第13話 買い物
さっきのインザーグって冒険者、ミーティングルームで待ってるって言ってたけどまだ待ってるのかな? 冒険者ギルドから出て来てないからまだ居るんだろうけど、買い取りに結構時間が掛かったからな。
あれ? 【馬車役】のレベルがまた上がってるな、出し入れしてないけど出しっ放しでも上がるんだな。しかも返事もたくさんさせたからかな。今度から出してる時は話もさせ続けてみよう。
『シルビア、さっきの冒険者の所に行ってみようか。』
『わかった。武器屋と宿屋の場所を聞けばいいのね。』
『うん、他にも依頼の件とかいい情報が聞ければいいんだけどね。』
『そうだね、じゃあ行って来る。』
シルビアはまた冒険者ギルドに入って行った。もちろん【馬車役】も付いて行かせる。
《【馬車役】のレベルがMAXになり【馬車長】に進化しました。》
お! ナイスタイミングだ。【馬車長】になったら何ができるんだ?
話せる言葉が増えただけ。はいそうですね、わかってましたよ。なーんも期待してませんでしたよ、武器が持てるようになるとか、魔法が使えるようになるとか全然思ってませんよー。
ちくしょー! 思ってたよ。オレも戦いて~。
【馬車長】に進化して動きはさっきまでより滑らかになった。
シルビアとミーティングルームに入った。
丸テーブルが12個置いてあり、椅子も6個ずつ付けてある。一番奥のテーブルにさっきの冒険者インザーグが仲間と座っていた。
4人で座っていて、1人はインザーグ。後は見た目的には女魔法使いと弓系の戦士と槍系の戦士のようだ。
シルビアと共にインザーグのテーブルに向かって行く。
「やあ、買い取りは終わったかい? これだけ長かったところを見ると相当な金額だったみたいだね。」
「知らない。」
「あ、別に詮索するつもりで言ったんじゃないんだよ、気を悪くしないでくれ。」
「別にしてないわ。」
「それなら良かった。まぁ座りなよ、お腹は空いてないかい?」
「大丈夫。」
「じゃあ飲み物でも頼もう。」
インザーグがウエイトレスの女獣人を呼んでジュースを頼んでくれた。1つだけ。
やっぱりオレというか【馬車長】はあまり認識されてないみたいだな。その方がいいんだけどね、寂しいー。
シルビアと【馬車長】が席に座りインザーグが話し始めた。
「まずはこっちの紹介をしよう。俺はインザーグ、Bランクの冒険者なんだ。こっちは槍が得意なバーズで魔法が得意なメーレ、それと弓と短剣が得意で罠解除や薬草の調合もしてくれるシーゲル。3人共Cランクだけど、うちは4人パーティでパーティランクはBなんだ。」
Bランクってどれぐらいの強さなんだ? 見てみようか。
【鑑定】
名前: インザーグ・バーレントン
分類: 人間(人族)LV38
HP:483/483 MP:475/475 ATT497 DFE484 SPD481
スキル:【武器】5/10【魔法】2/10【気配感知】4/10
武器:【剣】5/10【斧】2/10【拳】4/10【槍】1/10
魔法:【火】3/10【水】2/10【木】2/10
ユニークスキル:
称号:
え? シルビアの方が強いじゃないか。これでBランク? じゃあ、シルビアはAランクぐらいあるってことか? マジで? まだ8歳だぞ?
それならボルトってどんだけ強いんだよ。こいつの10倍強いんだぞ。
「私はシルビア。ランクはG。」
「シルビアちゃんね、ランクがGなのはさっき入会したばかりだからだよね? 実力的にはC以上はあるとは思ってるよ。君さぁ、うちのメンバーにならない?」
そういう事か、パーティの勧誘だったんだな。確かにシルビアはこのパーティに入った方がいいかもな。そりゃ馬車といるよりいいだろ? シルビアと離れるのは寂しいけど、まだ子供だし大人といた方がいいに決まってる。パーティに潜り込んだ方が身元も隠し易そうだし、いい条件が揃ってるよな。オレはバーゲストに頼まれただけだし、Bランクパーティだったら安心だろ。お荷物がいなくなって清々するってもんだ。orz
「ならない。」
「え? もうどこか決まってるの?」
「前から決まってる。」
「え? あ、この人? さっきの従魔の登録をした人だ。そっかぁ、あんな従魔を従えられる人だったら諦めるしかないか。」
『シルビア? オレはいいからこの人達と一緒の方がいいんじゃないか? 人間のパーティだぞ? 女の人もいるみたいだし。』
『いいの、馬車さんといるの。』
『オレといると不便だろ? 人間といる方が便利だと思うぞ。』
『いい、一緒にいるの。いていいって言ったじゃない。』
『そりゃ言ったけど……。』
『だからいいの、馬車さんと一緒にいるの。』
オレの何が気に入ったんだか、今日の所は無理そうだよな。そのうち気に入ったパーティが現れるかもしれないし、それまではいいか。
