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第140話 市長との対決

誤字報告ありがとうございます。



 馬車ダンジョンに戻って夕食を摂った後、今日の出来事を聞いてみた。

 ボルトはまた食ってたけどね。


 ライリィはピエロ達の仲間に誘われたが、断った。どうもピエロの格好をするのが嫌だったらしい。

 シルビアは勇者談義に花が咲いてる冒険者達の所を転々としている時に、エロジジィの市長と出会って、元勇者である事を聞くと自分も勇者の子だと名乗り、最後までその席にいた。

 センは武器自慢が終わり、他に目ぼしい武器を持っている冒険者もいなかったのでブラブラしている所でシルビアを見つけて合流。

 ルシエルは天人族の冒険者に声を掛けられ、勧誘を受けていた。それでって聞いたら無言で睨まれた。


 そういえば、ルシエルって天人族と魔人族のハーフだったよな。しかも今は『天魔人(魔人)』だろ?

 魔人ってシルビア達勇者の子を狙ってるのも魔人なんだよな。

 同じ種族になるのかな? あとでボルトに聞いてみよ。


 最後に「行きたいパーティがあったら、オレに気兼ねする事なく行ってもいいんだよ」って言ったら、凄っごく怒られた。

 誰にって? 全員にだよ。一郎達まで一緒になって怒ってたよ。

 だって、いつまでも馬車の従者でいる事は無いと思うんだよな。オレだったら嫌だもん。


 オレだって気を使って言ってんのに、「ここがいい」だの「それはイジメですか」だの「もっとお役に立ってみせます」だの「何言ってるか分からないのニャ」だの、挙句に「もっと仲間を増やしましょう」とか「今度からガンちゃんも同行させましょう」とか「次のダンジョンには付いて来てもらいます」とか「ピーちゃんも一緒」とか「逆にハヤテを引けば従者の気持ちも分かります」とか「ジャグリングしてみるのニャ」とか、どんどん意味不明な事を言い出す始末。

 オレにどうしろって言うんだよ。


 オレはお前達の事を思えばこそだな。もういいか、好きなだけいて、飽きたら出て行けばいいよ。

 でも、もう六年か。情も移るよな。それは相手も同じか。一番多感な時期にオレと出会ってしまった事が彼女らの不幸なんだろうな。


 でも不幸中の幸いか、彼女らは全員女だ。結婚でもすればオレから離れて行くだろう。

 ん? なんか嫌な事を考えてしまった。

 まさか、結婚してまでもオレといる気じゃないだろうな。

 まさか彼女らの子もオレの所で育てたりしないだろうな。


 まだ先の話だろうけど……ん? 先の話か? 18歳、17歳、14歳だろ。この世界って15歳から結婚できるらしいから、既に結婚適齢期になってるじゃん!


 ヤバいぞヤバいぞ。オレの荷台でおしめを替えられるの? 荷台で授乳してたり? 辞めてくれー

 これは一度キチンと話し合った方がいいな。今日はダメだろうから、近いうちに必ず話をしよう。



 今は、先にアーランノットシティの件だな。出会いの町の市長。

 イカサマエロジジィと命名したが、まだ会ってないからな。屋敷をくれたのも、何か色々仕掛けてあるんじゃないか? 隠し部屋とか覗き部屋とか。エロジジィのする事だからな、油断はできないぞ。

 次に行く時は覚悟しておけよ!



 予定通り三日後、再びアーランノットシティの町に入った。


 町に入ると、冒険者ギルドに隣接している酒場に一番に寄った。通称『出会いの酒場』、冒険者達がパーティメンバーを探しに来る酒場。

 そこにイカサマエロジジィはいた。

 ルシエル達に聞いていた通り、一番奥の角に陣取っていた。八人掛けのそのテーブルには二人の男も座っている。仲間のように見えるけど、こいつらにも称号に『元勇者』ってあるから身内なのかもな。


 オレはイカサマエロジジィの顔を知らないので、センに付いて来てもらった。またゲームになってイカサマをされて触らせるのが嫌だったから。

 その点センなら変身してる姿だし、ダメージも少ないだろう。本人も触られた事は気にして無かった。ゲームで一勝もできなかったのが悔しかったみたいだ。それと、ライリィとルシエルが触られたのもセンとしては頭に来ていたようだ。

