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第103話 ソウルリバース

 翌朝は早くから教会に行き、シルビアとルシエルに【御者】と一緒に入ってもらった。

 教会はもう開いていて、受付のシスターに事情を説明すると、すぐに奥に案内してもらった。

 別に誰からの紹介状も持って無い。ただ、名前を言っただけだ。シルビア、ルシエル、リーダーって。もう面倒だからリーダーって名前にしたんだよ。ちょっと変な目では見られたけどね。


 奥では神父さんが待っていて、信者たちの話を聞いているところだった。

 シスターが神父さんの所まで行き、声を掛けてくれると、優先的にオレ達の所に来てくれた。なんでなんだろ?


「おはようございます。あなたがシルビアさんですね、噂は聞いております。ベヌディアの町で沢山お布施をしてくださったとか。今日も…いえ、今日はどのようなご用ですか」

 凄く優しそうな微笑みだけど、目の奥の方に黒い光が見えるよ、神父さん。隣のシスターもね。


「おはようございます。先程シスターには説明したんですが、今日はこっちの…ルシエルと言うんですが、この女の子の職業(ジョブ)登録と魔法に付いて教えて頂こうかと思って来ました」

職業(ジョブ)登録ですか! 失礼しました、あまりにも嬉し……驚いたものですから」

 神父さんは大きな声を上げてしまったので左手で口を抑えたが、右手はクレクレの手になってるぞ。なんで隣のシスターは揉み手になってんの?


職業(ジョブ)登録ってそんなに驚く事なんですか?」

「いえ、よくあり……いえ、はい、最近では珍しいですねぇ」

 そうなの? よくありそうだけどなぁ。神父さんの目が泳いでるのが気になるなぁ。


「そうなんですね。そんなに珍しいんでしたら予約をしないとできなかったりしますか?」

「ととととんでもない! 今すぐにでもできますよ。こちらのルシエルさんの職業登録ですね。わかりました、すぐに登録いたしましょう」


「ねぇ神父さん。いつまで待たせるの?」

 冒険者だろう女がオレ達の話に割って入って来た。戦士風だけど魔法も使えそうな感じだ。


「さっき金貨一枚渡したでしょ。早く聖戦士の職業(ジョブ)登録をやってよ」

「ばっ! なななにを言ってるんでしょうか。お、おいっ」

 神父に促されたシスターが女冒険者を無理やり連れて離れて行った。


 ルシエルが神父をジト目で見つめる。

 シルビアは何の事? みたいな目で神父を見つめる。

 【御者】はいつも通りポーカーフェイスで無言でじーっと神父を見る。


「ははっ、はははっ、いやですねぇ。ここは教会ですから、職業(ジョブ)登録料は決まって無いんです。お布施というのは”お気持ち”ですから、その人その人の”お気持ち”の分でいいんです」

 なんかごまかしてるけど、ごまかせてないよね。

 さっき言ってたベヌディアってシルビアが聖戦士に職業(ジョブ)登録した町の事だろ? あの時シルビアは金貨1000枚渡してるはずだ。さっきの女冒険者は金貨一枚って言ってたよな。こいつらお布施目当てだったんだな。教会って言ってもこんなもんかね。


「神父さん」

ギクッ! 「ななななんでしょうか」


 分かりやす過ぎだろ。ま、その方がオレの目当ての物が手に入るかもしれないけどね。

「いいですよ、このルシエルに教会の聖属性の最高の魔法が使える職業(ジョブ)登録をしてくれるのなら金貨1000枚出しましょう」

「ほ、本当ですか!」

「はい」と言って白金貨を一枚と大金貨を十枚出した。これはベヌディアダンジョンの宝箱から出てきたやつだ。


 ちょっと整理しよう。

 銅貨百枚で銀貨一枚、銀貨百枚で金貨一枚、金貨百枚で大金貨一枚、大金貨百枚で白金貨一枚だね。

 だから大金貨十枚が金貨1000枚分だな、白金貨一枚だと金貨一万枚分だね。


「おお……」と言ってお金に歩み寄る神父さん。


「ちょっと待って」

 神父さんに止まるように【御者】で片手を出した。


「こちらからの提案です。お金がある事は分かってくれたと思います。この教会で一番クラスの高い魔法が使える職業(ジョブ)とは何でしょうか」

「一番高い職業(ジョブ)ですね。それは聖女ですね」

 神父さんはそう言いながらもお金から目を離さない。


「では、その聖女にルシエルを登録してください」

「おお、それぐらい容易い事です。これだけあればお釣りが来ますな」

 グフフと嫌らしい笑いをする神父さん。


「その職業(ジョブ)登録分で大金貨十枚渡します。白金貨分は別です」

「えっ?」

 なんで? みたいな顔になる神父さん。いや、多すぎると思ってなかったのか?


