第104話 喜びの涙
誤字報告ありがとうございます。
南へのルートは二つ。
港町ベイナンから船で渡るか、東を迂回して行くか。
この王都がある辺りは大きな湾になっていて、王都キュジャーグは湾の北側になる。港があるのは近くだと港町ベイナンだけだから、港町ベイナンから船で南下するか湾に沿って大きく東を迂回するかなんだけど、一度は船にも乗ってみたいよね。
港町ベイナンから船で行けるのは対岸の港町フォッスル。他の航路もあるようだけど、オレ達に用があるのは港町フォッスル行きでいい。
まずは、港町ベイナンに行くんだけど、途中で海に寄ってもらった。魔人を埋めて尋問してた浜辺だよ、ここなら人気も無さそうだしね。
「ゴホン、あーあー、皆ちょっと聞いて欲しい」
昼時だし、今から昼飯だーって気分になってる皆に注目してもらった。
「あのさ、ミランダリィさんを蘇らせるって話なんだけどさ」
「はい、教会では残念でしたけど、ミランダリィさんを蘇らせるために私はどこまでもご主人様のお供を致します」
「そんなん、うちも付いて行くに決まってるやん」
「わたしもなのニャ」
「あたり前」
うん、そうだね、そうだよね。あ――言い出しにくい!
「でね、そのー、蘇生術の話なんだけどね」
「まずは港町フォッスルへ行くんでしたね。私、船は初めてなので凄く楽しみです」
「船ー! なのニャ」
「船でどこまで行くのん?」
「次の港町まで」
船は楽しみだね、分かってるよー、オレも楽しみだもん。
「実は……言いにくいんだけど」
「え、行き先変更ですか?」
「船に乗りたいのニャ」
「えー、船に乗れへんの?」
「まさか……王都に戻る? 忘れ物?」
「実は」
「はい」「はいなのニャ」「はいな」「なに?」
「実はもう蘇生術を覚えちゃった」
「「「「ええええええ!」」」」
「えー! ほんなら船無しなん?」
「船には乗りたいのニャ」
「私も楽しみにしてましたのに……」
「さすが馬車さんね」
いや、お前達、そこは残念がるところじゃないと思うぞ。ミランダリィさんが蘇るんだから、そっちを気にしろよ。ミランダリィさんVS船は、船がウィナーか?
そりゃないだろ。
「で、すぐにできるの?」
「シルビア、ええ質問や。ご主人様の事やから、全然心配してへんかったんやけど、ちょっと早すぎるで」
「ホント早すぎるのニャ、せめて船に乗った後にしてほしかったのニャ」
「当然です、私のご主人様なのですから。でも、本当に良かったです」
皆、うんうんと頷きながら涙目になっている。
心配してなかった訳じゃ無いんだな。ただ、ビックリしてどう言ったらいいか分かんなかっただけなんだな。オレに対する嫌味もちょっと入ってるかもね、早すぎるって。
見ていると、こっちもジーンとなってくるね。
「それで、早速ここで蘇らせたいんだけど、いいかな?」
「もちろんや!」
「あたり前なのニャ」
「はい、すぐに生き返らせてあげてください」
「馬車さん……ありがとう」
「じゃあ、皆は一度離れてくれる? それとキューちゃんとセンにはこっちに来て手伝ってほしいんだ」
皆、指示通り素早く行動する。
「今から【ソウルリバース】って蘇生の魔法陣を使うんだけど、ミランダリィさんは手足が捥がれた状態のままなんだ。【ソウルリバース】は初めて使うから、効果がどこまでなのか分からない。蘇らせるだけで、HPが1のままかもしれないし、手足の再生はされないかもしれない。そこでキューちゃんには、もしHPが少ししか無い状態だったらすぐに回復魔法を施してほしいんだ」
キュキュ「わかったー」
「センにはこれだ」
そう言って昨夜造っておいたエリクサーを渡す。
「それはエリクサーという回復薬で、回復薬の最上位のものなんだ。手足の再生もするはずだから、キューちゃんが先でもセンが先でも構わないから、【ソウルリバース】が終わったらすぐに対応してほしい」
【ソウルリバース】だけで事が足りればいいんだけど、もしもの場合に備えて二人に待機してもらった。
もうオレの失敗で誰かを悲しませたくない。念には念を入れてだ。
「じゃあ、やるよ」
スタンバってる二人に合図を送り、ミランダリィさんを荷台に出す。
マスタールームに出していた時のままだから布を被せてある。
「【ソウルリバース】」
いつもの【回復地帯】が発動したように見えたが、床には教会の地下で見た魔法陣が描かれている。魔法陣の上に寝かされているミランダリィさんは眩しい光に包まれている。
オレのMPとSPが一気に減って行く。
今の状態は、MP:8436/18520 SP:8522/18722
【ソウルリバース】を発動してすぐに半分ちょっと減った。まだ減り続けている。
大丈夫なのか? 俺の方が持たないんじゃないか? いや、ナビゲーターが行けると言うんだ、行けるはずだ。
MP・SPの残りが1000を切る前に、減るのが止まった。
ミランダリィさんを包む光が消えていく。
「セン、布を取って様子を見て。キューちゃんはいつでも回復魔法が出せるように準備して」
「はっ!」「りょーかーい」キュキュー
センが御者台から素早く降りてミランダリィさんを被せていた布を取る。
おお! 手足が元通りになってる!
