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第116話 拠点

 メイビーがルシエル達と風呂から上がって来た。ずいぶん満足げだ。

 服はオレが出してやった。一種類だけある黒の長袖Tシャツ。シスターズ全員に渡しているやつだ。みんな結構この黒の長袖Tシャツは気に入ってくれてるようだ。

 ただ、この世界ってインナーというか、肌着というか、ブラジャーがお粗末なんだよ。


 ある事はあるんだけど、うちの連中は誰も着けてない。ゴワゴワして硬くて痛いそうだ。しかも苦しいと言って持たせているのに普段は着けてない。だからピタッとしたTシャツを着てると身体のラインが生々しい。かなりエロい。


 普段、町に出る時はレザーアーマーを着ける事が多いんだけど、以前に学校に行ってた時や、ちょっと買い物とかちょっと冒険者ギルドって時は防具を着けないから、上から何か着せている。

 ルシエルは元々ゆったりした服を好んで着ているからいいんだけど、ライリィが着てくれないんだ。

 うちのメンバーで一番胸が大きいライリィだけど、身体にピッタリした服を好むんだ。本人はまったく気にしてないようだけど、周りの男共の視線にそろそろ気付いてほしいもんだよ。



 で、食事だけど、ボルト達は先に食べたから、あとは風呂から上がった連中だけ。ルシエルが出してくれた机と椅子に全員が座った所で料理を出してやった。

 あれ? メイビーはまだ焔鳥ほむらどりのままのようだな。風呂だけの契約じゃ無かったの?


「あれ? メイビーはまだ焔鳥ほむらどり?」

「左様じゃ。わらわも久し振りに食事をしたいのじゃ。今日だけは無理を言うて許して貰おたぞ。安心せい、今日だけじゃ」

「それならいいんだけど」

「酒は無いのか」

「酒は…あるけど、それメイビーの身体だぞ」

「大丈夫じゃ。此奴も酒には強いようじゃ」

 ホントかなぁ。ま、少しぐらいならいいかな。


 料理はもうだいたい誰がどのぐらい食べるかは分かってる。でも、女の子ばかりだから、一人前ずつにして、お替わりの間は一分待ってもらっている。どんぶり飯みたいに毎回二人前ずつ食べてると、それがクセになって、太っても可哀相だからね。

 メイビー(焔鳥ほむらどり)には料理と別にコップに葡萄酒を入れて出してあげた。


「馬車さん、さっきの話の続きなんだけど」

 シルビアから話しかけて来た。さっきの……あ、鳥を飼ってもいいかってやつだな。

 ジョンボルバードってデカい鳥だけど、魔物だからね。


「ジョンボルバードの事だよな。帰る場所があれば飼ってもいいんだけど、場所が無いよ」

「ここでいいじゃない」

「ここ? ここなら飼う必要はないよ。今と同じじゃないか」

「違うよ、私達もここで住むの」

「ば、な、何言ってんの。ダメだよそんなの」


 ここで住む? シルビアなに言ってんだよ。


「い、家はどうするんだよ」

「建てればいいじゃない。建てなくても洞窟型にすれば造れるメンバーは多いでしょ」

「む、町には行かないのか」

「行きたい時に行けばいいじゃない。町の門の近くに転送できるようにしておけばいいんじゃない」

「ぐ、冒険者の仕事はどうするんだよ」

「それも同じね。町の外に転送魔法陣で飛べるようにしておけばいいわ」

「け、結婚はどうするんだよ。町にいれば出会いだってあるかもしれないぞ」

「そんなのあった? 少なくとも今まで会った男にはクズしかいなかったわ」

「これから出会うかもしれないじゃないか、まだ十四歳なんだし。こんな所で住んでたら、出会いだって無いんだぞ」

「だから偶には町にも行くわ」

「き、近所付き合いはどうするんだよ」

「馬車さん大丈夫? そんな事したことないじゃない」

「ぐぬぬぬ」


「ほっほっほっほ、お主の負けじゃの。ここで住めばよいではないか。見晴らしもいい、風呂も最高、おまけに魔素も豊富じゃ。しかも料理も美味いときておる。わらわ達、魔物にとっても住みよい所じゃ」


 いや、お前達はいいんだよ。ボルトにしろハヤテにしろ、ここの方が自由にできるだろうし住みやすいだろう。でも、シスターズは人間なんだよ。人間は人間と暮らした方がいいんだよ。


