第113話 エルフの里の情報
フラグ回収? して、城から帰ったその夜、メイビーファルルと今後について話し合った。回収品がエルフになるのかな?
あ、もう話しても大丈夫なんだよ。
奴隷の指輪だけど、キューちゃんにお願いしようかと思ってたんだ。奴隷の首輪を外した事があるからね。
でも、帰るまでに【回復地帯】を試してみたら、奴隷の指輪がスルリとはずれたんだ。ナビ子さんのアドバイスだけどね。
今は宿にいて、俺の料理を食べ終わって、後は風呂に入って寝るだけ。
それで、食後にこうやって話し合ってるんだけど、どうもオレの思った展開にはなってくれない。
オレはエルフの里まで送るよって言ったんだけど、エルフの里の場所が分からないって言うんだ。
今日の大臣さんとの話で、エルフの里に軍を派遣する事もあると言ってたから、聞きに行くよと言っても「辞めてください」と言うんだ。
どうやらエルフの里に帰りたくない理由があるみたいなんだな。
じゃあ、どうするの? と聞いても、俯くばかりで何も言わない。
言ってくれないと決められないんだよな。
でも、大臣さんには奴隷の指輪がはずれた事は報告に行かないといけないから、たぶんその時にエルフの里の情報はオレに入って来るよと言ってもだんまりだ。
どうしたらいいんだろ。
今まで奴隷として酷い扱いを受けて来たんだから、長い目で見てあげないといけないんだろうな。
少し様子を見るにしても、明日の朝、城に行って報告だけ済ませたら、またボルト達と合流して魔物退治だろ? 荷台に乗っててくれたら一緒にいてもいいんだけど、ずっと黙ってるのがいると雰囲気が暗くなるしね。皆が気まずい思いをしちゃうだろ。
こう見えてオレも色々考えてるんだよ。
でも、ルシエルも初めはこうだった気がするなぁ。意外とルシエルなら気が合うんじゃないか? ルシエルに任せてみようかな。
翌朝は、城に行き大臣さんとの面会を求めた。
後で思ったんだけど、ギルマスのイザベラさんに言えば、城まで行かなくても良かったんじゃないか?
で、待つこと二時間。めっちゃ料理を作ってしまったよ。
収納してれば問題ないけど、二時間も待つとは思わなかったよ。
大臣さんに面会すると、奴隷の指輪の解呪は終わって、もうはずれた事を報告した。
メイビーフェルルの今後について少し話し合ったけど、オレに任せてくれる事になった。
面倒事だけど、エルフの事だもんね。オレは頑張るよ。うん。
本来なら、国で責任を持ってエルフの里に送り届けてくれるそうなんだけど、彼女が帰りたくないと言ってると大臣さんに告げると、無理やり連れていくと強制送還と間違われてしまいそうだと大臣さんが及び腰になった。
そこで、オレがルシエルの事を話すと大臣さんも乗り気になって、オレに任せようという事になった。大臣さんの方でもレベル2男爵側で何か知ってる事があれば、問いただしてみると言ってくれた。
何か分かれば冒険者ギルドに連絡してくれるそうだ。
エルフの里の場所だけど、軍に行けば分かるということで軍の場所を教えてもらった。
これだから嫌なんだよ。あっちこっちたらい回しのお役所仕事。世界は変わっても一緒だね。
教えてもらった軍の詰所。軍幹部の詰所は城内にあり、会議室を囲んでそれぞれの隊に別れた部屋になっている。
第一から第五までの正規の部隊。遊撃隊に斥候部隊に工作部隊。どの部屋からでも会議室に直接入れるドアが付いている。
今回訪れたのは第三正規部隊。第一がフルアーマーの兵士が中心なのに対して、第三は騎兵を中心とした部隊である。
軍の花形部隊である。
第三部隊の詰所のドアを開けると、十人程度の兵士がいた。
どの兵士も袖や胸には金色の星がいっはい付いているワッペンが貼ってある。
偉いさんばっかりだね。
初め冒険者ギルド行った時のような緊張感があるね。
「すいません」
ギロリッ
なぜ挨拶をしたただけで睨まれる! ここは日本でも有名な怖い人達の事務所か!