 守れなくてすまなかったでゴザルって言ってたから。


 奥の席に行き、テーブルの前で立った。

 センに視線をやるとコクリと頷いた。このジジィで間違いないようだ。


「すみません、少しお邪魔してもいいですか?」

「ええ、どうぞどうぞ。ここは出会いの酒場。相手からオーケーが出れば、どんどん相席してください。もちろん、その席はオーケーですよ」


 痩身の白髪の男は、屈託の無い、人懐つっこい笑顔答えてくれた。

 見た目は細身だが、かなり鍛え上げられてる事が、スーツ姿の上からでも分かる。

 ステータスも3000までは届かないが、軒並み2500オーバーだ。

 中々に強いな、このエロジジィは。元勇者というのも本当だろうな。


 あまり聞いた事が無いんだけど、レベルダウンってのもあるんだろうか。無いんなら、現役の時のままのステータスって事かな?


「では、失礼します」

 オレが席に座ると、続いてセンも隣に座った。

 センを見たエロジジィが、おや? っという顔になった。


「あなた、先日の美人さんじゃないですか。センさんでしたね。私は女性の名前を覚えるのは得意なんです。今日はリベンジですか? 屋敷の方はお気に召さなかったようですね。折角最後に勝って手に入れたのに」

 やっぱり屋敷には何かあったのか?


「いえ、今日は私の方が用事がありまして」

 エロジジィは一度【御者】を見ると、すぐにセンに視線を戻した。

 男には用が無いってか! 流石はエロジジィだな。


 では、作戦通り行きますか。


 センにもう一度勝負を持ち掛けてもらうと、エロジジィは快く勝負を受けてくれた。

 勝負方法は先日と同じトランプ、神経衰弱だ。

 賭ける物はエロジジィからは屋敷を、オレからはブレイズソードとガストソードとアイシクルソードの三点セットを出した。

 充分屋敷に見合う物だと思う。レア度から行くと、こっちの方が価値があるかもしれない。


 ところが流石はエロジジィ。あっさりとこちらの出した物を拒否。センを触らせろと言ってきた。


 今日の目的は、このエロジジィをギャフンと言わせる事だから、負けるつもりも無いし、エロジジィの提案を受けた。

 センは特に気にする素振りも見せない。触られても「なにが?」ってぐらいなんだろ。



 賭ける物も決まり、神経衰弱が始まった。

 聞いていた通り、エロジジィはサングラスを付けた。


 トランプの裏側には思ってた通りマークと数字が書いてあった。もちろん、そのままでは見えない仕組みになっている。

 【御者】を通した視線で見ているオレには丸見えになっている。だからどれが何のカードかは相手も分かるが、オレにも分かる。これじゃ神経衰弱にならない。先行を取った方の勝利が確定するだけ。


 ベタな方法としてはエロジジィのサングラスを壊すって事だけど、それじゃギャフンと言わせる事にはならないな。

 サングラスが無くなれば勝負を辞めると言い出し兼ねないし、予備のサングラスを持ってるかもしれない。


 そこでオレは考えた。態と一回負けよう。

 実際、このエロジジィがどんな風に触ってるのかも見てみたかったし、相手の油断を誘う事もできるだろう。

 センには悪いが、前回も触られてる訳だし、一回ぐらいいいだろう。悪いなセン、皆の為だ。

 オレが触れないから触ってる所だけでも見たい! なーんて思って無いからね。


 対戦前にカードを改めさせてもらう。

 確認をする振りをして、一枚を一瞬だけ収納。オレの【錬金】の道具の項目にトランプが現れた。

 項目には【イカサマトランプ】と出た。次の項目には【マジックトランプ】も出ている。

 ナビゲーターと協議の結果、絵柄は同じで裏に書いてあるイカサマ用のマークをバラバラにすることにした。

 それだとオレにも分からなくなるので、カードの角に小さく何のカードか分かるように書いておいた。

 凄く小さく書いたので、オレ以外には見えないと思う。サングラスをかけないと見えないなんて細工はしていない、ただ小さく書いただけ。普通に見ると点にも見えないぐらい小さく書いた。


 このナビゲーターとのやり取りは『思考加速』で一瞬で終わったんだけど、造るのには三分かかる。

 それで一回目は負けて、もう一回挑戦する前に再度カードを改めさせてもらってカードを交換する作戦だ。



 第一回目。予定通り負けた。

 オレにもカードの種類は見えているけど、敢えて大敗した。

 オレが取ったカードは二ペアだけ。後はエロジジィが全部取った。

 それも、白々しく「ムッホーイ! また当たったねー」とか「んー、これかな?」とか「今日は最高にツイてますねー」とか言ってる姿を見ると、ぶん殴りたくなってくる。ネタバレしてんだよ! って大声で叫びたくなる。


 これって詐欺罪で捕まらないのか? こいつが市長だから何やってもいいとか?