「馬車さんは反対なの?」

「……うん、反対だ」

 言い負かされて自分の意見を主張するのはルール違反のような気もするけど、自分の考えとしては反対だ。


「じゃあ、わかった。半分ずつにしない?」

「半分ずつ?」

「一日おきだと面倒だから、三日ずつ町とこことを交代で住むの。それでも反対?」

 言い負かされた上に妥協案を言われちゃ断れないじゃないか。


「わ、わかった。それでいいよ」

「それで町ってどの町に住むの?」

 それなんだよなぁ。メキドナから出た理由も特にないんだよ。いつまでも町にいるより外に出た方がオレの正体も分かりそうだと思っただけなんだよね。ボルト達も町の中より外の方がいいしね。

 それでシルビア、ライリィ、ルシエルにはそれぞれの道を進んでもらって、パルは妖精の森に送って、人外だけで旅をしようと思ってたんだよな。


 別に彼女達がお荷物って事じゃないんだ。ただ、人として幸せになってほしいだけなんだ。オレといたらどんどん人から遠ざかってしまいそうで、この達が幸せになれないんじゃないかと思ってしまうんだ。


 それなのに、そんなオレの気持ちも分からずに、こんな所で住みたいだなんて、シルビアは何を考えてるんだよ。


 あっ、シルビア達が住みたくなる町を探せばいいのか。

 そうだよ、そうしよう。それならオレの目的の自分探しの旅にも繋がるし、シスターズの為にもなりそうだ。



「住む町は今から探そう。今はメキドナと王都と港町しか行ったことが無いから、まずはエイベーン王国の町を回ってみて、迷いの森があったワンワード王国も一度行ってみよう。ワンワード王国は税の取り立てが厳しいらしいけど、行ってみないとどんな所かも分かんないしね。あと、センやガンちゃんや焔鳥ほむらどりの縄張りだと言う東、北、南の国にも行ってみよう。その中で住みたい町を見つけるってどうかな」

「それはいいわね。でも、三日はここにいたいの。あの子と一緒にいたいの」

「それこそ毎回転送で帰って来て、三日経ったら続きから始めればいいんじゃないか?」

「うん、そうね。それで行きましょ」


「ほっほっほっほ、話は決まったかえ? まずはわらわの国にすればよい。その前に、此奴の村に寄ってやりたいんじゃがのぅ」

 焔鳥ホムラドリが口をそんな提案をしてきた。

 メイビーの村か。オレも行かなきゃと思ってたんだよ。でも、その前にこんな事になってしまったから後回しになってたんだよな。メイビーの気持ちが落ち着くのを待ってたってのもあったしね。


「じゃあ、メイビーの村からにして次は焔鳥ホムラドリの国って事は南でいいのかな?」

「さようじゃ」

「お待ちください、お館様!」

 セン?


「メイビーの村は某も優先事項だと分かっているでござるが、次の行き先は某の国の東を提案するでゴザル」

『それなら殿は北へ向かうべきじゃの。儂の国はのんびりして楽しい所じゃ。北じゃが意外と寒くは無いのじゃ』

「ほっほっほっほ、其方らは何を言うておる。南が一番に決まっておろう」

「東でゴザル!」

『北がいいのぉ』


 なにこのお国自慢バトル。それも伝説の四獣で何やってんの! ボルトは参戦しないんだね。でも、黙ってるんなら触らないでおこう。薮蛇だったら泥沼になっちゃうからね。


「で、馬車さんの考えはどうなの?」

 お国自慢バトルなど無視してシルビアが聞いていた。そのスルースキル、オレも欲しいよ。


「まずはメイビーの村ってのは賛成だね。国中を見て回る事になるだろうから、後回しになりそうだから先にメイビーの無事な顔だけでも村の人達に見せてあげたいしね。その次は……」

 セン、ガンちゃん、焔鳥が生唾を飲んで注目する。


 いや、そこまでのものじゃ無いと思うよ。結局全部回るつもりだしさ。

「まずはシルビアのいたエイベーン王国だね。シルビアの現状がどうなってるのかも知りたいしさ。そうなると、近いのは北か東だね。先に北に行って、東回りで南に向かうのが流れとしてはいいかもしれないね」

「……わかったわ……任せる」


 あれ? シルビアは本当にわかったの? なんか北や東や言ってるけど。まだ方向音痴が治ってない? こういうのって治らないものなのかな?