「ここは教会だから蘇生魔法ってあるんじゃないですか? それを教えてくれたら、その白金貨をお布施として出しましょう」

 神父さんは急にオレの事を残念な奴だ、みたいに見て溜息をついて答えた。

 フッ、と一呼吸して格好をつけてから話してくれた。

「昔はあったそうですが、今はありません。忘れ去られた魔法(ロストマジック)の一つですね」

 そうなんだ、やっぱり今は無いんだね。残念。


「今でも、はるか昔に蘇生の儀式が行なわれたという部屋は残っていますが、本当かどうかは分かりません。私達は教会の者ですから、信じていると口では言っていますが、実際に信じている者などいないでしょうね」

「あるんですか? その部屋が」

「はい、地下に封印されて保存されています。もう何百年と誰も入っていないでしょう」


 ここにあるんだ、その部屋が。

「そこを見せてもらう訳にはいきませんか?」

「それは無理です。この教会でも私しか入る権限を持ってません。それなのに部外者を入れるなんてできる訳がありません」

「そうですか、残念です」

 と言って白金貨を収納した。


「え? あ、あ、ちょ、ちょっと」

 神父さんは白金貨が無くなって慌てた後、ガックリと項垂れた。

 しかし、神父さんは三秒だけ考えて元気に顔を上げた。


「わかりました! 私の権限で入室を許可しましょう! ただ、部屋に入るのは非常に非常に貴重な体験になります。もうお金には代えられない程、そう! お金には代えられない程の貴重な体験になるでしょう」

 神父さんの右手がまたクレクレになってる。

 聖職者と言ってもこんな奴だったら駆け引きしてもバチは当たんないよね。

 何百年もの教会の秘密をお金に負けて三秒で決断しちゃったよ、それでいいのか? 聖職者だろ?


 白金貨を再び出した。

「神父さん、ありがとうございます。本当にお金では無いんですね? “お気持ち”として出しましたが、必要ありませんでしたか?」


 んんーと咳ばらいをする神父さん。

「“お気持ち”ですね、“お気持ち”でしたら頂かない訳にはいきませんね。こちらのお金はお布施として教会で受け取りましょう」

 また仕舞われては困ると、神父さんは大急ぎで白金貨と大金貨を集めた。

 なんか嫌だ、こんな聖職者。


 その後、ルシエルは聖女の職業(ジョブ)登録を終え、神父さんに地下室へ連れて行ってもらった。

 地下室への扉は、神父さんが封印を解くと、ギーっという音を立ててゆっくりと開いた。

 神父さんが【ライト】の魔法を唱え、真っ暗な地下への階段が明るくなる。

 地下へ降りてみると、綺麗に保存されているのが分かった。階段を下りている時から思っていたが、埃も積もって無いし蜘蛛の巣なんかも無かった。とても何百年も封印されてたとは思えないほど清潔だった。


「オレには見えるけど、ルシエルはちゃんと見えてる?」

 階段を照らしてくれていた神父さんの【ライト】だが、広い部屋では部屋全体を照らすには足らなかった。


「はい、大丈夫です。見えていますが、もっと明るく致します」

 ルシエルが【ライト】を発動させると部屋全体が昼間と思えるほど明るくなった。


 部屋の広さは五十畳ぐらい、だいたいESPの昇級試験の会場ぐらいだ。柔道の試合場ぐらいとも言う。

 魔法陣だけが描かれてある部屋で、他には何も無かった。

 中央には大きな魔法陣が描いてあり、左右に小さめの魔法陣がそれぞれ一個ずつ描いてあった。


 あ、これ……

「ルシエル……分かる?」

「いえ、申し訳ございません。私には難しすぎて分かりません」


 ルシエルには分からないか。シルビアも、分かって無さそうだな。これって蘇生の魔法陣だよ。

 右の小さな魔法陣に術者が立つんだろうな。左の小さな魔法陣に死んだ者を寝かせて、真ん中の大きな魔法陣が術者の魔力を吸い取って発動させるんだろうけど、凄く複雑な術式だよ。魔法陣がこれだけ大きくなるのも納得だな。魔力も相当な量を消費するみたいだな、だから今では使われなくなったのか。


【ソウルリバース】

 術式を理解すれば詠唱でもできるようだけど、呪文詠唱文も相当長くなりそうだな。しかもこの魔力量の消費だろ? メンバーでニ番目にMPが多いオレでギリギリだよ、オレは転送魔法陣すら発動させられないのに誰ができるんだよ。

 またオレが魔法陣を描いてキューちゃんが発動する。これで出来ないかなぁ、キューちゃんにしても凄い負担になると思うんだけど大丈夫かなぁ。

 MP以外にも()()いりそうなんだけど、なんだろ? もうちょっと解析してみたいな。


 魔法陣を静止画で保存して、紙に写しておこう。


 でも、これでミランダリィさんを蘇らせる希望が出てきたよ。お金はたくさん取られたけど、それ以上にいい物を手に入れる事ができたね。



 満面の笑みの神父さんと、どこにいたのか二十人以上のにこやかなシスター達に見送られ、教会を離れた。「またのお越しを~」って言ってたね。教会ってそういうとこだっけ?