 負けたので賭け金であるセンに立ってもらうとエロジジィが「では」と紳士っぽく立ったかと思うと、素早くセンの後ろに回り、お尻に撫でてそのままセンの前に回り抱きついて胸の谷間に顔を埋めやがった。その間三秒ほどだったが、これをルシエルやライリィにもやったの? まさにエロジジィだよ、こいつ。

 ダメだ、怒りでこの酒場を冒険者ギルドごと破壊したくなってきた。



 このエロジジィの実刑は確定したが、死刑を執行するのはギャフンと言わせてからだ。


 次戦前にカードを改めさせてもらい、すり替える事に成功。

 このカード、全部のイカサママークをバラバラにした訳では無い。

 トランプは全部で五十二枚、二十六ペア。十三ペア以上取った方が勝ちだ。

 だから二十枚は正解のマークを残し、残りは実際の絵柄とは違うマークにした。


 二回目はオレの勝利。もちろん屋敷は頂く事になった。シルビアがもらった屋敷の隣らしいが、そんな事はどうでもいい。次だ次。

 三戦目にはまた屋敷を賭けるとエロジジィが言う。どんだけ屋敷を持ってるんだか。

 カードを変更すると言うので、了承する。もちろん対戦前にはカードを改めさせてもらう。

 ジッと【御者】の手に持たれているカードを見ているが分かる訳がない。

 束になったカードの中の方を一枚ずつ代えているのだ。


 オレも収納は相当上手くなっている。【御者】の視線を通し、一枚抜いてすぐにオレ用のカードとすり替える。『思考加速』も使うから、ほぼノータイムでカードが交換されていく。


 三戦目もオレの圧勝。

 熱くなってきたエロジジィがもう一度屋敷を賭けて勝負だと言って来た。

 もちろんオレは受ける。

 またカードを交換されたが、今度はエロジジィが手に持ったままカードを広げる。

 カードマジックでよくやるアレである。

 ファンやスプレッドという技名だったと思うが、無茶苦茶上手い。そんだけ上手けりゃイカサマなんかしなくてもいいんじゃないかと思う程だ。


 だが、オレも容赦はしない。

 カードを改めさせてもらえないのなら、先行でやらせてもらうと主張し、オレが先行でやる事になった。

 完封勝利。一度も相手に触らせる事無く全部取ってやった。


 またまた次戦を要求するエロジジィ。だが、今度はエロジジィも屋敷だが、オレにも勝ち取った屋敷を賭けろと言って来た。手持ちの屋敷が無くなって来たんだろう。

 もちろんオレは承諾する。


 カードも新しくさせ、今度もオレに触らせる事無く確認をさせ、次はエロジジィが先行でやらせてほしいと言うので先にやらせてやった。


 先行のエロジジィは快調にペアを揃えていく。が、カードを取る瞬間に手で死角になるトランプをオレがすり替えて行く。六ペアを揃えた時点でエロジジィが間違えてオレの番。

 残り全てを取ってやった。

 これで四勝一敗。屋敷は四軒手に入れた。


 熱くなったエロジジィはどんどん次戦を要求して来る。オレはそれを受け、全勝する。

 掛け金にお金は出して来ない。もう屋敷が無くなったのか、勇者の装備だという剣やら盾やら鎧やら。次々と一緒にいた供の者に取りに行かせる。

 ただ、ここまで負けてるのに一度もまともなトランプを出して来ない。全戦イカサマカードだ。


 イカサマカードじゃなかったらいい勝負になったかもしれないのにね。イカサマカードだったらオレに分があるのが分かって無いみたいだね。でも、ここまで負けたら普通のカードなんて出せないか。一発逆転なんて普通のカードではできないからね。


 そうやってルシエル達を食い物にしたんだから、同じ目に合わせてやれて、ようやくオレも溜飲が下がったよ。


 スキルの無駄使いだと言われてもいい! みんな! 敵は討ったぞ!



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