 次は家だな。シルビアの提案を飲んじゃったからね、ここで住む為の家を造らないとね。


 まずは、この切り立った山の山頂は平らな部分が多いので、その中心に土魔法で高さ十メートル程の小山を作ってもらう。

 そこに洞穴をまた土魔法で開けてもらって、下へと掘り進む。

 入口は山頂の中央部だけど、住むのは洞窟の中ってわけだ。


 蟻の巣みたいになると思うけど、自分達でできるからね、蟻のアンに協力は求めなかった。


 まだ一部屋しかできてないのに、ナビゲーターから提案があり、作業をストップした。


(もう掘らなくっていいってどういう事?)

《はい、ここでダンジョン核を使います》


(ダンジョン核?)

《はい、ここにダンジョン核を置けば、この洞窟をダンジョン化できます。そうすれば、中の仕様を思い通りに造る事ができます》


(おお! それは便利でいいね。あれ? でも、ダンジョンって魔物が出るんじゃないの?)

《はい、そこでモンスターキーを使います。ダンジョン核では、ダンジョンの仕様を造ります。何階層であるとか、フロアの広さがどのぐらいとか、部屋は何個にするとかです》


(ふーん、で、魔物はどうするの?)

《ダンジョンには必ず魔物が出ます。これはダンジョン核の仕様ですので仕方ありません。ただ、出る魔物の種類や数はダンジョン核で設定できます。そこで、あなたがダンジョンマスターとなり、ダンジョン核の操作をするのです》


(ダンジョンマスター!? 嫌だよ、そんなの。みんなにオレが倒されちゃうじゃないか!)

《あなたはバカですね。従者が主人を襲うわけがないでしょう》

 バカって……ナビ子さんってSだけじゃなく、遠慮も無くなって来たね。


(じゃあ、デメリットは無いの?)

《全て解決済みです》


 そうだろうね。そうじゃないと、提案はして来ないだろうね。


(じゃあ、オレは何をしたらいいの?)

《ます、ダンジョン核をセットします。置くだけで構いません。そして、起動させるわけですが、その時にモンスターキーを使います。そして、ダンジョンの設定を指定のモンスターにして、個体数も同時に設定します。後は時おり見張って管理するだけです》


 ダンジョンってそんなに簡単にできるの? その手順なら武具を造る方が時間が掛かりそうなんだけど。


(ダンジョンを造るのって簡単なんだね)

《やはりあなたはバカです。簡単なわけありません》


 ホントに遠慮が無くなって来たよ。

(だって、今の手順なら三分も掛かんないだろ。簡単じゃないか)


《手順だけで見ればそうですが、アイテム集めと最後の手順ができないため、他の者にはダンジョンは造れません》


(アイテムってダンジョン核とかモンスターキーの事?)

《そうです。今まで両方を揃えた者は、千年以上いません。更に最後の手順があるため、誰にも造れません》


 千年以上前だといたのかな?

(最後の手順って?)

《SPを使います》


 おお! オレしか持ってないスペシャルポイントだな。

(でも、MPで代用できるとか言って無かった?)

《はい、SPの分はMPで代用できます。しかし、消費MPが多すぎるため、ダンジョンを造った者達は死んでダンジョンマスターとして君臨しています》


 ダンジョンを造るのと引き換えに命を捧げるのか。凄惨だな。そこまでしてダンジョンを造りたかったのか。

 考えは人それぞれだから、中にはそういう人もいたんだろうね。


(じゃあ、この世界だと、今はオレしかダンジョンを造れないって事?)

《その通りです》


(で、ダンジョンマスターになるって話だけど)

《ダンジョン核を起動させた者がダンジョンマスターになります。そこで、持っているモンスターキーの魔物を選択し、モンスターキーをダンジョン核に差すのです。そうすれば、ダンジョン内の魔物はあなたの従者になります》


 それなら危険は無さそうだね。

(時折見張らなければならないっていうのは?)

《ダンジョンに異常が無いか確認するだけです。【使い】のネズミかネコにでもやらせればいいでしょう》


(ダンジョンに異常が見つかった場合は?)

《ダンジョン核を置くダンジョンマスターの部屋に転送魔方陣を描いておけばすぐに来れますので問題ないでしょう》


 それなら安全かな。

(ダンジョンを消したい時は?)

《ダンジョン核を取るだけです》


(その時に出してた魔物は?)

《そのままあなたの従者として付いてきます》


 それも困るけど、危険にはならないみたいだね。


(よし、わかった。ダンジョンを造るよ)


 ナビゲーターの指示通り、手順を踏んで、ダンジョンを造った。

 これで晴れてオレもダンジョンマスターになった。

 馬車がダンジョンマスターって……

 ま、オレ達の家になるわけだから家長って事でいいと思うけどね。


すみません、タイトル消えてました。


【訂正】

シルビア十三歳⇒十四歳

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