座ってるよ。

 これはヤバいな、ボルトに連絡取ってる場合じゃない。

『ハヤテ、皆を守って』

 オレは素早く【バング】をはずしてハヤテを解放した。

『了解っす!』

『ボクもー』キュキュー

 あと誰が呼べる? 一郎達か? ガンちゃんも呼べたな。

『ガンちゃん! 来て!』


 ズズ―――ン!  プチッ


『殿ー、やっと呼んでくれたのぉ。こうやって呼ばれるのは嬉しいもんじゃのぉ』

 今の緊迫した雰囲気には似合わない、のんびりとした口調でガンちゃんが喜んでいる。


 ……ガンちゃん……魔人ワンを踏んでるよ。

 あれはもう死んじゃったな。


「ななななんだ、この山は! どこから出て来たのだ! これがお前の力だと言うのか」

 いきなり現れたガンちゃんを見て驚く魔人イレブン。


「リーダーでしたね、流石に僕も一人では勝てそうに無いようですね。今日の所は見逃してあげましょう、このお礼はまた今度たっぷりとしてあげますよ。覚えてろよ!」

 このままでは分が悪いと見て、魔人イレブンは逃げようと飛び立った。

 え? もう逃げるの?


「【ルミナス・アロー・レイン】!」

 ぐおおぉぉぉ


 え?


『大地に根差す我が子達よ、精霊ディーディパルが命ずる。荊の鎖となりて彼の者を封ぜよ』

 ぐぐぐ


 おおお!


キュキュキュキュー

 ぬわぁぁぁぁ


 へ?


『疾風結界!』

 うぐぐ


 ……。


「光の精霊よ、私に力を貸してください。【光輝牢獄】!」

 ぐはあぁぁぁぁぁ目がぁぁぁ!


 ……やり過ぎだ。



「ご主人様を傷つける者を私が見逃す訳がない!」

「当たり前や! 簡単には死なせへんで!」

キュキュキュキュー

「当然っす!」

「ご主人様の痛みを知りなさい!」


 うわー、みんな怒ってるねー。これだけみんなが怒ると、こっちは冷静になれるもんなんだねぇ。

 やられたのはオレだけだけど、皆の心に火を点けちゃったみたいだねぇ。

 一気に殺されてた方がマシだったんじゃない?

 魔人イレブンはまだ生きてるよ。徐々にHPが減って行ってるけど、死ぬまでにはまだまだあるよ。


 えーと……今、話しかけるとオレが怒られそうだから、分かる限りで整理してみよう。


 ガンちゃんを呼んだのはオレだ。生死の確認はしてないけど、魔人ワンはガンちゃんの足の下にいるんだな。たぶん、厚さ一センチぐらいになっちゃってるかもしれない。

 で、それを見た魔人イレブンが捨て台詞を吐いて逃げようとしたんだよな。

 それを皆が見逃さなかった訳なんだけど、その攻撃の内容だな。


 まずはルシエルが弓技で魔人イレブンを叩き落としたんだったな。

 【ルミナス・アロー・レイン】ですか? 飛び立つ前の魔人イレブンがいた位置に向かって水平発射した矢が、なんで上から降って来るの?

 【光神弓】ですか。さすがはゴッドクラスの弓の発動技って事でいいのかな?

 無数の光の矢が真上から凄い速さで降って来るんだもん、あれは誰にも避けられないな。

 しかも、矢が刺さってるのは両手両足だけなんだもんな。どんな凄腕になったんだよ。魔人イレブンがそのまま地面に張り付けにされたもんな。


 続いてパルの詠唱だな。今回は格好良かったぞ! で、荊の蔓がルシエルの放った光の矢が消える前に、身動きできなくしてしまったよな。しかも棘付きだから痛いだろうな。


 その後にキューちゃんだ。パルの荊の封印の上から氷漬けにしてしまったね。しかも、ご丁寧に顔だけは何もしてないね。後で尋問がしやすいようにしてくれたのかな?


 そしてハヤテが【疾風結界】? もう身動きできない奴を更に結界で逃げられないようにしたの?


 最後にメイビーの【光輝牢獄】? よく分からないけど、あの魔人イレブンの苦しみようを見る限り、目に有り得ない程の光を浴びせられてるんじゃないかな。目を閉じてる魔人イレブンの瞼だけ凄く光ってるもん。

 確かに眩しすぎると周りが見えなくなるし、目も痛くなるよね。その最凶版って事じゃないかな。牢獄の名に相応しい技だな、痛みは我慢できないだろうし、見えないから身動きも取れないだろうからね。だけど、よくそんな事を思いつくな。見た目は地味だけど、絶大な効果がありそうな技だよ。

 メイビーの言った「ご主人様の痛みを知りなさい」か。オレは痛みを感じないんだけどね。でも、その気持ちは嬉しいよ。


 しかし、実力上位の魔人をこうもあっさりと拘束してしまうって、こいつらって凄いよ。

 怒りパワーだったのかな? キレるといつも暴走するもんな。オレも怒らさないように気をつけよ。


 ふぅー、オレはまだ動けないけど、【御者】で聞きたい事だけでも聞いておくか。

 あ、オレには回復魔法なんか効かないからね。自動回復で修復するだけがオレの回復方法なんだ。だから時間が経てば元通りになるけど、それだけしか回復方法が無いんだ。



 皆に囲まれ、痛みに喘いでいる魔人イレブンの前に【御者】を行かせた。


「イレブン、話せるか?」

 イレブンはまだ痛みで喘いでいる。身動きが出来ない状態だから、のたうち回る事も出来ない状態だ。

 これじゃ話せそうもないな。


「メイビー、メイビーの技だけ解除してくれる? 少しこいつと話がしたいんだ」

「解除してはダメです」「アカンって」キュキュ「そ、そうっすね」「そうです、できません」


 解除の件は皆から反対された。ハヤテだけは解除しても良さそうな雰囲気だったけど、皆の反対意見に流されたようだ。キューちゃんまで解除には反対みたいだ。


 だったらどうするの? いつまでもこのままって訳にも行かないでしょ。

 でも、すぐに解除するには、まだ皆の怒りが治まって無いので無理なようだ。もう少し待ってやるか。


「わかった。じゃあ、今のうちにハヤテに乗せてもらってパルとメイビーで森の妖精エントの所に行って来てよ。着く頃には【御者】も行かせるから。オレはキューちゃんに守ってもらうし、魔人の見張りはルシエルもいるし、ガンちゃんもいるしね」

 視界の一番端にエントという文字が出てるから、ハヤテが着いた頃に【御者】を向こうに出せばいいだろう。

 【御者】の行動範囲は十キロ以内だけど、視界は半径五キロだからね。なんとか見える範囲にまで来れてて良かったよ。


 二手に分かれる事には反対は無かった。

 ハヤテにはパルとメイビーが乗って森の精霊エントを目指し、残りはここに残る事になった。


「ルシエル、ちゃんと見張っといてや」とパルが言い残し、ハヤテ組はエントに向かって行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