「はい、なんでしょうか」
比較的、やさしめで細面の男性兵士が声を掛けてくれ、こっちに来てくれた。
「大臣に教えてもらって来たんですけど、エルフの里についてなんですが」
ギロリッ
お前もか! だから、なぜ睨む!
「どの大臣ですか?」
え? そういえば、あの大臣さんの名前を知らないね。
「名前は知らないです。いつも王様の通訳をしてる人ですね」
ギロリッ
だから睨むなって
「貴公は、礼儀がなっておりませんな。これは一から鍛え直すべきでしょうか」
いやいや、確かに礼儀がなってないとは大臣さんからも指摘されたけど、鍛え直す必要はないから。オレは兵士でもないし、貴族でもないし。
まだ言って来るようなら逃げようね。
「あっ! リーダーさん!」
え? 誰? オレには軍関係者に知り合いはいませんけど。
あっ、アンジー。見えてたけど、知り合いなんかいないと思ってたから気づかなかったよ。なんでこんなとこにいるんだろ?
最初に対応してくれた兵士からアンジーが対応を変わってくれた。
さっきまで対応してくれてた兵士は「キチンと教育をしてくださいね」と言って、自席に戻った。
アンジーは今は大隊長補佐官になり、出動や演習が無い時は、ここで勤務していると教えてくれた。出世街道まっしぐらだね。
オレは同僚に苦笑いを向けたアンジーに促されるまま別室へ行き、事情を説明した。
アンジーの回答は、「では私が案内しましょう」だった。
いやいや、まだ行くかどうかも決めてないんだよ。行くかもしれないけど、その時の為にある程度の場所が知りたいだけなんだよ。それをなんで『同行します』って流れになるわけ? あなた軍の仕事もあるでしょ。
「あのさ、まだ行くかどうかも決めてないんだ、まずはエルフの気持ちの整理が先なんで。落ち着いたら送ってあげようとは思ってるんだけど、あまりに遠いと送ってあげられないかもしれないから、場所だけ教えて欲しいんだ」
「それは軍の機密事項に当たりますので教えられません」
「いやいや、大臣さんが軍に聞けって言ってたんだよ?」
「いえ、軍の権限は大臣にはありませんので」
そうなの? 大臣からの命令なんかで軍が動いたりするんじゃないの? この国の命令系列が分からないから信じるしかないけど、どうも腑に落ちないんだよなぁ。
かといって、また大臣さんに面会をしようと思ったら凄く待たされる訳だよなぁ。
「んー、今日の昼飯食べ放題で、手を打たない?」
「! わかりました」
え? 二つ返事?
軍の機密事項がオレの料理に負けた?
アンジーは一度部屋に戻り、一枚の地図を持って来た。
「渡す事はできませんが、これがエルフの里の場所を示した地図です」
これは……
地図は一旦画像として保存。後はいくらでも複写できるからね。
アンジーの収納バッグに料理を十人前入れてあげて、交渉成立。後はメイビーファルルの気持ち次第か。
でも、このエルフの里の場所って、今ボルト達が行ってる洞窟から凄く近いんだけど。
城から戻ってみると、今日もシスターズは地図を作成中だ。
今度はどこの地図かと思ったら、ルシエルは王都周辺の地図、パル、シルビア、ライリィ組は町の地図だった。
メイビーファルルはルシエルの地図作りを見学していた。
やっぱりこの二人は気が合うのかもね。
でもいいのかなぁ、周辺地図って敵からの襲撃も考えて、敢えて適当な地図にしてるって場合もあるみたいだし、ルシエルみたいな超精密な地図なんか描いちゃってもいいのかなぁ。
ま、先に聞いてダメなら出さなきゃいいだけか。自分達で使う分ならいいんじゃない別にいいかな?