 なんか、もう二度と来たくない雰囲気を出す教会だね。「お金を持って無い者は信者ではない」って言いそうな教会だよ。オレの偏見が多分に入ってるけどね。


 あとは何処にも寄らずに王都から出た。行き先は南、まずはフォッスルという港町を目指そう。


 町を出て、念話でボルトを呼んでみる。

『ボルト――――!』

『御意』

 街道横の草原の向こうの森の中から影がこっちへ近づいて来る。凄く早い、森からオレの所まで五秒も掛からず来た。


 なに? え? え? ボルトなの?

 影はオレに近付くと、そのまま止まる事も無くオレの影に入った。

『え? ボルトなの?』

『御意、大変遅くなりました。思ったより時間が掛かってしまいました』

 よかったー、帰って来てくれた。ホッとしたよ。


『ボルト、今のは何?』

『御意、【影移動】の習得に思ったより時間が掛かってしまいました。もう我も何もできずに見ているだけでは自分が許せません』

 あ、ミランダリィさんの時の事だね。ボルトは大きいから地下まで入れず外の兵を倒した後は見ているだけだったからボルトも悔しかったんだ。


『ミランダリィさんの時の事だね』

『御意。もうあんな悔しい思いはしたくはございません。この【影移動】の習得で、どんな狭い所でも行けるようになりましたので、更にお役に立てるでしょう』

 今までの活躍だけでも十分だよ。あの時はオレがもっとしっかりしてればミランダリィさんを死なせずに済んだかもしれないんだ。ボルトが責任を感じる必要は無いのに。


『まだ、主殿のように広い空間ではありませんが、移動はできるようになりました。今後はもっと極めて、更に速く移動できるように精進します』

 さっきのでも十分速かったよ、もっと速く移動できるようになれるの? 凄いねボルトは。

 オレも負けてられないな、まずはさっきの【ソウルリバース】の魔法陣だな。早く解明してミランダリィさんを蘇らせないとね。シルビアとも約束したし、最優先で【ソウルリバース】を解明してやるぞ!

 『並列思考』を一つ使うぐらいならMPとSPも大した消費じゃないから、ずっと使ってても問題無いし、まずは【ソウルリバース】の解析だな。


 ピーンポーン

《解析完了しました》


 え――と、なんの?

《【ソウルリバース】の解析完了です》

 はい? オレ、今すごくやる気に満ちてたんだけど……できたの?

《はい、解析完了しました》


 ……なんかオレのやる気を返してくれって言いたくなるけど、できたんなら助かるよ。早くミランダリィさんを蘇らせたいしね。

 それで、オレが描いてキューちゃんに発動させてもらう、転送魔法陣のようなやり方でいいの?

《キュートには発動できません、死んでしまいます》


 えっ! キューちゃんが発動すると死んじゃうの? ちゃんと説明してよ!

《はい、【ソウルリバース】を発動させるためにはMP以外にSPも必要です。キュートはSPを持たないためHPと更なるMPで代替します。それでも、今のステータスでは足りませんのでキュートは死んでしまいます》


 マジか! 他人を蘇らせるために自分が死んじゃったら意味ないじゃん。

 でもSPを消費するってオレしかできないじゃん。オレには発動できないんだよ?

《フッ、解析完了と私が報告するのですから、すべての問題も解決しています》


 なんだ? 『フッ』って。そんなに自慢したいんならもっとゴージャスなファンファーレにすればよかったのに。ピーンポーンだけだったぞ。

《ファンファーレは馬車のレベルアップのための物です。これは私が解析しただけですので、ピーンポーンで十分です》


 そんな事言ってもまったく奥ゆかしくも無いから。でも、オレのスキルアップにも繋がる事なんだからファンファーレでもいいのにね。基準が分からないよ。

 で? どうやったら発動できるの?

《【回復(ヒーリング)地帯(ゾーン)】に組み込みました。蘇生の時は【ソウルリバース】と叫んでください》


 叫ぶ? 叫ぶ必要があるの?

《ありません》


 じゃあ言うなよ、叫ばないからね。

 それと前から思ってたんだけど、SPってスタミナポイントじゃないの? スタミナポイントだったら誰にでもありそうなんだけど。

《SPはスペシャルポイントです。馬車の能力を発揮するためのポイントです》


 スペシャルポイント? 意味わかんねー。そんなポイント、オレしか持ってねーわ。


 でも、これでミランダリィさんを蘇らせることができるんだな。

 んー……こんな簡単でいいのかな? 凄く格好つけて王都を出発したのに、すぐに戻れないよな。気まず過ぎるよ。

 皆も張り切って出発してるし、どう切り出したらいいの?


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