「どこか宿を知らない?」
「まだ宿を取ってないんだ。宿かぁ、あの従魔付きだよねぇ。俺達が泊まってる宿に頼んでみるか、あの宿でダメなら諦めるしかないと思うよ。一応冒険者ギルド指定の宿だからある程度の融通が利くのはあの宿ぐらいだから。」
「わかった、お願いします。武器屋は?」
「さっき壊れたもんね。俺にも責任があるし、一緒に連れて行ってあげるよ。今から行ける?」
「うん。」
パーティメンバーも一緒に来てくれたので、全員馬車に乗せてやった。
雷獣が引く馬車にも感激してたけど、乗り心地の良さにも感心していた。
先に宿に寄って頼んでくれたが、ボルトの事は断られた。
ボルトを見た瞬間、女将さんが腰を抜かして悲鳴を上げた。それからは何を言っても「無理無理」しか言わなかった。それでもインザーグの口利きでシルビアだけは宿で泊めてもらえるようにしてくれた。小さい女の子が1人だし女将さんも渋ってたけどね。冒険者カードもGランクカードだと大した効力もないみたいだ。
オレとボルトはどこでもいいしね。
武器屋に行く途中に雑貨屋があったので寄る事にした。
インザーグのパーティの料理担当と罠解除担当のメーレとシーゲルが買い物したいと言ったから。オレも調味料など欲しいと思ってたから一緒に付いて行った。
シルビアにも付いて来てもらい調味料を大量に購入した。それでも金貨5枚で十分お釣りが来た。調味料と言っても塩と胡椒だけ。塩は30キロ入りぐらいの大袋で金貨2枚、胡椒は1キロ入りぐらいの小袋で銀貨80枚。それを3袋購入した。買える時に買っとかないとね。
武器屋に着くとまず剣を見た。
1番種類が多く、青銅の剣も置いてあった。銀貨30枚だった。安っ! 胡椒以下。
初めの頃のレベルアップボーナスで出た武器だからね。
青銅・鉄・鋼・ミスリル・黒鋼・各種魔物素材・ドラゴン素材。剣の種類も短剣・ダガー・レイピア・剣・長剣・大剣。中でも目を引いたのが魔法剣。これは素材となる魔物の特性を引き継ぎ、更に魔石を埋め込み魔力を蓄積・増幅させ斬ってよし放ってよしの優れもの。ただし、剣レベルが8以上と同じ属性の魔法レベルが5以上無いと使い熟すのは難しいようだ。
今使う用に黒鋼の剣と将来の為に火属性の魔法剣『火龍の剣』を購入した。
黒鋼の剣が金貨10枚、火龍の剣が金貨100枚だった。
剣の売り場から左は槍、弓、斧、杖など武器が続いていた。右側は防具が売っていた。
店の半分は防具屋になっていて、入り口も分けてあるが中では繋がっていた。
店の裏にも繋がっていて、こっちはオーダーメイド専用で鍛冶屋があった。
鍛冶屋の入り口は裏通りになるが、工房は裏道を挟んで向かい側なのでこちらの方が便利なようだ。普段は武器・防具屋の既製品を作っているが、偶に入るオーダーメイドの為に客と打ち合わせをする場所を設けているようだ。
シルビアには防具を見てもらい、好きな防具を見本にしてオーダーメイドしてもらった。
サイズが無かったんだよ、まだ小さいからね。
サラマンダーの皮で造った火耐性のあるレザーアーマーにヘッドギアとレガースとブーツ。アダマンタイマイの甲羅で作った盾。
レザーアーマーが金貨30枚、ヘッドギア・レガース・ブーツは金貨10枚ずつ、盾は金貨20枚だった。参考価格にさせてもらって裏の鍛冶屋に行った。
素材を出せば安く済むと言われたのでAクラスってボルトが言ってた中でキングワイバーンとグリフォンの皮を出した。牙があれば武器も造れたのになぁと言われたので牙も出した。もの凄く驚かれたが久し振りの高レベルのクラスの素材とあって、優先してやってくれると言っていた。素材を出したのに価格は既製品より高かった。これだけ高レベルの素材だと加工する職人の技術料も高くなり、工賃だけでも高いそうだ。もし素材が無ければこの5~10倍はするそうだ。防具代だけで金貨120枚支払った。金額が高い分、それに見合った防御力も得られるんだから安い物だ。金貨はまだまだあるし、無くなればまた素材を売ればいいんだよ。もう1人で行けそうだしね、【馬車長】になって『いいえ』が言えるようになったからね。それだけですが、なにか?
『こんにちは』『はい』『いいえ』これだけ言えれば行けなくない?
シルビアの防具の仕上がりは3日後だ。それまでは今の装備で我慢してもらおう。
ボルトの腕輪も見たんだけど、良い物が無かった。無いけど付けないといけないので、大型犬用の首輪を買ってシルビアにボルトの腕に付けてもらった。巨大化したら切れるだろうなぁ。
買い物も終わったのでインザーグのパーティとシルビアを宿で降ろし、どこかオレとボルトが落ち着ける所を探した。
インザーグがBランクだったのでステータスを上方修正しました。