「ただいま」
「「「「おかえりなさい」」ませ」なのニャ」
いつものように迎えられた。メイビーファルルもこっちを向いてお辞儀をしてくれている。
「明日からの事なんだけど……」
「そんなんボルトはん達が行ってるとこに行くに決まってるやん!」
「ボルト様の所に行くのニャ。そして新しい技を見せるのニャ」
「あたり前」
「そうですね、それ以外の選択は無いかと思いますが」
即答ね、分かってたけど。好きだね、お前達も。そんなにバトルって面白いのかね? 強くなったら面白いのかもね、戦えないオレには分からないけどね。
「じゃあ、置いて行くわけにもいかないし、メイビーファルルも一緒に行こうね。名前が長いんだけど、何か愛称ってなかったの?」
「……ファルです」
恥ずかしそうに小さな声で答えてくれてた。
「ファル? ファルかぁ、パルと被ってややこしそうだなぁ。別の愛称でもいい?」
メイビーファルルは頷いて肯定した。
「はいはいはいはいー! ルルがええと思う」
「違うのニャ、メルなのニャ」
「イビルがいい」
「ご主人様にお任せします」
なぜ、全員『ル』を付けたがる! それだとパルと被るからの提案なんだよ。もう少し考えてくれよな。シルビアのイビルって悪魔って事じゃないの?
お前達って名付けのセンス、オレ以下だね。
「じゃあ、メイビーでいい?」
皆の意見を無視して、メイビーファルルに提案してみた。
メイビーファルルは恥ずかしそうに頷いて了解をしてくれた。
パルの「うわっ、ベタすぎー」って言葉は無視して愛称はメイビーと呼ぶ事にした。
「それで、明日からの予定なんだけど、大きな垂直落下型の洞窟に仲間達が行ってるんで、それに合流する予定なんだ。馬車の荷台から降りなければ安全だから、一緒に行ってもらうよ。一人で留守番をするより安全だから」
メイビーの目が大きく見開く。思い当たる場所があるんだろう、エルフの里に近いからね。
翌朝、シスターズに馬を売りに行ってもらって、宿の馬車置き場からボルト達のいる洞窟に転移した。
念話でボルトに連絡を取り、合流した。
ボルトから報告を聞くと、地上階が粗方終わって、地下に行こうと思ってた所だったみたいだ。
皆の収納アイテムを一旦預かって、中身をオレの収納に移すと、それが嘘じゃない事が分かった。
どんだけ獲ったんだってぐらいの魔物の数だった。
乱獲で捕まる事は無いだろうけど、獲り過ぎだよ。全部で万を優に超えてたもん。バッカじゃねー
あ、メイビーが怯えてる? 誰も説明してなかったもんね。そりゃボルトを見れば怖がってあたり前だね。
「メイビー。そんなに怖がらなくてもいいんだよ、ボルトは仲間だから。紹介するよ、仲間のボルト、ハヤテ、キューちゃん、センだ。他にもまだいるんだけど、たぶんメイビーが会う事は無いだろうね。もし、会う事があったらまたその時にでも紹介するよ」
半信半疑ながらも、襲われる事は無いみたいなので、仲間だという事は信じてくれたみたいだ。
「紹介するよ、エルフのメイビーファルルって言うんだ。少しの間同行するけど、仲良くしてあげてね。愛称はメイビーだから、メイビーって呼んであげてね」
皆への紹介も終わり、これから地下へ向かう事になった。
先に料理をせがまれたけどね。
食事中、メイビーの食があまり進まないようなので、声をかけた。
「メイビー、どうしたの? 何か気になる事でもあるの?」
「……今から地下へ向かうのですか?」
「そうみたいだね、もう決定みたいだよ」
オレ一人だけ反対しても全員に却下されるからね。誰が主人か分かんなくなって来たよ。
「それでは先にお話ししておかねばなりませんね。この地下の最下層にはエルフが封印した凶悪な魔物がおります。地下も魔物は多数存在していますが、この方達なら大丈夫のように思います。でも決して、決して最下層には行かない事をお勧めします」
あれ? 皆どうしたの? 食事の手が止まってるよ? 何ニヤニヤしてんの? 嫌な予感しかしないんだけど。
『最下層か……それはいい事を聞いたな』
え? ボルトさん? 何もいい事は言ってませんけど。
「ふむ、某が活躍の場を見せる場面が来たという事でゴザルな」
いえいえ、もうかなり活躍して頂いてますから、これ以上は結構です。
『ここはやっぱり早い者勝ちっすか?』
『ボクがやるー』キュキュー
いえ、行かないですけど。やる気になられても困りますけど。
「いやいや、ここはやっぱりうちやろ!」
「新技を見せるのニャ!」
「昨日のうっぷんを晴らす」
「お任せください、ご主人様」
やっぱりそうなるの? 勘弁してよー。メイビー、なんて事を言ってくれたんだよー。
修正しました。
ファル⇔ルル