裸のままだからよく分かる。身体は綺麗に治ってる。ということは、生き返ったという事か。死んでるままじゃ、どうやっても手足を再生させることはできなかったよな。
名前が戻ってる! 人間の死体じゃない、ミランダリィ・サークルフォー:LV66ってなってる。
鑑定、早く出ろ!
名前: ミランダリィ・サークルフォー
分類: 人間(人族)LV66
HP:516/516 MP:528/528 ATT512 DFE498 SPD488
スキル:【武器】7/10【魔法】6/10【隠形】2/10【感知】2/10
武器:【剣】7/10【斧】1/10【拳】1/10【槍】4/10【弓】3/10
魔法:【火】4/10【水】4/10【木】3/10【土】4/10
職業:剣士:【縮地法】【2段斬り】
戦士:【大楯】【2段斬り】【3段斬り】【筋力UP】【体力UP】【稲妻斬り】
魔術師:【魔力UP】
鍵師:【鍵開け】
ユニークスキル:
称号:ドラゴンキラー
やった――――!!! 生き返った、生き返ったぞー!
『皆! ミランダリィさんが生き返ったぞー!』
御者では大して叫べないから念話で皆に伝えた。
わぁーと言って皆が荷台に上がって来る。ミランダリィさんはまだ目が覚めていないが、皆でミランダリィさんを取り囲む。皆、大泣きだ。でも、顔は全員笑ってる。
「ん、んんー……」
「「「「ミランダリィさん!!」」」」
ミランダリィさんの意識が回復してきた。
「あれ? 皆どうしたの? なんでそんなに泣いてるの?」
「「「「ミランダリィさん!!」」」」
皆でミランダリィさんに抱きつく。もうグチャグチャだ。でもそれでいい、それがいい。皆でミランダリィさんを祝福してやろう。
少し落ち着いてきたので、ようやくミランダリィさんに事情を説明できた。
「確かにそうだったわね、最後に馬車さんが来てくれたのは朧気ながら覚えてるわ。馬車さん、ありがとう」
「い、いいんだよ。生き返ってくれてホント良かった」
「皆もありがとう」
皆ニコニコと嬉しそうに笑ってる、ホントいい笑顔だ。
「それでこれからどうするの? 私は一度王都に戻った方がいいんじゃない?」
「船なのニャー」
『否! 主殿、魔人討伐に行きましょう』
「その意見に賛同いたす、ミランダリィ殿の弔い合戦でござる」
「アカンアカン、船に乗るんやって」
「私も船がいい」
「魔人っすよね! やっぱ魔人っすよね」
「ご主人様とならどこまでも……ぽっ」
キュキュ『魔人ー』
もうグチャグチャだ。セン、ミランダリィさんは生き返ったんだから弔い合戦じゃないからね。船に乗りたい者と魔人討伐、ミランダリィさんの王都帰還と三つに分かれたね。
「まずは飯でも食べながら考えようよ」
「「「「賛成!!」」」」




